20 / 22
20 クレイル=ダルシニアン
しおりを挟む
「そう、私の国はウォーランド王国だ。そして、私の本当の名前は……クレイル=ダルシニアン。ウォーランド王国の魔道士団長なんだ。」
「ウォーランド王国の……魔道士団長………」
貴族かな…とは思っていたけど、魔道士のトップだとは……想像すらしていなかった。でも、魔道士のトップなら、白の精製水を作れるのも、純度を調節できたのも……納得だ。
「本来なら、団長の私が動く事は滅多にないんだけど…盛られた2人が……手を出してはいけない2人だったものだから……詳しくは言えないけど、イーレンの王族も色々あって、今、リュウが動いている状況なんだ。落ち着いたら、そのうち新たな国王から発表があると思う」
“手を出してはいけない2人”─それはそうだろう。王太子とその側近なら、国としても黙ってはいられないだろう。
“新たな国王”─商会で働いていると、色んな噂を耳にする。
国王陛下が病気だ─
魔法使いの王女も病気になった─
王太子が政務をこなしている─
「新しい国王が立てば、この国の魔力無しの者達も、生きやすい国になると思う」
そう言えば……魔力無しの王族が居るとか居ないとか……兎に角、あのリュウ様が後ろ盾?になっている人が国王になると言うなら、この国はこれから良い国になっていくだろう。
「それで…ニアさん、本当に大丈夫?本当に申し訳無い。まだ、王女の信奉者が残っているとは……」
王女の信奉者──
イーレンの王女は魔法使いで、この国の魔道士にとっては国王や王太子よりも、王女に崇拝に近い忠誠心があると言われていた。
王女の信奉者達も、今は捕われているそうだが、取り逃がした者が居たらしく、その魔道士が同じように捕われた媚薬を作っていたギリスをこっそり脱獄させ、密告した私に仕返しをしに来た──と。
「あの媚薬は、一度でも口にすると、どんな悪影響があるのか……間に合って良かった……」
「レイ──ダルシニアン…様、本当に、私は大丈夫ですから…」
「………リュウ、少しだけ外してくれないか?」
「はいはい……ついでに、念の為呼んで来るよ」
「……頼む」
リュウ様が部屋から出て行ってしまい、ダルシニアン様と2人きりになってしまった。
ダルシニアン様は、私手を優しく握る。
「……あの……2人きりになって…大丈夫ですか?ダルシニアン様に迷惑が──」
「もう、“レイさん”とは……呼んでくれない?」
「……ダルシニアン様は大国の貴族で……それに…魔道士団長で……。私は……ただの“ニア”でしかないから……」
大国ウォーランドの貴族で魔道士団長。そんな人を“レイさん”なんて、呼んで良い筈がない。
「爵位や地位を持っていても、私は私だ。“レイ”とは何も変わらない。私は……ニアには、肩書ではなく、私を見て欲しい。これからも……“レイ”と呼んで欲しいし……ずっとそばに居て欲しいと思ってる」
「え?」
「私と一緒に……ウォーランドに……来てくれないか?」
「え?」
私の顔を覗き込んで来るのは、レイさんと同じ綺麗な赤色の瞳だ。
「本当は、明日…ニアに伝えるつもりだったんだ。私は……ニア───セレニアが好きだ」
「っ!?どうして……」
セレニア───
私の……本当の名前だ。
「ごめん……捜査上、ニアの事を調べた時に……」
ーその名前を、また呼んでもらえるとは…思わなかったー
「もう一度……呼んでもらえますか?」
「……セレニア」
「………っ…」
「ニアが望むなら、いつでも何度でも呼ぶから……ニアも………私の事をレイと呼んでくれないかな?」
「………レイ……さん………」
「ニア!!」
そう呼ぶと、レイさんが本当に嬉しそうに笑って私を見下ろしている。その笑っているレイさんの顔にソッと手を添える。
「私……レイさんが笑った顔が……好き…です。とても…安心するんです。その安心感を……“お父さんみたい”って思ってたんですけど……違ったんです」
あの時、私じゃない女性に向けた笑顔に…嫉妬した。あの笑顔は、私だけに向けて欲しい─と。
「これからも…その笑顔を、私に向けてくれますか?身分も何も持ってない…レイさんから見たらお子様な私だけど……」
「セレニア。私は、セレニアが良いんだ。お子様だなんて思っていない。何も持ってないなんて事もない。セレニアは、素敵な女性だよ。私の好きな─愛しい人だよ」
フワリと微笑んだ後、引き寄せられて優しく抱きしめられた。その、レイさんの腕の中は、とても温かい。私も腕を回して抱きつこうとして───
ガチャッ──と、扉が開く音と同時に
「連れて来た────」
「リュウ、先ずノックをして返事を待たないといけないからね!?」
と、リュウ様の声と女の人の声がした。
「リュウ…………」
「あー………スミマセンね………」
レイさんのいつもより低い声を聞いたのは、久し振りだ。
ーえ!?ー
「クレイルさん、ごめんなさい…」
「ハル殿が謝る必要はないよ。悪いのは全部リュウだからね」
ハル殿──
リュウ様と一緒にやって来て、レイさんと話している女性は、私と同じぐらいの身長で銀髪。あの時の女性だった。
❋エールを頂き、ありがとうございます❋
感謝デス(꒪ˊ꒳ˋ꒪)。ෆ。
「ウォーランド王国の……魔道士団長………」
貴族かな…とは思っていたけど、魔道士のトップだとは……想像すらしていなかった。でも、魔道士のトップなら、白の精製水を作れるのも、純度を調節できたのも……納得だ。
「本来なら、団長の私が動く事は滅多にないんだけど…盛られた2人が……手を出してはいけない2人だったものだから……詳しくは言えないけど、イーレンの王族も色々あって、今、リュウが動いている状況なんだ。落ち着いたら、そのうち新たな国王から発表があると思う」
“手を出してはいけない2人”─それはそうだろう。王太子とその側近なら、国としても黙ってはいられないだろう。
“新たな国王”─商会で働いていると、色んな噂を耳にする。
国王陛下が病気だ─
魔法使いの王女も病気になった─
王太子が政務をこなしている─
「新しい国王が立てば、この国の魔力無しの者達も、生きやすい国になると思う」
そう言えば……魔力無しの王族が居るとか居ないとか……兎に角、あのリュウ様が後ろ盾?になっている人が国王になると言うなら、この国はこれから良い国になっていくだろう。
「それで…ニアさん、本当に大丈夫?本当に申し訳無い。まだ、王女の信奉者が残っているとは……」
王女の信奉者──
イーレンの王女は魔法使いで、この国の魔道士にとっては国王や王太子よりも、王女に崇拝に近い忠誠心があると言われていた。
王女の信奉者達も、今は捕われているそうだが、取り逃がした者が居たらしく、その魔道士が同じように捕われた媚薬を作っていたギリスをこっそり脱獄させ、密告した私に仕返しをしに来た──と。
「あの媚薬は、一度でも口にすると、どんな悪影響があるのか……間に合って良かった……」
「レイ──ダルシニアン…様、本当に、私は大丈夫ですから…」
「………リュウ、少しだけ外してくれないか?」
「はいはい……ついでに、念の為呼んで来るよ」
「……頼む」
リュウ様が部屋から出て行ってしまい、ダルシニアン様と2人きりになってしまった。
ダルシニアン様は、私手を優しく握る。
「……あの……2人きりになって…大丈夫ですか?ダルシニアン様に迷惑が──」
「もう、“レイさん”とは……呼んでくれない?」
「……ダルシニアン様は大国の貴族で……それに…魔道士団長で……。私は……ただの“ニア”でしかないから……」
大国ウォーランドの貴族で魔道士団長。そんな人を“レイさん”なんて、呼んで良い筈がない。
「爵位や地位を持っていても、私は私だ。“レイ”とは何も変わらない。私は……ニアには、肩書ではなく、私を見て欲しい。これからも……“レイ”と呼んで欲しいし……ずっとそばに居て欲しいと思ってる」
「え?」
「私と一緒に……ウォーランドに……来てくれないか?」
「え?」
私の顔を覗き込んで来るのは、レイさんと同じ綺麗な赤色の瞳だ。
「本当は、明日…ニアに伝えるつもりだったんだ。私は……ニア───セレニアが好きだ」
「っ!?どうして……」
セレニア───
私の……本当の名前だ。
「ごめん……捜査上、ニアの事を調べた時に……」
ーその名前を、また呼んでもらえるとは…思わなかったー
「もう一度……呼んでもらえますか?」
「……セレニア」
「………っ…」
「ニアが望むなら、いつでも何度でも呼ぶから……ニアも………私の事をレイと呼んでくれないかな?」
「………レイ……さん………」
「ニア!!」
そう呼ぶと、レイさんが本当に嬉しそうに笑って私を見下ろしている。その笑っているレイさんの顔にソッと手を添える。
「私……レイさんが笑った顔が……好き…です。とても…安心するんです。その安心感を……“お父さんみたい”って思ってたんですけど……違ったんです」
あの時、私じゃない女性に向けた笑顔に…嫉妬した。あの笑顔は、私だけに向けて欲しい─と。
「これからも…その笑顔を、私に向けてくれますか?身分も何も持ってない…レイさんから見たらお子様な私だけど……」
「セレニア。私は、セレニアが良いんだ。お子様だなんて思っていない。何も持ってないなんて事もない。セレニアは、素敵な女性だよ。私の好きな─愛しい人だよ」
フワリと微笑んだ後、引き寄せられて優しく抱きしめられた。その、レイさんの腕の中は、とても温かい。私も腕を回して抱きつこうとして───
ガチャッ──と、扉が開く音と同時に
「連れて来た────」
「リュウ、先ずノックをして返事を待たないといけないからね!?」
と、リュウ様の声と女の人の声がした。
「リュウ…………」
「あー………スミマセンね………」
レイさんのいつもより低い声を聞いたのは、久し振りだ。
ーえ!?ー
「クレイルさん、ごめんなさい…」
「ハル殿が謝る必要はないよ。悪いのは全部リュウだからね」
ハル殿──
リュウ様と一緒にやって来て、レイさんと話している女性は、私と同じぐらいの身長で銀髪。あの時の女性だった。
❋エールを頂き、ありがとうございます❋
感謝デス(꒪ˊ꒳ˋ꒪)。ෆ。
47
お気に入りに追加
309
あなたにおすすめの小説
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
婚約破棄してくださって結構です
二位関りをん
恋愛
伯爵家の令嬢イヴには同じく伯爵家令息のバトラーという婚約者がいる。しかしバトラーにはユミアという子爵令嬢がいつもべったりくっついており、イヴよりもユミアを優先している。そんなイヴを公爵家次期当主のコーディが優しく包み込む……。
※表紙にはAIピクターズで生成した画像を使用しています
美人の偽聖女に真実の愛を見た王太子は、超デブス聖女と婚約破棄、今さら戻ってこいと言えずに国は滅ぶ
青の雀
恋愛
メープル国には二人の聖女候補がいるが、一人は超デブスな醜女、もう一人は見た目だけの超絶美人
世界旅行を続けていく中で、痩せて見違えるほどの美女に変身します。
デブスは本当の聖女で、美人は偽聖女
小国は栄え、大国は滅びる。

蔑ろにされた王妃と見限られた国王
奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています
国王陛下には愛する女性がいた。
彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。
私は、そんな陛下と結婚した。
国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。
でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。
そしてもう一つ。
私も陛下も知らないことがあった。
彼女のことを。彼女の正体を。

出生の秘密は墓場まで
しゃーりん
恋愛
20歳で公爵になったエスメラルダには13歳離れた弟ザフィーロがいる。
だが実はザフィーロはエスメラルダが産んだ子。この事実を知っている者は墓場まで口を噤むことになっている。
ザフィーロに跡を継がせるつもりだったが、特殊な性癖があるのではないかという恐れから、もう一人子供を産むためにエスメラルダは25歳で結婚する。
3年後、出産したばかりのエスメラルダに自分の出生についてザフィーロが確認するというお話です。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ

【改稿版・完結】その瞳に魅入られて
おもち。
恋愛
「——君を愛してる」
そう悲鳴にも似た心からの叫びは、婚約者である私に向けたものではない。私の従姉妹へ向けられたものだった——
幼い頃に交わした婚約だったけれど私は彼を愛してたし、彼に愛されていると思っていた。
あの日、二人の胸を引き裂くような思いを聞くまでは……
『最初から愛されていなかった』
その事実に心が悲鳴を上げ、目の前が真っ白になった。
私は愛し合っている二人を引き裂く『邪魔者』でしかないのだと、その光景を見ながらひたすら現実を受け入れるしかなかった。
『このまま婚姻を結んでも、私は一生愛されない』
『私も一度でいいから、あんな風に愛されたい』
でも貴族令嬢である立場が、父が、それを許してはくれない。
必死で気持ちに蓋をして、淡々と日々を過ごしていたある日。偶然見つけた一冊の本によって、私の運命は大きく変わっていくのだった。
私も、貴方達のように自分の幸せを求めても許されますか……?
※後半、壊れてる人が登場します。苦手な方はご注意下さい。
※このお話は私独自の設定もあります、ご了承ください。ご都合主義な場面も多々あるかと思います。
※『幸せは人それぞれ』と、いうような作品になっています。苦手な方はご注意下さい。
※こちらの作品は小説家になろう様でも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる