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13 復帰
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「“孤児で売られて来てから10年間、秘密裏に虐げられて来たニアを、知らなかったとは言え虐げていたダミアンも、会長と同罪よ”と、皆から責められてたんだ」
「なるほど……」
作業室に入って来たのはレイさんだった。
「それに、ダミアン自身も、皆から責められる前に反省してたけどね」
「あぁ…だから、お詫びの品なんですね」
ーまさか、本当に、あのダミアンさんから謝罪の言葉を聞いて、お詫びの品を貰う日が来るとは…ー
「明日は嵐かなぁ?」
「くくっ…かもしれないね」
ダミアンさんがくれたのは、数量限定販売のクッキーの詰め合わせだった。あのダミアンさんが…お店に並んで────
「うん。やっぱり明日は嵐だ」
その日は1日大変だった。
出勤して来た従業員達から、もれなく抱きしめられたりお菓子を貰ったりした。暫くの間は、食べ物に困る事はなさそうだ。
始業時間になると、各々作業場に着き仕事を始め、私は呼ばれていた為、会長の執務室へと向かった。
「ニア!!」
「おく──会長!?」
執務室に入ると会長であるモニクに抱きつかれた。
「ニア、今迄ごめんなさい。助けてあげられなくて……元気になって……良かった……」
「会長………」
「もう…“モニク”とは…呼んではもらえない?」
「でも……仕事以外の時だけね…モニク」
「ありがとう!ニア!」
私に抱きついたまま泣いていた会長─モニクが少し落ち着いてから、これからの私の雇用契約の話をした。
「白に近い精製水を作られると……こんなにも給金が良いなんて…知らなかった……」
「私も、ニアとは違う意味で驚いたわ」
なんと、白に近い精製水が作れる魔道士は、今迄の私の給金の倍近くの給金が貰えていた。ただ、私は“魔道士”ではなく、“ただの魔力持ち”でしかない為、白に近い精製水を作れる魔道士よりは額は減る。減るけど、今迄の額に比べれば天と地程の差がある。
「ニアが魔道士になりたいと言う気持ちがあるなら、商会としては、いつでもバックアップはするつもりだから、遠慮無く言って欲しい。あ、それと、今、ニアを魔力持ちの平民として、国に申請しているから、そのうち優遇措置が受けられるようになると思うわ」
ー何とも仕事の早い会長だー
再雇用契約を結び直し、色々話をしているうちに昼休憩の時間になり、私はまた作業場へと戻った。
「あれ?そう言えば……今日はカリーヌさんはお休みですか?」
朝のダミアンさんから始まり、バタバタしていて気付かなかったけど、カリーヌさんとまだ会えていなかった。そう言えば…私が倒れた後何回か様子を見に来てくれていたけど、ここ数日は……カリーヌさんに、何かあった!?
「カリーヌさん、2人目ができたらしくて…今、悪阻で大変らしいよ」
「2人目!!??」
カリーヌさん、まさかの妊娠。
確か、1人目の妊娠の時も悪阻が大変で、食べて吐いて食べて吐いて─の繰り返しだったと言っていたっけ。
「だから、暫くの間休むと言ってたよ。できれば、私もカリーヌさんに挨拶したかったけど…」
「あ……」
そっか…レイさんがここに居るのも、後1ヶ月。多分、カリーヌさんは1ヶ月では……復帰できないだろう。
「私からも、残念がってたって、伝えておきますね」
「ありがとう。で?ニアさんは?」
「はい?私?」
ー私が……何だろう?ー
首を傾げて考える。
「私が居なくなっら……寂しかったりする?」
「あぁ…それは寂しいですよ?やっぱり、人が減ると言うのは、どんな事でも寂しいものだから…」
「………なるほど………………」
両親を喪い、修道院では孤児仲間と離されて売られて来た。誰も居なくなった私に、カリーヌさんが寄り添ってくれて、更にレイさんが増えて──
「兎に角、後1ヶ月は宜しくお願いしますね」
「あー…うん。こちらこそ………宜しく………」
宜しく─と言いながら眉間に皺を寄せているレイさん。
ー私、何かおかしい事を…言ってしまったんだろうか?ー
*レイ視点*
「何か…機嫌が悪かったりしますか?」
「別に悪くは無い。悪くは無いけど………悔しい気がする……」
「悔しい??」
初めて目にした時、「この子だ」と思った。
孤児の魔力持ちで売られた子だ───と。
潜入して調べてみれば、彼女はかなり酷い扱いをされていた。
白に近い精製水を作れる程の実力があるのに、最低限にも満たない給金だった。その上での残業。
彼女以外には、とても良い職場環境とトップである会長─ギリス=ドルファン子爵。これがまた、とんでもないたぬきで、なかなか尻尾を出さなかった。
証拠を握る迄時間が掛かるか?と思いもあって、取り敢えず彼女の体調を優先に動く事にした。
食べる物に困っているなら、理由をつけて一緒に食べれば良い。
ただ、彼女は……異性や恋愛には興味が無いようで、色々誘い文句を口にしても、明後日の方向で返事が返って来るだけだった。
最初はソレが新鮮で、面白かったのだが───
まさかの“お父さん”扱い。
最初は笑えれもしたけど……最近は……それが…気に食わない。
ーどうしたら、“お父さん”ではなくなるんだ?ー
なんて考えるようになってしまった──と言う事は……
「そう言う事なんだよなぁ………」
まさか、20も年下の子に………それも、後1ヶ月。
「元に戻っても良いかなぁ?」
「駄目ですよ。まだ目立つのは控えて下さい」
「だよねぇ……せめて、“急げ!”って言っといてくれる?」
「分かりました」と苦笑しながら返事をして、部屋から出て行った。
❋エールを頂き、ありがとうございます❋
(ꕤᴗ ᴗ)⁾⁾♡ペコリ
「なるほど……」
作業室に入って来たのはレイさんだった。
「それに、ダミアン自身も、皆から責められる前に反省してたけどね」
「あぁ…だから、お詫びの品なんですね」
ーまさか、本当に、あのダミアンさんから謝罪の言葉を聞いて、お詫びの品を貰う日が来るとは…ー
「明日は嵐かなぁ?」
「くくっ…かもしれないね」
ダミアンさんがくれたのは、数量限定販売のクッキーの詰め合わせだった。あのダミアンさんが…お店に並んで────
「うん。やっぱり明日は嵐だ」
その日は1日大変だった。
出勤して来た従業員達から、もれなく抱きしめられたりお菓子を貰ったりした。暫くの間は、食べ物に困る事はなさそうだ。
始業時間になると、各々作業場に着き仕事を始め、私は呼ばれていた為、会長の執務室へと向かった。
「ニア!!」
「おく──会長!?」
執務室に入ると会長であるモニクに抱きつかれた。
「ニア、今迄ごめんなさい。助けてあげられなくて……元気になって……良かった……」
「会長………」
「もう…“モニク”とは…呼んではもらえない?」
「でも……仕事以外の時だけね…モニク」
「ありがとう!ニア!」
私に抱きついたまま泣いていた会長─モニクが少し落ち着いてから、これからの私の雇用契約の話をした。
「白に近い精製水を作られると……こんなにも給金が良いなんて…知らなかった……」
「私も、ニアとは違う意味で驚いたわ」
なんと、白に近い精製水が作れる魔道士は、今迄の私の給金の倍近くの給金が貰えていた。ただ、私は“魔道士”ではなく、“ただの魔力持ち”でしかない為、白に近い精製水を作れる魔道士よりは額は減る。減るけど、今迄の額に比べれば天と地程の差がある。
「ニアが魔道士になりたいと言う気持ちがあるなら、商会としては、いつでもバックアップはするつもりだから、遠慮無く言って欲しい。あ、それと、今、ニアを魔力持ちの平民として、国に申請しているから、そのうち優遇措置が受けられるようになると思うわ」
ー何とも仕事の早い会長だー
再雇用契約を結び直し、色々話をしているうちに昼休憩の時間になり、私はまた作業場へと戻った。
「あれ?そう言えば……今日はカリーヌさんはお休みですか?」
朝のダミアンさんから始まり、バタバタしていて気付かなかったけど、カリーヌさんとまだ会えていなかった。そう言えば…私が倒れた後何回か様子を見に来てくれていたけど、ここ数日は……カリーヌさんに、何かあった!?
「カリーヌさん、2人目ができたらしくて…今、悪阻で大変らしいよ」
「2人目!!??」
カリーヌさん、まさかの妊娠。
確か、1人目の妊娠の時も悪阻が大変で、食べて吐いて食べて吐いて─の繰り返しだったと言っていたっけ。
「だから、暫くの間休むと言ってたよ。できれば、私もカリーヌさんに挨拶したかったけど…」
「あ……」
そっか…レイさんがここに居るのも、後1ヶ月。多分、カリーヌさんは1ヶ月では……復帰できないだろう。
「私からも、残念がってたって、伝えておきますね」
「ありがとう。で?ニアさんは?」
「はい?私?」
ー私が……何だろう?ー
首を傾げて考える。
「私が居なくなっら……寂しかったりする?」
「あぁ…それは寂しいですよ?やっぱり、人が減ると言うのは、どんな事でも寂しいものだから…」
「………なるほど………………」
両親を喪い、修道院では孤児仲間と離されて売られて来た。誰も居なくなった私に、カリーヌさんが寄り添ってくれて、更にレイさんが増えて──
「兎に角、後1ヶ月は宜しくお願いしますね」
「あー…うん。こちらこそ………宜しく………」
宜しく─と言いながら眉間に皺を寄せているレイさん。
ー私、何かおかしい事を…言ってしまったんだろうか?ー
*レイ視点*
「何か…機嫌が悪かったりしますか?」
「別に悪くは無い。悪くは無いけど………悔しい気がする……」
「悔しい??」
初めて目にした時、「この子だ」と思った。
孤児の魔力持ちで売られた子だ───と。
潜入して調べてみれば、彼女はかなり酷い扱いをされていた。
白に近い精製水を作れる程の実力があるのに、最低限にも満たない給金だった。その上での残業。
彼女以外には、とても良い職場環境とトップである会長─ギリス=ドルファン子爵。これがまた、とんでもないたぬきで、なかなか尻尾を出さなかった。
証拠を握る迄時間が掛かるか?と思いもあって、取り敢えず彼女の体調を優先に動く事にした。
食べる物に困っているなら、理由をつけて一緒に食べれば良い。
ただ、彼女は……異性や恋愛には興味が無いようで、色々誘い文句を口にしても、明後日の方向で返事が返って来るだけだった。
最初はソレが新鮮で、面白かったのだが───
まさかの“お父さん”扱い。
最初は笑えれもしたけど……最近は……それが…気に食わない。
ーどうしたら、“お父さん”ではなくなるんだ?ー
なんて考えるようになってしまった──と言う事は……
「そう言う事なんだよなぁ………」
まさか、20も年下の子に………それも、後1ヶ月。
「元に戻っても良いかなぁ?」
「駄目ですよ。まだ目立つのは控えて下さい」
「だよねぇ……せめて、“急げ!”って言っといてくれる?」
「分かりました」と苦笑しながら返事をして、部屋から出て行った。
❋エールを頂き、ありがとうございます❋
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