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42 これからのルテリアル
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一年中温暖な気候だったルテリアルに慣れていた私やレオノールにとっては、寒季が例年より穏やかだと言わても、寒い事には変わりなかったから、それがどれ程スネフェリングにとって良い事なのかよく分からなかった。
積雪量が減った
天気が荒れる日が減った
寒さが少しマシだ
寒季でも作物が育つ
寒季でも晴れの日が増えた
「それらは、加護持ちのリディアのお陰だったのか…」
勿論、そんな事を言われても、私には全く自覚はない。
加護を与えた精霊達にとって、ルテリアルに居た頃から私を護りたくても本当の名ではなかった為に護れず、かと言ってルテリアルに制裁を加えようにも、私が居る場所と言うところで何もできない状態だったと言う。
「大精霊と言っても万能ではない─と言う事だね」
力や能力が高いと言われる存在の大精霊も、人間と似ているところがあるのかもしれない。
「兎に角、リディア様はこれで本来の姿に戻ったから、ルテリアルの加護は完全に失われた。それに、4大精霊の怒りを買ったから、マトモではなくなるだろうね。一番の被害者は平民だね……」
精霊にとって興味があるのは、自身が加護を与えた人間だけなんだそうだ。
“好きか嫌いか”ではなく、“興味があるか無いか”
興味がある人間には愛情を注ぎ、何者からも護るけど、興味が無ければ何もしない。その者が倒れようと死のうがどうでも良い─と言う感じなんだそうだ。
「簡単に言えば“気まぐれ”なんだ」
だから、例え加護を与えた人間に子供ができても、その者に興味がなければ、その子を護る事もしない。
ただ、始祖であるジュヌベール様と、“ジュヌベールの子孫を護る”と言う約束があって、今迄ルテリアルが護られていたそうだ。それが、加護を与えたエリアーヌが死んでしまい、新たに加護を与えた者は名を奪われた上に虐げられた──となれば、4大精霊が怒るのも仕方無い。
「死んでしまったジュヌベール様との約束より、今生きているリディア様の方が優先されるべき事だからね。リディア様がスネフェリングに来れた時点で、ルテリアルは傾きかけ、リディア様が本来の姿になった瞬間、精霊達は動き出しただろうね」
「ルテリアルは……衰退の一途を辿るのみか……」
皇帝陛下の低い声が、その場に酷く響いた。
何故、私がルテリアルに居る間に本来の姿に戻さなかったのか──
「ルテリアルに居る間に戻してしまうと、リディア様を護る為にエイダンやカティエや国も護られる事になってしまうからね。それは……4大精霊としては不本意なんだろうね」
「仕返しができなくなる─と言う事だな?」
「「「…………」」」
『特に、サラマンダー様の怒りが凄かったから、ルテリアルは暑い国になるかも』
「暑い……国………」
ふふっ─と笑いながら恐ろしい事を言うのはフェン。寒季が長いスネフェリングも食糧難などで苦労して来たけど、暑過ぎるのもまた、色んな問題が出て来るだろう。やっぱり、一番の被害者は平民達だ。
「平民達は気の毒だけど、この真実が国に伝われば、今の王族を倒し、新たな国造りをする事ができるんじゃないかな?」
「そんな簡単に行きますか?」
「私が動けば良いのだろう?あぁ、勿論直ぐには動かないよ?精霊達が、仕返しを済んでからの方が良いんだろうから……」
「皇帝陛下の理解が早くて助かります」
4大精霊の怒りを買って、これから衰退の一途を辿るルテリアルを助ける国は無い。スネフェリングも然り。
そのうち、国内が荒れて王族を倒そうとする者達が出て来たところで、その者達をスネフェリングの皇帝陛下が支持をする。スネフェリング帝国には、精霊の加護を受けた私が居るから、私が居る国の王が支持をするなら、その者がルテリアルの王になる事が赦され、更に、精霊達も仕返しを終えるだろう──と言う事だ。
「精霊達も、スネフェリングがリディア様を保護して護ってくれた事は承知しているから、皇帝陛下が動いてくれれば、新しく立つであろう王や平民は、そこからまた立ち直れるかと……」
これから大変な事になるだろうルテリアル。でも、そんな話を聞いても、心が痛まない私は薄情者なのかもしれない。
「──と、暗い話はここ迄にして──次はリディアに関しての話を進めましょう」
と言ったのは大魔女オードリナ様。
「私?」
「そうよ。これからのリディアの話が一番重要なのよ」
ー国の一大事より重要な話ってある?無いよね?ー
「今回の話が知れ渡れば、リディアが加護持ちで、2人の妖精と契約まで結んだ上に白属性の魔力持ち。更には……この可愛いらしい容姿と来たら………」
「「「放っておかれる筈がない」」」
「はい?」
ー“可愛らしい容姿”とは?ー
「確かに……カミリアの時の暗い容姿よりはマシになったかもだけど、可愛らしいとまでは……」
