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死に至る呪いを解くために片思いの相手にお願いして抱いてもらったよ!
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『勇者』というのは『勇敢な者』を言うならば、僕はそれに該当するのかもしれない。でもどちらかと言うと勇敢と言うより無謀に近いんじゃないかと思う。
「…は?」
剣の手入れをしていたジェラルドは眉間の皺をより深く刻みながら僕の方へと顔を向ける。まあそうだよね、逆の立場なら僕だってこういう顔する。でも僕には引くに引けない理由があった。
「お願いします、僕とセックスしてください」
もう死ぬほど恥ずかしくて死ぬほど消えたくてどうにかなりそう。だけど、引いちゃダメなんだ。だって。
「…なんだそのアホみたいな呪いは」
「うん僕もそう思うよ!でも仕方ないだろ!かかっちゃったんだから!!」
半べそをかきながら腕をめくると、うっすら紫色に模様が刻まれている。噛まれた時から随分広がってきて先端は心臓へと向かって伸びている。まさかこんなのが致死性の呪いだなんて思わないだろ?
経緯はこうだ。土属性のダンジョンに行ってほしいと言う陳情が王国に届けられた。相性有利な風属性である僕が抜擢され、何匹か毒蛇を吹き飛ばしながら最深部へと進む。その途中のことだった。毒蛇が吐いた紫色の液体が僕の腕を掠める。その途端に紋章が浮かぶと同時に激痛が走る。
「っ……!?」
慌てて剣で切りつけ、事なきを得る。だけど、痛みは治まらず、それどころかどんどん増してくばかりだ。
「いたたたたっ!何これ!?毒!?痛い!」
「おい、大丈夫か」
「大丈夫じゃない!助けて!!」
「騒げるなら大丈夫そうですね」
「ひどい!えいっ!」
まあポーション持ってるけどさあ!そう思いながら僕は患部に薬品を塗りながら奥へと進む。最深部に生贄として捕らえられ拘束された人骨を見つけ、丁重に弔いをし、石碑を解読する。同行した学者と同じくらいジェラルドも博識だったので、ここは大人しく2人に任せ、僕は壁によりかかる。
(なんだろう…ふらつ、く)
やばいな。僕は慌てて剣を支えに起きあがろうとするも力が入らず、その場に倒れる。
「…大丈夫か?」
「ん…ごめん、ちょっとふらついただけ」
その時は本当にそう思ったのだ。だからヒーラーに治癒魔法をかけてもらって、ダンジョンを後にして少し寝たら治ると思っていた。なのでまさか「セックスしないと治らない」なんて類の呪いだなんて思わなかったよ…!それも「好きな人と」なんてオプション付きだなんて…!
思い返しても泣きたくなった。治りが悪い僕を心配して教えてもらった歴戦の猛者、じゃなかった腕利きヒーラーのお婆さまは「…まあアンタの場合問題なさそうじゃが」とか言ってたけどアリアリである。僕の好きな人は、僕に対して全く全然これっぽっちもそんな気はない。何なら婚約者もいる。それを知った夜、僕は酒場で浴びるほど酒を飲み気絶するほど泣いた。そして決心した。この思いは死ぬまで絶対口にしない。好きな人の幸せを僕は願う。そう決心した。
でも、好きな人とセックスしないと死ぬなら話は別だ。どうせ死ぬならとダメ元でお願いしてみることにした。勿論「好きな人と」と言うことは伏せて「セックスしないと死ぬ呪いにかかった」とだけ伝えた。ジェラルドは怪訝な顔をしたけど、すぐに「馬鹿か」と一蹴する。まあそうだよね、そりゃそうなるよ。でも僕だって必死なんだ。
「お願いします、僕とセックスしてください」
手をついて頭を下げる僕にジェラルドは額に手を当て考え込む。
「…お前なら相手なんて選び放題だろ」
「そう、なんだけど……」
「ならわざわざ俺を選ぶ必要はないだろ」
「……うん、でも」
僕はジェラルドが好きだから。そう言えたらどんなに楽か。でも言えない。だって言ったらもう一緒にいられなくなるかもしれない。それだけは嫌だ。だからせめて思い出が欲しいんだ。好きな人とセックスしたっていう思い出をさ…まあ、ジェラルドにとっては迷惑な話だろうけど。
「……わかった」
「え?」
「ただし条件がある」
「何?あ、酒楼で食べ放題とか?」
「馬鹿か」
「え、いらないの?」
「…それはまた別の話だ」
「うんうん。僕あそこのお酒好き。たくさん食べてね?」
にこにことお店の味を思い出しながら僕は微笑む。ジェラルドのことを好きな理由はいくつかあって、大きな手が器用に何かを作り上げる時の整った横顔とか、真剣な目とか、あまり話をしないけど僕の話に必ず相槌をうってくれるとことか、たくさんご飯を食べるところとか色々ある。僕はあまり食べられないから、ジェラルドが大皿を綺麗にする様子を眺めるのが好きだ。
セックスしてもいいと言われて、僕は完全に舞い上がっていた。油断すると表情は溶けちゃうし、何ならうっかり室内だけど風も起こしてしまいそうで、僕は出来るだけ平静を装っていた。
宿だけど部屋は男女別なので他のみなさんにはバレないだろう。とりあえずシャワー浴びないとっていそいそ準備していると、「おい」とジェラルドから声がかかる。
「え!?あ!何かな!?」
「……何故俺に頼んだ」
「え」
黒い目でじっと見つめられる。その目に弱いんだよなあ、僕は思わず目を逸らした。言えるわけない。片思いしてます、一番好きです、なんて。男から思われても嬉しくないだろうし、それでもうジェラルドと一緒に居られなくなるのもいやだ。だから僕は当たり障りのない答えを言うことにした。信頼できるのは君しか居ない、それに。
「君は、僕のことを好きにはならないだろうから」
変に女の子とセックスして本気になられたら気まずいし、そう言う意図もある。僕の回答にジェラルドは眉間の皺をさらに深く刻み「どういう意味だ」と低く言う。
「そのままの意味だけど……」
僕達は何も変わらない。だから安心してほしい。そう言うつもりだった。
「……そうか、わかった」
それ以上詮索される前に、僕はシャワーを浴びるべく浴室に逃げ込む。どうせ一度きりだ。この思い出を胸に僕は生きていく。
「大丈夫、君の邪魔をするつもりはないよ?」
目を閉じてそう独りごちる。部屋に残されたジェラルドがどんな表情をしていたかなんて知る由もなかった。
***
ぽふん
「あ、あれ…?」
「うまくリードできるかな?ちゃんと気持ちよくさせてあげられるかな?」ってシャワー浴びながらソワソワしていた僕は、ベッドに押し倒されたことに一瞬気づかなかった。
「え?あれ?」
「なんだ」
「いや、あの……なんで、押し倒されてるの?」
小首を傾げて尋ねるとジェラルドは薄く笑う。
「お前が俺を抱くつもりだったのか?冗談だろ?」
「え、あ……うん」
「なら俺が抱く方で問題ないな。条件はこれだ。お前は寝てればいい」
「は!?いや!それはちょっと!」
思わず起き上がろうとしたけど、ジェラルドに押さえつけられて動けない。そのまま唇を塞がれる。
「……っん、ふ……」
ぬるりと舌が入り込み、口内を蹂躙される。歯列や上顎をなぞられ舌を吸われるとゾクゾクと背筋が震えた。
(う、うわ……これ、やばい、かも……)
キスだけでこんなに気持ちいいなら、セックスなんてしちゃったらどうなるんだろう。想像するだけでも達してしまいそうだ。
「はふ……あっ……!」
唇が離れてジェラルドの手が僕の服を脱がせる。下着も全て剥ぎ取られて、空気に触れた肌がぶるりと震える。裸を見られるのが恥ずかしくて僕は足を閉じようとしたけど、その前にジェラルドに押さえつけられる。そのままうつ伏せになるように身体を転がされて、腰を高く上げさせられる。
「や!やだ!この体勢やだぁ!」
「じっとしてろ」
「う、うぅ……」
恥ずかしくて死にそうになりながら僕は枕に顔を埋める。ジェラルドは僕のお尻を割り開き、後孔の窄まりに指を這わせた。
「……っひ!?な、何!?」
ぬるりとした感触に驚いて思わず振り返ると、いつの間にか手には液体の入った小瓶があった。
「……っ、や、やだ……それ何……?」
「ただの香油だ」
「か、香り……?あ!ひゃう!?」
後孔の窄まりにぬるりと指が入り込む。異物感に思わず腰を揺らすとジェラルドは僕の背中に覆い被さるように身体を重ねる。
「……力を抜け」
耳元で低く囁かれて背筋がぞくりと震える。そのまま耳朶を噛まれ軽く歯を立てられると僕はまた甘い声をあげた。耳も性感帯だなんて知らなかった。噛まれてじんじんするのもちょっと嬉しかったりする。人生最初で最後だと、僕はジェラルドに全てを委ねた。
「っあ、あっ!や、やだ!そこ、変……だからぁ……!」
でも恥ずかしすぎます!なにこれ!
「そうか」
「ひぅ……!だめぇ……!!」
ぐちゅりと後孔を解す音が部屋に響く。うつ伏せのまま腰だけ高く上げさせられて僕は羞恥で頭がおかしくなりそうだった。枕は僕の唾液と涙でもうびしょ濡れだ。
「…ならひっくり返すか?」
「そ、それはもっとやだ!」
(は、恥ずかしすぎて死んでしまう…!)
好きな人とセックスするだけでも恥ずかしいのに、そんな体勢で全部見られてると思うと死にたくなる。
「なら大人しくしていろ」
「っ……う、ん……」
僕は枕をぎゅっと抱きしめて顔を隠す。ジェラルドはまた後孔を解す作業に戻る。長い指が中の壁を撫でる度に僕の口からは甘い声が漏れた。
「あ、あっ!やぁ……!も、もういぃからぁ……!」
「お前が決める話じゃない」
「っ、う……いじわるぅ……!」
ぐちゅぐちゅと後孔から香油が溢れる。もうどれくらい弄られてるんだろう。
「はぁ…はぁ…ねぇ…もぅ…」
口は半開きだし、目も閉じかけみたいな状態で、僕はジェラルドの方を向く。
「…っ」
珍しく息を呑んだようにジェラルドは僕の顔を見つめている。その目はギラギラと熱を帯びていて、僕は思わず喉を鳴らした。
「ね……もぅいいから…お願い……」
このままだと、挿れられる前に僕が疲れ果ててしまう。充分だと思う。
「っ……わかった」
ジェラルドは指を引き抜き、自分のベルトに手をかける。僕は思わずその仕草をまじまじと見てしまった。だって好きな人のそんな姿なんて見る機会ないじゃないか!
「……なんだ?」
「あ、や……な、なんでもない!」
(うわわわわ……!)
ズボンから取り出されたそれは僕のより大きくて色も赤黒かった。血管が浮いてて、なんかこう、すごく……
「おい、見過ぎだ」
「あ!ご、ごめん……!」
(うわわわわ!)
僕はまた枕に顔を埋める。もう無理。恥ずかしすぎて死ぬ。でも見たいし知りたい。好きな人のそれとか、そりゃ興味あるに決まってるだろ?だから僕はちらりちらりとジェラルドの方を見てしまう。そんな僕の様子を見てジェラルドは呆れたようにため息を吐いた。
「そんなに気になるなら触ってみろ」
「……え?」
「ほら」とジェラルドは僕の手首を掴み、自分のものを触らせる。
「わ……熱いね」
思わず感想が漏れた。ジェラルドは「そうか?」と首を傾げる。僕はそれに返事をするように軽く撫でてみる。ぴくんっと少し反応したような気がするけど気のせいだろうか?
