贈るコトバ

I am DOG

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崩壊

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 それから二か月後、幼馴染がD高校を受験するらしいという噂を耳にした。D高校って、確か商業科のはず。なぜ自分の偏差値より15も低い商業科の学校なんて選んだのか、直接訊く勇気が出なかった。

 志望校を変えたのが原因か、奴の成績は下がっていった。

 秋の定期テストでは、学年順位一桁台をキープした俺に対し、あいつの成績は70番も下がって三桁にまで落ちていた。全く勉強をしていないのが分かった。

 イラストにそれほど入れ込んでいるようには見えなかったから、何をしているのか気になった。

 奴と仲の良い妹に何となく相談してみたら、気になるなら納得がいくまで調べるべきよと、ストーカーの仕方を、それこそ歩行術から盗聴術に至るまで事細かく伝授してくれた。
 俺の妹の前世は、風魔か服部一族、もしくはFBI捜査官あたりか。

 
 放課後、俺はこっそり尾行した。

 奴は一人で駅前のカラオケルームに入っていった。狭い個室からは楽しそうに歌う声が漏れていた。歌の練習をしているようだった。

 それから数日間尾行を継続した結果、毎日少なくとも三時間以上はカラオケルームに籠っていることが分かった。正直、自業自得だと思った。


 翌日、ふと彼女に相談したくなった。

 いや、呼ばれた気がした。

 適当な理由で掃除当番をサボり、制服のまま病院へと向かう。

 今日はまだ火曜日。日曜日の会議まではまだまだ日がある。でも、何かに魂が引っ張られたのか、それとも台風による強風が俺の背中を押したのか、気づくと俺は病院まで走っていた。


 いつも通りにノックをすると、彼女の代わりに彼女の母親が小さく返事をした。

 病室の中は暗く、静かだった。

 いつも響く彼女の高い声は聞こえない。もう寝ちゃったのか。

 ベッドの上で寝ていた彼女――しかし、たった一枚の布切れに遮られ、その寝顔を見ることはできなかった。
 
 彼女は、二度と起きることはなかった。


 彼女の母親から聞いた「ありがとう、おつかれさま」という伝言、それが俺に対する最期の言葉だったらしい。その時も、そして今も、俺はその言葉の持つ意味を理解できずにいる。
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