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森で過ごす夜

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❋沢山のお気に入り登録、ありがとうございます。感謝の気持ちを込めまして、今日は(朝と夜に)2話投稿します。夜の投稿は、いつもと違う時間になるかもしれません❋

















*滞在5日目*


いよいよ、今日は満月の日。
夜は、森の中にある結界が張られている洞窟で過ごす事にした。その洞窟には、カウチソファーが置かれていて、アシーナさんが時々そこで寛いだりしているそうだ。なので、一晩位は余裕で過ごす事ができる。と、考えていると、夜中の事を思い出す。



『……でん……か……』


夜中にふと目を覚ますと、一緒に寝ていたリナティアさんが、“殿下”と寝言を口にしながら…泣いていたのだ。

ー殿下とは、婚約者でもある王太子の事だよね?ー

やっぱり、2人の間に何かあったんだろう。それでも、私が何かしてあげられる事はなくて、せめて、ここに居る間だけでも─と、癒し効果?のあるらしい私は、できる限りリナティアさんの側に居ようと思った。







なんて、本当に、そう思ってたんですよ?リナティアさんの事は妹みたいに思ってる程、可愛いし…なのに──

『…………』

何故か、今日もリュークレインさんの膝の上に居ます。
今朝、まだ寝ているリナティアさんを起こさないようにしながら起きて、アシーナさんが居るであろうリビングルームに来ると、リビングのソファーに座っていたリュークレインさんに手招きされて、『何だろう?』と思いながら近付くと、そのまま抱き上げられたのだ。

『っ!?』

ビックリしてアシーナさんの方に視線を向けても、アシーナさんはクスクスと笑っているだけだった。

それからずっと、私はリュークレインさんの膝の上に顔を乗せた状態で、そんな私の背中をリュークレインさんは優しくて撫でてくれている。正直───

ーとっても気持ちいいー

尻尾も勝手に揺れている。リュークレインさんも、月属性ですか?と、訊きたくなる。

「ふふっ。レインとルーナは、相性が良いのかもね。」

ー相性?ー

意味がよく分からない私とは違い、リュークレインさんは分かるようで、「犬なのが、残念だ」と、笑っていた。

それから、朝食前に起きて来たリナティアさんが来る迄、私はリュークレインさんの膝の上でのんびりと過ごした。








*その日の夕方*


「叔母様、ルーナが何処に居るのか知らない?」

「森に行ったんじゃないかしら?ルーナも、時々森で一晩過ごす事があるのよ。明日の朝には帰って来ると思うから、こう言う時は放っといてあげてもらえるかしら?」

「そうなのね…。今日も一緒に寝たかったんだけど…ルーナも動物だものね。1人…1匹になりたい時もあるものね。」

「ルーナの代わりにはならないかもしれないけど、今夜は私とお喋りして夜更ししましょうか?」

しょんぼりするリナティアに、アシーナが声を掛けると、「叔母様、大好き!」と、アシーナに抱きついて喜んだ。













*森の中の洞窟*


夕方の、まだ陽が沈む前に森の洞窟へとやって来た。
その洞窟内には、既にサンドイッチと飲み物、人間ひとの姿に戻った時に着る服が用意されていた。

ー明日、アシーナさんにお礼を言わなきゃねー

そう思いながら、カウチソファーの上に飛び乗り、伏せの状態で寝転び目を閉じる。


『──きょうこ!』


ずっと…忘れていた─考えないようにしていた。

陽真──他の4人は、どうなったんだろう?この国ではない国に居るのだろうか?半年経っても、何の情報も得られていない。
最後に目にしたのが陽真の驚いた様な顔と、耳にしたのが“きょうこ”だった。ずっと“あんこ”としか呼ばなかったくせに。

『陽真なんか………大ッキライだ……』

そう呟いた後、私はそのまま寝てしまっていた。












『───ん?』

体がムズムズするような感覚がして目が覚めた。
どうやら、あのまま寝てしまっていたようで、辺りは暗くなっていた。

『──ライト』

そう呟けば、洞窟内がほんのりと明るくなる。
アシーナさんが仕掛けている魔法の一つで、“ライト”と言えば、洞窟内が明るくなるのだ。

自分の手を見ると、まだもふもふだった。

ーあぁ、月の光を浴びないと、人間ひとの姿に戻らないのかもしれないー

そう思って、カウチソファーから降りて、洞窟の外へと向かった。

基本、この森にはアシーナさんと私しか居ない。特に、夜には誰も入って来れないように魔法を掛けている─と、アシーナさんは言っていたけど、念の為に辺りの気配を探る。

『──うん。気配も…音もしない。』

確認した後、洞窟から出て夜空を見上げると、そこには雲一つないキラキラした満点の星空が広がっていて、日本で目にしていた月よりも大きい月─満月が輝いていた。

すると、また、私の体が光だし──

「──やっぱり制服を着てるのね。」

クスッと笑った後、もう一度洞窟内に戻って着替えをした後、サンドイッチを食べた。













「うわー……本当に綺麗な夜空だなぁ……」

サンドイッチを食べた後、私は洞窟から出て、洞窟の入り口のすぐ側にある川辺までやって来て、足を川に入れて夜空を見上げている。

ー住んでいた所では、こんなに星を見れる事はなかったなぁー

もう、そんな夜空を目にする事は……ないんだけど………

どうやら、あの日、あれ程泣いたのに……まだまだ涙は出て来るようだ。目に溜まった涙が流れないように、スッと満月を見上げる。手を伸ばせば掴める?

「あっ!忘れてた!」

そこで、私は初めて気が付いた。アシーナさんが態々作ってくれた、認識阻害のピアスを発動させるのを忘れていたのだ。

「─アクア」

と呟けば、手の平の上に水玉が現れる。それを、耳に着けているピアスに吸収させた。





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