15 / 64
王都でのリナティア
しおりを挟む
❋本日、2話目の投稿になります。宜しくお願いします❋
『大きい……水玉………』
今日も、白狼姿で魔法の練習をしています。
リナティアさん達が王都へと帰ってから1ヶ月が経ちました。その1ヶ月で、ようやく………大きい水玉を作る事ができました。ピンポン玉位のモノから、大人が1人入れる位の大きな水玉。
バシャンッ
『ひゃぁ──っ!』
少し気を緩めると、その大きな水玉が形を崩して私の体に落ちて来た。ビチョビチョです。
「あらあら、大丈夫?」
と、アシーナさんが笑いながら私に温かい風を掛けて、体を乾かしてくれた。
『半年経ってもコレとは……私、やっぱり魔法の才能無いかもですよね………』
もう、耳も尻尾もだだ下がりだ。
“魔法が使える!?”と、喜んでいた自分が懐かしい。
「前にも言ったけど、もともと魔力なんて持っていなかった体に、一瞬にして魔力が流れ出した事と、後は……その姿のせいで魔力の流れが不安定になっているかもしれないわね。白狼に関しては、水の精霊にしかどうする事もできないしね…」
ー水の精霊さん。早く…私に会いに来てくれませんか!?ー
何て言う願いも虚しく更に1ヶ月が過ぎた頃、王都からまた手紙が届いた。
『王都に……リナティアさんに会いに行くんですか?』
「ええ。アリスタ公爵家─私の実家に行くわ。それで、ルーナも一緒に来てくれるかしら?」
「え?私も……ですか?」
「詳しい事は後で説明するけど、リナがね…。ルーナに会いたいって言っているらしいの」
と、アシーナさんは少し困ったような怒っているような顔で、今のリナティアさんの状況を説明してくれた。
******
リナティアさんの婚約者─アデルバート=オーディアス。
この国の王太子。もともとリナティアさんとは幼馴染みで仲が良く、身分も釣り合うと言う事で、特に問題も無く2人の婚約が調ったそうだ。
婚約者になった後は、2人共に王妃教育や帝王学にと切磋琢磨しながら頑張っていた。
1年先に王太子が学園に入園すると、2人が会える時間は減ってしまったが、それでも王太子は時間があればリナティアさんをお茶に誘ったりと、週に一度は必ず会っていたそうだ。
その1年後、リナティアさんが学園に入園すると、2人は同じ生徒会の役員になり、また一緒に過ごす時間が増え、リナティアさんは『王妃教育や生徒会で大変だけど、バートと一緒に居られるのが嬉しい。』と、よく兄であるリュークレインさんに話をしていたそうだ。
それが、少しずつ変わって来たのが、王太子が3年生、リナティアさんが2年生になってからだった。
リナティアさんと同じ学年に、とある伯爵令嬢が転入生としてやって来た。
ロゼリア=アークルハイン
1年の時は、他国に留学していたらしく、1年遅れて入学して来たらしい。留学していたと言う事もあり非常に優秀らしく、先生の薦めもあり生徒会役員になった。
すると……一気に王太子とロゼリアの距離が縮まったそうだ。
いつも、王太子の隣で補佐をしていたリナティアさんの場所には、気が付けばロゼリアが居るようになった。
週に一度はお茶をしていたのが、2週間に一度になり、それもたまにキャンセルになる事も増えた。
そうして、兄であるリュークレインさんが、叔母であるアシーナさんに相談されて気が付いた時には、リナティアさんは王太子の事を“バート”ではなく、“殿下”と、呼ぶようになっていたそうだ。
それが、私と出会う迄の話。
寝ていた時『殿下』と言いながら泣いていたリナティアさんを思い出す。
ー何?幼馴染みって、クズしかいないの?ー
────コホン
思わず…王太子相手に素になってしまった……。
そして、リナティアさん達が王都に戻って、学園生活が始まると、更に2人の関係が悪化したそうだ。
と言うのも、その3人を取り巻く人間がガラリと変貌したのだ。ある貴族子息が、王太子とリナティアさんの婚約は破棄されると噂し、ロゼリアを優遇し始めた。その貴族子息がそこそこの身分の者だったらしく、それに追随する者が増えて行ったと言う。
勿論、そんな噂に惑わされず、リナティアさんに寄り添う令嬢や子息だって居る。居るが、王太子が何も言わない為、学園では今では何とも言えない雰囲気が漂っているらしい。
