上 下
8 / 46

8 大魔女と聖女③

しおりを挟む
白属性と光属性は、もともとは一つの属性だったと言われている。それ故に、白属性と光属性は相性が良いと言われている。因みに、今の大神官アマデューは、その白属性と光属性の二つの属性持ちだ。大陸唯一無二の大神官だ。


「同じ白属性のアンセルム様には特に何も感じなかったんですけど、ヘレンティナ様に会った時に…何と言うか……何かが違うような感じがしたんです。でも、それが何なのかは分からなくて…んー……すみません。私の感覚的なものなので、説明できなくて……」
「光属性のレオノール感じる事なのかもしれないわね」

大魔女と言われているけど、全てに於いて完璧と言う訳ではない。魔女の血には色んな制約が掛けられているし、特に、白と光の属性には魔女の力が及ばない事の方が多かったりもする。

「同じ白と光属性を持つアマデューなら、それが何か分かるかもしれないわね」
「そうですね。私もまだお会いできてませんが、私に会いに一度ルテリアルにお戻りになるそうです」

久し振りに出現した聖女だ。流石に戻って来ざるを得ないのだろう。この国の大精霊の加護は未だに薄れて行く一方だ。それを、現国王がどこまで把握できているのか。それに、大神官が自ら大陸中を旅して解決策を探していると言う事を、理解しているのかも怪しい。

ーエリアーヌが存命の時は、もっとしっかりした国王陛下だったのにー

はぁ……と、知らず知らずのうちにため息が出る。

「その違和感については、アマデューにも相談するとして……レオノールは、あれから第二王女のカミリアには会えた?」
「いえ、会えてません。その……『会う必要も無い』と……国王陛下に言われてしまって………」
「何て事を………」

ー魔力無しと言うだけで、そんな扱いをするなんてー

実父で国のトップである国王がなのだから、第二王女カミリアはな扱いをされてはいないだろう。

「カミリア様は……大丈夫でしょうか?」
「レオノール……貴方は優しい子ね」

ーこのまま、周りに流されない子で居て欲しいわー

第二王女カミリアの事は、ずっと気にはなっていた。ただ、オーウェンとヘレンティナの事が第一優先になっていたから、後回しになっていた。それに、実母のカティエが居るのだから、特に問題視する事もないだろう─とも思っていた。

『エイダンの子と言うなら、カミリアだって私の子も同然よ!』

なんて……エリアーヌが居たら、きっとそう言って、カミリアの事を護っただろう。

「随分長居をしてしまったわね。レオノール、話をしてくれてありがとう。今日の事は、2人だけの秘密ね?それじゃあ…おやすみなさい」
「はい。おやすみなさい」

お互いが挨拶を済ませると、大魔女オードリナは、また転移魔法を展開させ──




オードリナが降り立ったのは、王都から少し離れた所にある森の中。そこに、オードリナが住まう小さな家がある。その森全体に魔法が掛けられていて、オードリナが許した者しか、その家に辿り着けないようになっている。その為、昼夜問わず静かだ。


数百年前から、この国の加護が薄れて来ていたのは、過去の魔女達の日記にも記されていた。それが、その加護が更に急激に薄れ出したのが、10年程前。丁度、双子とカミリアが生まれた頃だ。そして、カミリアは魔力を持たずに生まれた。

“精霊に見放された子”

そう呼ばれるようになってしまったのは、そう言った理由こじつけもあるのだろう。

「愚かな者達ね……」

どうして精霊が、生まれたばかりの赤子に罰を与えると言うのか。もし、精霊の何かに触れて怒りを買ったとしても、精霊が赤子に罰を与えるとは考えられない。どんな赤子も純粋な存在で、精霊や神がその存在に呪いを掛けたり罰を与えたりする事は無い─と言う簡単な事にも気付かない王族や、それを支持する者達。

ー加護が薄れて来ている理由の一つなのかもしれないわねー

4大精霊の加護によって、少しずつ傲慢になって来ている王族や貴族達。民の殆どは、まだ精霊の力に感謝している気持ちが大きい。街を歩けば、精霊に感謝をしている民をよく見掛けるから。

「エリアーヌ………」

加護持ちだったエリアーヌが居たら、今よりはマシ国になったのかもしれない。
兎に角、大神官アマデューには魔法で手紙を飛ばしたから、何日かすればルテリアルに戻って来るだろう。
そうすれば、加護の事や、カミリアの事も何か分かるかもしれない。


「ん?」

ルテリアル王国は4大精霊の加護を受けた国。
そんな国に手を出した国は、尽く歴史から消えて行った──のは、もう昔の話。

「ついに……手を出そうと……やって来たわね。エイダンは……気付いていないでしょうね」

ガラリと纏う空気を変えて、大魔女オードリナは静かに移転魔法を展開させた。



しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました

さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。 王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ 頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。 ゆるい設定です

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話

甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。 王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。 その時、王子の元に一通の手紙が届いた。 そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。 王子は絶望感に苛まれ後悔をする。

王子殿下の慕う人

夕香里
恋愛
エレーナ・ルイスは小さい頃から兄のように慕っていた王子殿下が好きだった。 しかし、ある噂と事実を聞いたことで恋心を捨てることにしたエレーナは、断ってきていた他の人との縁談を受けることにするのだが──? 「どうして!? 殿下には好きな人がいるはずなのに!!」 好きな人がいるはずの殿下が距離を縮めてくることに戸惑う彼女と、我慢をやめた王子のお話。 ※小説家になろうでも投稿してます

婚約者から婚約破棄をされて喜んだのに、どうも様子がおかしい

恋愛
婚約者には初恋の人がいる。 王太子リエトの婚約者ベルティーナ=アンナローロ公爵令嬢は、呼び出された先で婚約破棄を告げられた。婚約者の隣には、家族や婚約者が常に可愛いと口にする従妹がいて。次の婚約者は従妹になると。 待ちに待った婚約破棄を喜んでいると思われる訳にもいかず、冷静に、でも笑顔は忘れずに二人の幸せを願ってあっさりと従者と部屋を出た。 婚約破棄をされた件で父に勘当されるか、何処かの貴族の後妻にされるか待っていても一向に婚約破棄の話をされない。また、婚約破棄をしたのに何故か王太子から呼び出しの声が掛かる。 従者を連れてさっさと家を出たいべルティーナと従者のせいで拗らせまくったリエトの話。 ※なろうさんにも公開しています。 ※短編→長編に変更しました(2023.7.19)

【完結済】姿を偽った黒髪令嬢は、女嫌いな公爵様のお世話係をしているうちに溺愛されていたみたいです

鳴宮野々花@初書籍発売中【二度婚約破棄】
恋愛
王国の片田舎にある小さな町から、八歳の時に母方の縁戚であるエヴェリー伯爵家に引き取られたミシェル。彼女は伯爵一家に疎まれ、美しい髪を黒く染めて使用人として生活するよう強いられた。以来エヴェリー一家に虐げられて育つ。 十年後。ミシェルは同い年でエヴェリー伯爵家の一人娘であるパドマの婚約者に嵌められ、伯爵家を身一つで追い出されることに。ボロボロの格好で人気のない場所を彷徨っていたミシェルは、空腹のあまりふらつき倒れそうになる。 そこへ馬で通りがかった男性と、危うくぶつかりそうになり────── ※いつもの独自の世界のゆる設定なお話です。何もかもファンタジーです。よろしくお願いします。 ※この作品はカクヨム、小説家になろう、ベリーズカフェにも投稿しています。

茶番には付き合っていられません

わらびもち
恋愛
私の婚約者の隣には何故かいつも同じ女性がいる。 婚約者の交流茶会にも彼女を同席させ仲睦まじく過ごす。 これではまるで私の方が邪魔者だ。 苦言を呈しようものなら彼は目を吊り上げて罵倒する。 どうして婚約者同士の交流にわざわざ部外者を連れてくるのか。 彼が何をしたいのかさっぱり分からない。 もうこんな茶番に付き合っていられない。 そんなにその女性を傍に置きたいのなら好きにすればいいわ。

処理中です...