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19 使者の考察

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スネフェリング帝国の使者滞在2日目


昼食後に、支援についての話し合いが行われる。そこに、オードリナ様と大神官様も参加するそうだ。

「王族も参加するそうよ」
「そうなんですね」
「カミリア…他人事の様に返事をしているけど、貴方も参加するのよ」
「そうな───え?私が!?」
「何をそんなに驚いているの?カミリアは第二王女でしょう?」

第二王女とは名ばかりの汚点だ。お母様以外からは王女扱いされた事はない。王城の敷地内に住んでいるだけで、本殿にすらもう何年も足を踏み入れていない。国王に至っては、私の事を娘とも思ってないだろう。

「でも…私は本殿に立ち入る事─の前に、この離宮オニキスから出る事も禁止されてるから……」

庭に出る事でさえ禁止されている。そんな私が、その話し合いに参加するなんて、国王は認めないと思う。それに、私が参加すれば不利になるかもしれない。

「カミリアの参加は、スネフェリング帝国からの指示よ」


『国王、王妃、王子と2人の王女も参加させるように。でなければ、会議の場を設けるつもりはない。我々は、帰国させてもらう』

と、スネフェリングの使者が国王に、そう告げたそうで、国王は渋々その提案を受け入れたそうだ。渋々ながらも受け入れたと言う事は、国王も少しは危機意識を持てるようになったのかもしれない。
色んな不安はあるけど、スネフェリングから言われて国王が受け入れたなら、私も参加するしかない。

「だから、時間もない事だから、準備をしましょう」

参加する事が決まっているのに、私の部屋に侍女が来る気配すらない。オードリナ様は、こうなると思っていたから、朝から私の所に来てくれたんだろう。

「ありがとうございます」

ーせめて、見た目だけでも少しだけでもマシにしないとー

そう思いながら、私は準備を始めた。






*スネフェリング帝国使者視点*


「まさか、本当に晩餐会に出席とは思わなかったな」
「ですね」

カミリア第二王女

大神官からの情報と、独自に調査した第二王女は──

現王妃の一人娘で、魔力無しとして生まれた為“王族の汚点”と呼ばれ、離宮オニキスに幽閉されていて、公の場に姿を現した事がない。数少ない離宮の使用人によると、髪は父王と同じ金髪だが、瞳は灰色で暗い印象なんだとか。

4大精霊の加護が急激に低下したのは、汚点のせいだと言う事で、先の争い時には、辺境地にある離宮に追いやられていた。

ーどこの親が、子供を死地に追いやると言うんだー

その辺境地は、激戦地とも言われていたようだが、なんとか踏ん張りギライマを退け、第二王女も生き延びた。本当に、運が良かったと言うしかないだろう。

「今日の会議には来ますかね?」
「来るだろうし、来なければ交渉決裂でスネフェリングに帰国するだけだ。ルテリアルに温情を掛ける必要はないからな」

ルテリアルを支援するのは、ルテリアル王国の為ではなく、大神官アマデューへの恩返しの為だ。その第一条件の鍵が、第二王女カミリア。

「大の大人が未成年の子供に対して“汚点”だなんて、よくそんな事を平気で口にできますよね?」
「この国のトップが馬鹿だからな。精霊の加護が失いつつあるのを、子供一人のせいにしているんだから」

貴い存在の精霊が、子供一人に罪を負わせる─と、本気で思っている事の方が精霊を侮辱しているとは思わないんだろうか?スネフェリングは実力主義国家だ。勿論、神や精霊に祈りを捧げたり願いを乞う事もあるが、国の衰退を子供一人に押し付けたりはしない。

「それに、加護がある……と言う割には、この国の雰囲気と言うか空気?が、何となく重くないですか?私は、もっと清らかなイメージがあったんですけど…」

ルテリアルは年中温暖な気候で、まだ1日しか過ごしていないが、過ごしやすいとは思う。でも、確かに、少しの息苦しさの様なものはある。

「ま、今日のこれからの会議で明後日には帰れるだろうから、それ迄の我慢だな」

ルテリアルに長居をするつもりはない。得るものを得て帰り、後は戦略を立てギライマを打ち返すだけだ。

そうして、スネフェリングの使者達は、会議でのこれからの流れを確認した後、会議の場となる部屋へと移動した。




会議室に入ると、既に椅子に座っていたのは大神官アマデューとルテリアルの宰相と、書記官だけだった。

ー本当に、馬鹿にするのも大概にしろよ?ー

支援を乞うて来たのなら、私達よりも先に来て迎え入れるのが筋だろう。私が文官だから─と舐めているのか?イライラしているのを顔には出さず我慢していると、アマデュー大神官が笑顔のまま軽く首を振った。

ーあぁ、この対応が、ルテリアル国王のなのかー

『お気の毒に……』

と、声なく呟いた時、会議室の扉が開き、王族一同がやって来た。




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