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因果応報①

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『───うーん………』

体が温かくてホッとするけど、何となく……体が重くて動けない??

『──んー………』

ーあぁ…また、寝落ちしちゃったのかなー

『─────ん?』

ーあれ?私の体に、何か巻き付いてる?ー



『────────え!?』

バチッ─と、音が出る勢いで目が覚める。

『え?え?あれ?え?』

私の目の前?に、寝ているリュークレインさんがいらっしゃいます。そのリュークレインさんに…………ガッツリとホールドを喰らってます。

『え?』

白狼ルーナ姿の私のお腹と、リュークレインさんのお腹が……くっついていて……リュークレインさんの両腕でガッツリと───

『──って、何で!?』

グイーッと、肉球でリュークレインさんの胸を押して抜け出そうとすると、更に抱き込まれた。

『何で!?』

「──ふっ……………」

『リュークレインさん!?起きてますね!?』

「ははっ─ルーナ、可愛いな。」

『きゅぅ───っ!!』

リュークレインさんは、更にギュウギュウもふもふとルーナわたしを抱きしめる。

ーちょっと待って欲しい!ルーナ姿で良かったけど!ー

「あのな、ルーナ………いや…。例え、キョウコが白狼の姿だったとしても、俺の好きな女の子である事には変わらないんだ。キョウコは特に、ルーナの姿の時は……俺に気を許し過ぎと言うか……自分が女の子だって自覚が……足りてないと思う。いつも、簡単に俺に身を任せて、そのまま寝てしまうだろう?」

『……はい。』

ーだって、リュークレインさんの側は……ホッとするんですー

「まぁ……それはそれで、本当に可愛いし、俺も癒やされるから良いんだけどね?ただ………俺の事をもう少し、異性として─婚約者として意識して欲しい。」

『…………』

「キョウコは、本当に、俺の事………好き?」

『……………………』

ポンッ──

「───え?」

杏子の姿に戻ってから、改めてリュークレインさんと視線をしっかりと合わせる。

ー恥ずかしい!とか…言ってられない…よね!?ー

「私、ちゃんと、リュークレインさんの事が好きです。その…本当に、恥ずかしいんです。リュークレインさんは本当にかっこいいし、優しいし……でも、私は普通と言うか…平々凡々な容姿だし、何の取り柄もないし……。でも、ルーナの姿だと、自分の事を気にせずに……リュークレインさんに甘えられると言うか……だから……逆に、意識し過ぎてルーナになってるんです。」

ーはい。言いましたよ?思い切って、私の気持ち、ちゃんと伝え……たよね?あれ??伝わって……ないのかっ!?ー

頑張って伝えたつもりだったけど、目の前にあるリュークレインさんの顔は、キョトン顔だ。いや、寧ろ、表情がゴソっと抜けたような顔になっている。

「えっと……リュークレインさ─────っ!?」

後頭部をガッシリと掴まれて、そのまま噛み付くようにキスをされた。どうもがいても押しても叩いても離れられなくて

ーえ?死ぬ?ー

と思ったところで唇が離されて、酸素を取り込むように、口だけがはくはくと動く。

「リュークレ………」

恥ずかしいやら恨みがましいやらと、睨みつければ─

「だから、こんな格好の時にキョウコの姿になって、を言われたら、我慢できる訳がないだろう!?だから、これは、キョウコが悪いと言うか……キョウコが可愛い過ぎる───っ。」

「ちょっ───まっ─────っ!!??」

















え?それからどうなったか?───ふふっ……私からは言えない。

「自業自得だから。」
と、リュークレインさんには、ニッコリと微笑まれました。

「婚約者だし、結婚も決まってるから問題無いわよ!お義姉様!!」
と、リナティアさんには笑顔で抱きつかれました。

「うんうん──。」
と、宰相のアリスタ公爵様には笑顔で頷かれ、クラリス様からも微笑ましい笑顔を向けられた。

唯一、いつも私の味方になってくれるアシーナさんは、まだ浄化巡礼中である。アシーナさん、外堀は、もう完璧に埋められてしまったようです──否。私も、リュークレインさんが好きなので……問題無し…なんですけどね?

兎に角、私は、幸せな……穏やかな日々を送っています。

















*とある街の、とある商家にて*



大森彩香は、“サヤカ”として、とある商家にやって来た。

出自は不明で王都の孤児院で育ち、勉学に於いては優秀だった。その孤児院と繋がりのある商家が、経理の人員を探していると言う事で、院長がサヤカの推薦状を送ると、そのまま採用となった。

そう。大森彩香は、“元聖女”でも“異世界人”でも無く、この世界の人間で、“孤児”と言う扱いになった。“精霊に嫌われた元聖女”では、この世界では生きてはいけないからだ。

サヤカも、風の精霊シルフィードの最後通告で心を入れ替えたように、“孤児”扱いになった事も、生きていけるならと有難く思っていた。

その商家に経理担当として働き出すと、サヤカはその才を認められるように、の者からはよく褒められるようになった。それでも、最初の頃は「まだまだ自分なんて─」と、謙遜さえしていた。

それが、1年、2年と経つうちに、本来の性格が現れ出した。

この街は王都から離れていて少し閉鎖的な街で、王都で起こっている話なども、あまり耳に入って来る事がなかった。そのせいか、サヤカの中でが風化されていったのだ。

デキの悪い者に対しては虐げたり貶めたり。上の者には甘く擦り寄り、遂には、その商家の長である子爵の愛人にまで上り詰めた。そして、当たり前のようにその妻である子爵夫人を虐げるようになった。


「旦那様が、で、お待ちです。」

と、子爵夫人から伝言を聞き、サヤカは、その、いつも子爵とデートをしている丘へと、何の疑いも無く向かった。
その丘は、この街の湖に面した高台にある見晴らしの良い場所でありながら、人気は少なく、コッソリ逢びきするにはうってつけの場所であった。

「まだ来てないのね。私を待たせるなんて……」

と、サヤカがイライラとしながら呟いた。

ドンッ──

「えっ!?」

大きな湖を見渡せる、高台にある展望台の柵に近寄った時、誰かがサヤカの背中を退ようにぶつかって来た。

ぶつかられたサヤカの体は、何の抵抗もなく、そのまま柵を超えて湖へと落下して行った。

“自分の行ないは、必ず自分に返って来る”

落ちて行く中で、頭の中に響いたその言葉を、サヤカがどう思ったのかは───もう知る術は無い。

閉鎖的な街で起こった、とある女性の事件。その女性が孤児であった事と、ただの愛人でしかなかった事で、失踪した彼女を探そうとする者は居なかった。その彼女も、結局は──とうとう見付かる事はなく、この失踪事件が、この街から外に広がる事もなかった。
















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