学園内でよく見られるようになった、王太子とロゼリアの2人の姿。そんな日々を送っていたリナティアさん。
その日も、リナティアさんはいつも通りに登校した。
それが───
“リナティア様が倒れました”
と、兄であるリュークレインさんの勤める第二騎士団副団長の執務室に連絡が入ったのは、その日のお昼過ぎだった。
その連絡に驚いたリュークレインさん。たまたま室内に第一と第二騎士団長も居て、邸に戻ってやれと言ってくれた為、その言葉をありがたく受け取り、リュークレインさんはすぐに邸に戻った。
それから、更に驚いた事に、邸に帰って話を聞くと、今回、倒れたリナティアさんを助けたのは──
国王陛下直属の配下である“影”だったのだ。
『大きい……水玉………』
今日も、白狼姿で魔法の練習をしています。
リナティアさん達が王都へと帰ってから1ヶ月が経ちました。その1ヶ月で、ようやく………大きい水玉を作る事ができました。ピンポン玉位のモノから、大人が1人入れる位の大きな水玉。
バシャンッ
『ひゃぁ──っ!』
少し気を緩めると、その大きな水玉が形を崩して私の体に落ちて来た。ビチョビチョです。
「あらあら、大丈夫?」
と、アシーナさんが笑いながら私に温かい風を掛けて、体を乾かしてくれた。
『半年経ってもコレとは……私、やっぱり魔法の才能無いかもですよね………』
もう、耳も尻尾もだだ下がりだ。
“魔法が使える!?”と、喜んでいた自分が懐かしい。
「前にも言ったけど、もともと魔力なんて持っていなかった体に、一瞬にして魔力が流れ出した事と、後は……その姿のせいで魔力の流れが不安定になっているかもしれないわね。白狼に関しては、水の精霊にしかどうする事もできないしね…」
ー水の精霊さん。早く…私に会いに来てくれませんか!?ー
何て言う願いも虚しく更に1ヶ月が過ぎた頃、王都からまた手紙が届いた。
『王都に……リナティアさんに会いに行くんですか?』
「ええ。アリスタ公爵家─私の実家に行くわ。それで、ルーナも一緒に来てくれるかしら?」
「え?私も……ですか?」
「詳しい事は後で説明するけど、リナがね…。ルーナに会いたいって言っているらしいの」
と、アシーナさんは少し困ったような怒っているような顔で、今のリナティアさんの状況を説明してくれた。
******
リナティアさんの婚約者─アデルバート=オーディアス。
この国の王太子。もともとリナティアさんとは幼馴染みで仲が良く、身分も釣り合うと言う事で、特に問題も無く2人の婚約が調ったそうだ。
婚約者になった後は、2人共に王妃教育や帝王学にと切磋琢磨しながら頑張っていた。
1年先に王太子が学園に入園すると、2人が会える時間は減ってしまったが、それでも王太子は時間があればリナティアさんをお茶に誘ったりと、週に一度は必ず会っていたそうだ。
その1年後、リナティアさんが学園に入園すると、2人は同じ生徒会の役員になり、また一緒に過ごす時間が増え、リナティアさんは『王妃教育や生徒会で大変だけど、バートと一緒に居られるのが嬉しい。』と、よく兄であるリュークレインさんに話をしていたそうだ。
それが、少しずつ変わって来たのが、王太子が3年生、リナティアさんが2年生になってからだった。
リナティアさんと同じ学年に、とある伯爵令嬢が転入生としてやって来た。
ロゼリア=アークルハイン
1年の時は、他国に留学していたらしく、1年遅れて入学して来たらしい。留学していたと言う事もあり非常に優秀らしく、先生の薦めもあり生徒会役員になった。
すると……一気に王太子とロゼリアの距離が縮まったそうだ。
いつも、王太子の隣で補佐をしていたリナティアさんの場所には、気が付けばロゼリアが居るようになった。
週に一度はお茶をしていたのが、2週間に一度になり、それもたまにキャンセルになる事も増えた。
そうして、兄であるリュークレインさんが、叔母であるアシーナさんに相談されて気が付いた時には、リナティアさんは王太子の事を“バート”ではなく、“殿下”と、呼ぶようになっていたそうだ。
それが、私と出会う迄の話。
寝ていた時『殿下』と言いながら泣いていたリナティアさんを思い出す。
ー何?幼馴染みって、クズしかいないの?ー
────コホン
思わず…王太子相手に素になってしまった……。
そして、リナティアさん達が王都に戻って、学園生活が始まると、更に2人の関係が悪化したそうだ。
と言うのも、その3人を取り巻く人間がガラリと変貌したのだ。ある貴族子息が、王太子とリナティアさんの婚約は破棄されると噂し、ロゼリアを優遇し始めた。その貴族子息がそこそこの身分の者だったらしく、それに追随する者が増えて行ったと言う。
勿論、そんな噂に惑わされず、リナティアさんに寄り添う令嬢や子息だって居る。居るが、王太子が何も言わない為、学園では今では何とも言えない雰囲気が漂っているらしい。
学園内でよく見られるようになった、王太子とロゼリアの2人の姿。そんな日々を送っていたリナティアさん。
その日も、リナティアさんはいつも通りに登校した。
それが───
“リナティア様が倒れました”
と、兄であるリュークレインさんの勤める第二騎士団副団長の執務室に連絡が入ったのは、その日のお昼過ぎだった。
その連絡に驚いたリュークレインさん。たまたま室内に第一と第二騎士団長も居て、邸に戻ってやれと言ってくれた為、その言葉をありがたく受け取り、リュークレインさんはすぐに邸に戻った。
それから、更に驚いた事に、邸に帰って話を聞くと、今回、倒れたリナティアさんを助けたのは──
国王陛下直属の配下である“影”だったのだ。
83
お気に入りに追加
1,659
あなたにおすすめの小説

チョイス伯爵家のお嬢さま
cyaru
恋愛
チョイス伯爵家のご令嬢には迂闊に人に言えない加護があります。
ポンタ王国はその昔、精霊に愛されし加護の国と呼ばれておりましたがそれももう昔の話。
今では普通の王国ですが、伯爵家に生まれたご令嬢は数百年ぶりに加護持ちでした。
産まれた時は誰にも気が付かなかった【営んだ相手がタグとなって確認できる】トンデモナイ加護でした。
4歳で決まった侯爵令息との婚約は苦痛ばかり。
そんな時、令嬢の言葉が引き金になって令嬢の両親である伯爵夫妻は離婚。
婚約も解消となってしまいます。
元伯爵夫人は娘を連れて実家のある領地に引きこもりました。
5年後、王太子殿下の側近となった元婚約者の侯爵令息は視察に来た伯爵領でご令嬢とと再会します。
さて・・・どうなる?
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
このたび聖女様の契約母となりましたが、堅物毒舌宰相閣下の溺愛はお断りいたします! と思っていたはずなのに
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
マーベル子爵とサブル侯爵の手から逃げていたイリヤは、なぜか悪女とか毒婦とか呼ばれるようになっていた。そのため、なかなか仕事も決まらない。運よく見つけた求人は家庭教師であるが、仕事先は王城である。
嬉々として王城を訪れると、本当の仕事は聖女の母親役とのこと。一か月前に聖女召喚の儀で召喚された聖女は、生後半年の赤ん坊であり、宰相クライブの養女となっていた。
イリヤは聖女マリアンヌの母親になるためクライブと(契約)結婚をしたが、結婚したその日の夜、彼はイリヤの身体を求めてきて――。
娘の聖女マリアンヌを立派な淑女に育てあげる使命に燃えている契約母イリヤと、そんな彼女が気になっている毒舌宰相クライブのちょっとずれている(契約)結婚、そして聖女マリアンヌの成長の物語。
この野菜は悪役令嬢がつくりました!
真鳥カノ
ファンタジー
幼い頃から聖女候補として育った公爵令嬢レティシアは、婚約者である王子から突然、婚約破棄を宣言される。
花や植物に『恵み』を与えるはずの聖女なのに、何故か花を枯らしてしまったレティシアは「偽聖女」とまで呼ばれ、どん底に落ちる。
だけどレティシアの力には秘密があって……?
せっかくだからのんびり花や野菜でも育てようとするレティシアは、どこでもやらかす……!
レティシアの力を巡って動き出す陰謀……?
色々起こっているけれど、私は今日も野菜を作ったり食べたり忙しい!
