召喚から外れたら、もふもふになりました?

みん

文字の大きさ
上 下
36 / 64

ズレ

しおりを挟む
「キョウコは……弾き飛ばされた?」

「おそらく。サヤカに押し退けられて、魔法陣から外れてしまったんだと思うわ」

転移の魔法陣から外れてしまうと、本来転移する筈の場所には転移できず、違う場所に転移してしまう。
違う空間に飛ばされる。
そもそも、転移できない。

色々な仮説があった。自分自身がどうなるか分からない実験など、誰がするだろうか。しないだろう。
だから、魔法陣から外れたら─とは、今迄は仮説しかなかった。

「キョウコは魔法陣から外れて、あの4人とは飛ばされる時間軸がズレてしまったのね」

あの4人と、2年も時間軸がズレてしまったのだ。

「ただ、ハルマが見たと言う“青い光”は、多分ウンディーネ様の光ね」

召喚の為の魔法陣で溢れだした光は金色だった。
と言う事は、ウンディーネ様は、キョウコがこの世界に落ちて来る前に、キョウコに加護を与えたと言う事になる。

「ひょっとしたら、ウンディーネ様の加護があったから、時間軸がズレただけで済んだのかもしれないわね」

どれもこれも、結局は仮説止まり。
取り敢えずは、キョウコが言っていた謎は解決?したと言って良いかもしれない。

「叔母上。キョウコがウンディーネ様に訊いたんです。“他の4人がどうなったか知りませんか?”って。そうしたら、ウンディーネ様は“知らない。たまたま落ちて来たルーナが気に入ったから加護を与えただけだ”と」

「「……………」」

ー謎が…増えただけじゃない?ー

と、2人でため息を吐く。
きっと、私やレインがウンディーネ様に訊いたところで、真実を話してくれる事はないだろう。

一つ言える事は、ウンディーネ様は、自分が気に入ったキョウコを護ろうとしたと言う事ね。

護ろうとした?ー

キョウコに訊けば分かるかしら?
取り敢えず、ウンディーネ様に関しては今は置いといて─

「ハルマは、きっと、キョウコが見付かるまで、キョウコを探そうとすると思うわ。“探したけど見付からなかった”と言う事は簡単だけど…。この事は、キョウコにはちゃんと話した方が良いと思うし、国王陛下に報告するのは、それからでも良いと思っているの」

キョウコに4人の事を話して、キョウコがどうしたいか─それから動けば良い…動いた方が良い。キョウコを何かから護ろうとしたウンディーネ様が、どう動くか分からない。分からないのであれば、愛し子であるキョウコの嫌がる事はしない。キョウコの意思を尊重すると言う事が最優先事項だろう。

「兎に角、今日はもう無理だけど、明日にでもキョウコに話をしに行くわ。レインは……どうする?行きたいのなら、東の魔女わたしから何かと理由をつけて第二騎士団長と王女殿下にお願いするけど」

「お願いします」

「ふふっ。レインは、本当にルーナ─キョウコの事が好きなのね?可愛いわね」

「外堀を埋めに掛かっているのは……叔母上でしょう?」

「あら、ハンカチ、嬉しくなかったの?」

「──嬉しくない事は全く無いですけど、俺はキョウコの心も欲しいので、ある程度逃げ道は……残しておいてあげて下さい」

ーどうやら、レインは本気なようねー

2人にはどんな形になっても幸せになって欲しいけど…できれば、2人幸せになって欲しい。

「それじゃあ、明日は朝の早い時間のうちにキョウコに会いに行きましょう。レイン、食事、ありがとう。私は今から国王陛下の所に行って来るわね」

「はい。叔母上、宜しくお願いします。」






*翌日の早朝、アリスタ邸にて*


『アシーナさん!!!』

王城からこっそりと転移して来たアシーナさんとリュークレインさん。眠気も吹き飛んで一気に駆け出してアシーナさんに飛び付いた。


「──で、俺を選んでくれるようにならないと…だよなぁ……」

「──ふふっ。レイン、頑張ってね?」

『?』

アシーナさんとリュークレインさんの言っている意味は、いまいちよく分からなくて、私は小首を傾げた。





、朝の早い時間に急にでごめんなさいね。キョウコとの話が終われば、また急いで王城に戻らないといけないの。だから……直ぐに本題に入るわね」

ここは、私が寝ていた部屋─アシーナさんに充てがわれている部屋。そこで、私は杏子として椅子に座り、テーブルを挟んだ向かい側にアシーナさんとリュークレインさんが座っている。アシーナさんがこの部屋全体に結界を張り直ぐ様話を切り出した。

