71 / 100
3章 王都救出絵巻
第71話 決闘
しおりを挟む
彼女―エレイシアはどうやら、俺が宝石箱を出したことで彼女の逆鱗に触れたらしい。
そうか、あの宝箱はこの家ゆかりの物。
ただのコボルトの魔石をそんな一点物に仕舞って俺に返してきたのか…… 。
感傷に浸る時間はない、剣を抜き去った彼女に
「待ってください、婚約目前に彼女を訪ねた男を屋敷の前で手討ちにしたとあっては彼女の名誉に傷がつきます。場所を変えませんか?」
と提案した。
この際だ。こちらの実力を見てもらったほうが説得しやすい。今のままでは話し合いもろくにできないだろう。
「ふん、命乞いをするかと思えば、その場しのぎにしかならない提案だな。小賢しい言い分だがララ様を持ち出されては仕方ない。いいぞ、乗ってやる」
よし、これで手討ちから決闘くらいには格上げしたな、何の格かは知らないが。
彼女にアテがあるのか、屋敷から移動するのでついていく。道すがらに確認だ。
「あなたの私を手討ちにかける道理はわかりました。ですが、私にはまだ名誉を挽回する機会が与えられていません。
あなたが勝てばそのまま斬り殺して結構、私が勝ったときには私の言い分、話をすべて聞いてもらいます。そういう決闘でよろしいですか?」
「ほう、私と闘うつもりか? 若い娘と侮っているのかもしれんが、私は『剣士』のジョブを持つ正式な騎士だ。幼少の頃より鍛錬を怠らず、『剣術』は勿論他のスキルも所持している。
キサマが長年あのギルドの職員だったことは調べてある。文官風情が舐めるなよ」
と睨みつけてくるエレイシア。愚直な性格のようだ、自ら手の内を明かしてくれるとは。
着いていった先は冒険者ギルド本部に併設されている練武場だ。
こちらのギルドは流石の大きさで、酒場が隣に引っついているような田舎街のギルドと違い、前世でいう所の野球グラウンドほどの広場があり、パーティーの勧誘や力を見せたりするのは主にここで行われる。
王都には他の街と違って飲み屋街が存在するしな。
「ここならギルドに先に申請しておけば、練武の際の事故は互いに不問とできる。今回は表沙汰にしたくはないからこれを決闘代わりとする、いいな?」
「私は構いません、エレイシアさんの方こそ先ほどの私の提案を承諾ということでいいのですね」
本当はこの決闘で「強制証文」を使い、協力関係を取りつけることも考えたいがそれは止めておく。
「強制証文」による強制は不自然さが出る可能性もある、俺に代わって貴族たちへの対応を頼むときにそれでは困る。
何よりそんな不誠実なことをすればその後が続かない。彼女が本心からララのことを思う騎士だと思ったから行動に出たのだ、信頼は自力で勝ち取ってみせる。
「あくまで勝つつもりか、いいだろう私が負けたら全面的にキサマの言い分を信じよう、勝てたらな」
練武場の一角で対峙する俺とエレイシア。
みすみすやられる気はない、俺も着替え鎧姿となっている。
「ふん、魔道具袋を持っているようだがそれがどうした。長く生きてるからといって、その間に研鑽を積んでいないものなど相手になるか。その侮り、後悔させてやる!」
両手で大剣を握り突っ込んでくるエレイシア。
対してこちらは片手にワイバーンソードを持ち、もう片方の手には小盾を持った。
――決闘の幕が上がる。
そうか、あの宝箱はこの家ゆかりの物。
ただのコボルトの魔石をそんな一点物に仕舞って俺に返してきたのか…… 。
感傷に浸る時間はない、剣を抜き去った彼女に
「待ってください、婚約目前に彼女を訪ねた男を屋敷の前で手討ちにしたとあっては彼女の名誉に傷がつきます。場所を変えませんか?」
と提案した。
この際だ。こちらの実力を見てもらったほうが説得しやすい。今のままでは話し合いもろくにできないだろう。
「ふん、命乞いをするかと思えば、その場しのぎにしかならない提案だな。小賢しい言い分だがララ様を持ち出されては仕方ない。いいぞ、乗ってやる」
よし、これで手討ちから決闘くらいには格上げしたな、何の格かは知らないが。
彼女にアテがあるのか、屋敷から移動するのでついていく。道すがらに確認だ。
「あなたの私を手討ちにかける道理はわかりました。ですが、私にはまだ名誉を挽回する機会が与えられていません。
あなたが勝てばそのまま斬り殺して結構、私が勝ったときには私の言い分、話をすべて聞いてもらいます。そういう決闘でよろしいですか?」
「ほう、私と闘うつもりか? 若い娘と侮っているのかもしれんが、私は『剣士』のジョブを持つ正式な騎士だ。幼少の頃より鍛錬を怠らず、『剣術』は勿論他のスキルも所持している。
キサマが長年あのギルドの職員だったことは調べてある。文官風情が舐めるなよ」
と睨みつけてくるエレイシア。愚直な性格のようだ、自ら手の内を明かしてくれるとは。
着いていった先は冒険者ギルド本部に併設されている練武場だ。
こちらのギルドは流石の大きさで、酒場が隣に引っついているような田舎街のギルドと違い、前世でいう所の野球グラウンドほどの広場があり、パーティーの勧誘や力を見せたりするのは主にここで行われる。
王都には他の街と違って飲み屋街が存在するしな。
「ここならギルドに先に申請しておけば、練武の際の事故は互いに不問とできる。今回は表沙汰にしたくはないからこれを決闘代わりとする、いいな?」
「私は構いません、エレイシアさんの方こそ先ほどの私の提案を承諾ということでいいのですね」
本当はこの決闘で「強制証文」を使い、協力関係を取りつけることも考えたいがそれは止めておく。
「強制証文」による強制は不自然さが出る可能性もある、俺に代わって貴族たちへの対応を頼むときにそれでは困る。
何よりそんな不誠実なことをすればその後が続かない。彼女が本心からララのことを思う騎士だと思ったから行動に出たのだ、信頼は自力で勝ち取ってみせる。
「あくまで勝つつもりか、いいだろう私が負けたら全面的にキサマの言い分を信じよう、勝てたらな」
練武場の一角で対峙する俺とエレイシア。
みすみすやられる気はない、俺も着替え鎧姿となっている。
「ふん、魔道具袋を持っているようだがそれがどうした。長く生きてるからといって、その間に研鑽を積んでいないものなど相手になるか。その侮り、後悔させてやる!」
両手で大剣を握り突っ込んでくるエレイシア。
対してこちらは片手にワイバーンソードを持ち、もう片方の手には小盾を持った。
――決闘の幕が上がる。
32
お気に入りに追加
1,523
あなたにおすすめの小説
鍵の王~才能を奪うスキルを持って生まれた僕は才能を与える王族の王子だったので、裏から国を支配しようと思います~
真心糸
ファンタジー
【あらすじ】
ジュナリュシア・キーブレスは、キーブレス王国の第十七王子として生を受けた。
キーブレス王国は、スキル至上主義を掲げており、高ランクのスキルを持つ者が権力を持ち、低ランクの者はゴミのように虐げられる国だった。そして、ジュナの一族であるキーブレス王家は、魔法などのスキルを他人に授与することができる特殊能力者の一族で、ジュナも同様の能力が発現することが期待された。
しかし、スキル鑑定式の日、ジュナが鑑定士に言い渡された能力は《スキル無し》。これと同じ日に第五王女ピアーチェスに言い渡された能力は《Eランクのギフトキー》。
つまり、スキル至上主義のキーブレス王国では、死刑宣告にも等しい鑑定結果であった。他の王子たちは、Cランク以上のギフトキーを所持していることもあり、ジュナとピアーチェスはひどい差別を受けることになる。
お互いに近い境遇ということもあり、身を寄せ合うようになる2人。すぐに仲良くなった2人だったが、ある日、別の兄弟から命を狙われる事件が起き、窮地に立たされたジュナは、隠された能力《他人からスキルを奪う能力》が覚醒する。
この事件をきっかけに、ジュナは考えを改めた。この国で自分と姉が生きていくには、クズな王族たちからスキルを奪って裏から国を支配するしかない、と。
これは、スキル至上主義の王国で、自分たちが生き延びるために闇組織を結成し、裏から王国を支配していく物語。
【他サイトでの掲載状況】
本作は、カクヨム様、小説家になろう様、ノベルアップ+様でも掲載しています。

