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19 声だけレイさん
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『ニア──!』
私の名を呼んだのは、確かにレイさんだった。レイさんの声を……聞き間違える筈は…ない。
「ニア、大丈夫か?」
「えっと……レイさん……です…よね?」
「え?」
心配そうな顔から一転、今度はキョトンとした顔になる……声だけレイさん。すると、もう1人の男の人が「元に戻ってるから」と苦笑しながら呟くと、声だけレイさんが「あぁ!!」と声を上げた。
その直後、更にバタバタと騎士の服を着た人やローブを着た人達が数名やって来て、意識を失った2人を回収したり、私の部屋を調べたりしている。
「ニアさん、申し訳無いけど、この部屋は調べないといけないし、扉も壊れてしまったから、今から私と一緒に移動してもらっても良いかな?」
「あの…それは良いんですけど……えっと…“レイさん”で……良いんです…よね?」
見た目は違うけど、声や話し方、表情はレイさんだ。
「うん。私はレイだ。コレについても…後でちゃんと説明する」
フワッと微笑んだその顔は、いつものレイさんと同じモノだった。
そうして、レイさんに連れられてやって来たのは……まさかまさかの王城だった。
「え?何で???」
「うん。それも後でちゃんと説明するから、取り敢えず部屋に案内するね」
王城の客室に案内され、そこで待ち構えていた女官らしき人に、新しい服に着替えさせられ、遅い時間と言う事でハーブティーを用意してくれた。そのハーブティーを有り難く飲ませてもらっていると、そこへ声だけレイさんと、さっきも一緒に居た魔道士らしき人がやって来た。
「ニアさん、改めて…ギリスの事、申し訳なかった。ギリスに、何かされたりは…していない?」
「はい。あの…禁止された媚薬を飲まされそうになりましたけど、その前にレイさんが助けに来てくれたので大丈夫です」
「アレを…ニアさんに?ギリス………やっぱり殺っておくべきだったか?」
「駄目だからな?」
物騒な事を口にするレイさんを、呆れた顔をして咎める魔道士──どこかで……見た事がある?黒色の髪と瞳を持ち、魔道士とは少し違う感じがする。
「先ずは……この姿が、私の本当の姿なんだ」
今のレイさんは、金色のサラサラの長い髪を後ろで一つにまとめている。長身で体付きがしっかりしているから男性だと分かるけど、顔は……女性並に綺麗だ。若返ったようにも見える。
あのボサッとした茶髪のレイさんは、侵入捜査において目立たない為に、魔術で変えていたんだそうだ。確かに、今のレイさんのままだったら、目立ってモテて大騒ぎになっていただろう。
「全く違う色や長さに変えられるって、レイさんは凄い魔力持ちなんですね」
どんな魔力を持っていたらそんな事ができるのか…私には未知の世界だ。
「まぁ…私もそれなりの魔道士だけど、流石にそこまで完璧な事はできないんだ。でも、今回の捜査に関しては、2国の王族が関わっていたから……魔法使いが動く事になってね…」
「魔法………使い………」
ハッ──として、黒色の髪と瞳をした魔道士に視線を向ける。
とある国で、腐敗仕切った王家貴族の政権交代の為のクーデターが起き、その後ろ盾として、その国の魔法使いが動いて……今ではその国は大国へと発展していると言う。確か、その魔法使いが、黒色の髪と瞳だったと──
「あなたが、この大陸で有名な、あの魔法使い─リュウ様ですか!?」
「え?“リュウ様”?何?この子、可愛い上に良い子なんだな!」
「ニアさん、コイツに“様”なんて……要らないから」
「何でだ!?俺も、そろそろ認められても良くないか!?」
有名で偉大と言われている魔法使いリュウ様と、とても仲が良い?レイさん。レイさんは───
「それじゃあ、媚薬が使われた事件に関わった2国と言うのは、この国と…リュウ様達の国と言う事ですか?」
ー王族に媚薬を盛るって……一体誰がそんな馬鹿な事を!?ー
「正確には、この国と……私の国なんだけどね。」
「“私の”?」
と言う事は…リュウ様とレイさんは、違う国の人?
「媚薬を使用したのは、この国の王女で─」
ーこの国の王女は………確か…魔法使いではなかっただろうか?え?王女が……媚薬!?ー
「使用した相手は──ウォーランド王国の王太子と、その側近の1人」
「ウォーランド王国!!??」
大陸一の大国だ。しかも、あの国の王妃は歴代一の大聖女様で、王太子とは……その大聖女の子だ。大聖女様は勿論の事、国を更に発展させている国王も国民から絶大の支持を受けている。そんな……国の王太子と側近に媚薬……
「この国……イーレンは…大丈夫なんですか!?って……それじゃあ……レイさんは…………」
「そう、私の国はウォーランド王国だ。そして、私の本当の名前は……クレイル=ダルシニアン。ウォーランド王国の魔道士団長なんだ。」
❋エールを頂き、ありがとうございます❋
(꒪ˊ꒳ˋ꒪)ꕤ*.゚
❋予定より話が長くなってしまったので、夜中にこっそり更新しました。日曜中に、完結予定です❋
|ω・`)
私の名を呼んだのは、確かにレイさんだった。レイさんの声を……聞き間違える筈は…ない。
「ニア、大丈夫か?」
「えっと……レイさん……です…よね?」
「え?」
心配そうな顔から一転、今度はキョトンとした顔になる……声だけレイさん。すると、もう1人の男の人が「元に戻ってるから」と苦笑しながら呟くと、声だけレイさんが「あぁ!!」と声を上げた。
その直後、更にバタバタと騎士の服を着た人やローブを着た人達が数名やって来て、意識を失った2人を回収したり、私の部屋を調べたりしている。
「ニアさん、申し訳無いけど、この部屋は調べないといけないし、扉も壊れてしまったから、今から私と一緒に移動してもらっても良いかな?」
「あの…それは良いんですけど……えっと…“レイさん”で……良いんです…よね?」
見た目は違うけど、声や話し方、表情はレイさんだ。
「うん。私はレイだ。コレについても…後でちゃんと説明する」
フワッと微笑んだその顔は、いつものレイさんと同じモノだった。
そうして、レイさんに連れられてやって来たのは……まさかまさかの王城だった。
「え?何で???」
「うん。それも後でちゃんと説明するから、取り敢えず部屋に案内するね」
王城の客室に案内され、そこで待ち構えていた女官らしき人に、新しい服に着替えさせられ、遅い時間と言う事でハーブティーを用意してくれた。そのハーブティーを有り難く飲ませてもらっていると、そこへ声だけレイさんと、さっきも一緒に居た魔道士らしき人がやって来た。
「ニアさん、改めて…ギリスの事、申し訳なかった。ギリスに、何かされたりは…していない?」
「はい。あの…禁止された媚薬を飲まされそうになりましたけど、その前にレイさんが助けに来てくれたので大丈夫です」
「アレを…ニアさんに?ギリス………やっぱり殺っておくべきだったか?」
「駄目だからな?」
物騒な事を口にするレイさんを、呆れた顔をして咎める魔道士──どこかで……見た事がある?黒色の髪と瞳を持ち、魔道士とは少し違う感じがする。
「先ずは……この姿が、私の本当の姿なんだ」
今のレイさんは、金色のサラサラの長い髪を後ろで一つにまとめている。長身で体付きがしっかりしているから男性だと分かるけど、顔は……女性並に綺麗だ。若返ったようにも見える。
あのボサッとした茶髪のレイさんは、侵入捜査において目立たない為に、魔術で変えていたんだそうだ。確かに、今のレイさんのままだったら、目立ってモテて大騒ぎになっていただろう。
「全く違う色や長さに変えられるって、レイさんは凄い魔力持ちなんですね」
どんな魔力を持っていたらそんな事ができるのか…私には未知の世界だ。
「まぁ…私もそれなりの魔道士だけど、流石にそこまで完璧な事はできないんだ。でも、今回の捜査に関しては、2国の王族が関わっていたから……魔法使いが動く事になってね…」
「魔法………使い………」
ハッ──として、黒色の髪と瞳をした魔道士に視線を向ける。
とある国で、腐敗仕切った王家貴族の政権交代の為のクーデターが起き、その後ろ盾として、その国の魔法使いが動いて……今ではその国は大国へと発展していると言う。確か、その魔法使いが、黒色の髪と瞳だったと──
「あなたが、この大陸で有名な、あの魔法使い─リュウ様ですか!?」
「え?“リュウ様”?何?この子、可愛い上に良い子なんだな!」
「ニアさん、コイツに“様”なんて……要らないから」
「何でだ!?俺も、そろそろ認められても良くないか!?」
有名で偉大と言われている魔法使いリュウ様と、とても仲が良い?レイさん。レイさんは───
「それじゃあ、媚薬が使われた事件に関わった2国と言うのは、この国と…リュウ様達の国と言う事ですか?」
ー王族に媚薬を盛るって……一体誰がそんな馬鹿な事を!?ー
「正確には、この国と……私の国なんだけどね。」
「“私の”?」
と言う事は…リュウ様とレイさんは、違う国の人?
「媚薬を使用したのは、この国の王女で─」
ーこの国の王女は………確か…魔法使いではなかっただろうか?え?王女が……媚薬!?ー
「使用した相手は──ウォーランド王国の王太子と、その側近の1人」
「ウォーランド王国!!??」
大陸一の大国だ。しかも、あの国の王妃は歴代一の大聖女様で、王太子とは……その大聖女の子だ。大聖女様は勿論の事、国を更に発展させている国王も国民から絶大の支持を受けている。そんな……国の王太子と側近に媚薬……
「この国……イーレンは…大丈夫なんですか!?って……それじゃあ……レイさんは…………」
「そう、私の国はウォーランド王国だ。そして、私の本当の名前は……クレイル=ダルシニアン。ウォーランド王国の魔道士団長なんだ。」
❋エールを頂き、ありがとうございます❋
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❋予定より話が長くなってしまったので、夜中にこっそり更新しました。日曜中に、完結予定です❋
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