39 / 48
第二章 最強娘の学園生活
地下水路を捜索するには広すぎる
しおりを挟む
テレーヌ市の地下にあるという大昔の水路。中で何が待ち構えているかわからないというのもあり、選抜するのだが、斡旋所から要請を受けた傭兵達、そして前回ピートを追い返した事も知られてしまっているので、俺にも白羽の矢が立つ。
だが、正直自信はない。
再びあの時のような力が出せるかは賭けだが、現在眠たそうに熊五郎の背中の上で涎を溢しそうに船を漕ぐアリステリアを単独で行かせる訳にもいかない。
熊五郎に関しても、サーシャ村でのカメ・レオンや先ほどの土竜顔といった魔物を察する能力に長けているのは、入り組んだ水路には必要だろう。
結局、俺とアリステリア、熊五郎、そしてルナ先生の四人で水路を捜索する事になった。
「問題は水路の入り口が何処にあるかだな」
随分と昔の水路であるため、水路自体はかなり地中深くにあると予想された。
何故なら、そうでもしなければ壁や門など重い建造物が地盤沈下を起こしてしまう。
手がかりを見つけたという報告を受けたイシューも加わるが、水路に関して詳しい事は知らないようで、手詰まりに。
「せめて、この下に確実に水路があると分かれば、掘ることも可能だとは思うのですが」
イシューの何気ない一言に、思わず俺は「あっ」と声をあげた。
十分に可能性がある場所に俺は心当たりがあったのだ。テレーヌ市で一番最初に消えたミオ。そして、その直前まで上空からその姿を捉えていたカルヴァンの話。
ミオが隠れていた場所こそ、地下に水路があるはずだった。
イシューに話をすると彼はすぐに手配へと動き出す。ミオの隠れていた場所は復興のために建て直しを行っていた現場の一角。イシューはすぐに持ち主に話をつけると、斡旋所に土木の要請を出した。
床用に貼り付けらた木板を全て剥がして集まった作業員総出で掘り進める。かなりの深さが予想出来た為、中心を一定に掘り進めると、穴を円状に広げる作業へ、そして再び中心を掘る。
現場は、徐々にすり鉢状に掘り進められ、穴が広がる度に、追加で作業員が投入されていく。
それは、ただただ深く一直線に穴を掘るよりも、安全を考慮したやり方。イシューの発想の天才ぶりを伺わせる。
「ほえー、イシューおにいちゃんがやったですか? スゴいです!」
「起きたのか、アリス」
作業は夜通し行われ、完全に眠っていたアリステリアが熟睡し終えて目を覚ますほどの時間が経過していた。
「アリス。ちょっといいかい? あ、ルナ先生もちょっと」
捜索に乗り出す前に俺は話をしておかなければならないこと事があった。
「もし、黄の魔王とやらが現れた場合、アリスとルナ先生は真っ先に逃げなさい。いいか、どれだけの広さか分からないが所詮水路だ。アリスが本気になれば壊しかねない」
「デヘヘヘヘ……」
アリステリアはなぜか照れ臭そうに笑う。
「今は褒めてないぞ? それで、ルナ先生には真っ先に外へとアリスを連れて行って欲しいのです」
「わかりました。しかしお父様は?」
「何処までできるかは分かりませんが時間を稼ぎます」
自信などない。しかし、アリステリアの親としての矜持というか、見栄というか。子供より後に死ぬ訳にはいかないからな。
そんな俺の想いなど知ってか知らずかルナ先生は快く承諾してくれた。
「見つかったぞーー!!」
夜中から始まった作業は昼過ぎまでかかったが、本当はもっと時間がかかっても仕方ないとさえ思っていた。
にもかかわらず、これだけの規模をやってしまうとはイシューの腕に感服してしまう。
捜索するのは俺の組を含めてたった三組。
「中はかなり複雑と思われる。それぞれマッピングを忘れるな! それと、必ずこの行灯の中の明かりが消えたら再度点け直して、帰還するように」
傭兵の中でもかなり若手に見える男がリーダーシップを発揮する。俺は納得して頷いた。
名前はたしかバベルとか。
前回のスタンピートで僅かに残った傭兵の一人で、汚名返上に燃えている。
妙に気になるのは熱く熱弁する度に、チラリとルナ先生の方に視線を送っていた。
捜索するにあたって大変なのは、ずっと水路に入る事が出来ないことだ。
時折、戻りマッピングした箇所で、再び穴を掘る。
そうでもしないと空気を確保出来ない。
「目標は、王都ミラージュ!」
バベルは一人、そう叫び張り切ってみせる。ミラージュでも同様の事件があることから、その目標は間違いではないのだが、恐らくは両方行き来しやすくするため途中には何かしらあるだろうとは予想がつきそうなものだが。
水路は長年使われていないにも関わらず、造り自体はわりとしっかりしているように見受けられた。
しかし、周りはとてもカビ臭い。
「パパ、これ……ここ、おかしくないです?」
「何かを引きずった跡?」
開けた穴の真下から北へかけて地面を引きずった二本の線。そう、ちょうどアリステリアと同じ足の幅の間隔。同じ年のミオのものの可能性が高く、引きずったと言うことは、別の誰かがその場にいたということ。
俺達はその跡を追跡調査していくと、別れ道にぶつかる。二度、三度と別れ道に出くわすが、遂に四度目になると、あの引きずった跡のような二本の線は見えなくなっていた。
「最初の捜索はここまでか」
初日は順調であったが、二日目以降になると急激に捜索の速度が日に日に落ちる。
何せ、別れ道の連続でテレーヌ市内だけでもバカ広い。
投入する人を増やしたにも関わらず、だ。
魔物の巣窟、そう誰もが思っていたのだが拍子抜けするほど魔物の姿はない。
そして遂にはあのスタンとピートが襲って来た門のあった付近までたどり着く。
そこは今までとは違い、広く作られた空間で、その中心にはぼんやりと行灯が照らす見知った顔の女の子の姿。
彼女は、こちらを虚ろな目をしながらぽつり呟く。
「そばに、来ないで」と。
だが、正直自信はない。
再びあの時のような力が出せるかは賭けだが、現在眠たそうに熊五郎の背中の上で涎を溢しそうに船を漕ぐアリステリアを単独で行かせる訳にもいかない。
熊五郎に関しても、サーシャ村でのカメ・レオンや先ほどの土竜顔といった魔物を察する能力に長けているのは、入り組んだ水路には必要だろう。
結局、俺とアリステリア、熊五郎、そしてルナ先生の四人で水路を捜索する事になった。
「問題は水路の入り口が何処にあるかだな」
随分と昔の水路であるため、水路自体はかなり地中深くにあると予想された。
何故なら、そうでもしなければ壁や門など重い建造物が地盤沈下を起こしてしまう。
手がかりを見つけたという報告を受けたイシューも加わるが、水路に関して詳しい事は知らないようで、手詰まりに。
「せめて、この下に確実に水路があると分かれば、掘ることも可能だとは思うのですが」
イシューの何気ない一言に、思わず俺は「あっ」と声をあげた。
十分に可能性がある場所に俺は心当たりがあったのだ。テレーヌ市で一番最初に消えたミオ。そして、その直前まで上空からその姿を捉えていたカルヴァンの話。
ミオが隠れていた場所こそ、地下に水路があるはずだった。
イシューに話をすると彼はすぐに手配へと動き出す。ミオの隠れていた場所は復興のために建て直しを行っていた現場の一角。イシューはすぐに持ち主に話をつけると、斡旋所に土木の要請を出した。
床用に貼り付けらた木板を全て剥がして集まった作業員総出で掘り進める。かなりの深さが予想出来た為、中心を一定に掘り進めると、穴を円状に広げる作業へ、そして再び中心を掘る。
現場は、徐々にすり鉢状に掘り進められ、穴が広がる度に、追加で作業員が投入されていく。
それは、ただただ深く一直線に穴を掘るよりも、安全を考慮したやり方。イシューの発想の天才ぶりを伺わせる。
「ほえー、イシューおにいちゃんがやったですか? スゴいです!」
「起きたのか、アリス」
作業は夜通し行われ、完全に眠っていたアリステリアが熟睡し終えて目を覚ますほどの時間が経過していた。
「アリス。ちょっといいかい? あ、ルナ先生もちょっと」
捜索に乗り出す前に俺は話をしておかなければならないこと事があった。
「もし、黄の魔王とやらが現れた場合、アリスとルナ先生は真っ先に逃げなさい。いいか、どれだけの広さか分からないが所詮水路だ。アリスが本気になれば壊しかねない」
「デヘヘヘヘ……」
アリステリアはなぜか照れ臭そうに笑う。
「今は褒めてないぞ? それで、ルナ先生には真っ先に外へとアリスを連れて行って欲しいのです」