「キョウコ……あなたが言っていた“他の4人”が…見付かったの」

「─────え?」

ー他の4人ー

「見付かった─では正しく無いわね。キョウコ、これから話す事は極秘事項だから、一切の他言は認められない。その上で話を聞いてちょうだい」

いつもの優しいアシーナさんではなく……東の魔女らしくピリッとした雰囲気を醸し出している。そんなアシーナさんを見て、私も姿勢を正した。


しおりを挟む
感想 107

あなたにおすすめの小説

【完結】追放された元聖女は、冒険者として自由に生活します!

蜜柑
ファンタジー
レイラは生まれた時から強力な魔力を持っていたため、キアーラ王国の大神殿で大司教に聖女として育てられ、毎日祈りを捧げてきた。大司教は国政を乗っ取ろうと王太子とレイラの婚約を決めたが、王子は身元不明のレイラとは結婚できないと婚約破棄し、彼女を国外追放してしまう。 ――え、もうお肉も食べていいの? 白じゃない服着てもいいの? 追放される道中、偶然出会った冒険者――剣士ステファンと狼男のライガに同行することになったレイラは、冒険者ギルドに登録し、冒険者になる。もともと神殿での不自由な生活に飽き飽きしていたレイラは美味しいものを食べたり、可愛い服を着たり、冒険者として仕事をしたりと、外での自由な生活を楽しむ。 その一方、魔物が出るようになったキアーラでは大司教がレイラの回収を画策し、レイラの出自をめぐる真実がだんだんと明らかになる。 ※序盤1話が短めです(1000字弱) ※複数視点多めです。 ※小説家になろうにも掲載しています。 ※表紙イラストはレイラを月塚彩様に描いてもらいました。

異世界から本物の聖女が来たからと、追い出された聖女は自由に生きたい! (完結)

深月カナメ
恋愛
十歳から十八歳まで聖女として、国の為に祈り続けた、白銀の髪、グリーンの瞳、伯爵令嬢ヒーラギだった。 そんなある日、異世界から聖女ーーアリカが降臨した。一応アリカも聖女だってらしく傷を治す力を持っていた。 この世界には珍しい黒髪、黒い瞳の彼女をみて、自分を嫌っていた王子、国王陛下、王妃、騎士など周りは本物の聖女が来たと喜ぶ。 聖女で、王子の婚約者だったヒーラギは婚約破棄されてしまう。 ヒーラギは新しい聖女が現れたのなら、自分の役目は終わった、これからは美味しいものをたくさん食べて、自由に生きると決めた。

召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?

浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。 「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」 ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。

現聖女ですが、王太子妃様が聖女になりたいというので、故郷に戻って結婚しようと思います。

和泉鷹央
恋愛
 聖女は十年しか生きられない。  この悲しい運命を変えるため、ライラは聖女になるときに精霊王と二つの契約をした。  それは期間満了後に始まる約束だったけど――  一つ……一度、死んだあと蘇生し、王太子の側室として本来の寿命で死ぬまで尽くすこと。  二つ……王太子が国王となったとき、国民が苦しむ政治をしないように側で支えること。  ライラはこの契約を承諾する。  十年後。  あと半月でライラの寿命が尽きるという頃、王太子妃ハンナが聖女になりたいと言い出した。  そして、王太子は聖女が農民出身で王族に相応しくないから、婚約破棄をすると言う。  こんな王族の為に、死ぬのは嫌だな……王太子妃様にあとを任せて、村に戻り幼馴染の彼と結婚しよう。  そう思い、ライラは聖女をやめることにした。  他の投稿サイトでも掲載しています。

王太子殿下から逃げようとしたら、もふもふ誘拐罪で逮捕されて軟禁されました!!

屋月 トム伽
恋愛
ルティナス王国の王太子殿下ヴォルフラム・ルティナス王子。銀髪に、王族には珍しい緋色の瞳を持つ彼は、容姿端麗、魔法も使える誰もが結婚したいと思える殿下。 そのヴォルフラム殿下の婚約者は、聖女と決まっていた。そして、聖女であったセリア・ブランディア伯爵令嬢が、婚約者と決められた。 それなのに、数ヶ月前から、セリアの聖女の力が不安定になっていった。そして、妹のルチアに聖女の力が顕現し始めた。 その頃から、ヴォルフラム殿下がルチアに近づき始めた。そんなある日、セリアはルチアにバルコニーから突き落とされた。 突き落とされて目覚めた時には、セリアの身体に小さな狼がいた。毛並みの良さから、逃走資金に銀色の毛を売ろうと考えていると、ヴォルフラム殿下に見つかってしまい、もふもふ誘拐罪で捕まってしまった。 その時から、ヴォルフラム殿下の離宮に軟禁されて、もふもふ誘拐罪の償いとして、聖獣様のお世話をすることになるが……。

聖女召喚に巻き込まれた挙句、ハズレの方と蔑まれていた私が隣国の過保護な王子に溺愛されている件

バナナマヨネーズ
恋愛
聖女召喚に巻き込まれた志乃は、召喚に巻き込まれたハズレの方と言われ、酷い扱いを受けることになる。 そんな中、隣国の第三王子であるジークリンデが志乃を保護することに。 志乃を保護したジークリンデは、地面が泥濘んでいると言っては、志乃を抱き上げ、用意した食事が熱ければ火傷をしないようにと息を吹きかけて冷ましてくれるほど過保護だった。 そんな過保護すぎるジークリンデの行動に志乃は戸惑うばかり。 「私は子供じゃないからそんなことしなくてもいいから!」 「いや、シノはこんなに小さいじゃないか。だから、俺は君を命を懸けて守るから」 「お…重い……」 「ん?ああ、ごめんな。その荷物は俺が持とう」 「これくらい大丈夫だし、重いってそういうことじゃ……。はぁ……」 過保護にされたくない志乃と過保護にしたいジークリンデ。 二人は共に過ごすうちに知ることになる。その人がお互いの運命の人なのだと。 全31話

聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる

夕立悠理
恋愛
 ある日、聖女として異世界に召喚された美香。その国は、魔物と戦っているらしく、兵士たちを励まして欲しいと頼まれた。しかし、徐々に戦況もよくなってきたところで、魔法の力をもった本物の『聖女』様が現れてしまい、美香は、聖女を騙った罪で、処刑される。  しかし、ギロチンの刃が落とされた瞬間、時間が巻き戻り、美香が召喚された時に戻り、美香は二度目の生を得る。美香は今度は魔物の元へ行き、自由に生きることにすると、かつては敵だったはずの魔王に溺愛される。  しかし、なぜか、美香を見捨てたはずの護衛も執着してきて――。 ※小説家になろう様にも投稿しています ※感想をいただけると、とても嬉しいです ※著作権は放棄してません

巻き込まれではなかった、その先で…

みん
恋愛
10歳の頃に記憶を失った状態で倒れていた私も、今では25歳になった。そんなある日、職場の上司の奥さんから、知り合いの息子だと言うイケメンを紹介されたところから、私の運命が動き出した。 懐かしい光に包まれて向かわされた、その先は………?? ❋相変わらずのゆるふわ&独自設定有りです。 ❋主人公以外の他視点のお話もあります。 ❋気を付けてはいますが、誤字脱字があると思います。すみません。 ❋基本は1日1話の更新ですが、余裕がある時は2話投稿する事もあります。

処理中です...