没落令嬢は、おじさん魔道士を尽くスルーする

みん

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22 最終話

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「イーレンでは大変だったでしょう?本当に……」
「え?え???」

ウォーランド王国で、私達を出迎えてくれたのは……まさかの、イーレン王国第二王女ブルーナ様だった。
いや……今の今まで第二王女が“ブルーナ”と言う名前だった事すら知らなかった─どころか、その存在すら半信半疑な程、第二王女については何も知らなかった。

更に驚いた事に、第二王女ブルーナ様は王族籍から既に抜けていて、イーレン王国の侯爵令嬢として、ハルさんの息子であるセオドア様と結婚していた。
そして、セオドア様の妹ヴィオラ様は、隣国の騎士団長と結婚していて、ヴィオラ様本人は、隣国の王太子妃となった、ウォーランド王国の王女サクラ様付きの侍女として仕えているそうだ。
ハルさんの旦那さんは、第二騎士団長であり、ウォーランド国王の側近中の側近なんだとか………

ハルさんと仲が良いのが、宰相様の奥様や……大聖女でもある王妃様なんだとか………

「身分関係無いって………嘘ですよね!?」

ーこれ、「あなた、どこの馬の骨なの?」案件じゃないですか!?ー

「身分で言うなら、私も平民どころか、この国どころか、この大陸どころか、この世界の人間じゃないからね」
「─────え??」
「ハル殿……」

サラッと爆弾を落としたのはハルさんだった。

なんと、ハルさんは、聖女様達を召喚した時に巻き込まれてやって来たんだそうだ。

「ミヤさ─大聖女様もいわば平民だしね」

ふふっ─と笑うハルさん。平民は平民でも、レベルが全然違いますけどね!とは言えない……。








イーレンからウォーランド王国のパルヴァン辺境地で2日滞在し、3日目に王都へとやって来た。「極秘事項だ」と言われたが、距離のある移動に、転移魔法陣を使用した為、辺境地から王都迄も一瞬だった。

ー魔法って、本当に凄い!ー





「ニアさん、ようこそ!!」

ドキドキしながら向かったのは、王都にあるレイさんの家であるダルシニアン邸。使用人総出で出迎えられた。邸内に入れば、レイさんの両親と思われる人が居て、何を言われるか─と身構えていると、レイさんの母親と思われる女性に「ニアさん、ようこそ!!」と言いながら抱きつかれた。

「いい年にもなって、恋人の“こ”の字もないし……もう、この子の結婚は諦めていたのよ。でも…まさかこんな若くて可愛い子をゲットするなんて……クレイル、よくやったわ!!」
「母上、ありがとうございます」

と、レイさんとお母様はハイタッチをし、その横でお父様はうんうんと頷いていた。


どうやら……すんなり受け入れられたようです。






善は急げ──

逃してはいけない──

とばかり、婚約どころか婚姻迄がサクサクと進み、私がウォーランドに来てから3ヶ月でが成立した。

「あれ?結婚って、こんなにも早くできちゃうの?」
「パルヴァン……が絡むと早くできてしまうんだよね」

パルヴァンとは、ハルさん絡みだそうだけど、どうしてだろう?まぁ……訊かない方が良いような気がするから、訊いてはいない。

先に婚姻だけして、結婚式はその3ヶ月後に執り行われたが、それはそれは、準備期間半年とは思えない程素敵な結婚式だった。バージンロード?と呼ばれる赤色の花の道を歩き、結婚宣言をすれば、赤色と琥珀色の花びらがどこからともなく舞い上がった。

とても綺麗で、あの風景は一生忘れられないと思う。

こんな私でも、皆に祝ってもらえる結婚ができるとは……少し前迄は考えられなかった事だ。
それが、レイさんと出会ってから180度変わったのだ。





ナイトドレススケスケは、あまり気にしなくても大丈夫だからね?』

と、ハルさんとミヤ様から助言?をされた初夜。
ナイトドレススケスケを着ると言うのは、平民にはあまり無い習慣だ。勿論、私が伯爵令嬢だった頃は子供だったから、着た事は無いし見た事もなかった。

「気にしなくて良いとか……無理だよね?気になるよね?」
「似合ってるから良いんじゃないかなぁ?」
「レイさん!!??」

ナイトドレスに気を取られ過ぎて、レイさんが寝室にやって来た事に全く気付かなかった。

「似合って……ますか?その……私なんかが着ても……」

ーお子様な私が着ても……何と言うか……ー

「ん?唆られるしかないけど?」
「なっ!!!???」

グイッ─と引き寄せられて、至近距離で視線がぶつかる。

「好きで愛おしい人がこんな姿で待ってくれていて、何とも思わない男なんて居ないと思うけど?」
「そ……そう……なんですね…………」

そのままベッドまで行き、そっとレイさんに押し倒された。

「全く痛くないように─は無理だけど……優しくするから」
「うー……お手柔らかに……お願いします………」

軽いキスを繰り返した後、両手をレイさんの頬に添えて「クレイルさん、好き…です。これからも、よろしくお願いしますね」と微笑めば、「これ以上煽らないようにね」と、ニッコリ微笑まれて──その後は……めいいっぱい甘やかされました。





翌朝目が覚めると、目の前にレイさんが居た。

「おはよう」
「お……はようございます……」
「体は大丈夫?」
「だっ………いじょぶです!!」

正直、違和感は…ある。あるけど……レイさんは本当に優しかった。

ードロドロに甘やかされたけど…思い出しただけでも恥ずかしいけどー

「もう少ししたら、朝食を持って来てもらおう。それ迄は……このままでゆっくりしようか…」

お互い寝夜着姿のままで、布団の中でレイさんが私を腕の中に閉じ込める。その温もりは、やっぱり安心感がある。

「ふふっ─レイさんの腕の中は暖かくて…安心できて大好きです」
「くっ─かっ───あんまり可愛い事を言わないでくれるかな?我慢できなくなるから…」
「我慢??」
「ニアが初めてだから……」
「あ……えっと…ごめんなさい…?」
「ん………取り敢えず、今は……で許してあげよう」
「え?」

レイさんの腕の中からレイさんを見上げれば、暫くの間、優しくないキスをされ続けた。






*クレイル視点*

「あんな可愛い子、逃しては駄目よ!」と母が言えば、母と魔術大好き人間の父が動かない筈がない。その上、ハル殿が「結婚式は任せて欲しい!」と言ってくれたお陰で、パルヴァンもが動き、3ヶ月で婚姻、半年で結婚式を挙げる事ができた。
結婚式は、本当に素晴らしかった。あの、赤色と琥珀色の花びらが舞う中、涙を流して喜んでいたニアは綺麗だった。

初夜で初めて目にした、ナイトドレス姿のニアは……色気がヤバかった。本人は自覚はないが、まともに食事を食べるようになったニアは、程良い体型になってきたお陰で、子供ではなく、それなりの年相応の女性に見えるようになっているのだ。唆られない訳がない。ただ──

ー私は、絶対に“騎士のあるある”なんて事はしないー

勿論、私は騎士ではなく魔道士だけど…
あるあるだけは有り得ない。「愛情表現だ」と言われても……。それに、ニアは初めてだから、絶対に無理はさせない。


なんて思っていたのに

『クレイルさん、好き…です。これからも、よろしくお願いしますね』

なんて、可愛らしい事を言って煽って来るものだから、少し……甘やかし過ぎてしまった。勿論、気を失うまで─なんて事はしていないけど。
それなのに、朝起きた後、またまたニアに煽られて……少し意地悪なキスで攻め立ててしまった。

「ごめん……ニア………」
力が抜けてグッタリしているニアを、更に抱きしめて謝ると「い……え……わたしも………こんな…で…ごめんなさい……」と、逆に謝られる始末。

ー健気か!ー

かっ──可愛いニアを、一体どうすれば良いんだろう?

「…………」

常にとする、エディオルやセオの気持ちも、分からなくも………無い。腕の中のニアを見ると、グッタリしたまま、うとうととしている。

「可愛い………ニア……セレニア、そのまま寝て良いよ」
「ん……ありがと……レイさ………好き…………」
「ぐっ───────」

爆弾を投下するだけ投下して寝てしまったニア。

「20も年下の子に振り回される日が来るとは…」

困った事ではあるが、決して嫌な事ではなくて……幸せな事だな───と、素直に思う。

「セレニア、おやすみ」

セレニアの頭にキスをしてから、私ももう一度目を閉じた。





❋これにて、本編完結となります。最後迄お付き合いいただき、ありがとうございました❋
(*´︶`*)ᵗʱᵃᵑᵏᵧₒᵤ 𖤐.*゚


❋“置き場”に、ニアと安定の過保護達の話を投稿しました(笑)時間がある時にでも覗いてみて下さい❋
(,,ᴗ  ̫ᴗ,,)ꕤ*.゚



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感想 7

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みんなの感想(7件)

金木犀
2023.10.15 金木犀
ネタバレ含む
みん
2023.10.15 みん

金木犀様

ありがとうございます。

バレる?バレない?と、ドキドキしながら更新していました。
|*´゚Д゚)ドキドキドキドキ

読み返し、ありがとうございます。
(* ´▿`*)*_ _)⁾⁾ペコッ

そう言えば、あまり“ざまあ”を書かなかった事に気付きました。少し考えてみます!
( ˙ ꒳ ˙ ;)

解除
yu-ko
2023.10.15 yu-ko
ネタバレ含む
みん
2023.10.15 みん

yu-ko様

ありがとうございます。

バレる?バレない?と、ドキドキしながら更新していましたw
|*´゚Д゚)ドキドキドキドキ

男子会……何度か考えた事もあるんですけど……ある意味お馬鹿な会話にしかならないなぁ…と。オチもシメも無い話になるなぁ…と。砂糖を吐くだけになるなぁ…と。
そう思って、男子会の話はひかえておりますw
(´∀`;)

オチかシメが思い浮かんだ時、“置き場”にでも投稿してみます。
φ(・∀・*)

解除
みきざと瀬璃
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みん
2023.10.15 みん

みきざと瀬璃様

ありがとうございます。

いつバレる?バレない?とドキドキしながら更新していましたw
|*´゚Д゚)ドキドキドキドキ

ようやく、クレイルにも恋が訪れました。
(* ´ㅁ`*)=3

解除

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