「わかりました。しかしお父様は?」
「何処までできるかは分かりませんが時間を稼ぎます」
自信などない。しかし、アリステリアの親としての矜持というか、見栄というか。子供より後に死ぬ訳にはいかないからな。
そんな俺の想いなど知ってか知らずかルナ先生は快く承諾してくれた。
「見つかったぞーー!!」
夜中から始まった作業は昼過ぎまでかかったが、本当はもっと時間がかかっても仕方ないとさえ思っていた。
にもかかわらず、これだけの規模をやってしまうとはイシューの腕に感服してしまう。
捜索するのは俺の組を含めてたった三組。
「中はかなり複雑と思われる。それぞれマッピングを忘れるな! それと、必ずこの行灯の中の明かりが消えたら再度点け直して、帰還するように」
傭兵の中でもかなり若手に見える男がリーダーシップを発揮する。俺は納得して頷いた。
名前はたしかバベルとか。
前回のスタンピートで僅かに残った傭兵の一人で、汚名返上に燃えている。
妙に気になるのは熱く熱弁する度に、チラリとルナ先生の方に視線を送っていた。
捜索するにあたって大変なのは、ずっと水路に入る事が出来ないことだ。
時折、戻りマッピングした箇所で、再び穴を掘る。
そうでもしないと空気を確保出来ない。
「目標は、王都ミラージュ!」
バベルは一人、そう叫び張り切ってみせる。ミラージュでも同様の事件があることから、その目標は間違いではないのだが、恐らくは両方行き来しやすくするため途中には何かしらあるだろうとは予想がつきそうなものだが。
水路は長年使われていないにも関わらず、造り自体はわりとしっかりしているように見受けられた。
しかし、周りはとてもカビ臭い。
「パパ、これ……ここ、おかしくないです?」
「何かを引きずった跡?」
開けた穴の真下から北へかけて地面を引きずった二本の線。そう、ちょうどアリステリアと同じ足の幅の間隔。同じ年のミオのものの可能性が高く、引きずったと言うことは、別の誰かがその場にいたということ。
俺達はその跡を追跡調査していくと、別れ道にぶつかる。二度、三度と別れ道に出くわすが、遂に四度目になると、あの引きずった跡のような二本の線は見えなくなっていた。
「最初の捜索はここまでか」
初日は順調であったが、二日目以降になると急激に捜索の速度が日に日に落ちる。
何せ、別れ道の連続でテレーヌ市内だけでもバカ広い。
投入する人を増やしたにも関わらず、だ。
魔物の巣窟、そう誰もが思っていたのだが拍子抜けするほど魔物の姿はない。
そして遂にはあのスタンとピートが襲って来た門のあった付近までたどり着く。
そこは今までとは違い、広く作られた空間で、その中心にはぼんやりと行灯が照らす見知った顔の女の子の姿。
彼女は、こちらを虚ろな目をしながらぽつり呟く。
「そばに、来ないで」と。
0
お気に入りに追加
77
あなたにおすすめの小説

【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました
紗南
ファンタジー
異世界に神の加護をもらって転生した。5歳で前世の記憶を取り戻して洗礼をしたら魔力が∞と記載されてた。異世界にはない記号のためか魔力0と判断され公爵家を追放される。
国2つ跨いだところで冒険者登録して成り上がっていくお話です
更新は1週間に1度くらいのペースになります。
何度か確認はしてますが誤字脱字があるかと思います。
自己満足作品ですので技量は全くありません。その辺り覚悟してお読みくださいm(*_ _)m

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜
霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……?
生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。
これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。
(小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる