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第二章 最強娘の学園生活
分かれるテレーヌ市
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突如、俺達の目の前で倒したはずのピートの赤と黒のツートンカラーの髪が伸びたかと思うとスタンと融合して一体の魔物と化した。
しかし、不意に現れたアリステリアにその魔物は遥か彼方に吹き飛ばされてしまい、花火のように爆発してしまった。
「パパーっ、聞いてです、聞いてです! ルナ先生、凄いんです!!」
駆け寄って来たアリステリアを受け止めると、あれだけ漲っていた体内から力が抜け、どっと疲れが押し寄せてきた。
眩暈で視界が歪むと、ほんの一瞬、目の前に数字の10が現れたかと思うとすぐに消えた、ような気がした。
「ふぅ、ちょっと待ってなアリス。パパ、疲れてるんだよ」
その場に座り込み、膝の上にアリステリアを乗せると俺は大きく息を吐き出した。
「お疲れ、後始末は私がやっておくわ。アラキもだいぶ苦戦したようだし回収してくる」
「サラお姉ちゃん。熊五郎もお願いです。アラキのおじちゃんを助けに向かったはずですから」
「うん、任せて。って、カルヴァン、貴方は空にでも避難していて。襲って来た魔物と一緒にされちゃうわよ」
カルヴァンは頷くと黒い羽を羽ばたかせる。
「カルヴァン、ありがとう。色々と助かったよ」
「いや、俺様の目が節穴ではなかったと証明されたので満足だ。あのスタンとピートの兄妹を退けるとはな」
俺が礼を言うと少しはにかみながらもカルヴァンはそのまま飛び立って行く。間一髪のところを助けられ、最後も身を呈してピートを押し止めてくれた。
礼を言っただけでは、有り余るくらいに。
「パパー、話、聞いてるです?」
「ああ、ごめん。それで?」
アリステリアは学校で起こった事を一部始終、嬉々として話始めた。
アリステリアの話では、初めは皆で避難をしていたらしい。
しかし、市内に侵入してきた魔物の大群はすぐにマナリア学園にも襲って来た。三体のカルヴァンと同種の魔物。子供達を守ろうとする教師の中にはルナ先生を筆頭に三人の魔法使いがいたのだと。
特にルナ先生は突出しており、単騎で魔物三体を屠ったという。その際には、複数の魔法を同時に使うという離れ業まで見せたらしい。
「でもね、でもね。学校はそれでも良かったのだけど、魔物が生徒達の自宅の方にまで向かっていて」
ルナ先生を除く二人の魔法使いもそこそこの腕らしく、自分の親兄妹を心配する生徒の為、ルナ先生単独で救出へ向かったという。
初めこそは黙って他の生徒と一緒にいたアリステリアだったが、親や兄弟を心配する生徒達を見て、我慢出来なくなったアリステリアは、熊五郎を俺達の方に救援に向かわせ、自分はルナ先生を追いかけたのだという。
ーーそういや、カルヴァンに拐われた時もアリスは相当ストレスを抱えた。他の生徒の姿が当時の自分と重なって見えたのかもしれないな。
俺はうんうんとアリステリアの話を聞いて、頭を撫でてやった。
その後、ルナ先生と合流したアリステリアは、どちらがより多く魔物を倒せるか競争していたらしい。
元々、ある程度目処がついたら此方に来る予定だったらしいが、すっかり夢中になり遅れたようであった。
「まあ、最後は結局アリスに美味しいところ全部持っていかれたしな」
「デヘヘヘヘ……」
照れながら笑うアリステリア。
結果的に無事だったが、やはり親としては娘の心配をしてしまう。正直、アリステリアには無茶をしてほしくないと思うと同時に、今回の事を招いた青の魔王に俺は怒っていた。
「不幸中の幸いだな」
一度自宅に戻って来た俺とアリステリアは、無事だった家を見て胸を撫で下ろした。
庭の方は、井戸は壊れ馬も殺されており、馬小屋もぺしゃんこになっていた。
多くの犠牲者や建物の崩壊はあった中、よくウチは無事だったと感心すらしてしまう。
テレーヌ市全体では、主に貧困層の住民に犠牲が多く、被害も大きかった。
ーーそう言えば、富裕層側の学校に救援を求めに行っていたようだけど、誰も来なかったな。
アラキが来るわけないと言っていたのが的中しており、俺の中でも富裕層側への不満が溜まっていた。
「あ、ネネカさん。良かった無事だったのですね」
お隣のネネカさんが帰って来た姿を見て声をかけた。
「はい。ちょうど仕事に出掛けた所だったので。でも周りは凄いことになってますね」
俺達の家は健在でも周りの家は、全壊、半壊とかなり酷い状態だった。しかし、悲しみに暮れる暇もなく、人々は復興に向けて早くも動き出していた。
「うちの店でも炊き出しをするそうです。こういう時こそ助け合わなければですね」
ネネカの言うことは至極当然で、それ故被害の少なかった富裕層に向けて貧困層側の不満が爆発しないかが心配であった。
翌日。俺の懸念は的中する。
一部の住民が富裕層側へ殴り込みに行ったのだと聞かされた。
なんでも庭で優雅に朝食を食べているのを見て、腹が立ったらしい。
一見、馬鹿馬鹿しく聞こえたが、多分俺が見ても同じことをしたかもしれない。
これがきっかけで富裕層側と貧困層側に大きな溝が出来たようで、今度テレーヌ市を二分する壁が内側にできるらしい。
富裕層側というより、中立な立場で奮闘したのはサラだった。
領主の娘としてテレーヌ市の財政を全て復興にあて、なにもしないならせめて金を出せと富裕層側に要求したらしい。
すると今度は富裕層側が文句を言って来たのだという。
俺に呆れたのを通り越して、関わりを持ちたくないとさえ思わせた。
馬小屋を急ピッチで片付け修理をすると、俺とアリステリアは熊五郎を回収した。
傷は魔法により回復していたものの、流石の熊五郎も今回は相当疲れたようで、新しい馬小屋で寝そべると、そこから動かず体力の回復に努めているようであった。
そんな時、俺とアリステリアはサラに呼ばれる。
なんでも今後の方針を話し合うとかなんとかで、何故俺が呼ばれるのか見当もつかなかった。
「タツロウもアリスちゃんも来たわね。まずは座って」
通されたのは、緊急で建てられた掘っ立て小屋の一室であった。
長テーブルには、見たことある人、ない人と十数人が椅子に座っていた。
見たことあるのは、賢者の卵であるイシュー、勇者アラキ、ルナ先生とマルイ校長、そして斡旋所の受付のお姉さんにサラ。
見たことない人達は、揃って綺麗な身なりをした紳士達と、禿げたおっさんである。
ーー恐らく富裕層の奴らか。
被害を受けた人の中には、着る物すら困っている人がいるというのに。そう考えると腹立たしい。
「それではテレーヌ市の緊急評議会を開催します。僭越ながら司会は、テレーヌ市の市長である私が承ります」
禿げたおっさんは、立ち上がり宣言する。
ますますもって、俺が此処に呼ばれる意味が分からなくなってきた。
しかし、不意に現れたアリステリアにその魔物は遥か彼方に吹き飛ばされてしまい、花火のように爆発してしまった。
「パパーっ、聞いてです、聞いてです! ルナ先生、凄いんです!!」
駆け寄って来たアリステリアを受け止めると、あれだけ漲っていた体内から力が抜け、どっと疲れが押し寄せてきた。
眩暈で視界が歪むと、ほんの一瞬、目の前に数字の10が現れたかと思うとすぐに消えた、ような気がした。
「ふぅ、ちょっと待ってなアリス。パパ、疲れてるんだよ」
その場に座り込み、膝の上にアリステリアを乗せると俺は大きく息を吐き出した。
「お疲れ、後始末は私がやっておくわ。アラキもだいぶ苦戦したようだし回収してくる」
「サラお姉ちゃん。熊五郎もお願いです。アラキのおじちゃんを助けに向かったはずですから」
「うん、任せて。って、カルヴァン、貴方は空にでも避難していて。襲って来た魔物と一緒にされちゃうわよ」
カルヴァンは頷くと黒い羽を羽ばたかせる。
「カルヴァン、ありがとう。色々と助かったよ」
「いや、俺様の目が節穴ではなかったと証明されたので満足だ。あのスタンとピートの兄妹を退けるとはな」
俺が礼を言うと少しはにかみながらもカルヴァンはそのまま飛び立って行く。間一髪のところを助けられ、最後も身を呈してピートを押し止めてくれた。
礼を言っただけでは、有り余るくらいに。
「パパー、話、聞いてるです?」
「ああ、ごめん。それで?」
アリステリアは学校で起こった事を一部始終、嬉々として話始めた。
アリステリアの話では、初めは皆で避難をしていたらしい。
しかし、市内に侵入してきた魔物の大群はすぐにマナリア学園にも襲って来た。三体のカルヴァンと同種の魔物。子供達を守ろうとする教師の中にはルナ先生を筆頭に三人の魔法使いがいたのだと。
特にルナ先生は突出しており、単騎で魔物三体を屠ったという。その際には、複数の魔法を同時に使うという離れ業まで見せたらしい。
「でもね、でもね。学校はそれでも良かったのだけど、魔物が生徒達の自宅の方にまで向かっていて」
ルナ先生を除く二人の魔法使いもそこそこの腕らしく、自分の親兄妹を心配する生徒の為、ルナ先生単独で救出へ向かったという。
初めこそは黙って他の生徒と一緒にいたアリステリアだったが、親や兄弟を心配する生徒達を見て、我慢出来なくなったアリステリアは、熊五郎を俺達の方に救援に向かわせ、自分はルナ先生を追いかけたのだという。
ーーそういや、カルヴァンに拐われた時もアリスは相当ストレスを抱えた。他の生徒の姿が当時の自分と重なって見えたのかもしれないな。
俺はうんうんとアリステリアの話を聞いて、頭を撫でてやった。
その後、ルナ先生と合流したアリステリアは、どちらがより多く魔物を倒せるか競争していたらしい。
元々、ある程度目処がついたら此方に来る予定だったらしいが、すっかり夢中になり遅れたようであった。
「まあ、最後は結局アリスに美味しいところ全部持っていかれたしな」
「デヘヘヘヘ……」
照れながら笑うアリステリア。
結果的に無事だったが、やはり親としては娘の心配をしてしまう。正直、アリステリアには無茶をしてほしくないと思うと同時に、今回の事を招いた青の魔王に俺は怒っていた。
「不幸中の幸いだな」
一度自宅に戻って来た俺とアリステリアは、無事だった家を見て胸を撫で下ろした。
庭の方は、井戸は壊れ馬も殺されており、馬小屋もぺしゃんこになっていた。
多くの犠牲者や建物の崩壊はあった中、よくウチは無事だったと感心すらしてしまう。
テレーヌ市全体では、主に貧困層の住民に犠牲が多く、被害も大きかった。
ーーそう言えば、富裕層側の学校に救援を求めに行っていたようだけど、誰も来なかったな。
アラキが来るわけないと言っていたのが的中しており、俺の中でも富裕層側への不満が溜まっていた。
「あ、ネネカさん。良かった無事だったのですね」
お隣のネネカさんが帰って来た姿を見て声をかけた。
「はい。ちょうど仕事に出掛けた所だったので。でも周りは凄いことになってますね」
俺達の家は健在でも周りの家は、全壊、半壊とかなり酷い状態だった。しかし、悲しみに暮れる暇もなく、人々は復興に向けて早くも動き出していた。
「うちの店でも炊き出しをするそうです。こういう時こそ助け合わなければですね」
ネネカの言うことは至極当然で、それ故被害の少なかった富裕層に向けて貧困層側の不満が爆発しないかが心配であった。
翌日。俺の懸念は的中する。
一部の住民が富裕層側へ殴り込みに行ったのだと聞かされた。
なんでも庭で優雅に朝食を食べているのを見て、腹が立ったらしい。
一見、馬鹿馬鹿しく聞こえたが、多分俺が見ても同じことをしたかもしれない。
これがきっかけで富裕層側と貧困層側に大きな溝が出来たようで、今度テレーヌ市を二分する壁が内側にできるらしい。
富裕層側というより、中立な立場で奮闘したのはサラだった。
領主の娘としてテレーヌ市の財政を全て復興にあて、なにもしないならせめて金を出せと富裕層側に要求したらしい。
すると今度は富裕層側が文句を言って来たのだという。
俺に呆れたのを通り越して、関わりを持ちたくないとさえ思わせた。
馬小屋を急ピッチで片付け修理をすると、俺とアリステリアは熊五郎を回収した。
傷は魔法により回復していたものの、流石の熊五郎も今回は相当疲れたようで、新しい馬小屋で寝そべると、そこから動かず体力の回復に努めているようであった。
そんな時、俺とアリステリアはサラに呼ばれる。
なんでも今後の方針を話し合うとかなんとかで、何故俺が呼ばれるのか見当もつかなかった。
「タツロウもアリスちゃんも来たわね。まずは座って」
通されたのは、緊急で建てられた掘っ立て小屋の一室であった。
長テーブルには、見たことある人、ない人と十数人が椅子に座っていた。
見たことあるのは、賢者の卵であるイシュー、勇者アラキ、ルナ先生とマルイ校長、そして斡旋所の受付のお姉さんにサラ。
見たことない人達は、揃って綺麗な身なりをした紳士達と、禿げたおっさんである。
ーー恐らく富裕層の奴らか。
被害を受けた人の中には、着る物すら困っている人がいるというのに。そう考えると腹立たしい。
「それではテレーヌ市の緊急評議会を開催します。僭越ながら司会は、テレーヌ市の市長である私が承ります」
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