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21 可愛い人
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「ハル殿、呼び出して申し訳無い。一応、ニア…彼女の事を見てもらえるかな?」
「勿論、任せて下さい!」
2人はとても……仲が良さそうだ。
「………」
やっぱりツキン─と胸が痛くなって、何を言えば良いか、何を聞けば良いかも分からなくなる。すると、「はぁ───」と、リュウ様が大きなため息を吐いた。
「えっと…ニアさんだっけ?彼女はハル=カルザイン夫人だ。こう見えて、成人した2人の子持ちで、旦那とはラブラブヨロシク夫婦だから、何も気にする必要はないから。」
「え!?」
「──なっ!!??」
ボンッ─と音が出そうな勢いで顔を真っ赤にして慌てだしたのはハルさん。
「“ラブラブヨロシク”って、言う必要ある!?無いよね!?」
ーえ?この人、可愛くない?その前に、リュウ様には、私の気持ちがバレバレだったのねー
チラッとレイさんを見ると、レイさんは私を見て笑っている。「どうしたの?」と訊く前に、レイさんが私の耳元に口を寄せて「嫉妬…してくれたの?」と囁いた。
「なっ…ちがっ──……そう…ですよ……何か……文句ありますか………」
「かっ……ありません……」
レイさんは何か言いかけた後、手で口を覆った。
ハル=カルザイさんは、ウォーランド王国ではとても優秀な薬師で、魔力持ちでもあるらしく、私の体調を見に来てくれたのだ。この可愛らしいハルさんも、まさかの40代。どうやら、魔力の量が多くて強い人程、見た目の衰えが遅くなるそうだ。確かに、魔法使いのリュウ様も、見た目は若い。
「「「内面の衰えは抗えないけどね」」」
と、3人とも意見は一致していた。
******
それからの流れはあっと言う間だった。
「こうなると思っていたわ」
と言ったのはモニク。どうやら、レイさんから「私をウォーランド王国に連れて行く」と言われ、「ニアが望むなら」と、言っていたそうだ。
以前言っていた、無理矢理云々の話は、この事だった。
「親友としても、従業員としても、ニアを手放す事は残念だし寂しいけど……ニアが選んで、ニアが幸せになれるのなら、私は喜んで送り出すわ。ニア、どうか、幸せになってね」
「モニク…ありがとう………」
既に退職処理終わっていて、有り難い事に退職金まで貰えた。
残念な事と言えば、カリーヌさんに直接会って、今迄のお礼と挨拶ができなかった事。
「その人の体調が落ち着いた頃に、また挨拶に行けば良いのよ」
とニコニコ笑顔でハルさんに言われたけど、イーレンとウォーランドとはかなりの距離がある。そう簡単には来れないだろう───なんて思っていたけど、そんな事は、ハルさんにとっては些細な事だった─と知るのは、もう少し後の事だ。
ウォーランド王国へ行く日の3日前─
今回の事についての顛末を教えてくれた。
禁止された媚薬を、ウォーランド王国の王太子とその側近に使用したイーレンの王女ニコル様はそこでも反省せず、更には兄である王太子や魔法使いリュウ様も手に掛けようとしたらしく、生涯幽閉となっているそうだ。その媚薬を作っていたギリスと、脱獄を手伝った魔道士も、生涯幽閉─と言っているけど、王女もギリスも魔道士も、ソレは表向きの処罰なんだろうと思う。“あのお方も魔力の流れを止められた”とギリスが言っていた。魔力持ちが魔力の流れを止められるとは、ある意味死を表す。
その禁止された媚薬を作っていた商会は、今はモニクが取り仕切っている。騒動直後で、今はまだ色々大変だろうけど、モニクならきっと大丈夫だろう。
「ウォーランドの王太子様と、その側近の人は大丈夫だったんですか?」
「大丈夫だったよ。ウォーランドには……とてもレベルの高過ぎる解毒ポーションがあったから……」
ー“レベルの高過ぎる解毒ポーション”って何!?ー
そもそも、媚薬の解毒剤なんて、あっただろうか?レイさんに視線を向けると、レイさんが遠い目をしていたから、それ以上訊く事は止めておいた。兎に角、その2人が何ともなくて良かった。
「暗い話はこれぐらいにして……準備は大丈夫?」
「はい。もともと持っている物が少ないから、準備は直ぐに終わりました。後は…3日後にレイさんとウォーランドへ向かうだけです。ただ──」
「ん?“ただ”─?」
「レイさんが良いと言ってくれても、周りの人達は…そうは思ってくれません…よね?」
レイさんは、魔道士団長クレイル=ダルシニアン伯爵だった。そして、私は没落した伯爵令嬢の平民ニア。喩えレイさんが私を受け入れてくれたとしても……
「それなら、本当に大丈夫だから。まぁ…いくら口で言っても信じてもらえないかもしれないけど、私の周りに身分で煩く言う者は1人も居ないから。寧ろ、皆、ニアの事は諸手を挙げて受け入れてくれるから」
クスクスと笑うレイさん。
ーそんな事…ある?無いよね?ー
と、私は軽くため息を吐いた。
❋エール、お気に入り登録、ありがとうございます❋
( *ˊᗜˋ)ノꕤ*.゚
「勿論、任せて下さい!」
2人はとても……仲が良さそうだ。
「………」
やっぱりツキン─と胸が痛くなって、何を言えば良いか、何を聞けば良いかも分からなくなる。すると、「はぁ───」と、リュウ様が大きなため息を吐いた。
「えっと…ニアさんだっけ?彼女はハル=カルザイン夫人だ。こう見えて、成人した2人の子持ちで、旦那とはラブラブヨロシク夫婦だから、何も気にする必要はないから。」
「え!?」
「──なっ!!??」
ボンッ─と音が出そうな勢いで顔を真っ赤にして慌てだしたのはハルさん。
「“ラブラブヨロシク”って、言う必要ある!?無いよね!?」
ーえ?この人、可愛くない?その前に、リュウ様には、私の気持ちがバレバレだったのねー
チラッとレイさんを見ると、レイさんは私を見て笑っている。「どうしたの?」と訊く前に、レイさんが私の耳元に口を寄せて「嫉妬…してくれたの?」と囁いた。
「なっ…ちがっ──……そう…ですよ……何か……文句ありますか………」
「かっ……ありません……」
レイさんは何か言いかけた後、手で口を覆った。
ハル=カルザイさんは、ウォーランド王国ではとても優秀な薬師で、魔力持ちでもあるらしく、私の体調を見に来てくれたのだ。この可愛らしいハルさんも、まさかの40代。どうやら、魔力の量が多くて強い人程、見た目の衰えが遅くなるそうだ。確かに、魔法使いのリュウ様も、見た目は若い。
「「「内面の衰えは抗えないけどね」」」
と、3人とも意見は一致していた。
******
それからの流れはあっと言う間だった。
「こうなると思っていたわ」
と言ったのはモニク。どうやら、レイさんから「私をウォーランド王国に連れて行く」と言われ、「ニアが望むなら」と、言っていたそうだ。
以前言っていた、無理矢理云々の話は、この事だった。
「親友としても、従業員としても、ニアを手放す事は残念だし寂しいけど……ニアが選んで、ニアが幸せになれるのなら、私は喜んで送り出すわ。ニア、どうか、幸せになってね」
「モニク…ありがとう………」
既に退職処理終わっていて、有り難い事に退職金まで貰えた。
残念な事と言えば、カリーヌさんに直接会って、今迄のお礼と挨拶ができなかった事。
「その人の体調が落ち着いた頃に、また挨拶に行けば良いのよ」
とニコニコ笑顔でハルさんに言われたけど、イーレンとウォーランドとはかなりの距離がある。そう簡単には来れないだろう───なんて思っていたけど、そんな事は、ハルさんにとっては些細な事だった─と知るのは、もう少し後の事だ。
ウォーランド王国へ行く日の3日前─
今回の事についての顛末を教えてくれた。
禁止された媚薬を、ウォーランド王国の王太子とその側近に使用したイーレンの王女ニコル様はそこでも反省せず、更には兄である王太子や魔法使いリュウ様も手に掛けようとしたらしく、生涯幽閉となっているそうだ。その媚薬を作っていたギリスと、脱獄を手伝った魔道士も、生涯幽閉─と言っているけど、王女もギリスも魔道士も、ソレは表向きの処罰なんだろうと思う。“あのお方も魔力の流れを止められた”とギリスが言っていた。魔力持ちが魔力の流れを止められるとは、ある意味死を表す。
その禁止された媚薬を作っていた商会は、今はモニクが取り仕切っている。騒動直後で、今はまだ色々大変だろうけど、モニクならきっと大丈夫だろう。
「ウォーランドの王太子様と、その側近の人は大丈夫だったんですか?」
「大丈夫だったよ。ウォーランドには……とてもレベルの高過ぎる解毒ポーションがあったから……」
ー“レベルの高過ぎる解毒ポーション”って何!?ー
そもそも、媚薬の解毒剤なんて、あっただろうか?レイさんに視線を向けると、レイさんが遠い目をしていたから、それ以上訊く事は止めておいた。兎に角、その2人が何ともなくて良かった。
「暗い話はこれぐらいにして……準備は大丈夫?」
「はい。もともと持っている物が少ないから、準備は直ぐに終わりました。後は…3日後にレイさんとウォーランドへ向かうだけです。ただ──」
「ん?“ただ”─?」
「レイさんが良いと言ってくれても、周りの人達は…そうは思ってくれません…よね?」
レイさんは、魔道士団長クレイル=ダルシニアン伯爵だった。そして、私は没落した伯爵令嬢の平民ニア。喩えレイさんが私を受け入れてくれたとしても……
「それなら、本当に大丈夫だから。まぁ…いくら口で言っても信じてもらえないかもしれないけど、私の周りに身分で煩く言う者は1人も居ないから。寧ろ、皆、ニアの事は諸手を挙げて受け入れてくれるから」
クスクスと笑うレイさん。
ーそんな事…ある?無いよね?ー
と、私は軽くため息を吐いた。
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