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最後通告
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『本当に……反省しないのね?』
頭の中に響くような声。
ヒュッ─と息を呑んだのは、私だったのか、陽真だったのか──。
そこに現れたのは水の精霊ウンディーネ──ではなく、風の精霊であるシルフィードだった。
『あのね?もう、本当にいい加減にしてくれない?これ以上、ウンディーネを怒らせないでくれる?何故、素直に反省できないの?』
風の精霊シルフィード。オパールグリーンのロングヘアと瞳をした、ほっそりとした小柄な女性。幼く見えるが、されど精霊。そこに立っているだけで圧が掛かり、身に纏う空気がピリピリと肌を刺激する。
『キョウコとリュークレインの婚約、婚姻は私達精霊も祝福しているの。もし、その2人に手を出すと言うのなら、私達も黙っていられないのよね』
ふふっ─と笑うシルフィードは、見ただけでは可愛らしい少女だ。ただ、身に纏っている空気は相変わらず圧が凄い為、ただの少女ではない事が分かる。
『それに、サヤカが私の愛しい子─ミオに今迄して来た事も本当は怒ってるのよ?ただ、ミオが“もう終わった事だから”と言うから見逃してあげてるだけなの。分かる?あぁ、ハルマもそうよ?ウンディーネがハルマに何もしないのは、キョウコが、もうハルマに対して何も思ってないからよ。良かったわね。でなければ、ウンディーネがハルマを見逃す事なんて有り得ないもの』
フワフワと笑うシルフィードに対して、彩香と陽真は微動だにせず─できずに、ただただシルフィードを見つめて立ち尽くす。
『お馬鹿な貴方達でも、これで理解した?貴方達自身の行ないは、必ず自分に返って来るわ。これが、最後通告よ。ここに、ウンディーネとサラマンダーが来なかった事を…感謝しなさい』
じゃあね─と言って、シルフィードは姿を消した。
「ははっ──最後通告か……俺はお前みたいに馬鹿な事はしない。この世界で、“剣士”の肩書きを失えば存在価値すら無くなるから。俺はお前とは違う。俺は浄化巡礼に出て、剣士として生きて行く。俺は……お前を置いていくんだ」
陽真はそれだけ言うと、その部屋から出て行った。
「うわー……本当に陽真はクズだ。しかも、ちっさい男だったわ……本当に………笑えないわ………」
それでも、本当に好きだった。
分かっていた。陽真が何故、アイツをずっと側に置きながら、私達と付き合っていたのか。全ては、アイツに嫉妬させるためだ。自分を見て欲しかったから。
でも、アイツは陽真を嫌っていた。それがまた更にムカついて……アイツに嫌がらせをしていた。その事に陽真は全く気付いていなかった。
「ホント、今思うとクズっぷりが半端無いわ。黒歴史じゃない?」
『自分の行ないは自分に返って来る』
『ハッキリ言うと、これから先、彩香がどう言う扱いになるかは分からないけど、楽観的な考えはしない方が良いと思う』
これから、私がどうなるかは分からないけど、きっと美緒の言う通り楽観的な扱いにはならないだろう。それでも──
「アイツに謝ったりなんて……しない………」
そう呟いた後、もう一度布団に潜り込んだ。
******
『これで、あの2人もおとなしくなるんじゃない?』
『これでならないなら、馬鹿を通り越して崇めてやろうか?』
『サラマンダー?面白い事を言うのね?ふふっ─』
「「「…………」」」
大森さんが目を覚まし対面したと聞いて、私は美緒さんと樹君に会いに来た。今日は、巡礼に出る前日で、挨拶をしたかったのもあったからだけど、3人で話をしていると、そこに、ウンディーネ様とシルフィード様とサラマンダー様もやって来た。
ー最近、出現率が高くないですか?ー
美緒さんも樹君も知らなかったようだけど、どうやら、大森さんと陽真がまたやらかしそうだった為に、シルフィード様が最後通告をしに行ったそうだ。「どうしてシルフィード様が?」と3人で首を傾げると─
『ウンディーネがキレると止められないし、サラマンダーは城を灰にしそうじゃない?私が一番マトモだもの』
悪戯っ子の様な顔をして笑うシルフィード様。
ーえ?やっぱり、ウンディーネ様が最強なんですか!?ー
『最強かどうかではなくて、ウンディーネが四大精霊の中で一番の年長者なのよ。次いで私、サラマンダー、ノームね』
ー精霊でも、年功序列!?ー
精霊が子を生む事は無い。それなりに寿命があるらしく、力が不安定になると、次代の精霊の魂を自ら創り出すそうだ。その魂には、過去の精霊の記憶が刻まれるが、全く別の個体として生まれて来る為、記憶を持ちつつも全く別人なのだそうだ。
しかも、今代のサラマンダー様は、先代のサラマンダー様がとある国を一晩で消失させて「それは流石にやり過ぎだろう」と、ある意味咎を受けて世代交代?して生まれて来たそうだ。だからなのか、基本、火の精霊は沸点が低いそうだけど、今代のサラマンダー様は、比較的おとなしい性格……らしい。
因みに、あと一人の地の精霊のノーム様は、滅多に人間の世界には出て来ないそうだ。
『ノームが加護を与えるとしたら……モグラじゃないかしら?と思っちゃうわ』
精霊の世界も…色々あんですね?
❋精霊達の設定は、独自の設定になります❋
頭の中に響くような声。
ヒュッ─と息を呑んだのは、私だったのか、陽真だったのか──。
そこに現れたのは水の精霊ウンディーネ──ではなく、風の精霊であるシルフィードだった。
『あのね?もう、本当にいい加減にしてくれない?これ以上、ウンディーネを怒らせないでくれる?何故、素直に反省できないの?』
風の精霊シルフィード。オパールグリーンのロングヘアと瞳をした、ほっそりとした小柄な女性。幼く見えるが、されど精霊。そこに立っているだけで圧が掛かり、身に纏う空気がピリピリと肌を刺激する。
『キョウコとリュークレインの婚約、婚姻は私達精霊も祝福しているの。もし、その2人に手を出すと言うのなら、私達も黙っていられないのよね』
ふふっ─と笑うシルフィードは、見ただけでは可愛らしい少女だ。ただ、身に纏っている空気は相変わらず圧が凄い為、ただの少女ではない事が分かる。
『それに、サヤカが私の愛しい子─ミオに今迄して来た事も本当は怒ってるのよ?ただ、ミオが“もう終わった事だから”と言うから見逃してあげてるだけなの。分かる?あぁ、ハルマもそうよ?ウンディーネがハルマに何もしないのは、キョウコが、もうハルマに対して何も思ってないからよ。良かったわね。でなければ、ウンディーネがハルマを見逃す事なんて有り得ないもの』
フワフワと笑うシルフィードに対して、彩香と陽真は微動だにせず─できずに、ただただシルフィードを見つめて立ち尽くす。
『お馬鹿な貴方達でも、これで理解した?貴方達自身の行ないは、必ず自分に返って来るわ。これが、最後通告よ。ここに、ウンディーネとサラマンダーが来なかった事を…感謝しなさい』
じゃあね─と言って、シルフィードは姿を消した。
「ははっ──最後通告か……俺はお前みたいに馬鹿な事はしない。この世界で、“剣士”の肩書きを失えば存在価値すら無くなるから。俺はお前とは違う。俺は浄化巡礼に出て、剣士として生きて行く。俺は……お前を置いていくんだ」
陽真はそれだけ言うと、その部屋から出て行った。
「うわー……本当に陽真はクズだ。しかも、ちっさい男だったわ……本当に………笑えないわ………」
それでも、本当に好きだった。
分かっていた。陽真が何故、アイツをずっと側に置きながら、私達と付き合っていたのか。全ては、アイツに嫉妬させるためだ。自分を見て欲しかったから。
でも、アイツは陽真を嫌っていた。それがまた更にムカついて……アイツに嫌がらせをしていた。その事に陽真は全く気付いていなかった。
「ホント、今思うとクズっぷりが半端無いわ。黒歴史じゃない?」
『自分の行ないは自分に返って来る』
『ハッキリ言うと、これから先、彩香がどう言う扱いになるかは分からないけど、楽観的な考えはしない方が良いと思う』
これから、私がどうなるかは分からないけど、きっと美緒の言う通り楽観的な扱いにはならないだろう。それでも──
「アイツに謝ったりなんて……しない………」
そう呟いた後、もう一度布団に潜り込んだ。
******
『これで、あの2人もおとなしくなるんじゃない?』
『これでならないなら、馬鹿を通り越して崇めてやろうか?』
『サラマンダー?面白い事を言うのね?ふふっ─』
「「「…………」」」
大森さんが目を覚まし対面したと聞いて、私は美緒さんと樹君に会いに来た。今日は、巡礼に出る前日で、挨拶をしたかったのもあったからだけど、3人で話をしていると、そこに、ウンディーネ様とシルフィード様とサラマンダー様もやって来た。
ー最近、出現率が高くないですか?ー
美緒さんも樹君も知らなかったようだけど、どうやら、大森さんと陽真がまたやらかしそうだった為に、シルフィード様が最後通告をしに行ったそうだ。「どうしてシルフィード様が?」と3人で首を傾げると─
『ウンディーネがキレると止められないし、サラマンダーは城を灰にしそうじゃない?私が一番マトモだもの』
悪戯っ子の様な顔をして笑うシルフィード様。
ーえ?やっぱり、ウンディーネ様が最強なんですか!?ー
『最強かどうかではなくて、ウンディーネが四大精霊の中で一番の年長者なのよ。次いで私、サラマンダー、ノームね』
ー精霊でも、年功序列!?ー
精霊が子を生む事は無い。それなりに寿命があるらしく、力が不安定になると、次代の精霊の魂を自ら創り出すそうだ。その魂には、過去の精霊の記憶が刻まれるが、全く別の個体として生まれて来る為、記憶を持ちつつも全く別人なのだそうだ。
しかも、今代のサラマンダー様は、先代のサラマンダー様がとある国を一晩で消失させて「それは流石にやり過ぎだろう」と、ある意味咎を受けて世代交代?して生まれて来たそうだ。だからなのか、基本、火の精霊は沸点が低いそうだけど、今代のサラマンダー様は、比較的おとなしい性格……らしい。
因みに、あと一人の地の精霊のノーム様は、滅多に人間の世界には出て来ないそうだ。
『ノームが加護を与えるとしたら……モグラじゃないかしら?と思っちゃうわ』
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