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11 大魔女と第二王女
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「大魔女様?」
エリアーヌ様の親友で、その縁でお兄様とお姉様を見守る為にルテリアルに居ると言う大魔女。それに、今回のギライマからの侵略を阻止できたのも大魔女様の力も大きかったと。
「あの…今回、ルテリアルを救っていただき、ありがとうございました。私なんかがお礼を言うのは、烏滸がましい事かもしれませんが…」
「烏滸がましい事なんてないわよ。王女殿下からそう言ってもらえて、私は嬉しいわ」
ー“王女殿下”なんて呼ばれたのは、いつぶりかなぁ?ー
「えっと……それで、ここへは何をされに?お兄様とお姉様は、ここには居ませんが……」
「オーウェンとヘレンティナが居ない事は知ってるわ。ここには、貴方に会いに来たのよ」
「へ?私に…ですか?」
何故、大魔女と言うご立派な人が私に?こんな所に追いやられた私に会いに来るなんて、お母様ぐらいだ。お客様なんて今迄来た事もない。
「あっ!もしかして……私…何か罰でもあるんでしょうか?」
『ギライマからの侵略は、“汚点”の存在が切っ掛けで起こった』
『“汚点”の存在が、ルテリアルに不穏をもたらす』
私が今、そう言われている事を知っている。もし、私がいなければ、起こらなかったかもしれない争いだったかもしれない。
「貴方に、受けなければいけないような罰はないわよ。私はただ、貴方─カミリア王女に会って話がしたかっただけよ」
大魔女様が指をくるくる回すと、今迄何もなかった机の上に、紅茶とお菓子が現れた。
魔女と魔法使いの大きな違いは、魔女は無から物を創り出す事ができるけど、魔法使いは自身の魔力を元にしてしか物を作る事ができない事だ。
「わぁー!」
「さぁ、これを食べながら、私と話をしましょう」
大魔女様はニッコリ微笑みながら椅子に座った。
*オードリナ視点*
「これが、マカロンなんですね。甘くて美味しい…」
「………」
ーこの子は本当に14歳なの?ー
オーウェンやヘレンティナはもっと大きい…と言うか、あの2人は平均的な体格だと思うから、カミリアが小さ過ぎる。
「苦味の無い紅茶もあるんですね。これなら、私も何杯でも飲めます。この茶葉は、高価な物なんですか?」
「………」
ーいたって普通の茶葉よ─なんて言えないわよね?ー
「そんなに高価な物ではないわ。淹れ方次第で味も変わるから…この茶葉をプレゼントするから、淹れ方も教えてあげるわ。そうすれば、いつでも飲めるから」
「ありがとうございます」
マトモな扱いは受けてないかも─とは思っていたけど、王妃のカティエがしっかりしているから大丈夫だろう─とも思っていたけど……
「ねぇ、カミリア、何か困っている事は無い?」
「えっと……」
「何でもいいのよ?食事に関してとか、使用人に対してとか……」
「いえ……自分の無力さ以外に困ってる事は………」
「そう………」
そうよね。初めて会った私に、言えるような事はないわよね。まして、自分自身に自信どころか、存在意義も見出だせていないようだから。
ーもっと早く、カミリアに会いに来ていれば良かったー
「……あ…………」
「?」
軽く視線を下げて思案していると、ふとカミリアが声を上げた。そのカミリアに視線を向けると、私の右側の少し上の方に視線を向けて笑っていた。
「何かあった?」
「あ!いえ!何も!何も見えてません!」
“何も見えてません”
ー何か…見えているの?ー
サッと意識を巡らせても感じるモノは無い。
もう一度カミリアに視線を向けると、口をギュッと噛み締めて顔色を悪くしていて、心なし震えているようにも見える。
「カミリア、大丈夫?」
「ごめんなさい!大丈夫です!」
「そう………」
きっと、これ以上何かを訊いたところで、カミリアからは何も聞けないだろう。
「私、そろそろ帰らないといけないのだけど、また会いに来ても良いかしら?」
「え?また……会いに…来てくれるんですか?」
「ええ、カミリアさえ良ければ」
「はい!また…いつでも……嬉しいです」
その嬉しそうな笑顔は、年相応の可愛らしい笑顔だ。
「それじゃあ、3日後に、この紅茶の茶葉を持って会いに来るわ」
「はい!」
そうして、私はカミリアと約束をしてから転移魔法を展開させた。
『──────て───がい──』
「─────え?」
転移魔法を展開させた時に、微かに声が聞こえた。それは、あまりにも儚げで朧げで、殆ど聞き取る事ができなかった。ただ、その声は不快なものではなく、透き通った音色のようで、頭の中に静かに響き渡るようなものだった。
「……それにしても………」
マカロンを知らないなんて事がある?マカロンは、ヘレンティナの一番好きなお菓子だから、ティータイムにはよく出されているのに。それに、苦味のある紅茶って何?この様子だと、マトモな食事が出されているとは思えない。
『フルトゥーレ、暫くの間、見て来てちょうだい』
私がそう呟くと、ポッと金色の光が弾けて消えた。
*??????*
「飲んでいるのを確認しているの?」
「はい。先週も1日寝込んでいました」
「1日?いつもは2、3日寝込んでいなかった?まさか……」
効果の期間が短くなってきているのと、比例するかのように、寝込む日数が減っているのでは?
「このままでは…マズイわね……アレをもっと強目に作るように伝えてちょうだい」
「承知しました」
ー必ず、全てを奪ってやるわー
エリアーヌ様の親友で、その縁でお兄様とお姉様を見守る為にルテリアルに居ると言う大魔女。それに、今回のギライマからの侵略を阻止できたのも大魔女様の力も大きかったと。
「あの…今回、ルテリアルを救っていただき、ありがとうございました。私なんかがお礼を言うのは、烏滸がましい事かもしれませんが…」
「烏滸がましい事なんてないわよ。王女殿下からそう言ってもらえて、私は嬉しいわ」
ー“王女殿下”なんて呼ばれたのは、いつぶりかなぁ?ー
「えっと……それで、ここへは何をされに?お兄様とお姉様は、ここには居ませんが……」
「オーウェンとヘレンティナが居ない事は知ってるわ。ここには、貴方に会いに来たのよ」
「へ?私に…ですか?」
何故、大魔女と言うご立派な人が私に?こんな所に追いやられた私に会いに来るなんて、お母様ぐらいだ。お客様なんて今迄来た事もない。
「あっ!もしかして……私…何か罰でもあるんでしょうか?」
『ギライマからの侵略は、“汚点”の存在が切っ掛けで起こった』
『“汚点”の存在が、ルテリアルに不穏をもたらす』
私が今、そう言われている事を知っている。もし、私がいなければ、起こらなかったかもしれない争いだったかもしれない。
「貴方に、受けなければいけないような罰はないわよ。私はただ、貴方─カミリア王女に会って話がしたかっただけよ」
大魔女様が指をくるくる回すと、今迄何もなかった机の上に、紅茶とお菓子が現れた。
魔女と魔法使いの大きな違いは、魔女は無から物を創り出す事ができるけど、魔法使いは自身の魔力を元にしてしか物を作る事ができない事だ。
「わぁー!」
「さぁ、これを食べながら、私と話をしましょう」
大魔女様はニッコリ微笑みながら椅子に座った。
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「これが、マカロンなんですね。甘くて美味しい…」
「………」
ーこの子は本当に14歳なの?ー
オーウェンやヘレンティナはもっと大きい…と言うか、あの2人は平均的な体格だと思うから、カミリアが小さ過ぎる。
「苦味の無い紅茶もあるんですね。これなら、私も何杯でも飲めます。この茶葉は、高価な物なんですか?」
「………」
ーいたって普通の茶葉よ─なんて言えないわよね?ー
「そんなに高価な物ではないわ。淹れ方次第で味も変わるから…この茶葉をプレゼントするから、淹れ方も教えてあげるわ。そうすれば、いつでも飲めるから」
「ありがとうございます」
マトモな扱いは受けてないかも─とは思っていたけど、王妃のカティエがしっかりしているから大丈夫だろう─とも思っていたけど……
「ねぇ、カミリア、何か困っている事は無い?」
「えっと……」
「何でもいいのよ?食事に関してとか、使用人に対してとか……」
「いえ……自分の無力さ以外に困ってる事は………」
「そう………」
そうよね。初めて会った私に、言えるような事はないわよね。まして、自分自身に自信どころか、存在意義も見出だせていないようだから。
ーもっと早く、カミリアに会いに来ていれば良かったー
「……あ…………」
「?」
軽く視線を下げて思案していると、ふとカミリアが声を上げた。そのカミリアに視線を向けると、私の右側の少し上の方に視線を向けて笑っていた。
「何かあった?」
「あ!いえ!何も!何も見えてません!」
“何も見えてません”
ー何か…見えているの?ー
サッと意識を巡らせても感じるモノは無い。
もう一度カミリアに視線を向けると、口をギュッと噛み締めて顔色を悪くしていて、心なし震えているようにも見える。
「カミリア、大丈夫?」
「ごめんなさい!大丈夫です!」
「そう………」
きっと、これ以上何かを訊いたところで、カミリアからは何も聞けないだろう。
「私、そろそろ帰らないといけないのだけど、また会いに来ても良いかしら?」
「え?また……会いに…来てくれるんですか?」
「ええ、カミリアさえ良ければ」
「はい!また…いつでも……嬉しいです」
その嬉しそうな笑顔は、年相応の可愛らしい笑顔だ。
「それじゃあ、3日後に、この紅茶の茶葉を持って会いに来るわ」
「はい!」
そうして、私はカミリアと約束をしてから転移魔法を展開させた。
『──────て───がい──』
「─────え?」
転移魔法を展開させた時に、微かに声が聞こえた。それは、あまりにも儚げで朧げで、殆ど聞き取る事ができなかった。ただ、その声は不快なものではなく、透き通った音色のようで、頭の中に静かに響き渡るようなものだった。
「……それにしても………」
マカロンを知らないなんて事がある?マカロンは、ヘレンティナの一番好きなお菓子だから、ティータイムにはよく出されているのに。それに、苦味のある紅茶って何?この様子だと、マトモな食事が出されているとは思えない。
『フルトゥーレ、暫くの間、見て来てちょうだい』
私がそう呟くと、ポッと金色の光が弾けて消えた。
*??????*
「飲んでいるのを確認しているの?」
「はい。先週も1日寝込んでいました」
「1日?いつもは2、3日寝込んでいなかった?まさか……」
効果の期間が短くなってきているのと、比例するかのように、寝込む日数が減っているのでは?
「このままでは…マズイわね……アレをもっと強目に作るように伝えてちょうだい」
「承知しました」
ー必ず、全てを奪ってやるわー
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