「そんなに気になるなら舐めてみるか?」
「……いいの?」
こくりと頷かれて心臓が跳ねる。もうこんな機会二度とないかもしれない。僕は意を決して舌を出す。先端に舌先を当て、軽く舐めてみる。
「ん……」
思ったより抵抗はなかった。そのままぺろぺろと舐めるとどんどん硬度を増してくるのがわかる。
(僕で、気持ちよくなってくれてるんだ)
そう思うと嬉しくて、僕は夢中でそれを舐めた。先端を舌でぐりぐりと刺激し、裏筋をなぞるように舐める。
「っ……もういい」
ジェラルドは僕の頭を掴んで引き剥がす。そしてそのまま僕を仰向けに寝かせると足を抱え上げ、後孔に自分のものをあてがった。
「……挿れるぞ」
「う、うん……」
ゆっくりと押し入ってくる感覚に背筋がぞくぞくする。痛みはないけれど異物感が強い。
(本当に、するんだ…)
じっと、挿入されるところを見つめてしまう。ドキドキしてる。期待と不安が入り混じって、僕は頬に手を当てる。
「あっ……ん、ふ……」
根元まで埋め込まれたそれがゆっくりと引き抜かれる。そしてまた奥まで挿入されるとぞわぞわとした快感が走る。
「あ、あんっ……!」
こんなの、知らない。こんな感覚、知らない。好きな人に抱かれるのってこんなに気持ちいいんだ。
「っ……動くぞ」
「え、あ、まっ……!あっ!や、あぁ!」
ぐちゅぐちゅと音を立てながら抽挿が始まる。最初はゆっくりだった動きが徐々に激しくなり、肌と肌がぶつかる音が響くようになる。
「……っ、く……!」
「ひぅ!あ、あ!だめぇ……!激し……!!」
初めこそ労るような動きだったものの、すぐに余裕のない打ち付けるようなものにかわった。
「あ!あっ!んぅ……!」
ガクガクと揺さぶられながら僕は必死に枕にしがみつく。こんなの知らない。こんな気持ちいいの知らない。
「やっ……!だめ……!も、イッちゃ……!!」
全身が痙攣し始め、絶頂が近いことを悟る。でもジェラルドは止まらない。むしろさらに激しくなるばかりだ。
「だめぇ!!イッちゃうからぁ!!」
もう無理と思った瞬間、ジェラルドの手が僕のものに触れた。
「っ!?」
そのまま上下に激しく扱かれると僕は呆気なく達してしまった。
「あ、あぁ……!やぁ!イッてるからぁ……!」
ビクビク痙攣する後孔に熱い飛沫が注がれる感覚があった。中に出されたんだ…とぼんやりした頭で思っているとジェラルドはまた僕に唇を重ねてくる。舌を吸われて背筋がぞくりと震える。上顎を舌でなぞられて、歯列を舌先でなぞられると力が抜けてしまう。
甘い刺激に頭が蕩けそうになるけど、その頭の片隅で僕は冷静に「キスは好きな人とするべきだよ…?」ってジェラルドに言いたくなってしまった。気持ちよくて幸せで、少しだけ切ない。
「ぷはっ……は、はぁ……」
「大丈夫か?」
「……ん」
ジェラルドは僕の額に張り付いた髪を払うとそのまま頭を撫でる。その優しい仕草に僕は思わず泣きそうになった。
(もう、これで十分だ)
もうこれ以上何も望まない。好きな人の体温を知れて、セックスもできて、キスもしてもらえた。きっとこの先一生分の思い出ができたと思う。
「ありがとう」と僕は言う。
「何がだ」と彼は返す。
「僕を抱いてくれて」
好きでもないのにセックスなんて本当に大変だったと思う。男を抱くなんて面倒だったに違いない。ジェラルドはやっぱり優しい。そう思ったけど彼は怪訝そうな顔をして僕の顔を見る。
「お前は、本当に…」
「?あ、見て、呪いが薄くなってる…!」
タトゥーのようになっている呪いが徐々に薄くなっていく。
「……えへへ、良かった」
やっぱりあのお婆さまが言ってた言い伝え通りだったみたい。僕は胸へと伸びていた黒いそれが完全に消えるのを見やると、もう一度「ありがとう」とジェラルドに言う。
「…こんな風に消えるんだな」
「あ、やっぱ気になってた?ちょっと不気味だったよね」
「いや……まぁ、そうだな」
ジェラルドは何か言いたげだったが、結局それ以上何も言わなかったので僕も聞かなかった。そして僕はもう一度「ありがとう」と彼に言った。
「……ああ」
ジェラルドはそれだけ言うと僕の中から自分のものを抜き出す。どろりとした液体が溢れる感覚に僕は小さく声を漏らす。
「っん……」
「風呂に行くぞ」
そう言ってジェラルドは僕の身体を抱えるとそのまま浴室へと運ぶ。
「え?いいよ、歩けるって…ひゃ!あ、あの!中……垂れちゃうから……!」
「後で掻き出してやるから」
「え?いや、自分でするから!」
僕はジェラルドの腕から逃れようとジタバタと暴れるが、結局そのまま浴室へと連れていかれてしまった。そしてそのまま一緒に風呂に入り、後処理までされてしまう。
(うう……なんかもう全部見られたし触られたし……)
恥ずかしいけど嬉しいような複雑な気持ちでいっぱいだ。
「そもそも泥酔して潰れるお前をいつも部屋まで運んでやったのは誰だ?」
「え、あ……う、うん!そうだね!ありがとう!」
ジェラルドはため息を吐く。そしてそのまま僕の身体を引き寄せて抱きしめた。
「……っ!?」
「…お前、俺が誰にでもこうすると思っているのか?」
「え…?」
「はぁ…少しは人を疑う事を覚えろ」
そう言うとジェラルドは腕の力を少し緩めて僕の顔を見上げる。綺麗な黒い瞳が真っ直ぐに僕を捉える。
「お前は本当に手が焼けるな」
「えへへ…ごめんね」
「まったくだ」
ジェラルドはまた僕の頭をポンと叩く。僕はその腕にすり寄るように頭を押し付ける。
(夢みたいだな)
好きな人の腕の中でこんな風に過ごせる日が来るなんて思ってなかった。でも夢はいつか覚めてしまうものだ。だから、この思い出があればきっと僕は大丈夫。ジェラルドは優しいから、きっと僕を抱いたなんて誰にも言わないだろう。そして僕もこれ以上望まないようにする。彼から何かを望むだなんて大それた事はしない。そう決めたのだ。
にこにこしながら僕はベッドに横たわる。呪いも解けて一生の思い出も出来た。勇気を出して本当に良かった。
「おやすみー…」
僕の特技のひとつがどこでもすぐに眠れることだ。そのまま気持ちよく寝落ちするつもりだった僕は、すぐ隣にあるジェラルドの下半身に熱くて硬いものを感じて少し焦る。
(うそ…まだ勃ってるの…!?)