毎日2〜3回更新予定
だいたい6時30分、昼12時頃、18時頃のどこかで更新します!
【完結】聖女になり損なった刺繍令嬢は逃亡先で幸福を知る。
みやこ嬢
恋愛
「ルーナ嬢、神聖なる聖女選定の場で不正を働くとは何事だ!」
魔法国アルケイミアでは魔力の多い貴族令嬢の中から聖女を選出し、王子の妃とするという古くからの習わしがある。
ところが、最終試験まで残ったクレモント侯爵家令嬢ルーナは不正を疑われて聖女候補から外されてしまう。聖女になり損なった失意のルーナは義兄から襲われたり高齢宰相の後妻に差し出されそうになるが、身を守るために侍女ティカと共に逃げ出した。
あてのない旅に出たルーナは、身を寄せた隣国シュベルトの街で運命的な出会いをする。
【2024年3月16日完結、全58話】
聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる
夕立悠理
恋愛
ある日、聖女として異世界に召喚された美香。その国は、魔物と戦っているらしく、兵士たちを励まして欲しいと頼まれた。しかし、徐々に戦況もよくなってきたところで、魔法の力をもった本物の『聖女』様が現れてしまい、美香は、聖女を騙った罪で、処刑される。
しかし、ギロチンの刃が落とされた瞬間、時間が巻き戻り、美香が召喚された時に戻り、美香は二度目の生を得る。美香は今度は魔物の元へ行き、自由に生きることにすると、かつては敵だったはずの魔王に溺愛される。
しかし、なぜか、美香を見捨てたはずの護衛も執着してきて――。
※小説家になろう様にも投稿しています
※感想をいただけると、とても嬉しいです
※著作権は放棄してません
【完結】追放された元聖女は、冒険者として自由に生活します!
蜜柑
ファンタジー
レイラは生まれた時から強力な魔力を持っていたため、キアーラ王国の大神殿で大司教に聖女として育てられ、毎日祈りを捧げてきた。大司教は国政を乗っ取ろうと王太子とレイラの婚約を決めたが、王子は身元不明のレイラとは結婚できないと婚約破棄し、彼女を国外追放してしまう。
――え、もうお肉も食べていいの? 白じゃない服着てもいいの?
追放される道中、偶然出会った冒険者――剣士ステファンと狼男のライガに同行することになったレイラは、冒険者ギルドに登録し、冒険者になる。もともと神殿での不自由な生活に飽き飽きしていたレイラは美味しいものを食べたり、可愛い服を着たり、冒険者として仕事をしたりと、外での自由な生活を楽しむ。
その一方、魔物が出るようになったキアーラでは大司教がレイラの回収を画策し、レイラの出自をめぐる真実がだんだんと明らかになる。
※序盤1話が短めです(1000字弱)
※複数視点多めです。
※小説家になろうにも掲載しています。
※表紙イラストはレイラを月塚彩様に描いてもらいました。
稀代の悪女として処刑されたはずの私は、なぜか幼女になって公爵様に溺愛されています
水谷繭
ファンタジー
グレースは皆に悪女と罵られながら処刑された。しかし、確かに死んだはずが目を覚ますと森の中だった。その上、なぜか元の姿とは似ても似つかない幼女の姿になっている。
森を彷徨っていたグレースは、公爵様に見つかりお屋敷に引き取られることに。初めは戸惑っていたグレースだが、都合がいいので、かわい子ぶって公爵家の力を利用することに決める。
公爵様にシャーリーと名付けられ、溺愛されながら過ごすグレース。そんなある日、前世で自分を陥れたシスターと出くわす。公爵様に好意を持っているそのシスターは、シャーリーを世話するという口実で公爵に近づこうとする。シスターの目的を察したグレースは、彼女に復讐することを思いつき……。
◇画像はGirly Drop様からお借りしました
◆エール送ってくれた方ありがとうございます!

婚約破棄された国から追放された聖女は隣国で幸せを掴みます。
なつめ猫
ファンタジー
王太子殿下の卒業パーティで婚約破棄を告げられた公爵令嬢アマーリエは、王太子より国から出ていけと脅されてしまう。
王妃としての教育を受けてきたアマーリエは、女神により転生させられた日本人であり世界で唯一の精霊魔法と聖女の力を持つ稀有な存在であったが、国に愛想を尽かし他国へと出ていってしまうのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる