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冷たくて鉛の様に重くなった体は、暗闇へとどんどん落ちていく。藻掻いて抗いたいのに、体がピクリとも動かない。
ーもう……頑張らなくても良いかな?ー
どうせ、私は独りだ。私が居なくなっても泣くような人なんて……居ない。
『─ニアみたいな可愛い子なら、いつでも大歓迎よ』
『─親の言う事は…素直に聞いておこうか?』
ーまだ…駄目だ。カリーヌさんと…レイさんが居てくれるー
そう思ったのと同時に、体がポカポカと温かくなって軽くなり、今迄落ちていた体がフワフワと浮いているような感じになった。
ー温かくて…気持ちいいー
フッ─と、意識が浮上して目を開けると、そこには見慣れた天井があった。私の家の寝室の天井だ。
ーいつの間に帰って来たんだろう?ー
ついさっきまで職場の作業室に居て、カリーヌさんとレイさんと話してた筈なのに、今はベッドの中に居る。しかも、かなりの……汗まみれ状態だ。
モゾモゾとゆっくりと起き上がり、窓を見ると、外は明るい。意識がなくなってから、そんなに時間は経ってないかもしれない。何とか記憶を引っ張り出そうとした時、寝室の部屋の扉がガチャッと開けられた。
「え!?」
「え!?」
独り暮らしの私の部屋の扉が……何故開くのか、驚きの声を上げると、同じ様に誰かが驚きの声を上げた。
「──レイさん!?」
「ニアさん!!」
ーえ?何で私の家にレイさんが居るの!?ー
「ニアさん、目が覚めて良かった…。あ、取り敢えず、飲み物を持って来るから、そのままで待ってて」
「えっ!?持って?ちょっ……あの、ここ、私の家で───」
“私の家ですよね!?”─と言う前に、レイさんは寝室から出て行ってしまった。
それから、レモン水を持って来てくれたレイさんから聞いた話によると、私はカリーヌさんとレイさんと作業室で話している最中に意識を失って倒れてしまったらしく、レイさんが私の家まで運んでくれたそうだ。
作業室で、皆の目の前で倒れたと言う事で、私が暫く休むと言う事にも、誰も文句を言う人はおらず、会長からも1週間休んでも良いと言われたそうだ。
「──だから、ニアさんは1週間ゆっくりするように」
「はい……」
ーどうしよう。1週間も休んで…+ノルマ分が作れないー
「ニアさん。医師が言うには……“過労”だと」
「そうですか……」
「でも、ニアさんは毎日定時で上がってるよね?」
「…………」
「数週間前から顔色が悪くなって、更にやつれて……何かあった?いや、何があったの?」
レイさんと視線を合わせる事ができず、私は俯いてギュッと手を握りしめる。
ー言えない。言える筈がないー
「ニアさん……」
「──っ!」
握りしめた手を、またレイさんの手が優しく包んでくれた。
「まだ知り合ったばかりの私だけど…私を信じて話してくれないかな?」
「……私…………」
心が弱っていたからか、それとも、レイさんに安心感があるからなのかは分からないけど、私は、今迄の事を全てレイさんに話した。
私が修道院から売られて来たと言った時は、レイさんの顔がとんでもない事になっていた。
それから………+ノルマがある事と、あの夜の商談の事、その取引の品が媚薬かもしれないと言う事も全て話した。
「“+ノルマ”か……だから、ニアさんは残業したりしてたのか。そんな事をしてたから、魔力の回復も遅くなって…やつれて……辛かっただろう?」
「…………」
ー辛くないわけがないー
ただ、生きる為には頑張るしかなかった。
「ニアさんが私を信じて話してくれたから、私も隠さずに話すけど、ニアさんが予想している通り……ニアさんの作った精製水の純度は、青色じゃなく……本当は、白に近い薄い水色だ。その判定を青色と偽って結果を書いているのは会長本人だろうね。それで、その精製水を使って……禁止されている媚薬を製造して、裏ルートで販売しているんだと思う」
「───っ…私………本当に、知らなくて……」
「うん。分かってる。ニアさんが精製水を作らされていただけだって。もし、ニアさんがソレを知らされていたなら、もっと給料が良かっただろうしね。それに………証拠もあるからね」
「…証拠?」
ーどうして、証拠があると断言できるのか?ー
「実は────」
私の手を握っているレイさんの手に力が入る。
「私はね、その媚薬に絡んだ事件について調べる為に、ここに入り込んでいたんだ」
「え?事件?入り込んで?」
パチッと目を見開いてレイさんを見上げる。
「媚薬を作る為の薬草を購入した履歴はあるのに、その媚薬を作る為の精製水の製造や使用履歴が一切見つからなかったんだ。」
毎日、エドガーさんや私達従業員が作る精製水の量と、そこからどの純度の精製水が何に、どれだけ使用されたか─まで、キッチリ記録される。その記録に誤差どころか、おかしいところが全く無い為、媚薬を製造していると言う証拠が手に入らなかったそうだ。
「ニアさんのお陰で、ようやく締め上げる事ができるよ」
と、レイさんはニッコリ微笑んだ。
ーもう……頑張らなくても良いかな?ー
どうせ、私は独りだ。私が居なくなっても泣くような人なんて……居ない。
『─ニアみたいな可愛い子なら、いつでも大歓迎よ』
『─親の言う事は…素直に聞いておこうか?』
ーまだ…駄目だ。カリーヌさんと…レイさんが居てくれるー
そう思ったのと同時に、体がポカポカと温かくなって軽くなり、今迄落ちていた体がフワフワと浮いているような感じになった。
ー温かくて…気持ちいいー
フッ─と、意識が浮上して目を開けると、そこには見慣れた天井があった。私の家の寝室の天井だ。
ーいつの間に帰って来たんだろう?ー
ついさっきまで職場の作業室に居て、カリーヌさんとレイさんと話してた筈なのに、今はベッドの中に居る。しかも、かなりの……汗まみれ状態だ。
モゾモゾとゆっくりと起き上がり、窓を見ると、外は明るい。意識がなくなってから、そんなに時間は経ってないかもしれない。何とか記憶を引っ張り出そうとした時、寝室の部屋の扉がガチャッと開けられた。
「え!?」
「え!?」
独り暮らしの私の部屋の扉が……何故開くのか、驚きの声を上げると、同じ様に誰かが驚きの声を上げた。
「──レイさん!?」
「ニアさん!!」
ーえ?何で私の家にレイさんが居るの!?ー
「ニアさん、目が覚めて良かった…。あ、取り敢えず、飲み物を持って来るから、そのままで待ってて」
「えっ!?持って?ちょっ……あの、ここ、私の家で───」
“私の家ですよね!?”─と言う前に、レイさんは寝室から出て行ってしまった。
それから、レモン水を持って来てくれたレイさんから聞いた話によると、私はカリーヌさんとレイさんと作業室で話している最中に意識を失って倒れてしまったらしく、レイさんが私の家まで運んでくれたそうだ。
作業室で、皆の目の前で倒れたと言う事で、私が暫く休むと言う事にも、誰も文句を言う人はおらず、会長からも1週間休んでも良いと言われたそうだ。
「──だから、ニアさんは1週間ゆっくりするように」
「はい……」
ーどうしよう。1週間も休んで…+ノルマ分が作れないー
「ニアさん。医師が言うには……“過労”だと」
「そうですか……」
「でも、ニアさんは毎日定時で上がってるよね?」
「…………」
「数週間前から顔色が悪くなって、更にやつれて……何かあった?いや、何があったの?」
レイさんと視線を合わせる事ができず、私は俯いてギュッと手を握りしめる。
ー言えない。言える筈がないー
「ニアさん……」
「──っ!」
握りしめた手を、またレイさんの手が優しく包んでくれた。
「まだ知り合ったばかりの私だけど…私を信じて話してくれないかな?」
「……私…………」
心が弱っていたからか、それとも、レイさんに安心感があるからなのかは分からないけど、私は、今迄の事を全てレイさんに話した。
私が修道院から売られて来たと言った時は、レイさんの顔がとんでもない事になっていた。
それから………+ノルマがある事と、あの夜の商談の事、その取引の品が媚薬かもしれないと言う事も全て話した。
「“+ノルマ”か……だから、ニアさんは残業したりしてたのか。そんな事をしてたから、魔力の回復も遅くなって…やつれて……辛かっただろう?」
「…………」
ー辛くないわけがないー
ただ、生きる為には頑張るしかなかった。
「ニアさんが私を信じて話してくれたから、私も隠さずに話すけど、ニアさんが予想している通り……ニアさんの作った精製水の純度は、青色じゃなく……本当は、白に近い薄い水色だ。その判定を青色と偽って結果を書いているのは会長本人だろうね。それで、その精製水を使って……禁止されている媚薬を製造して、裏ルートで販売しているんだと思う」
「───っ…私………本当に、知らなくて……」
「うん。分かってる。ニアさんが精製水を作らされていただけだって。もし、ニアさんがソレを知らされていたなら、もっと給料が良かっただろうしね。それに………証拠もあるからね」
「…証拠?」
ーどうして、証拠があると断言できるのか?ー
「実は────」
私の手を握っているレイさんの手に力が入る。
「私はね、その媚薬に絡んだ事件について調べる為に、ここに入り込んでいたんだ」
「え?事件?入り込んで?」
パチッと目を見開いてレイさんを見上げる。
「媚薬を作る為の薬草を購入した履歴はあるのに、その媚薬を作る為の精製水の製造や使用履歴が一切見つからなかったんだ。」
毎日、エドガーさんや私達従業員が作る精製水の量と、そこからどの純度の精製水が何に、どれだけ使用されたか─まで、キッチリ記録される。その記録に誤差どころか、おかしいところが全く無い為、媚薬を製造していると言う証拠が手に入らなかったそうだ。
「ニアさんのお陰で、ようやく締め上げる事ができるよ」
と、レイさんはニッコリ微笑んだ。
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