8 / 8
八話
しおりを挟むキーンコーンカーン!
「では、今日の授業はここまで」
チャイムが鳴り、授業が終わる。
私は友達と別れ、いつもの様にバイトへ向かう。ガゼル同様に飲食店でバイトをしている。18時頃からの注文のラッシュは目が回るほど忙しい。
同じ注文がいくつも入るとどこまで調理したかわからなくなる。
「はあ~~」
注文が落ち着くと決まって大きな溜息を一つつく。
「お疲れ様でした」
バイトを終え、疲れた体でふらふらと家まで帰る。ご飯を食べお風呂に入り、宿題をし寝る。
これが今までの生活だ。
だか、今は……
「ただいま」
「おう!」
エプロン姿の男の人が料理をして家で待っている。
「今日のご飯何?」
「パスタ」
異世界のとある王国を守る騎士であったはずのガゼル。今の彼からはそのカケラが微塵も感じられない。
完全にお母さんと化していた。
そして、家に帰るとエプロン姿のガゼルに何の違和感も感じず、「今日のご飯は」と尋ねる。
あれ?何だこれ…
この状況に違和感を感じ無くなっている自分にツッコミを入れる。
「ねぇ、この状況、何も思わないの」
「え?この状況って?」
「異世界で王国を守っていた騎士様が突然右も左もわからないこの世界に飛ばされてこの世界に馴染みきっているこの現状によ」
「って言われてもなぁ」
まぁ、一年経っても腰に剣をぶら下げてインターホンが鳴るたびに騒ぎ立てられても困るけど
彼と出会い、この小さな部屋に居座り出した頃は、ある程度したら出ていくだろうとタカをくくっていたが気付けば一年もの月日が経っていた。
今では彼がいて助かっている部分も多いが、この状況はかなり良く無い。一人暮らしのはずが実は男と二人暮らししてますなんて学校にバレたらどうなるか分かったものでは無い。
「はぁ~」
奏音は大きな溜息を吐く。
この先どうなるのかを考えると憂鬱だ。
奏音の気持ちも知らずに、奏音を慌てさせる行動をする。
「よう!」
……何でいるの?
奏音の身体は固まった。
翌日。学校を終え帰宅しようとしている奏音は校門前で手をするガゼルの姿を見る。
ガゼルは女子生徒達に取り囲まれ、少し騒ぎになっていた。
「え、なに?奏音の知り合い?」
ガゼルの事を聞いてくる友達を後に奏音は足早にガゼルの方へ向かう。
「ちょっと!何でいるのよ!!」
奏音はガゼルの胸ぐらを掴み、自分に引きつけ周りに聞こえないくらいの強い口調で言い放つ。
「嫌、お前も今日バイト休みだろ?だからたまには一緒に飯でもどうかなって」
「あなた!私が必死に隠してきた事を簡単にバラさないでくれるかなあ!」
「隠してたって何だよ?」
奏音は怒りながらガゼルの手を引き、騒つく女子生徒達を避け通り、校門を離れた。
0
お気に入りに追加
3
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
半分異世界
月野槐樹
ファンタジー
関東圏で学生が行方不明になる事件が次々にしていた。それは異世界召還によるものだった。
ネットでも「神隠しか」「異世界召還か」と噂が飛び交うのを見て、異世界に思いを馳せる少年、圭。
いつか異世界に行った時の為にとせっせと準備をして「異世界ガイドノート」なるものまで作成していた圭。従兄弟の瑛太はそんな圭の様子をちょっと心配しながらも充実した学生生活を送っていた。
そんなある日、ついに異世界の扉が彼らの前に開かれた。
「異世界ガイドノート」と一緒に旅する異世界
異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。
Mです。
ファンタジー
異世界学園バトル。
現世で惨めなサラリーマンをしていた……
そんな会社からの帰り道、「転生屋」という見慣れない怪しげな店を見つける。
その転生屋で新たな世界で生きる為の能力を受け取る。
それを自由イメージして良いと言われた為、せめて、新しい世界では苦しまないようにと防御に突出した能力をイメージする。
目を覚ますと見知らぬ世界に居て……学生くらいの年齢に若返っていて……
現実か夢かわからなくて……そんな世界で出会うヒロイン達に……
特殊な能力が当然のように存在するその世界で……
自分の存在も、手に入れた能力も……異世界に来たって俺の人生はそんなもん。
俺は俺の出来ること……
彼女たちを守り……そして俺はその能力を駆使して彼女たちを英雄にする。
だけど、そんな彼女たちにとっては俺が英雄のようだ……。