「え?何を言ってるんだ?リディア様はカミリア様の時から可愛らしいからな!」
「はい???」
何故か、テオファーヌさんに、素の口調で突っ込まれた。
積雪量が減った
天気が荒れる日が減った
寒さが少しマシだ
寒季でも作物が育つ
寒季でも晴れの日が増えた
「それらは、加護持ちのリディアのお陰だったのか…」
勿論、そんな事を言われても、私には全く自覚はない。
加護を与えた精霊達にとって、ルテリアルに居た頃から私を護りたくても本当の名ではなかった為に護れず、かと言ってルテリアルに制裁を加えようにも、私が居る場所と言うところで何もできない状態だったと言う。
「大精霊と言っても万能ではない─と言う事だね」
力や能力が高いと言われる存在の大精霊も、人間と似ているところがあるのかもしれない。
「兎に角、リディア様はこれで本来の姿に戻ったから、ルテリアルの加護は完全に失われた。それに、4大精霊の怒りを買ったから、マトモではなくなるだろうね。一番の被害者は平民だね……」
精霊にとって興味があるのは、自身が加護を与えた人間だけなんだそうだ。
“好きか嫌いか”ではなく、“興味があるか無いか”
興味がある人間には愛情を注ぎ、何者からも護るけど、興味が無ければ何もしない。その者が倒れようと死のうがどうでも良い─と言う感じなんだそうだ。
「簡単に言えば“気まぐれ”なんだ」
だから、例え加護を与えた人間に子供ができても、その者に興味がなければ、その子を護る事もしない。
ただ、始祖であるジュヌベール様と、“ジュヌベールの子孫を護る”と言う約束があって、今迄ルテリアルが護られていたそうだ。それが、加護を与えたエリアーヌが死んでしまい、新たに加護を与えた者は名を奪われた上に虐げられた──となれば、4大精霊が怒るのも仕方無い。
「死んでしまったジュヌベール様との約束より、今生きているリディア様の方が優先されるべき事だからね。リディア様がスネフェリングに来れた時点で、ルテリアルは傾きかけ、リディア様が本来の姿になった瞬間、精霊達は動き出しただろうね」
「ルテリアルは……衰退の一途を辿るのみか……」
皇帝陛下の低い声が、その場に酷く響いた。
何故、私がルテリアルに居る間に本来の姿に戻さなかったのか──
「ルテリアルに居る間に戻してしまうと、リディア様を護る為にエイダンやカティエや国も護られる事になってしまうからね。それは……4大精霊としては不本意なんだろうね」
「仕返しができなくなる─と言う事だな?」
「「「…………」」」
『特に、サラマンダー様の怒りが凄かったから、ルテリアルは暑い国になるかも』
「暑い……国………」
ふふっ─と笑いながら恐ろしい事を言うのはフェン。寒季が長いスネフェリングも食糧難などで苦労して来たけど、暑過ぎるのもまた、色んな問題が出て来るだろう。やっぱり、一番の被害者は平民達だ。
「平民達は気の毒だけど、この真実が国に伝われば、今の王族を倒し、新たな国造りをする事ができるんじゃないかな?」
「そんな簡単に行きますか?」
「私が動けば良いのだろう?あぁ、勿論直ぐには動かないよ?精霊達が、仕返しを済んでからの方が良いんだろうから……」
「皇帝陛下の理解が早くて助かります」
4大精霊の怒りを買って、これから衰退の一途を辿るルテリアルを助ける国は無い。スネフェリングも然り。
そのうち、国内が荒れて王族を倒そうとする者達が出て来たところで、その者達をスネフェリングの皇帝陛下が支持をする。スネフェリング帝国には、精霊の加護を受けた私が居るから、私が居る国の王が支持をするなら、その者がルテリアルの王になる事が赦され、更に、精霊達も仕返しを終えるだろう──と言う事だ。
「精霊達も、スネフェリングがリディア様を保護して護ってくれた事は承知しているから、皇帝陛下が動いてくれれば、新しく立つであろう王や平民は、そこからまた立ち直れるかと……」
これから大変な事になるだろうルテリアル。でも、そんな話を聞いても、心が痛まない私は薄情者なのかもしれない。
「──と、暗い話はここ迄にして──次はリディアに関しての話を進めましょう」
と言ったのは大魔女オードリナ様。
「私?」
「そうよ。これからのリディアの話が一番重要なのよ」
ー国の一大事より重要な話ってある?無いよね?ー
「今回の話が知れ渡れば、リディアが加護持ちで、2人の妖精と契約まで結んだ上に白属性の魔力持ち。更には……この可愛いらしい容姿と来たら………」
「「「放っておかれる筈がない」」」
「はい?」
ー“可愛らしい容姿”とは?ー
「確かに……カミリアの時の暗い容姿よりはマシになったかもだけど、可愛らしいとまでは……」
「え?何を言ってるんだ?リディア様はカミリア様の時から可愛らしいからな!」
「はい???」
何故か、テオファーヌさんに、素の口調で突っ込まれた。
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