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24 スネフェリング帝国

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転移魔法は、色々と凄かった。
2日かかる海路を一瞬で移動した。ただ、その代償もまた凄かった。一気に凝縮された様な船酔いに襲われ、私とレオノールは丸一日寝込む事になった。そのせいで、港町で1泊する事になったけど、スネフェリングの使者も護衛も、嫌な顔をする事はなく『無理せずゆっくり休んで下さい』と気を遣ってくれて、体力回復のポーション迄くれた。

今滞在している港町は、どの国にも属さない独立した町で、この町を攻め入れたり独占したりする事は禁止されている。その為、殆どの住民が商人で、町も活気で溢れている。そして、この港町を出ると、いよいよ異国の地となる。スネフェリング帝国は、大陸でも最北の地にあり、この港町から更に1週間程かかる。

「長距離転移となると、更に転移酔いが酷いので、様子をみながら近距離転移を繰り返します」

なんとも高待遇だ。レオノールのお陰だろうけど。

「気を遣っていただいて、すみません」
「そんな事は気にしないで下さい」

スネフェリングの使者は優しい。私にまだ、人質としての価値があるから?無能と知られたら──





******

あれから、近距離転移を繰り返し、1週間程かかる道程を2日で移動した。遠距離転移とは違い、軽い酔い程度で済み、数度繰り返していくうちに体も慣れていき、スネフェリング帝国に着いた時は、特に体の不調も無かった。



「明日の午後に、皇帝陛下に謁見していただきますから、それ迄はゆっくり過ごして下さい」

城に着いた後、直ぐに部屋に案内された後、使者はそう言うと直ぐに下がって行った。
しかも、案内されたのはとても広い部屋だった。

「ベッドが……大き過ぎる………」

部屋の奥にあるベッドは、大人が2人寝れる位の大きさで、部屋にあるソファーでさえ、オニキスの私のベッドより大きい。取り敢えずの部屋なのかもしれない。明日になれば、良くて離宮、最悪地下の部屋に移動になるかもしれないから、少ないとは言え、持って来た荷物はそのままにしておいた方が良いよね?

コンコン──「失礼します」と言って入って来たのは、2人の使用人らしき人達だった。

「本日より、王女様のお世話をさせていただきます、アンナとウラリーと言います。宜しくお願い致します。早速ですが、荷解きを手伝いに参りました」
「………お世話?」

ーお世話をされる事なんてあるの?ー

「あの…私なら大丈夫です。ある程度は1人で何でもできますから。それに、荷解きと言っても、荷物はあまりないし、どうせ、数日中に移動するだろうから、そのままの方が良いですよね?」
「え?移動…ですか?それは聞いていませんから、無いと思いますが、後程確認しておきます
「え?」

と、私が困惑している間にウラリーさんが荷解きを始め、私はアンナさんが淹れてくれたお茶を飲んだ。
それから、夜はレオノールと一緒にご飯を食べて、入浴後はアンナさんに『お疲れでしょう?』と言われて、人生初のマッサージをされて、あまりの気持ち良さに、私はそのまま眠ってしまった。




******


「ドラクレイ様、カミリア様は、本当にルテリアルの王女なんですか!?15歳なんですか!?」

帰国した日の夜、王城の私の執務室にやって来たのは、カミリア王女に付けた侍女のアンナだ。

「ああ、カミリア様はルテリアルの第二王女に間違いないよ。ちなみに、もう少ししたら、16歳を迎えるそうだよ」
「じゅっ──16!!??」

ーアンナの言いたい事は、分からなくもないー

「王女としての荷物が、あれだけですか!?ボロボロになった地味なワンピースが数枚だけですか!?アクセサリーの類は一切無いんですよ!?」
「え?」
「それに、入浴のお手伝いをさせていただいた後、マッサージをさせていただきましたけど、まぁ…途中で気持ちよさそうに眠ってしまって、その寝顔がまた可愛らしかっ──たのは置いといて、あの細さは異常です!体罰などの痕跡はありませんが、15歳とは思えない細さです!平民の方がまだ肉付きが良い位です!」

年齢よりも下に見えるのは分かっていたけど、荷物に関しては驚きだ。今迄の扱いは別として、見栄を張って調えて来ると思っていた。その見栄さえ無いとは。

「アンナとウラリーには伝えておこう。カミリア王女を連れて来たのは、表向きは“人質”だけど、本当は、アマデュー大神官にカミリア王女の保護を頼まれたからだ」
「……保護…ですか?」
「私も詳しくは分からないけど、アマデュー大神官にとって、カミリア王女は大切な存在みたいだから、色々と気遣ってもらいたい。あ、カミリア王女自身も知らない事で、まだ伝えるべき時ではないから、秘密にしておくように」
「承知しました。では、私達の好きなようにお世話をさせていただいて良いんですね?」
「勿論だ」
「お任せ下さい。大神官様の大切な存在と言うならは、私達にとっても大切なお方ですから!」

そう言うと、アンナはニコニコと笑いながら執務室から出て行った。



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