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少年編

閑話⑦ 男装女子の交流記

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「よ!何見てるんだ?」

「・・・ライトン。」

モリー船長は自分と同じ女であり、なぜか男装しているリョウに少し警戒していた。と同時に興味もあった。

「今、周りには誰もいないし・・・。よければ腹をわって話したいんだが。」リョウはゴウに正体を明かした後、とても解放された気分になっていた。

深呼吸をして、「私はフローリア。この国の王女よ。親しい人はリアと呼ぶわ。あなたにもそう呼んでもらいたいのだけど。」とモリー船長に話しかけた。

「あなた時々、すごく辛そうな感じがしたから。私も同じ・・・あの、私は女の友人が少ないの。だからあなたにすごく興味があるわ。」

「俺は!・・・別に性別を隠してる訳じゃない。ただ、大っぴらにしてないだけだ。」

「そう。そうなのね。」

「・・・マリオン・モリーだ。・・・リアはいくつ?」
「私?!今年で18歳よ。マリオンは?」

「俺は20だ。」
「ねぇ、マリオン。私の前では本当のあなたでお話してくれない?」

「・・・なんだよ。本当の俺って・・・。」
「んー。話し言葉はクセでそうなの?心の中でもそんな感じ?」

「長年のクセだよ。別に俺でもいいだろ?」
「あら!俺は船長のときのマリオンでしょ?私の前では20歳の女性のマリオンでいて欲しいわ。」

「20歳の、女性の・・・。」
「そうよ♪マリオンは本当にキレイな服装や可愛いものとか女同士の会話に興味はない?あとはそうね・・・男性には分からない悩みとかあるじゃない!」

「・・・ある。あるよ!色々大変だよ!」
「でしょ!そうでしょ~?そういうお話をしたいのよ!」

「誰にも言わないか?」
「もちろん。あなたも誰にも言わないでよ!」

「ぷっ、あはは!!」「ふふ!」
しばらく笑って、お酒を飲んだ。夜の海を見ながら、今まで誰にも言えなかった心の中の言葉を一気にお互い吐き出した。

「私はさ、そんな下らない事でケンカすんじゃねー!って思ったわけよ!」
「ですわよね!兄様もウィンデルもプライドが高いんだから。父様も似たようなものですけど!」
お酒の力も相まって、どんどんテンションが上がっていく。

遠目で見ていたメイやゴウは、いつナイトが気付くか内心ハラハラしていた。傍目には親しく、距離も近いからナイトの嫉妬心に火がつくのではないかといつでも動けるようにスタンバイ中。

「ところで・・・。」フローリアが、マリオンの耳元でコソコソ話した。

「あなた、本命はどなたなの?」
「は?本命?」

「好きな方ですわよ!もしくは気になっている方とか♪」
「なんだそれ?いねぇよ!」

「えー!つまらないですわ。本当に?男性として意識する方はいないんですの?」
「いねぇな。」

「あれだけ逞しい男性に囲まれているのに、残念ですわぁ。」
「仕事だからなぁ~。それに船長してたらそれどころじゃないからな!船員を無事に港まで届ける責任がある!!」

「そうですかぁ。私も城で関わる男性は執事や兵士・・・それも数人・・・年配の方ばかり。もしくは兄弟です!泣」
「そりゃあ、姫さんに悪い虫がついたら大変だからねー。」

「そんな!私だって王家の人間です。いざという時は覚悟して、父様のお決めになった方に嫁ぐ覚悟はあります。・・でも、花の十代!少しくらいときめきがあっても良いと思いますわ!」

「何だよ、その“花の十代”って?」
「ご、ご存じありませんのー?!少し前に流行った恋愛物語集ですわよ。その主人公が19歳になった日、あと一年の間に想い人を見つけると決意して、色々な男性と恋をするお話なんです。」

「ぶっ!くっだらなーい!じゃあ20歳の私には関係ないね♪笑」
「そんな事ありませんわよー!短編集なので色々なお話があって面白いですよ。絶対に読むべきですわ。」

「ふーん・・・。本なんてほとんど読んだ事ないな。船に関する事や共通語とか知識を覚えるためだけに読んだのが最後だね。」
「では!私達の友情記念にプレゼントしますわ。ぜひぜひ、読んで見てくださいませ!」

「んー、まぁ時間があればな!」
「またこちらに来られるのでしょう?」

「そうだね。半年か一年に一度は必ず来るよ。」
「そのときは必ず会いましょう!私・・・お待ちしております。」

「あ、ありがとう。私もリアと話せて良かったよ。」
「明日はお見送りに参りますわ。」

「無理するなよ。また必ず来るからさ!」
「ええ。明日は本当の私で行きますから!」

―――――――――――――――

翌日、出港前にモリー船長に女性が会いに来た。船長の性別を知らない船員には動揺が広がったという。
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