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48(高校生本編おしまい)

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「はぁ……ったく、めんどくせえな」
 放課後の帰り道、栄之助はため息を吐きながら歩いていた。隣には司が並んで歩いている。半ば公認の仲にしたお陰で、もう遠慮なくそばに行けることが、嬉しくて仕方なかった。
「何が?」
「学校」
 栄之助の言葉に司はきょとんとした表情を浮かべていたが、やがてクスクスと笑い始めた。
「今から帰るのに、もう学校のこと考えてるの?真面目だなあ」
「うるせえな。お前だって同じだろ」
「僕は栄之助よりは真面目に考えてないよ?」
「俺だってそんなに考えてないっつーの」
「張り合おうとしてる?」
「違う」
 栄之助が否定すると、司はまたくすくすと笑う。完全にバカにされていると感じた栄之助は司の頭を軽く小突いた。すると司は不満げな顔で見上げてくる。
「暴力反対!いきなり何すんの!?」
「お前が悪い」
「もー……」
 何気ない会話だが栄之助の心は満たされていた。司と一緒にいられるだけで幸せな気持ちになる。ずっと好きだったのだ。恋を知らない幼い頃から。
「栄之助って頭いいけどバカだよね」
「はぁ?喧嘩売ってんのか?」
「ほら、すぐ怒る。カルシウム足りてないんじゃない?」
「うるせえな」
 栄之助が睨んでも司は臆することなく笑っている。
「…んなこと俺が一番分かってるよ」
「そうだね、バカだよ。あんなことしなくても僕のこと好きだって言ってくれたら良かったのに」
「…言ったろ?」
「エッチした後からじゃん。普段から言ってくれてたらもっと嬉しかったのに」
「……悪かったよ」
 栄之助が素直に謝ると、司は嬉しそうに笑った。そんな司を見て栄之助も思わず笑ってしまう。
「司」
「ん?」
「好きだ。ずっとお前だけ好きだった」
 改めて告げると、司は頬を赤く染めて俯いた。そして小さな声で呟く。
「…分かりづらいんだよ、本当。意地悪ばっかだし」
「悪かったって。好きな子はいじめたくなるタイプなんだよ、俺」
「子供」
 司は呆れたように言うが、その顔はどこか嬉しそうだった。栄之助はそんな司を見て微笑むと、そのまま唇を重ねた。触れるだけの軽いキスだったが、それだけでも司を驚かせるには十分だったらしく目を大きく見開いている。
「……不意打ち禁止……」
「んだよその顔。可愛いな」
「またそういうことするし…」
「なあ、返事は?司」
「言わなくても分かってるでしょ、そんなの」
「分かんないから聞いてるんだけど?」
 栄之助がそう言うと、司は頰を赤く染めてそっぽを向いた。しかしすぐに向き直って小さな声で呟く。
「僕も好き……」
「……へ?」
「もう!何度も言わせないでよ!」
 司は耳まで真っ赤にすると、足早に歩き出した。栄之助はぽかんとしていたが、すぐに我に返ると慌てて追いかける。そしてそのまま司を抱きしめた。
「ちょっ……!ここ外だし…!」
「あ?公開セックスしたんだから今更こんくらい別にいいだろ?見せつけてやろうぜ」
「やだ!ばか!恥ずかしい!むり!」
「じゃあ大人しく抱きしめられてろ」
 栄之助がそう言うと、司は諦めたのか大人しくなった。栄之助は満足そうに笑うと司の頭を撫でる。すると司は気持ち良さそうに目を細めた。その表情を見て栄之助の胸は高鳴る。
(あー……やっぱ好き)
 ずっと欲しかったものが手に入った喜びを感じながら、栄之助は司の首筋に顔を埋める。
(絶対誰にも渡さねぇ…何年越しだと思ってるんだ…)
「え?栄之助、なんか言った?」
「いや、なんでもねえよ」
 栄之助が答えると、司は不思議そうに首を傾げた。しかしそれ以上追求してくることはなかったため、栄之助はほっとする。
(一生離してやらねえからな?覚悟しとけよ……司)
 心の中で呟きながら、栄之助は司の額にキスを落とした。すると司は顔を真っ赤に染めて栄之助を睨んでくる。それが照れ隠しだと分かっていたから、栄之助は笑みを堪えきれなかった。
***
高校生編・おしまい!
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