没落令嬢は、おじさん魔道士を尽くスルーする

みん

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7 街案内①

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「このお店は文具系なら何でも揃っているし、値段もお手頃よ。それに、ウチの商会の会長と店主が仲が良いから、ある程度融通も利くわ」
「それは良いですね」
「それで、あの店は───」

今日は仕事が休みの週末。私は、今、カリーヌさんと一緒に、レイさんに街案内をしている。そう、レイさんが“ニアわたしの休みが欲しい”と言ったのは、“1日レイさんわたしに付き合って欲しい”と言う意味だった。『それじゃあ、最初からそう言って下さい。分り難いです』と言うと、更に笑われた。
2人きりと言うのも色々どうなのか─と言う事でカリーヌさんに相談すると、『なら、私も一緒に行ってあげるわ』と言ってくれたから、ありがたく一緒に来てもらう事にし。因みに、旦那さんとお子さんは祖父母の家に遊びに行っているそうだ。

私はこの町に住み始めてから10年になるけど、最低限の買い物しかしないから、たくさんのお店があっても、知らないお店の方が多い。だから、カリーヌさんが来てくれて助かったと言うのが本音だ。それに、カリーヌさんのお店の情報は、貧乏な私にとっても為になるものばかりだった。

ー今度から、この文具屋さんに来よう。本当に安いし、品揃えが良いー

他にも、安い服屋さんやジュエリーショップもあり、安くても可愛いものがたくさんあった。アクセサリーも可愛い物はあるけど、着ける必要がないから、これからも買う事はないだろう。





「ここのランチは魚がお勧めよ」
「年を重ねると、お肉より魚の方が胃に優しいんだよね…」

ランチタイムになり、カリーヌさんお勧めのお店へとやって来た。

「年を重ねると─って、レイさんって、いくつなんですか?」

ー見た目は40代前半?ー

「50が視野に入ってます」
「「え!?」」

まさかの40代後半……にしては、若く見える。40代とは思っていたけど、「30代後半だ」と言われても信じられる程に。

「それなら、随分若く見えるわね……羨ましいわ……」
「ははっ…カリーヌさんも子持ちには見えませんよ」

うんうん。カリーヌさんも見た目は年齢より若く見えるし、子持ちとは思えないスタイルの美人さんだ。きっと、旦那さんもイケメンで、子供も絶対可愛いに違いない。

「ニアさんなんて、初めて見た時、“何でが働いているんだ!?”って思った位若いし」
「いや…それ、褒めてませんよね?」

ーそれ、“若い”じゃなくて“子供ガキ”って事だよね?ー

「すみません…」
「でも、ニアはこれでもまだマシになったのよ?10年前にやって来た時なんて、本当にガリガリに痩せてて、風が吹いたら飛んで行きそうだったから」
「…ですね。これも、カリーヌさんが私に色々と気を使ってくれたから……いつも、ありがとうございます」

本当に、特に食事に関してはカリーヌさんが居なければ、食べられない日もあったと思う。最近では、料理の工夫次第で満足できる量を食べれるようにもなった。
「ニアさんの両親や親戚は?」
「両親とは……10歳で死別して……親族ももう居ません」
「そうなんだ…それで、15歳?から働きだしたんだね」

貴族では有り得ない話だけど、平民だと15歳で働く事は珍しい事ではない。だから、院長も何の躊躇いもなく私を商会に売ったのだ。

「量も少ないから、大した事はできないけど、魔力があって…働けて良かったなぁ…と…今では思ってます」
「だね。魔力持ちだと、何かと国からも優遇措置があったりするからね」
「……ですね…………」

“魔力持ちに対する国からの優遇措置”

あるにはあるけど、それは貴族には当てはまるけど、平民には難しい。私みたいににはその優遇措置が。会長が申請していたとしても、ソレが私の手元に入る事はないだろう。

「ところで、レイさんは恋人とかは居ないの?」
「うん。もう何年も居ないね。あ、結婚経験もないよ」
「そうなの?てっきり、バツ付きかと思ってたわ」
「こう見えても、昔は……それなりに遊んだりもしてたけどね…それも面倒?になって、魔道士としての生活が楽しくてなって、気が付けばこんな歳になってて。今では独り身を楽しんでるよ」

ははっ─と笑うレイさん。

ー私も、このまま独り身なんだろうなー

毎日の生活で精一杯で、他所に目をやる事すらできないのに、恋愛なんて………無理だよね。恋をしそうな相手も居ないし。職場恋愛なんてよく耳にしたりもするけど、それこそ有り得ない。

「ニアさんは…これから良い出会いがあると良いね」
「ホントに!ニアは可愛くて料理上手だから、きっと良いお嫁さんになれるわ!」
「ありがとうございます。褒めてくれるのはカリーヌさんだけですよ?でも…恋愛は…まだいいかな?」
「本当に勿体無いわね……ま、結婚が女の幸せとは限らないけどね。あ、勿論、私は旦那と結婚して子供も居てとても幸せよ!」

ニッコリ笑うカリーヌさんは、本当に幸せそうだ。私も、いつかそんな風に笑える日が来るんだろうか──








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