恐る恐る視線をやると、ジェラルドのそこはまだ元気なままだった。もしかして呪いが中途半端に残ってしまったのかもしれない。僕は慌てて起き上がると彼の方へ向き直った。
「ジェラルド……その……」
「なんだ」
「あの、それ……辛いなら僕がなんとかしようか?」
「……は?」
(え?なんでそんな怖い顔してるの?)
なんか変なこと言っただろうか?でもこのまま放置しておくわけにもいかないし…
「そ、それか僕、自分の部屋に戻ろうか?」
「……なんでそうなる」
明らかに不機嫌になったジェラルドに僕は困惑する。
「大体ろくに足腰も立たないくせにどうやって戻るつもりだ」
「う、え……と……」
確かにその通りだけど、でもジェラルドも辛いだろうし……
「…もう一回、する?その、今度は僕が頑張るから」
「……は?」
僕はジェラルドのものに手を伸ばす。そしてそれを優しく握ると上下に動かし始める。
「っ、おい……!」
(うわ……やっぱり大きいな……)
僕のより一回り以上大きくて、これがいつも自分の中に入っていたなんて信じられないくらいだ。でも今は僕の中にも入っているし、さっきもこれで何度も奥を突かれて気持ちよくなったのだ。そう思うとまた後孔がきゅんとなる気がした。僕はゆっくりと顔を近づけると先端にちゅっと口付ける。そのまま舌を出して根元から裏筋を舐め上げると、ジェラルドのものがぴくりと反応する。
「っ、おい……もうやめろ」
(あ、ちょっと大きくなった)
それがなんだか嬉しくて僕はまた舌を這わせる。そして先端を口に含むようにしてゆっくりと飲み込んでいく。
「……んむ……」
(うわ……すごい……全部は無理かも)
喉奥まで入れようとするがやっぱり苦しい。ぷは…♡と口を離すとジェラルドが僕を引き剥がす。
「っ、もういい……!」
「え?でもまだ……」
「いいから!」
そう言ってジェラルドは僕の身体を引き離そうとする。でも僕はその腕を制してもう一度彼のものを頬張った。負けないよ!
「っ、おい……!」
「ん……んぅ……」
さっきより深くまで飲み込むとジェラルドが息を呑むのがわかった。
(やっぱり苦しいな……)
でもこれで少しでも気持ちよくなってくれたら嬉しい。そう思って必死に舌を動かす。
「んっ、んむ……♡」
「っ、もういいから離せ!」
そう言って引き剥がされる。唾液まみれになったそれはテラテラと光っていてとても卑猥だった。
「…ごめ、僕下手だよね……」
(やっぱり僕じゃ気持ちよくなってもらえないのかな……)
しょんぼりと肩を落とす僕に、ジェラルドは「違う」と言った。そしてそのまま僕をベッドに押し倒す。
「……っ!?」
(え?なに?)
突然のことに頭が追いつかない。なんで押し倒されてるの?
「お前はいつもそうやって……!」
「へ?」
何か怒らせるようなことしただろうか?僕はただジェラルドに気持ちよくなってほしいだけなのに。
「あ!もしかして僕のフェラが下手だから怒って……」
「うるさい…!」
くるり、と背を向けられるとお尻の間にジェラルドの大きなソレが押し当てられる。
「あ…♡」
「…寝てていいぞ」
「っ、あ♡」
ずぷ……と音を立てて熱いものが侵入してくる。さっきシたばかりなのですんなりと受け入れることが出来た。そのままゆっくりと抽挿が開始されて僕は思わず声を上げる。
「あっ♡あぁっ♡」
(きもちい……!)
いきなり強く突かれたらどうなってしまうのか怖かったけど、優しくとんとんとされるのも気持ちいい。ただでさえふにゃふにゃになっていた僕自身はとろとろになっていた。
「あっ♡あぅ♡」
「っ、はぁ……」
僕は枕をぎゅっと抱きしめながら快感に耐える。
(きもちい……)
好きな人とするセックスってこんなに幸せなんだ。そう思うと自然と涙が溢れてきた。
「あ……♡」
「……泣くほど嫌ならやめるか?」
「ち、ちが…きもちいいの…やめないで…♡」
ふにゃふにゃのままそう答えると息を呑む気配があった。
「お前……本当にタチが悪いな……!」
「ん…なぁに…?あんっ…♡」
ぬちゅ、ぬちゃ♡と濡れた音が宿の暗闇に響く。後ろから回された手が胸を掴み、そのままやわやわと揉みしだかれる。
「あっ、あ♡そこ……♡」
「……ここも弱いのか?」
耳元で囁かれて背筋がぞくぞくする。耳たぶを甘噛みされて思わず身を捩ると逃がさないと言わんばかりに強く抱きしめられた。
「やぁん……♡♡」
ぬるりとした舌先で舐め上げられ、ちゅっと音を立てて吸い上げられるとたまらない気持ちになる。その間もずっと腰を打ち付けられていて頭がおかしくなりそうだ。
「んぁっ♡あ♡あぁっ♡」
(やば…声とまんない…♡ジェラルド、えっち上手すぎるよ…♡♡)
僕は枕を抱きしめてなんとか快感に耐える。全身で気持ちよさに高められてもう何も考えられなくなっていた。
「や…もう…きもちいぃ…♡イクぅ…♡」
「…イッていい」
「あ、あぁっ♡イクっ……イッちゃうぅ……♡」
(だめ……もう我慢できない……!)
僕は枕を噛んで必死に声を抑える。そしてびくんと大きく身体をしならせた。
「……っ!」
「はぁ……は……」
ずるりと引き抜かれたそこからどろりと白濁が流れ出る感覚に身震いする。そのままベッドに倒れ込むと優しく頭を撫でられた。
「…そのまま寝ろ。後は片付けておく」
「ん……」
(だめ…やっぱり眠いや…)
目蓋が重い。抗えない睡魔に僕はそのまま目を閉じると夢の中へと落ちていった。
***
「…は?」
剣の手入れをしていたジェラルドは眉間の皺をより深く刻みながら僕の方へと顔を向ける。まあそうだよね、逆の立場なら僕だってこういう顔する。でも僕には引くに引けない理由があった。
「お願いします、僕とセックスしてください」
もう死ぬほど恥ずかしくて死ぬほど消えたくてどうにかなりそう。だけど、引いちゃダメなんだ。だって。
「…なんだそのアホみたいな呪いは」
「うん僕もそう思うよ!でも仕方ないだろ!かかっちゃったんだから!!」
半べそをかきながら腕をめくると、うっすら紫色に模様が刻まれている。噛まれた時から随分広がってきて先端は心臓へと向かって伸びている。まさかこんなのが致死性の呪いだなんて思わないだろ?
経緯はこうだ。土属性のダンジョンに行ってほしいと言う陳情が王国に届けられた。相性有利な風属性である僕が抜擢され、何匹か毒蛇を吹き飛ばしながら最深部へと進む。その途中のことだった。毒蛇が吐いた紫色の液体が僕の腕を掠める。その途端に紋章が浮かぶと同時に激痛が走る。
「っ……!?」
慌てて剣で切りつけ、事なきを得る。だけど、痛みは治まらず、それどころかどんどん増してくばかりだ。
「いたたたたっ!何これ!?毒!?痛い!」
「おい、大丈夫か」
「大丈夫じゃない!助けて!!」
「騒げるなら大丈夫そうですね」
「ひどい!えいっ!」
まあポーション持ってるけどさあ!そう思いながら僕は患部に薬品を塗りながら奥へと進む。最深部に生贄として捕らえられ拘束された人骨を見つけ、丁重に弔いをし、石碑を解読する。同行した学者と同じくらいジェラルドも博識だったので、ここは大人しく2人に任せ、僕は壁によりかかる。
(なんだろう…ふらつ、く)
やばいな。僕は慌てて剣を支えに起きあがろうとするも力が入らず、その場に倒れる。
「…大丈夫か?」
「ん…ごめん、ちょっとふらついただけ」
その時は本当にそう思ったのだ。だからヒーラーに治癒魔法をかけてもらって、ダンジョンを後にして少し寝たら治ると思っていた。なのでまさか「セックスしないと治らない」なんて類の呪いだなんて思わなかったよ…!それも「好きな人と」なんてオプション付きだなんて…!
思い返しても泣きたくなった。治りが悪い僕を心配して教えてもらった歴戦の猛者、じゃなかった腕利きヒーラーのお婆さまは「…まあアンタの場合問題なさそうじゃが」とか言ってたけどアリアリである。僕の好きな人は、僕に対して全く全然これっぽっちもそんな気はない。何なら婚約者もいる。それを知った夜、僕は酒場で浴びるほど酒を飲み気絶するほど泣いた。そして決心した。この思いは死ぬまで絶対口にしない。好きな人の幸せを僕は願う。そう決心した。
でも、好きな人とセックスしないと死ぬなら話は別だ。どうせ死ぬならとダメ元でお願いしてみることにした。勿論「好きな人と」と言うことは伏せて「セックスしないと死ぬ呪いにかかった」とだけ伝えた。ジェラルドは怪訝な顔をしたけど、すぐに「馬鹿か」と一蹴する。まあそうだよね、そりゃそうなるよ。でも僕だって必死なんだ。
「お願いします、僕とセックスしてください」
手をついて頭を下げる僕にジェラルドは額に手を当て考え込む。
「…お前なら相手なんて選び放題だろ」
「そう、なんだけど……」
「ならわざわざ俺を選ぶ必要はないだろ」
「……うん、でも」
僕はジェラルドが好きだから。そう言えたらどんなに楽か。でも言えない。だって言ったらもう一緒にいられなくなるかもしれない。それだけは嫌だ。だからせめて思い出が欲しいんだ。好きな人とセックスしたっていう思い出をさ…まあ、ジェラルドにとっては迷惑な話だろうけど。
「……わかった」
「え?」
「ただし条件がある」
「何?あ、酒楼で食べ放題とか?」
「馬鹿か」
「え、いらないの?」
「…それはまた別の話だ」
「うんうん。僕あそこのお酒好き。たくさん食べてね?」
にこにことお店の味を思い出しながら僕は微笑む。ジェラルドのことを好きな理由はいくつかあって、大きな手が器用に何かを作り上げる時の整った横顔とか、真剣な目とか、あまり話をしないけど僕の話に必ず相槌をうってくれるとことか、たくさんご飯を食べるところとか色々ある。僕はあまり食べられないから、ジェラルドが大皿を綺麗にする様子を眺めるのが好きだ。
セックスしてもいいと言われて、僕は完全に舞い上がっていた。油断すると表情は溶けちゃうし、何ならうっかり室内だけど風も起こしてしまいそうで、僕は出来るだけ平静を装っていた。
宿だけど部屋は男女別なので他のみなさんにはバレないだろう。とりあえずシャワー浴びないとっていそいそ準備していると、「おい」とジェラルドから声がかかる。
「え!?あ!何かな!?」
「……何故俺に頼んだ」
「え」
黒い目でじっと見つめられる。その目に弱いんだよなあ、僕は思わず目を逸らした。言えるわけない。片思いしてます、一番好きです、なんて。男から思われても嬉しくないだろうし、それでもうジェラルドと一緒に居られなくなるのもいやだ。だから僕は当たり障りのない答えを言うことにした。信頼できるのは君しか居ない、それに。
「君は、僕のことを好きにはならないだろうから」
変に女の子とセックスして本気になられたら気まずいし、そう言う意図もある。僕の回答にジェラルドは眉間の皺をさらに深く刻み「どういう意味だ」と低く言う。
「そのままの意味だけど……」
僕達は何も変わらない。だから安心してほしい。そう言うつもりだった。
「……そうか、わかった」
それ以上詮索される前に、僕はシャワーを浴びるべく浴室に逃げ込む。どうせ一度きりだ。この思い出を胸に僕は生きていく。
「大丈夫、君の邪魔をするつもりはないよ?」
目を閉じてそう独りごちる。部屋に残されたジェラルドがどんな表情をしていたかなんて知る由もなかった。
***
ぽふん
「あ、あれ…?」
「うまくリードできるかな?ちゃんと気持ちよくさせてあげられるかな?」ってシャワー浴びながらソワソワしていた僕は、ベッドに押し倒されたことに一瞬気づかなかった。
「え?あれ?」
「なんだ」
「いや、あの……なんで、押し倒されてるの?」
小首を傾げて尋ねるとジェラルドは薄く笑う。
「お前が俺を抱くつもりだったのか?冗談だろ?」
「え、あ……うん」
「なら俺が抱く方で問題ないな。条件はこれだ。お前は寝てればいい」
「は!?いや!それはちょっと!」
思わず起き上がろうとしたけど、ジェラルドに押さえつけられて動けない。そのまま唇を塞がれる。
「……っん、ふ……」
ぬるりと舌が入り込み、口内を蹂躙される。歯列や上顎をなぞられ舌を吸われるとゾクゾクと背筋が震えた。
(う、うわ……これ、やばい、かも……)
キスだけでこんなに気持ちいいなら、セックスなんてしちゃったらどうなるんだろう。想像するだけでも達してしまいそうだ。
「はふ……あっ……!」
唇が離れてジェラルドの手が僕の服を脱がせる。下着も全て剥ぎ取られて、空気に触れた肌がぶるりと震える。裸を見られるのが恥ずかしくて僕は足を閉じようとしたけど、その前にジェラルドに押さえつけられる。そのままうつ伏せになるように身体を転がされて、腰を高く上げさせられる。
「や!やだ!この体勢やだぁ!」
「じっとしてろ」
「う、うぅ……」
恥ずかしくて死にそうになりながら僕は枕に顔を埋める。ジェラルドは僕のお尻を割り開き、後孔の窄まりに指を這わせた。
「……っひ!?な、何!?」
ぬるりとした感触に驚いて思わず振り返ると、いつの間にか手には液体の入った小瓶があった。
「……っ、や、やだ……それ何……?」
「ただの香油だ」
「か、香り……?あ!ひゃう!?」
後孔の窄まりにぬるりと指が入り込む。異物感に思わず腰を揺らすとジェラルドは僕の背中に覆い被さるように身体を重ねる。
「……力を抜け」
耳元で低く囁かれて背筋がぞくりと震える。そのまま耳朶を噛まれ軽く歯を立てられると僕はまた甘い声をあげた。耳も性感帯だなんて知らなかった。噛まれてじんじんするのもちょっと嬉しかったりする。人生最初で最後だと、僕はジェラルドに全てを委ねた。
「っあ、あっ!や、やだ!そこ、変……だからぁ……!」
でも恥ずかしすぎます!なにこれ!
「そうか」
「ひぅ……!だめぇ……!!」
ぐちゅりと後孔を解す音が部屋に響く。うつ伏せのまま腰だけ高く上げさせられて僕は羞恥で頭がおかしくなりそうだった。枕は僕の唾液と涙でもうびしょ濡れだ。
「…ならひっくり返すか?」
「そ、それはもっとやだ!」
(は、恥ずかしすぎて死んでしまう…!)
好きな人とセックスするだけでも恥ずかしいのに、そんな体勢で全部見られてると思うと死にたくなる。
「なら大人しくしていろ」
「っ……う、ん……」
僕は枕をぎゅっと抱きしめて顔を隠す。ジェラルドはまた後孔を解す作業に戻る。長い指が中の壁を撫でる度に僕の口からは甘い声が漏れた。
「あ、あっ!やぁ……!も、もういぃからぁ……!」
「お前が決める話じゃない」
「っ、う……いじわるぅ……!」
ぐちゅぐちゅと後孔から香油が溢れる。もうどれくらい弄られてるんだろう。
「はぁ…はぁ…ねぇ…もぅ…」
口は半開きだし、目も閉じかけみたいな状態で、僕はジェラルドの方を向く。
「…っ」
珍しく息を呑んだようにジェラルドは僕の顔を見つめている。その目はギラギラと熱を帯びていて、僕は思わず喉を鳴らした。
「ね……もぅいいから…お願い……」
このままだと、挿れられる前に僕が疲れ果ててしまう。充分だと思う。
「っ……わかった」
ジェラルドは指を引き抜き、自分のベルトに手をかける。僕は思わずその仕草をまじまじと見てしまった。だって好きな人のそんな姿なんて見る機会ないじゃないか!
「……なんだ?」
「あ、や……な、なんでもない!」
(うわわわわ……!)
ズボンから取り出されたそれは僕のより大きくて色も赤黒かった。血管が浮いてて、なんかこう、すごく……
「おい、見過ぎだ」
「あ!ご、ごめん……!」
(うわわわわ!)
僕はまた枕に顔を埋める。もう無理。恥ずかしすぎて死ぬ。でも見たいし知りたい。好きな人のそれとか、そりゃ興味あるに決まってるだろ?だから僕はちらりちらりとジェラルドの方を見てしまう。そんな僕の様子を見てジェラルドは呆れたようにため息を吐いた。
「そんなに気になるなら触ってみろ」
「……え?」
「ほら」とジェラルドは僕の手首を掴み、自分のものを触らせる。
「わ……熱いね」
思わず感想が漏れた。ジェラルドは「そうか?」と首を傾げる。僕はそれに返事をするように軽く撫でてみる。ぴくんっと少し反応したような気がするけど気のせいだろうか?
「そんなに気になるなら舐めてみるか?」
「……いいの?」
こくりと頷かれて心臓が跳ねる。もうこんな機会二度とないかもしれない。僕は意を決して舌を出す。先端に舌先を当て、軽く舐めてみる。
「ん……」
思ったより抵抗はなかった。そのままぺろぺろと舐めるとどんどん硬度を増してくるのがわかる。
(僕で、気持ちよくなってくれてるんだ)
そう思うと嬉しくて、僕は夢中でそれを舐めた。先端を舌でぐりぐりと刺激し、裏筋をなぞるように舐める。
「っ……もういい」
ジェラルドは僕の頭を掴んで引き剥がす。そしてそのまま僕を仰向けに寝かせると足を抱え上げ、後孔に自分のものをあてがった。
「……挿れるぞ」
「う、うん……」
ゆっくりと押し入ってくる感覚に背筋がぞくぞくする。痛みはないけれど異物感が強い。
(本当に、するんだ…)
じっと、挿入されるところを見つめてしまう。ドキドキしてる。期待と不安が入り混じって、僕は頬に手を当てる。
「あっ……ん、ふ……」
根元まで埋め込まれたそれがゆっくりと引き抜かれる。そしてまた奥まで挿入されるとぞわぞわとした快感が走る。
「あ、あんっ……!」
こんなの、知らない。こんな感覚、知らない。好きな人に抱かれるのってこんなに気持ちいいんだ。
「っ……動くぞ」
「え、あ、まっ……!あっ!や、あぁ!」
ぐちゅぐちゅと音を立てながら抽挿が始まる。最初はゆっくりだった動きが徐々に激しくなり、肌と肌がぶつかる音が響くようになる。
「……っ、く……!」
「ひぅ!あ、あ!だめぇ……!激し……!!」
初めこそ労るような動きだったものの、すぐに余裕のない打ち付けるようなものにかわった。
「あ!あっ!んぅ……!」
ガクガクと揺さぶられながら僕は必死に枕にしがみつく。こんなの知らない。こんな気持ちいいの知らない。
「やっ……!だめ……!も、イッちゃ……!!」
全身が痙攣し始め、絶頂が近いことを悟る。でもジェラルドは止まらない。むしろさらに激しくなるばかりだ。
「だめぇ!!イッちゃうからぁ!!」
もう無理と思った瞬間、ジェラルドの手が僕のものに触れた。
「っ!?」
そのまま上下に激しく扱かれると僕は呆気なく達してしまった。
「あ、あぁ……!やぁ!イッてるからぁ……!」
ビクビク痙攣する後孔に熱い飛沫が注がれる感覚があった。中に出されたんだ…とぼんやりした頭で思っているとジェラルドはまた僕に唇を重ねてくる。舌を吸われて背筋がぞくりと震える。上顎を舌でなぞられて、歯列を舌先でなぞられると力が抜けてしまう。
甘い刺激に頭が蕩けそうになるけど、その頭の片隅で僕は冷静に「キスは好きな人とするべきだよ…?」ってジェラルドに言いたくなってしまった。気持ちよくて幸せで、少しだけ切ない。
「ぷはっ……は、はぁ……」
「大丈夫か?」
「……ん」
ジェラルドは僕の額に張り付いた髪を払うとそのまま頭を撫でる。その優しい仕草に僕は思わず泣きそうになった。
(もう、これで十分だ)
もうこれ以上何も望まない。好きな人の体温を知れて、セックスもできて、キスもしてもらえた。きっとこの先一生分の思い出ができたと思う。
「ありがとう」と僕は言う。
「何がだ」と彼は返す。
「僕を抱いてくれて」
好きでもないのにセックスなんて本当に大変だったと思う。男を抱くなんて面倒だったに違いない。ジェラルドはやっぱり優しい。そう思ったけど彼は怪訝そうな顔をして僕の顔を見る。
「お前は、本当に…」
「?あ、見て、呪いが薄くなってる…!」
タトゥーのようになっている呪いが徐々に薄くなっていく。
「……えへへ、良かった」
やっぱりあのお婆さまが言ってた言い伝え通りだったみたい。僕は胸へと伸びていた黒いそれが完全に消えるのを見やると、もう一度「ありがとう」とジェラルドに言う。
「…こんな風に消えるんだな」
「あ、やっぱ気になってた?ちょっと不気味だったよね」
「いや……まぁ、そうだな」
ジェラルドは何か言いたげだったが、結局それ以上何も言わなかったので僕も聞かなかった。そして僕はもう一度「ありがとう」と彼に言った。
「……ああ」
ジェラルドはそれだけ言うと僕の中から自分のものを抜き出す。どろりとした液体が溢れる感覚に僕は小さく声を漏らす。
「っん……」
「風呂に行くぞ」
そう言ってジェラルドは僕の身体を抱えるとそのまま浴室へと運ぶ。
「え?いいよ、歩けるって…ひゃ!あ、あの!中……垂れちゃうから……!」
「後で掻き出してやるから」
「え?いや、自分でするから!」
僕はジェラルドの腕から逃れようとジタバタと暴れるが、結局そのまま浴室へと連れていかれてしまった。そしてそのまま一緒に風呂に入り、後処理までされてしまう。
(うう……なんかもう全部見られたし触られたし……)
恥ずかしいけど嬉しいような複雑な気持ちでいっぱいだ。
「そもそも泥酔して潰れるお前をいつも部屋まで運んでやったのは誰だ?」
「え、あ……う、うん!そうだね!ありがとう!」
ジェラルドはため息を吐く。そしてそのまま僕の身体を引き寄せて抱きしめた。
「……っ!?」
「…お前、俺が誰にでもこうすると思っているのか?」
「え…?」
「はぁ…少しは人を疑う事を覚えろ」
そう言うとジェラルドは腕の力を少し緩めて僕の顔を見上げる。綺麗な黒い瞳が真っ直ぐに僕を捉える。
「お前は本当に手が焼けるな」
「えへへ…ごめんね」
「まったくだ」
ジェラルドはまた僕の頭をポンと叩く。僕はその腕にすり寄るように頭を押し付ける。
(夢みたいだな)
好きな人の腕の中でこんな風に過ごせる日が来るなんて思ってなかった。でも夢はいつか覚めてしまうものだ。だから、この思い出があればきっと僕は大丈夫。ジェラルドは優しいから、きっと僕を抱いたなんて誰にも言わないだろう。そして僕もこれ以上望まないようにする。彼から何かを望むだなんて大それた事はしない。そう決めたのだ。
にこにこしながら僕はベッドに横たわる。呪いも解けて一生の思い出も出来た。勇気を出して本当に良かった。
「おやすみー…」
僕の特技のひとつがどこでもすぐに眠れることだ。そのまま気持ちよく寝落ちするつもりだった僕は、すぐ隣にあるジェラルドの下半身に熱くて硬いものを感じて少し焦る。
(うそ…まだ勃ってるの…!?)
恐る恐る視線をやると、ジェラルドのそこはまだ元気なままだった。もしかして呪いが中途半端に残ってしまったのかもしれない。僕は慌てて起き上がると彼の方へ向き直った。
「ジェラルド……その……」
「なんだ」
「あの、それ……辛いなら僕がなんとかしようか?」
「……は?」
(え?なんでそんな怖い顔してるの?)
なんか変なこと言っただろうか?でもこのまま放置しておくわけにもいかないし…
「そ、それか僕、自分の部屋に戻ろうか?」
「……なんでそうなる」
明らかに不機嫌になったジェラルドに僕は困惑する。
「大体ろくに足腰も立たないくせにどうやって戻るつもりだ」
「う、え……と……」
確かにその通りだけど、でもジェラルドも辛いだろうし……
「…もう一回、する?その、今度は僕が頑張るから」
「……は?」
僕はジェラルドのものに手を伸ばす。そしてそれを優しく握ると上下に動かし始める。
「っ、おい……!」
(うわ……やっぱり大きいな……)
僕のより一回り以上大きくて、これがいつも自分の中に入っていたなんて信じられないくらいだ。でも今は僕の中にも入っているし、さっきもこれで何度も奥を突かれて気持ちよくなったのだ。そう思うとまた後孔がきゅんとなる気がした。僕はゆっくりと顔を近づけると先端にちゅっと口付ける。そのまま舌を出して根元から裏筋を舐め上げると、ジェラルドのものがぴくりと反応する。
「っ、おい……もうやめろ」
(あ、ちょっと大きくなった)
それがなんだか嬉しくて僕はまた舌を這わせる。そして先端を口に含むようにしてゆっくりと飲み込んでいく。
「……んむ……」
(うわ……すごい……全部は無理かも)
喉奥まで入れようとするがやっぱり苦しい。ぷは…♡と口を離すとジェラルドが僕を引き剥がす。
「っ、もういい……!」
「え?でもまだ……」
「いいから!」
そう言ってジェラルドは僕の身体を引き離そうとする。でも僕はその腕を制してもう一度彼のものを頬張った。負けないよ!
「っ、おい……!」
「ん……んぅ……」
さっきより深くまで飲み込むとジェラルドが息を呑むのがわかった。
(やっぱり苦しいな……)
でもこれで少しでも気持ちよくなってくれたら嬉しい。そう思って必死に舌を動かす。
「んっ、んむ……♡」
「っ、もういいから離せ!」
そう言って引き剥がされる。唾液まみれになったそれはテラテラと光っていてとても卑猥だった。
「…ごめ、僕下手だよね……」
(やっぱり僕じゃ気持ちよくなってもらえないのかな……)
しょんぼりと肩を落とす僕に、ジェラルドは「違う」と言った。そしてそのまま僕をベッドに押し倒す。
「……っ!?」
(え?なに?)
突然のことに頭が追いつかない。なんで押し倒されてるの?
「お前はいつもそうやって……!」
「へ?」
何か怒らせるようなことしただろうか?僕はただジェラルドに気持ちよくなってほしいだけなのに。
「あ!もしかして僕のフェラが下手だから怒って……」
「うるさい…!」
くるり、と背を向けられるとお尻の間にジェラルドの大きなソレが押し当てられる。
「あ…♡」
「…寝てていいぞ」
「っ、あ♡」
ずぷ……と音を立てて熱いものが侵入してくる。さっきシたばかりなのですんなりと受け入れることが出来た。そのままゆっくりと抽挿が開始されて僕は思わず声を上げる。
「あっ♡あぁっ♡」
(きもちい……!)
いきなり強く突かれたらどうなってしまうのか怖かったけど、優しくとんとんとされるのも気持ちいい。ただでさえふにゃふにゃになっていた僕自身はとろとろになっていた。
「あっ♡あぅ♡」
「っ、はぁ……」
僕は枕をぎゅっと抱きしめながら快感に耐える。
(きもちい……)
好きな人とするセックスってこんなに幸せなんだ。そう思うと自然と涙が溢れてきた。
「あ……♡」
「……泣くほど嫌ならやめるか?」
「ち、ちが…きもちいいの…やめないで…♡」
ふにゃふにゃのままそう答えると息を呑む気配があった。
「お前……本当にタチが悪いな……!」
「ん…なぁに…?あんっ…♡」
ぬちゅ、ぬちゃ♡と濡れた音が宿の暗闇に響く。後ろから回された手が胸を掴み、そのままやわやわと揉みしだかれる。
「あっ、あ♡そこ……♡」
「……ここも弱いのか?」
耳元で囁かれて背筋がぞくぞくする。耳たぶを甘噛みされて思わず身を捩ると逃がさないと言わんばかりに強く抱きしめられた。
「やぁん……♡♡」
ぬるりとした舌先で舐め上げられ、ちゅっと音を立てて吸い上げられるとたまらない気持ちになる。その間もずっと腰を打ち付けられていて頭がおかしくなりそうだ。
「んぁっ♡あ♡あぁっ♡」
(やば…声とまんない…♡ジェラルド、えっち上手すぎるよ…♡♡)
僕は枕を抱きしめてなんとか快感に耐える。全身で気持ちよさに高められてもう何も考えられなくなっていた。
「や…もう…きもちいぃ…♡イクぅ…♡」
「…イッていい」
「あ、あぁっ♡イクっ……イッちゃうぅ……♡」
(だめ……もう我慢できない……!)
僕は枕を噛んで必死に声を抑える。そしてびくんと大きく身体をしならせた。
「……っ!」
「はぁ……は……」
ずるりと引き抜かれたそこからどろりと白濁が流れ出る感覚に身震いする。そのままベッドに倒れ込むと優しく頭を撫でられた。
「…そのまま寝ろ。後は片付けておく」
「ん……」
(だめ…やっぱり眠いや…)
目蓋が重い。抗えない睡魔に僕はそのまま目を閉じると夢の中へと落ちていった。
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