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*オードリナ視点*
「オードリナ様!」
「ヘレンティナ…可哀想に。もう、魔力も半分以上失っているわね」
「半分以上!?な…何とかなりませんか!?このままでは、ヘレンティナが死んでしまいます!大魔女のオードリナ様なら、ヘレンティナを──」
「カミリアを殺そうとしておいて、よくそんな事が言えるわね」
時間をかけて少しずつじわじわと苦痛を味わわせ、最後にカミリアが死んでも構わないと、ヘレンティナの為に全てを奪い取ろうとしたカティエ。勿論、何も知らないヘレンティナは何も悪くはないし、寧ろ被害者と言って良いのかもしれない。
でも、ヘレンティナも、カミリアを魔力無しの汚点だと虐げていた事も事実。
「まぁ、安心しなさい。魔力が抜けて行く時の苦痛は治める事はできないけど、魔力が全て抜けてもヘレンティナが死ぬ事はないわ。もともとそうだったから。本来の身体に戻るだけだから」
「本来の身体に戻るって、一体何を仰って─」
こんな時ででもしらを切るとは。
「もう、健気で謙虚な王妃を演じる必要は無いわ。貴方達がして来た事は全て知っているから」
「いつ……」
「ヘレンティナが魔力暴走を起こした時よ」
カミリアのクローゼットの中の引き出しにあった赤色と青色の液体も調べた。定期的に飲んでいただろう青色の液体には、魔力を増幅させる作用のある物が含まれていた。更には、使用どころか栽培すら禁止されている薬草も含まれていた。それが、魔力を吸い取ると言われている薬草だった。
そして、赤色の液体にも体内を壊すとされていて、栽培や使用禁止とされている薬草が入っていた。
どれも、昔、罪人に対して使用されていた物だった。そして、それを作っていたのが、その当時の神官達だった。それが、200年程前に使用禁止とされ、薬草を栽培する事も薬草の種を保持する事も禁止された。
それを、神官となったアンセルムが偶然知り、その薬を作ってカミリアに飲ませていたのだ。
「それに、カミリアに淹れた最後のお茶は、本当に素晴らしく最悪な物だったわね」
あのお茶を飲んでいたら、カミリアはスネフェリングに辿り着く迄に身体が壊れて1年も経たずに死んでしまっていたのかもしれない。
「あの時のお茶を、カミリアは飲んでいなかった?」
「ええ、飲んでいないわ」
「そんな筈は……ヘレンティナの魔力は今迄ずっと落ち着いていたんだ!完璧に奪い取った筈だ!私の作った薬は完璧だった!」
今迄黙っていたアンセルムが、怒りでフルフルと震えている。何て愚かな大神官だ。
「アマデューが、密かに青色と赤色の薬に手を加えておいたのよ。身体が壊れた様にみせかけ、魔力を溢れた様にみせかけるように。そして、ヘレンティナに、魔力が安定しているように見せかける薬を飲ませていたのよ」
「アマデューが!?ヘレンティナにも!?」
アマデューの薬草の知識はとんでもなかった。私が時間を掛けて調べた薬草を聞くと、すぐにそれらに対応する薬を作り上げ、更にヘレンティナに飲ませる薬も同時に作り上げた。勿論、ヘレンティナに飲ませていた薬は魔力を安定させる薬であって無害な物で、それに依って体調を崩したり、まして、死ぬような事などない物だ。
それから、時が来るまでは─と、すぐに魔力を取り戻す事はせず、先ずはカミリアの身を護る為にスネフェリングに保護してもらい、そこで壊れていた身体を修復する薬を飲ませていた。だから、カミリアの身体はいつ魔力を取り戻しても、それらを全て受け入れられる状態になっていた。
そして、ルテリアルとスネフェリングの5年の契約期間が切れ、ルテリアルが契約を反故して、アマデューが大神官の座から退き、アンセルムが大神官の座に就いた今、カミリアの魔力を取り戻す事になった。
「私にとっては、オーウェンもヘレンティナもカミリアも皆同じように愛しい存在だったわ。3人には何の罪もないもの。でも……同じ家族でありながら、カミリアを魔力無しの汚点と言うだけで虐げていた事は許される事ではないわ。カミリアが死んでも構わない─と言ったオーウェンとヘレンティナを、私が見守り続ける事は心情的には難しいわ。ただ、私を救ってくれたエリアーヌとの約束を違える事はしたくない。だから、オーウェンには、大魔女からの加護を掛けた魔道具を与える事にしたわ。それがある限り、オーウェンは何者からも護られるわ」
それが、私からオーウェンへの最後の贈り物だ。もう二度と、私がルテリアルの地に踏み入る事は無い。
「ヘレンティナは!?ヘレンティナには──」
「魔力を失っても生きている─だけで満足できないの?」
元の体に戻るだけと言っても、一気に魔力を失うと命に関わって来る可能性はある。だから、それでも体が耐えられるように魔法を掛けている。死ぬ事は無い。
「せめて……色を……でなければ………」
ヘレンティナの本来の姿は、赤髪に緑色の瞳。それは、エイダンにもエリアーヌにも無い色だ。なら『 ヘレンティナは誰の子だ?』『カミリアは誰の子だ?』となるのは必死だ。
「ヘレンティナの為とは言え、そこまで私が面倒をみる義理は無いわ。自分で説明すれば良いわ。アンセルムと一緒にね」
「オードリナ様!」
「ヘレンティナ…可哀想に。もう、魔力も半分以上失っているわね」
「半分以上!?な…何とかなりませんか!?このままでは、ヘレンティナが死んでしまいます!大魔女のオードリナ様なら、ヘレンティナを──」
「カミリアを殺そうとしておいて、よくそんな事が言えるわね」
時間をかけて少しずつじわじわと苦痛を味わわせ、最後にカミリアが死んでも構わないと、ヘレンティナの為に全てを奪い取ろうとしたカティエ。勿論、何も知らないヘレンティナは何も悪くはないし、寧ろ被害者と言って良いのかもしれない。
でも、ヘレンティナも、カミリアを魔力無しの汚点だと虐げていた事も事実。
「まぁ、安心しなさい。魔力が抜けて行く時の苦痛は治める事はできないけど、魔力が全て抜けてもヘレンティナが死ぬ事はないわ。もともとそうだったから。本来の身体に戻るだけだから」
「本来の身体に戻るって、一体何を仰って─」
こんな時ででもしらを切るとは。
「もう、健気で謙虚な王妃を演じる必要は無いわ。貴方達がして来た事は全て知っているから」
「いつ……」
「ヘレンティナが魔力暴走を起こした時よ」
カミリアのクローゼットの中の引き出しにあった赤色と青色の液体も調べた。定期的に飲んでいただろう青色の液体には、魔力を増幅させる作用のある物が含まれていた。更には、使用どころか栽培すら禁止されている薬草も含まれていた。それが、魔力を吸い取ると言われている薬草だった。
そして、赤色の液体にも体内を壊すとされていて、栽培や使用禁止とされている薬草が入っていた。
どれも、昔、罪人に対して使用されていた物だった。そして、それを作っていたのが、その当時の神官達だった。それが、200年程前に使用禁止とされ、薬草を栽培する事も薬草の種を保持する事も禁止された。
それを、神官となったアンセルムが偶然知り、その薬を作ってカミリアに飲ませていたのだ。
「それに、カミリアに淹れた最後のお茶は、本当に素晴らしく最悪な物だったわね」
あのお茶を飲んでいたら、カミリアはスネフェリングに辿り着く迄に身体が壊れて1年も経たずに死んでしまっていたのかもしれない。
「あの時のお茶を、カミリアは飲んでいなかった?」
「ええ、飲んでいないわ」
「そんな筈は……ヘレンティナの魔力は今迄ずっと落ち着いていたんだ!完璧に奪い取った筈だ!私の作った薬は完璧だった!」
今迄黙っていたアンセルムが、怒りでフルフルと震えている。何て愚かな大神官だ。
「アマデューが、密かに青色と赤色の薬に手を加えておいたのよ。身体が壊れた様にみせかけ、魔力を溢れた様にみせかけるように。そして、ヘレンティナに、魔力が安定しているように見せかける薬を飲ませていたのよ」
「アマデューが!?ヘレンティナにも!?」
アマデューの薬草の知識はとんでもなかった。私が時間を掛けて調べた薬草を聞くと、すぐにそれらに対応する薬を作り上げ、更にヘレンティナに飲ませる薬も同時に作り上げた。勿論、ヘレンティナに飲ませていた薬は魔力を安定させる薬であって無害な物で、それに依って体調を崩したり、まして、死ぬような事などない物だ。
それから、時が来るまでは─と、すぐに魔力を取り戻す事はせず、先ずはカミリアの身を護る為にスネフェリングに保護してもらい、そこで壊れていた身体を修復する薬を飲ませていた。だから、カミリアの身体はいつ魔力を取り戻しても、それらを全て受け入れられる状態になっていた。
そして、ルテリアルとスネフェリングの5年の契約期間が切れ、ルテリアルが契約を反故して、アマデューが大神官の座から退き、アンセルムが大神官の座に就いた今、カミリアの魔力を取り戻す事になった。
「私にとっては、オーウェンもヘレンティナもカミリアも皆同じように愛しい存在だったわ。3人には何の罪もないもの。でも……同じ家族でありながら、カミリアを魔力無しの汚点と言うだけで虐げていた事は許される事ではないわ。カミリアが死んでも構わない─と言ったオーウェンとヘレンティナを、私が見守り続ける事は心情的には難しいわ。ただ、私を救ってくれたエリアーヌとの約束を違える事はしたくない。だから、オーウェンには、大魔女からの加護を掛けた魔道具を与える事にしたわ。それがある限り、オーウェンは何者からも護られるわ」
それが、私からオーウェンへの最後の贈り物だ。もう二度と、私がルテリアルの地に踏み入る事は無い。
「ヘレンティナは!?ヘレンティナには──」
「魔力を失っても生きている─だけで満足できないの?」
元の体に戻るだけと言っても、一気に魔力を失うと命に関わって来る可能性はある。だから、それでも体が耐えられるように魔法を掛けている。死ぬ事は無い。
「せめて……色を……でなければ………」
ヘレンティナの本来の姿は、赤髪に緑色の瞳。それは、エイダンにもエリアーヌにも無い色だ。なら『 ヘレンティナは誰の子だ?』『カミリアは誰の子だ?』となるのは必死だ。
「ヘレンティナの為とは言え、そこまで私が面倒をみる義理は無いわ。自分で説明すれば良いわ。アンセルムと一緒にね」
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