異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分
かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。
前世の分も幸せに暮らします!
平成30年3月26日完結しました。
番外編、書くかもです。
5月9日、番外編追加しました。
小説家になろう様でも公開してます。
エブリスタ様でも公開してます。

最底辺の転生者──2匹の捨て子を育む赤ん坊!?の異世界修行の旅
散歩道 猫ノ子
ファンタジー
捨てられてしまった2匹の神獣と育む異世界育成ファンタジー
2匹のねこのこを育む、ほのぼの育成異世界生活です。
人間の汚さを知る主人公が、動物のように純粋で無垢な女の子2人に振り回されつつ、振り回すそんな物語です。
主人公は最強ですが、基本的に最強しませんのでご了承くださいm(*_ _)m

【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです
ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。
女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。
前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る!
そんな変わった公爵令嬢の物語。
アルファポリスOnly
2019/4/21 完結しました。
沢山のお気に入り、本当に感謝します。
7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。
2021年9月。
ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。
10月、再び完結に戻します。
御声援御愛読ありがとうございました。

~クラス召喚~ 経験豊富な俺は1人で歩みます
無味無臭
ファンタジー
久しぶりに異世界転生を体験した。だけど周りはビギナーばかり。これでは俺が巻き込まれて死んでしまう。自称プロフェッショナルな俺はそれがイヤで他の奴と離れて生活を送る事にした。天使には魔王を討伐しろ言われたけど、それは面倒なので止めておきます。私はゆっくりのんびり異世界生活を送りたいのです。たまには自分の好きな人生をお願いします。


転生チート薬師は巻き込まれやすいのか? ~スローライフと時々騒動~
志位斗 茂家波
ファンタジー
異世界転生という話は聞いたことがあるが、まさかそのような事を実際に経験するとは思わなかった。
けれども、よくあるチートとかで暴れるような事よりも、自由にかつのんびりと適当に過ごしたい。
そう思っていたけれども、そうはいかないのが現実である。
‥‥‥才能はあるのに、無駄遣いが多い、苦労人が増えやすいお話です。
「小説家になろう」でも公開中。興味があればそちらの方でもどうぞ。誤字は出来るだけ無いようにしたいですが、発見次第伝えていただければ幸いです。あと、案があればそれもある程度受け付けたいと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる