見捨てられた(無自覚な)王女は、溺愛には気付かない

みん

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3 誕生会

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カロルはカティエ王妃専属の侍女で、カティエが側妃として王城に来る前─公爵令嬢だった頃から侍女をしている。

「まだ、何か見えるなどとおかしな事を…またカティエ王妃を悲しませたいのですか?」
「そんな事は──」
「なら、またお薬をお飲み下さい」

カロルがカミリアに、赤色の液体の入った小瓶を差し出すと、カミリアは素直にそれを受け取った。

「分かったわ」

カミリアが初めて“光る”を目にしたのは3歳になってから。

『なにか、ひかってキレイ』

と、手を伸ばしながらポツリと呟けば、『精神的に病んでいる』『魔力が無い事で、妄想癖があるのでは?』と言われるようになり──

『カミリア、私の可愛いひとり娘…どうかお願いよ。これ以上おかしな事を口にして、あなた自身が傷付くような事はしないで』
『おかあさま…はい…ごめんなさい……』

唯一私の味方で優しい母が、泣きながら私を抱きしめた。

ーおかあさまを、こまらせたくないー

そうして、精神を落ち着かせる薬だと言う事で、定期的に赤色の薬を飲むようになった。その薬を飲むと、光って見えていた物が見えなくなった。だから、カミリアはやっぱり自分が本当におかしかったのか?と思っていた。ただ、その薬を飲むと体が怠くなり、数日寝込んでしまうのだ。

ー今コレを飲めば、誕生会には参加どころか、食事も食べる事はできないよねー

「では、必ず今日中にお飲み下さいね。では、私は明日の準備で忙しいのでこれで失礼します。良いですね?くれぐれも、おとなしくしていて下さいね……王妃様の為にも……」

と言うと、カロルは部屋から出て行った。
この薬を飲まないと言う選択肢は無い。何故か、飲んだと嘘をついても必ずバレてしまうのだ。バレると母が悲しむし、何よりカロルから受ける罰が何よりも怖かった。

『何故、カティエ様を困らせるような事をされるのですか!?』

と私を裏部屋に連れ出して、普段目に言えない所を鞭打ちされるのだ。打たれた後は皮膚が腫れてジクジクと痛んで熱をもち、2日寝込んでしまう事もある。そして、痛みが少し落ち着いて来た頃、それなりの高価なポーションで治癒される為、私がそんな仕打ちを受けていると言う事は誰も知らない。母でさえも。

『カミリア様がカティエ様の為にできる事は、たった一つだけです。おとなしく過ごす事です』

今迄もずっとおとなしく過ごしていた。ただ、10歳の誕生日は貴族としては特別な意味のある誕生日。“汚点”と呼ばれる無能な私であっても、現王妃の娘であるのは確かな事だから、誕生会に参加する事はできなくともプレゼントを貰ったり、いつもより豪華な食事ができたり、ケーキを食べるぐらいはできるかも─と、淡い期待をしていた。
それが───

「1人、ベッドの上で寝込んで迎えるのね……」

小瓶の蓋を開けて、その赤色の液体を一気に飲み干す。

「カミリア…お誕生日、おめでとう……」

自分で自分にお祝いを口にした後、私は体が怠くなる前に寝る準備を始めた。







********


翌日の双子の王子と王女の10歳の誕生会は、盛大に執り行われた。
国中の殆どの貴族が集まり、双子への贈り物でホールが埋め尽くされそうな程だった。

「10歳のお誕生日、おめでとうございます」
「「ありがとう」」

祝の言葉を受けると、王子と王女はニッコリ微笑んでお礼を口にする。そんな2人の姿を、ホールの壇上に座って微笑ましく見ているのは、国王王妃両陛下。

「お2人とも、楽しそうですね」
「そうだな。カティエのお陰で、2人も立派に成長している。礼を言う」
「陛下……ありがとうございます」



「オーウェン、ヘレンティナ、おめでとう!」
「「オードリナ様!」」

そこへ、お祝いに駆け付けて来たのは、綺麗な白色の髪に、金色の瞳をした女性─この大陸唯一の大魔女であるオードリナだった。

“魔女”

“魔法使い”とは全く異なる存在。
魔法使いは、魔力を持って生まれた者で、その魔力を特化させ、その力を国の為に使ったり研究をする魔力持ち達の事を言う。基本、属性は一つだけで、稀に二つ持つ者も居る。両親が魔力持ちであれば、殆どの確率で子も魔力を持って生まれる。遺伝的要素が高い。
魔女は成長段階で覚醒する事が多く、遺伝的要素は殆ど無い。そして、属性は無い。覚醒した者だけが記憶や能力を引き継ぐようになっているようで、魔女になった者だけが使える言葉と呪文で属性関係なく魔法が使える存在だ。数年前迄、魔女は大陸中に数人居たが、今はこのオードリナただ1人。そして、歴代でも力が強いとされており、今では大魔女と呼ばれている。

基本、魔女はどの国にも属さない自由な存在だが、今はこのルテリアル王国に定住している。その理由が、今日の誕生会の主役の双子の為だった。




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