生意気幼馴染が女装したら可愛いすぎたので付き合うことになりました

１８

「司、映画いこーぜ？」
「またぁ？」
（もう３日連続なんだけど……）
　司は呆れた様子でため息をついた。毎日毎日誘われ続け、司はその度に理由をつけて逃げていた。栄之助はそんな司の態度を無視して言う。
「嫌なら別にいいけど？」
「嫌ってわけじゃ……」
（ただなんか……気まずい……）
　司は言葉に詰まった。栄之助はそんな司の様子をじっと見つめている。その視線がなんだか怖くて、思わず俯いてしまう。しばらく沈黙が続いた後、栄之助が口を開いた。
「お前が俺を避けてるのは分かってるよ」
「え？」
　司は驚いたように顔を上げた。栄之助はその目をじっと見つめる。
「なんでかは知らねーけど、俺の事避けてんだろ？」
「そ、それは……」
（言えない……！本当は栄之助のこと気になってきちゃっただなんて……）
　司は俯いたまま黙ってしまう。すると栄之助が続けて言った。
「別に良いけどさ、それならそれで」
「……え？」
　司は思わず聞き返した。栄之助は相変わらずじっとこちらを見ている。
「お前が俺のこと好きじゃなくても別にいいって言ってんの」
「っ！？」
（なにそれ！？どういう意味…）
「ガキの頃はお前に拒否られて、めちゃめちゃ傷ついた。でも、今は違うから。お前が俺のこと嫌いでも、諦めねぇし。それに」
「なっ……」
　司は言葉を詰まらせた。心臓がバクバクと音を立てている。一歩近づかれ、びくん！と震えて顔を見上げる。
「…あながち脈ナシってワケでもなさそうじゃん」
（！？）
「やあ…♡」
「真っ赤な顔してカワイーの。お前、気づいてないのか？抱いてくれって言ってくる女と同じ顔して俺のこと見てんだぜ？自分がどんな顔してるか分かってるか？」
「っ♡、ちがっ…バカなこと言うな、僕がそんな……ひゃっ！？」
　栄之助は屈むと司の耳元に唇を寄せる。それだけで猫みたいに身体が跳ね、力が抜けてしまう。かつての生意気な野良猫みたいな態度とは裏腹の家猫みたいな態度に、栄之助は笑みを深くした。そして甘く囁く。
「今みたいにさ」
「んっ……♡♡♡」
「猫みてーに甘えてくれたら良いんだよ」
（やめて……耳元で喋るのやめてぇ……♡）
　司は涙目になりながら首を振った。しかし栄之助は容赦なく続ける。
「お前が俺を避けてもいーけど、俺は諦めねぇし、俺がお前を好きでいることまで拒否すんなよ」
「っ……」
（それはずるいでしょ……）
　司は悔しげに唇を噛んだ。自分が彼を避ける理由なんて、一つしかないというのに。しかし栄之助はそんなことを気にも留めていないようだ。彼は満足げに微笑むと、司の手を取る。
「ま、待ってよ！僕、映画行くなんて一言も…」
「あ？映画じゃねーよ？もっと良いところ」
「え……？」
（それってどこ……？）
　司が不思議そうに首を傾げていると、栄之助はニヤリと笑って言った。
「イイトコだよ」