上 下
33 / 64

ルーナ、痛みを知る?

しおりを挟む
❋本日、2話目の投稿になります。宜しくお願いします❋
















『ルーナには私の─水の精霊の加護があるから、水がある所なら、水を介して行きたい場所に転移できるのよ。』

『リュークレインが居る、あの孤児院にも噴水はあるから行けるわよ?』


そんな事を言われると、リュークレインさんがどうのこうの─と言うよりも─転移できるの!?と言う興味の方が勝ってしまい、私は転移の仕方をウンディーネ様に教えてもらって、『物は試しだ!』と、その場の勢いで噴水に飛び込んだ。

次に水面へと上がると、アリスタ邸の庭ではない景色が目の前にあった。

ーわぁ!本当に転移できたんだ!ー

ザバッと水から出て、ブルブルと体を震わせて水滴を飛ばす。認識阻害の魔術が転移されている為、誰も私の存在に気付く事はない。

ー静かだなぁ…まだ、視察に来てないのかな?ー

王女様が来るからだろう。庭にも人影はなかった。
そのまま暫く待っていると、庭の奥─孤児院の建物の方からざわめきが起こった。

ー王女様が来たのかな?ー

私は走って建物の方へと向かった。











建物入り口に数人の大人と、20人程の子供達がズラリと並んでいて、その目の前に王族の馬車とは思えないような質素な馬車がやって来た。いや、確かに、綺麗な馬車ではある。王族らしい豪華?威厳?ある馬車ではなく、一般的な貴族の馬車と言う感じだ。

その馬車が止まり、御者が扉を開けると、中からリュークレインさんが出て来た。

ーリュークレインさんだ!ー

いつぶりに見るだろう?元気そう─と言うか、流石は近衛騎士だ。いつものフワリとした目ではなく、少し冷たいような目で周りに視線を巡らせている。
その後、馬車の扉の方へ振り返り、スッと手を差し出すと、その手を取って馬車の中からカミリア王女と思われる女性が降りて来た。

ーうわぁ…これが…エスコート!?ー

物語とかで読んだりした事はあったけど、目の当たりにするのは初めてだった。

リュークレインさんは言わずもなが、イケメンさんだ。それに、今日は近衛騎士の服を着ていて、いつもよりもイケメンに見える。アッシュグレイの長い髪を後ろでキュッと纏めて、前髪も後ろへと流している。
そして、カミリア王女。金髪の長い髪を後ろで一括りにしてアップにしている。クリッとしていて少し垂れ目がちの、ロイヤルブルーのような綺麗な青い瞳。ザ・お姫様!と言う感じの王女様だ。

『──絵になる……2人だなぁ………』

そう口にすると、揺れていた尻尾が自然と動きを止めていた。













それから、カミリア王女は孤児院の院長らしき人に案内されながら、建物の中を視察していった。そのままお昼の時間になり、カミリア王女も子供達と一緒にご飯を食べ、お土産として持って来ていたクッキーを子供達に配っていた。そのクッキーも食べた後、カミリア王女は嫌がる事もなく、子供達に手を引かれるまま庭へ出て、女の子達と一緒にお花摘みをしたり本を読んだりしていた。

そんなカミリア王女を、近過ぎず、遠過ぎずな位置から見守っているリュークレインさん。周辺への警戒は怠らず、常にピリッとした雰囲気を纏ってはいるが、時折カミリア王女に向ける視線は──とても柔らかいモノだった。

『…………』

久し振りのリュークレインさん。元気そうで良かった─と思っているのは確か──なんだけど……チクリと胸が痛みを訴える。

ふと、カミリア王女がリュークレインさんに視線を向けると、リュークレインさんは何の躊躇いもなくカミリア王女の元へと歩み寄り、少し言葉を交した後手を差し伸べて、その手を取りカミリア王女が立ち上がる。そして、その手を預けたままで2人が歩き出し、その2人の後を子供達が付いて行った。

私はその2人の後を追わず、2人と子供達が建物の中に入って行くのを、ただじっと見つめていた。2人と子供達が建物の中に入り、姿が見えなくなると、私は自分の右前足に視線を落とした。

そこには、チョキができない、肉球のあるもふもふな前足があった。

ーこんな手じゃ、エスコートなんてされないよねー


『……………え?』

自分の思った事に対して、自分で疑問を抱く。

ー私…何を??ー

それ以上考えても答えは分からず、私は暫くその場で自分の気持ちを落ち着かせるように深呼吸をしてから、アリスタ邸へと帰る為に、孤児院にある噴水へと飛び込んだ。

















『ルーナ、久し振りだな。元気だったか?』

その日の夜、うとうととしているとリュークレインさんが、久し振りにアリスタ邸へと帰って来た。

ーあれ?何でリュークレインさんが?ー

夜も遅い時間で、私は寝ようと思って───と、そこで一気に覚醒する。



あれからアリスタ邸に帰って来ると、ウンディーネ様が『これで…少しは進められるかしら?』と、ちょっと意味が分からない事を愉しそうに言った後、また姿を消して居なくなった。それから、やっぱり色々考えても、さっき自分が感じた痛みや思考の理由が分からなくて──考える事を放棄した。

それから夕食を取った後、部屋に戻ろう─としたところで、ふと足が止まった。リュークレインさんの部屋の前で。

見上げたリュークレインさんの部屋の扉が、少しだけ開いていて、“駄目だ”と思いながらも、その扉をソッと押して中へと入った。

ーあ、リュークレインさんの匂いだー

フワリと優しい柑橘系の香水の匂い。何故だか緊張?するような気持ちになるけど、ホッとするのも確かだ。

ー少しだけなら…良いかな?ー

と、私はリュークレインさんがいつも座っている椅子の上に飛び乗った。










で、そのまま寝落ちしていたようです。










しおりを挟む
感想 107

あなたにおすすめの小説

チョイス伯爵家のお嬢さま

cyaru
恋愛
チョイス伯爵家のご令嬢には迂闊に人に言えない加護があります。 ポンタ王国はその昔、精霊に愛されし加護の国と呼ばれておりましたがそれももう昔の話。 今では普通の王国ですが、伯爵家に生まれたご令嬢は数百年ぶりに加護持ちでした。 産まれた時は誰にも気が付かなかった【営んだ相手がタグとなって確認できる】トンデモナイ加護でした。 4歳で決まった侯爵令息との婚約は苦痛ばかり。 そんな時、令嬢の言葉が引き金になって令嬢の両親である伯爵夫妻は離婚。 婚約も解消となってしまいます。 元伯爵夫人は娘を連れて実家のある領地に引きこもりました。 5年後、王太子殿下の側近となった元婚約者の侯爵令息は視察に来た伯爵領でご令嬢とと再会します。 さて・・・どうなる? ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

「お前を愛するつもりはない」な仮面の騎士様と結婚しました~でも白い結婚のはずなのに溺愛してきます!~

卯月ミント
恋愛
「お前を愛するつもりはない」 絵を描くのが趣味の侯爵令嬢ソールーナは、仮面の英雄騎士リュクレスと結婚した。 だが初夜で「お前を愛するつもりはない」なんて言われてしまい……。 ソールーナだって好きでもないのにした結婚である。二人はお互いカタチだけの夫婦となろう、とその夜は取り決めたのだが。 なのに「キスしないと出られない部屋」に閉じ込められて!? 「目を閉じてくれるか?」「えっ?」「仮面とるから……」 書き溜めがある内は、1日1~話更新します それ以降の更新は、ある程度書き溜めてからの投稿となります *仮面の俺様ナルシスト騎士×絵描き熱中令嬢の溺愛ラブコメです。 *ゆるふわ異世界ファンタジー設定です。 *コメディ強めです。 *hotランキング14位行きました!お読みいただき&お気に入り登録していただきまして、本当にありがとうございます!

【完結】 私を忌み嫌って義妹を贔屓したいのなら、家を出て行くのでお好きにしてください

ゆうき@初書籍化作品発売中
恋愛
苦しむ民を救う使命を持つ、国のお抱えの聖女でありながら、悪魔の子と呼ばれて忌み嫌われている者が持つ、赤い目を持っているせいで、民に恐れられ、陰口を叩かれ、家族には忌み嫌われて劣悪な環境に置かれている少女、サーシャはある日、義妹が屋敷にやってきたことをきっかけに、聖女の座と婚約者を義妹に奪われてしまった。 義父は義妹を贔屓し、なにを言っても聞き入れてもらえない。これでは聖女としての使命も、幼い頃にとある男の子と交わした誓いも果たせない……そう思ったサーシャは、誰にも言わずに外の世界に飛び出した。 外の世界に出てから間もなく、サーシャも知っている、とある家からの捜索願が出されていたことを知ったサーシャは、急いでその家に向かうと、その家のご子息様に迎えられた。 彼とは何度か社交界で顔を合わせていたが、なぜかサーシャにだけは冷たかった。なのに、出会うなりサーシャのことを抱きしめて、衝撃の一言を口にする。 「おお、サーシャ! 我が愛しの人よ!」 ――これは一人の少女が、溺愛されながらも、聖女の使命と大切な人との誓いを果たすために奮闘しながら、愛を育む物語。 ⭐︎小説家になろう様にも投稿されています⭐︎

聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる

夕立悠理
恋愛
 ある日、聖女として異世界に召喚された美香。その国は、魔物と戦っているらしく、兵士たちを励まして欲しいと頼まれた。しかし、徐々に戦況もよくなってきたところで、魔法の力をもった本物の『聖女』様が現れてしまい、美香は、聖女を騙った罪で、処刑される。  しかし、ギロチンの刃が落とされた瞬間、時間が巻き戻り、美香が召喚された時に戻り、美香は二度目の生を得る。美香は今度は魔物の元へ行き、自由に生きることにすると、かつては敵だったはずの魔王に溺愛される。  しかし、なぜか、美香を見捨てたはずの護衛も執着してきて――。 ※小説家になろう様にも投稿しています ※感想をいただけると、とても嬉しいです ※著作権は放棄してません

拝啓。聖女召喚で得た加護がハズレらしくダンジョンに置いてきぼりにされた私ですが元気です。って、そんな訳ないでしょうが!責任者出て来いやオラ!

バナナマヨネーズ
恋愛
私、武蔵野千夜、十八歳。どこにでもいる普通の女の子。ある日突然、クラスメイトと一緒に異世界に召喚されちゃったの。クラスのみんなは、聖女らしい加護を持っていたんだけど、どうしてか、私だけよくわからない【応援】って加護で……。使い道の分からないハズレ加護だって……。はい。厄介者確定~。 結局、私は捨てられてしまうの……って、ふっざけんな!! 勝手に呼び出して勝手言ってんな! な~んて、荒ぶってた時期もありましたが、ダンジョンの中で拾った子狼と幸せになれる安住の地を求めて旅をすることにしたんですよ。 はぁ、こんな世界で幸せになれる場所なんてあるのかしら? 全19話 ※小説家になろう様にも掲載しています。

初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―

望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」 【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。 そして、それに返したオリービアの一言は、 「あらあら、まぁ」 の六文字だった。  屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。 ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて…… ※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。

【完結】たれ耳うさぎの伯爵令嬢は、王宮魔術師様のお気に入り

楠結衣
恋愛
華やかな卒業パーティーのホール、一人ため息を飲み込むソフィア。 たれ耳うさぎ獣人であり、伯爵家令嬢のソフィアは、学園の噂に悩まされていた。 婚約者のアレックスは、聖女と呼ばれる美少女と婚約をするという。そんな中、見せつけるように、揃いの色のドレスを身につけた聖女がアレックスにエスコートされてやってくる。 しかし、ソフィアがアレックスに対して不満を言うことはなかった。 なぜなら、アレックスが聖女と結婚を誓う魔術を使っているのを偶然見てしまったから。 せめて、婚約破棄される瞬間は、アレックスのお気に入りだったたれ耳が、可愛く見えるように願うソフィア。 「ソフィーの耳は、ふわふわで気持ちいいね」 「ソフィーはどれだけ僕を夢中にさせたいのかな……」 かつて掛けられた甘い言葉の数々が、ソフィアの胸を締め付ける。 執着していたアレックスの真意とは?ソフィアの初恋の行方は?! 見た目に自信のない伯爵令嬢と、伯爵令嬢のたれ耳をこよなく愛する見た目は余裕のある大人、中身はちょっぴり変態な先生兼、王宮魔術師の溺愛ハッピーエンドストーリーです。 *全16話+番外編の予定です *あまあです(ざまあはありません) *2023.2.9ホットランキング4位 ありがとうございます♪

【コミカライズ決定】地味令嬢は冤罪で処刑されて逆行転生したので、華麗な悪女を目指します!~目隠れ美形の天才王子に溺愛されまして~

胡蝶乃夢
恋愛
婚約者である王太子の望む通り『理想の淑女』として尽くしてきたにも関わらず、婚約破棄された挙句に冤罪で処刑されてしまった公爵令嬢ガーネット。 時間が遡り目覚めたガーネットは、二度と自分を犠牲にして尽くしたりしないと怒り、今度は自分勝手に生きる『華麗な悪女』になると決意する。 王太子の弟であるルベリウス王子にガーネットは留学をやめて傍にいて欲しいと願う。 処刑された時、留学中でいなかった彼がガーネットの傍にいることで運命は大きく変わっていく。 これは、不憫な地味令嬢が華麗な悪女へと変貌して周囲を魅了し、幼馴染の天才王子にも溺愛され、ざまぁして幸せになる物語です。

処理中です...