※※多少意識はしていますが、主人公最強で無双はなく、普通に苦戦します……流行ではないのは承知ですが、登場人物の個性を持たせるためそのキャラの物語(エピソード)や回想のような場面が多いです……後一応理由はありますが、主人公の年上に対する態度がなってません……、後、私(さくしゃ)の変な癖で「……」が凄く多いです。その変ご了承の上で楽しんで頂けると……Mです。の本望です(どうでもいいですよね…)※※
※※楽しかった……続きが気になると思って頂けた場合、お気に入り登録……このエピソード好みだなとか思ったらコメントを貰えたりすると軽い絶頂を覚えるくらいには喜びます……メンタル弱めなので、誹謗中傷てきなものには怯えていますが、気軽に頂けると嬉しいです。※※
異世界営生物語
田島久護
ファンタジー
相良仁は高卒でおもちゃ会社に就職し営業部一筋一五年。
ある日出勤すべく向かっていた途中で事故に遭う。
目覚めた先の森から始まる異世界生活。
戸惑いながらも仁は異世界で生き延びる為に営生していきます。
出会う人々と絆を紡いでいく幸せへの物語。
【完結】悪役令嬢に転生した私はヒロインに求婚されましたが、ヒロインは実は男で、私を溺愛する変態の勇者っぽい人でした。
DAKUNちょめ
ファンタジー
乙女ゲームにありがちな断罪の場にて悪役令嬢であるディアーナは、前世の自分が日本人女子高生である事を思い出した。
目の前には婚約者と、婚約者を奪った美しい少女…
に、悪役令嬢のディアーナが求婚される。
この世界において、唯一の神に通じる力を持つ青年と、彼を変態と呼び共に旅をする事になった令嬢ディアーナ、そして巻き込まれた上に保護者のような立ち位置になった元婚約者の王子。
そんなお話し。
わたくし、お飾り聖女じゃありません!
友坂 悠
ファンタジー
「この私、レムレス・ド・アルメルセデスの名において、アナスターシア・スタンフォード侯爵令嬢との間に結ばれた婚約を破棄することをここに宣言する!」
その声は、よりにもよってこの年に一度の神事、国家の祭祀のうちでもこの国で最も重要とされる聖緑祭の会場で、諸外国からの特使、大勢の来賓客が見守る中、長官不在の聖女宮を預かるレムレス・ド・アルメルセデス王太子によって発せられた。
ここ、アルメルセデスは神に護られた剣と魔法の国。
その聖都アルメリアの中央に位置する聖女宮広場には、荘厳な祭壇と神楽舞台が設置され。
その祭壇の目の前に立つ王太子に向かって、わたくしは真意を正すように詰め寄った。
「理由を。せめて理由をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
「君が下級貴族の令嬢に対していじめ、嫌がらせを行なっていたという悪行は、全て露見しているのだ!」
「何かのお間違いでは? わたくしには全く身に覚えがございませんが……」
いったい全体どういうことでしょう?
殿下の仰っていることが、わたくしにはまったく理解ができなくて。
♢♢♢
この世界を『剣と魔法のヴァルキュリア』のシナリオ通りに進行させようとしたカナリヤ。
そのせいで、わたくしが『悪役令嬢』として断罪されようとしていた、ですって?
それに、わたくしの事を『お飾り聖女』と呼んで蔑んだレムレス王太子。
いいです。百歩譲って婚約破棄されたことは許しましょう。
でもです。
お飾り聖女呼ばわりだけは、許せません!
絶対に許容できません!
聖女を解任されたわたくしは、殿下に一言文句を言って帰ろうと、幼馴染で初恋の人、第二王子のナリス様と共にレムレス様のお部屋に向かうのでした。
でも。
事態はもっと深刻で。
え? 禁忌の魔法陣?
世界を滅ぼすあの危険な魔法陣ですか!?
※アナスターシアはお飾り妻のシルフィーナの娘です。あちらで頂いた感想の中に、シルフィーナの秘密、魔法陣の話、そういたものを気にされていた方が居たのですが、あの話では書ききれなかった部分をこちらで書いたため、けっこうファンタジー寄りなお話になりました。
※楽しんでいただけると嬉しいです。
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。
けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。
日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。
あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの?
ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。
感想などお待ちしております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる