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森に響くのはヤトコさんの悲鳴か歌声か
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森に住むネズミさんは体が小さくて木登りが得意だ。対して町に住むネズミさんは体が大きくて泳ぐのが得意――というのは生物学上の話。
森に住むネズミさんは、町に住むネズミさんと比べると、サバサバしたネズミさんが多かった。
『まぁさか。自然から逃げたネズミの世話をすることになるなんてね』
ラプルさん。森に住むネズミさんの代表だ。小さな女の子のような、生意気で可愛らしい声をしている。
体の大きさが倍くらいあるアジンさんに対しても、なかなか強気だ。ここがラプルさんのテリトリーである森の中だろうか。
アジンさんはラプルさんのちょっと失礼な態度も気にしていないようで――
『逃げたわけじゃねぇが、俺たちは生まれも育ちもシティなんでな。自然に慣れてないのは間違いねぇ。世話んなるよ』
と、なかなか大人な返しをした。ラプルさんはそれが気に入ったのか、うんうんと頷く。
『町のネズミは人間の家に住むんでしょう? 自分で家なんて作ったことないだろうから、全部用意してあげたわ。感謝してよね』
ラプルさんは自分の後ろに掘られた穴を鼻先で示した。わたしが腕を突っ込めそうな穴で、アジンさんたちでも楽々入れそうだ。
『すまねぇな。そんな小さな体で、こんな立派な家を掘ってくれたのか』
「掘ってくれたのはウサギさんですよ」
わたしはしゃがんでアジンさんたちに目線を近づけた。アジンさんは立ち上がってくれたけれど、それでもまだ全然見上げる形になってしまう。
『おぅそうか。それじゃあ今度礼をしに行かなきゃな』
『で、でも、中を整えたのはわたしたちなんだから! 見せてあげるから、こっちに来なさい』
ラプルさんが穴へと駆け込んでいった。アジンさんはそれを見送ったあと、わたしに頭を下げた。
『色々ありがとうな。おーい! みんな行くぞ!』
アジンさんの呼びかけで、少し離れたところに集まっていたネズミさんたちが戻ってきた。
名残惜しそうにしていた最後の一匹が離れた場所では、ヤトコさんがしゃがんで小さくなっている。
『獣、怖い……』
ただ囲まれていただけなのに、カタカタと震えている。相変わらずカタナの入った麻袋は大事に抱きかかえていた。
「大丈夫ですか? みんな大人しくしていたでしょう?」
『めちゃくた吠えられた……』
「虎さんに囲まれてたわけじゃないんですから。ネズミさんなんてチュウチュウかわいいじゃないですか」
『違う! 違うもん! 小さくたって獣は獣! 隙を見せたら牙をむいてくるんだから! 刀を抱いてなかったら、今頃どうなっていたことか』
ヤトコさんは大きく身震いをして、より縮こまった。
わたしはヤトコさんの近くで屈んだ。
「そんなこと言わないでください。ネズミさんとは同じ廃棄をあさった仲じゃないですか」
『うわぁ! だからそれ思い出させないでってば!』
ヤトコさんが顔を上げずに、腕を振った。それがわたしの顔の前をかすめる。
「あっ……!」
当たったわけではないけれど、思わず引いた体が後ろへと倒れていく。しゃがんでいるせいで、後ろに下がって踏ん張ることもできない。
思わず前に手を伸ばした。もちろん何かをつかむことなんてできず――
『大丈夫!?』
手首をがっつりつかまれた。ヤトコさんが顔を上げている。
ヤトコさんは立ち上がりながら、わたしの手を引いた。わたしの体はそれに容易く引き寄せらる。
立ち上がったわたしは勢いそのままに、真っ黒な洋服に顔を押し付けることになった。ささやかな柔らかさが、わたしの顔を受け止める。
ほんのりと生ごみの臭いがした。
『ごめんね。痛くなかった?』
顔を離すと、ヤトコさんの顔が目の前にあった。涙で目が潤んでいるのが、なんだかえっちだ。
「い、いえ。手は当たっていないので大丈夫ですよ。なんなら手首の方が痛いくらいです」
『あ、ごめん』
ヤトコさんが離した手首は、ほんのり赤くなっていた。軽くさすったらわからなくなったので、跡は残らなそうだ。
「元気になったみたいなので、わたしたちもおうちに戻りましょう。暗くなる前にやりたいこともありますし」
『なに? ご飯の準備とかするの? 切るだけだったらわたし自信あるよ』
「料理もしますけど、その前に歌を歌います」
『歌? カラオケなら町まで戻るの?』
ヤトコさんが辺りを見回した。近くに人工物なんて一切ない。目に入るのは草木と、それをささやかに彩る赤い木の実だけだ。
ここはわたしの家の近く。町に向かえば日が沈んでしまう。
「町には戻りません。なんなら、ここでも大丈夫です。歌を歌うだけなので」
『確かに、ここなら誰の迷惑にもならなそうだもんね。天然のカラオケボックスだ。でもそれなら、わざわざ予定に盛り込む必要なくない? 好きなときに、好きに歌えばいいじゃん』
「昨日今日と、風の精霊さんにお手伝いしてもらったので、そのお礼なんです。好きなんですよ歌が。風の精霊さんは」
わたしは咳ばらいをして喉の状態を整えた。わたしだって歌うのは嫌いじゃない。
風の精霊さんとお友達になれたのも、森で一人で歌っていたのがきっかけだ。
「そうですね。今日はヤトコさんがいますから、ヤトコさんの世界の歌を歌いますか。結構伝わってきている曲があるんですよ」
『お? やったぁ。何? 何を歌うの?』
ヤトコさんは両手を合わせ、目を輝かせた。さっきまでネズミさんに囲まれていたことを忘れてしまったみたいだ。
そこまで期待されると、わたしもちょっとやる気が出てくる。
「仕方ないですね。今日は風の精霊さんだけでなく、ヤトコさんのためにも歌ってあげます」
わたしはもう一度咳ばらいをしてから、ヤトコさんに向き直った。そして大きく息を吸って――
「おーおーきな、のっぽの、ふるどけいーおじぃさんのーとけいー」
わたしは歌った。それに合わせてヤトコさんが手拍子を叩く。ゆっくりな曲調に合わせて風が吹いて、木々がさざめいた。風の精霊さんも喜んでいるみたいだ。
わたしの歌を聞いているのはヤトコさんと風の精霊さんだけ。わたしが歌っている間だけは森から生き物の気配が消え、わたしの歌のみが響く。
わたしはそのまま、気持ちよく歌い切った。
気づけばヤトコさんの手拍子は止まっている。代わりに首を傾げていた。
『うん……ごめん。知らない曲だったかも』
「『大きな古時計』という曲です。そちらの世界では有名な曲だと聞いていたんですが、ヤトコさんは知りませんでしたか」
『あーいや、知ってるかも。『おじいさんの古時計』って曲名だと思ってたけど』
ヤトコさんが鼻歌を奏で始めた。曲はわたしが今さっき歌ったのと全く同じ。『大きな古時計』だった。
「なんだ。知ってるじゃないですか」
『あ、やっぱこの曲なんだ。もしかしてフクーラてさ……いや、うーん』
ヤトコさんは言い淀んでから、腕を組んで何やら悩み始めた。
「どうかしたんですか? 言いたいことがあるなら言ってもらって大丈夫ですよ」
褒めてもらう準備はできている。
それなのにヤトコさんは素直に褒めてくれることはなく、こんな提案をしてきた。
『もしかしたら、曲がちょっと変わって伝わってるのかもね。わたしが知ってる通りに歌ってみるから、それで覚えてみてよ』
「え? 大丈夫ですよ。さっきの鼻歌はわたしの知っている『大きな古時計』そのものでしたから」
『いいからいいから』
ヤトコさんはなだめるようにわたしの肩を軽く叩いた。わたしが「はぁ」と返事をすると、ヤトコさんは一歩離れてから目を閉じ、大きく息を吸って『おーおーきなー』と歌い始めた。
正直びっくりした。こんなに開けた森の中なのに、まるで教会の中にいるかのように声が響いている。それなのにうるさいとか、耳障りだとかいうのは一切無くて、心地よく体の芯に響く。
率直に言って、めちゃくちゃうまい。毎日のようにこの森で歌っていたわたしが、一歩譲るかもしれない。
「あれ……?」
風が踊っている。渦巻く風が近くの草木を立ち上がらせ、ヤトコさんの服をはためかせて歌を際立たせている。
伝える意思の弱い風の精霊さん相手でもわかる。わたしが歌っていたときの十倍くらい上機嫌だ。
『すごい上手だね』
聞きなれた少年のような声だ。いつのまにかわたしの横に、孔雀青のモフモフはぐれ狼がいた。
「ハロウル? どうしたんですか? いつもわたしが歌うときはどこかに行くじゃないですか」
『うん。フクラの歌は聞けたもんじゃないからね』
「またまたぁ。そんなことを言うのはハロウルだけですよ」
わたしはハロウルに寄りかかって、軽くもふった。
『誰も聞いてくれないだけでしょ』
ハロウルは寄りかかられているのを気にする様子はなく、耳をヤトコさんの方へと向けた。
『それにしてもこの人間の歌はすごいね』
「まぁ、確かに。わたしよりちょっとだけ、上手かもしれないですね」
『ちょっとじゃないでしょ。ほら見てよ』
ハロウルが鼻先で示した先では、ネズミさんたちが巣穴から出てきて、皆がヤトコさんの方に耳を向けていた。
ネズミさんだけではない。周りを見ると草陰にはウサギさんが。木の上にはリスさんや鳥さん。ちょっと離れた大岩の上には熊さんがいた。
みんながヤトコさんの歌に耳を傾けている。
そしてなにより驚いたのが、木陰で鹿さんと虎さんが並んで歌を聞いていたのだ。
「あ、あれは……!」
荒れ地に沸く泉では、草食動物と肉食動物が並んで仲良く水を飲むことがあるという。それと同じことが、いま目の前で起きているのだ。
『そう。泉の女神さまが起こす奇跡みたいな歌声。フクラの毒沼みたいな歌声と比べたら罰が当たるよ』
ヤトコさんの歌が止むと、集まっていた動物たちが一斉に歓喜の声を上げた。
『うぇ! なに!? 獣!? いっぱい……!』
目を開いたヤトコさんは、悲鳴を上げて泣き出した。
森に住むネズミさんは、町に住むネズミさんと比べると、サバサバしたネズミさんが多かった。
『まぁさか。自然から逃げたネズミの世話をすることになるなんてね』
ラプルさん。森に住むネズミさんの代表だ。小さな女の子のような、生意気で可愛らしい声をしている。
体の大きさが倍くらいあるアジンさんに対しても、なかなか強気だ。ここがラプルさんのテリトリーである森の中だろうか。
アジンさんはラプルさんのちょっと失礼な態度も気にしていないようで――
『逃げたわけじゃねぇが、俺たちは生まれも育ちもシティなんでな。自然に慣れてないのは間違いねぇ。世話んなるよ』
と、なかなか大人な返しをした。ラプルさんはそれが気に入ったのか、うんうんと頷く。
『町のネズミは人間の家に住むんでしょう? 自分で家なんて作ったことないだろうから、全部用意してあげたわ。感謝してよね』
ラプルさんは自分の後ろに掘られた穴を鼻先で示した。わたしが腕を突っ込めそうな穴で、アジンさんたちでも楽々入れそうだ。
『すまねぇな。そんな小さな体で、こんな立派な家を掘ってくれたのか』
「掘ってくれたのはウサギさんですよ」
わたしはしゃがんでアジンさんたちに目線を近づけた。アジンさんは立ち上がってくれたけれど、それでもまだ全然見上げる形になってしまう。
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『で、でも、中を整えたのはわたしたちなんだから! 見せてあげるから、こっちに来なさい』
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『色々ありがとうな。おーい! みんな行くぞ!』
アジンさんの呼びかけで、少し離れたところに集まっていたネズミさんたちが戻ってきた。
名残惜しそうにしていた最後の一匹が離れた場所では、ヤトコさんがしゃがんで小さくなっている。
『獣、怖い……』
ただ囲まれていただけなのに、カタカタと震えている。相変わらずカタナの入った麻袋は大事に抱きかかえていた。
「大丈夫ですか? みんな大人しくしていたでしょう?」
『めちゃくた吠えられた……』
「虎さんに囲まれてたわけじゃないんですから。ネズミさんなんてチュウチュウかわいいじゃないですか」
『違う! 違うもん! 小さくたって獣は獣! 隙を見せたら牙をむいてくるんだから! 刀を抱いてなかったら、今頃どうなっていたことか』
ヤトコさんは大きく身震いをして、より縮こまった。
わたしはヤトコさんの近くで屈んだ。
「そんなこと言わないでください。ネズミさんとは同じ廃棄をあさった仲じゃないですか」
『うわぁ! だからそれ思い出させないでってば!』
ヤトコさんが顔を上げずに、腕を振った。それがわたしの顔の前をかすめる。
「あっ……!」
当たったわけではないけれど、思わず引いた体が後ろへと倒れていく。しゃがんでいるせいで、後ろに下がって踏ん張ることもできない。
思わず前に手を伸ばした。もちろん何かをつかむことなんてできず――
『大丈夫!?』
手首をがっつりつかまれた。ヤトコさんが顔を上げている。
ヤトコさんは立ち上がりながら、わたしの手を引いた。わたしの体はそれに容易く引き寄せらる。
立ち上がったわたしは勢いそのままに、真っ黒な洋服に顔を押し付けることになった。ささやかな柔らかさが、わたしの顔を受け止める。
ほんのりと生ごみの臭いがした。
『ごめんね。痛くなかった?』
顔を離すと、ヤトコさんの顔が目の前にあった。涙で目が潤んでいるのが、なんだかえっちだ。
「い、いえ。手は当たっていないので大丈夫ですよ。なんなら手首の方が痛いくらいです」
『あ、ごめん』
ヤトコさんが離した手首は、ほんのり赤くなっていた。軽くさすったらわからなくなったので、跡は残らなそうだ。
「元気になったみたいなので、わたしたちもおうちに戻りましょう。暗くなる前にやりたいこともありますし」
『なに? ご飯の準備とかするの? 切るだけだったらわたし自信あるよ』
「料理もしますけど、その前に歌を歌います」
『歌? カラオケなら町まで戻るの?』
ヤトコさんが辺りを見回した。近くに人工物なんて一切ない。目に入るのは草木と、それをささやかに彩る赤い木の実だけだ。
ここはわたしの家の近く。町に向かえば日が沈んでしまう。
「町には戻りません。なんなら、ここでも大丈夫です。歌を歌うだけなので」
『確かに、ここなら誰の迷惑にもならなそうだもんね。天然のカラオケボックスだ。でもそれなら、わざわざ予定に盛り込む必要なくない? 好きなときに、好きに歌えばいいじゃん』
「昨日今日と、風の精霊さんにお手伝いしてもらったので、そのお礼なんです。好きなんですよ歌が。風の精霊さんは」
わたしは咳ばらいをして喉の状態を整えた。わたしだって歌うのは嫌いじゃない。
風の精霊さんとお友達になれたのも、森で一人で歌っていたのがきっかけだ。
「そうですね。今日はヤトコさんがいますから、ヤトコさんの世界の歌を歌いますか。結構伝わってきている曲があるんですよ」
『お? やったぁ。何? 何を歌うの?』
ヤトコさんは両手を合わせ、目を輝かせた。さっきまでネズミさんに囲まれていたことを忘れてしまったみたいだ。
そこまで期待されると、わたしもちょっとやる気が出てくる。
「仕方ないですね。今日は風の精霊さんだけでなく、ヤトコさんのためにも歌ってあげます」
わたしはもう一度咳ばらいをしてから、ヤトコさんに向き直った。そして大きく息を吸って――
「おーおーきな、のっぽの、ふるどけいーおじぃさんのーとけいー」
わたしは歌った。それに合わせてヤトコさんが手拍子を叩く。ゆっくりな曲調に合わせて風が吹いて、木々がさざめいた。風の精霊さんも喜んでいるみたいだ。
わたしの歌を聞いているのはヤトコさんと風の精霊さんだけ。わたしが歌っている間だけは森から生き物の気配が消え、わたしの歌のみが響く。
わたしはそのまま、気持ちよく歌い切った。
気づけばヤトコさんの手拍子は止まっている。代わりに首を傾げていた。
『うん……ごめん。知らない曲だったかも』
「『大きな古時計』という曲です。そちらの世界では有名な曲だと聞いていたんですが、ヤトコさんは知りませんでしたか」
『あーいや、知ってるかも。『おじいさんの古時計』って曲名だと思ってたけど』
ヤトコさんが鼻歌を奏で始めた。曲はわたしが今さっき歌ったのと全く同じ。『大きな古時計』だった。
「なんだ。知ってるじゃないですか」
『あ、やっぱこの曲なんだ。もしかしてフクーラてさ……いや、うーん』
ヤトコさんは言い淀んでから、腕を組んで何やら悩み始めた。
「どうかしたんですか? 言いたいことがあるなら言ってもらって大丈夫ですよ」
褒めてもらう準備はできている。
それなのにヤトコさんは素直に褒めてくれることはなく、こんな提案をしてきた。
『もしかしたら、曲がちょっと変わって伝わってるのかもね。わたしが知ってる通りに歌ってみるから、それで覚えてみてよ』
「え? 大丈夫ですよ。さっきの鼻歌はわたしの知っている『大きな古時計』そのものでしたから」
『いいからいいから』
ヤトコさんはなだめるようにわたしの肩を軽く叩いた。わたしが「はぁ」と返事をすると、ヤトコさんは一歩離れてから目を閉じ、大きく息を吸って『おーおーきなー』と歌い始めた。
正直びっくりした。こんなに開けた森の中なのに、まるで教会の中にいるかのように声が響いている。それなのにうるさいとか、耳障りだとかいうのは一切無くて、心地よく体の芯に響く。
率直に言って、めちゃくちゃうまい。毎日のようにこの森で歌っていたわたしが、一歩譲るかもしれない。
「あれ……?」
風が踊っている。渦巻く風が近くの草木を立ち上がらせ、ヤトコさんの服をはためかせて歌を際立たせている。
伝える意思の弱い風の精霊さん相手でもわかる。わたしが歌っていたときの十倍くらい上機嫌だ。
『すごい上手だね』
聞きなれた少年のような声だ。いつのまにかわたしの横に、孔雀青のモフモフはぐれ狼がいた。
「ハロウル? どうしたんですか? いつもわたしが歌うときはどこかに行くじゃないですか」
『うん。フクラの歌は聞けたもんじゃないからね』
「またまたぁ。そんなことを言うのはハロウルだけですよ」
わたしはハロウルに寄りかかって、軽くもふった。
『誰も聞いてくれないだけでしょ』
ハロウルは寄りかかられているのを気にする様子はなく、耳をヤトコさんの方へと向けた。
『それにしてもこの人間の歌はすごいね』
「まぁ、確かに。わたしよりちょっとだけ、上手かもしれないですね」
『ちょっとじゃないでしょ。ほら見てよ』
ハロウルが鼻先で示した先では、ネズミさんたちが巣穴から出てきて、皆がヤトコさんの方に耳を向けていた。
ネズミさんだけではない。周りを見ると草陰にはウサギさんが。木の上にはリスさんや鳥さん。ちょっと離れた大岩の上には熊さんがいた。
みんながヤトコさんの歌に耳を傾けている。
そしてなにより驚いたのが、木陰で鹿さんと虎さんが並んで歌を聞いていたのだ。
「あ、あれは……!」
荒れ地に沸く泉では、草食動物と肉食動物が並んで仲良く水を飲むことがあるという。それと同じことが、いま目の前で起きているのだ。
『そう。泉の女神さまが起こす奇跡みたいな歌声。フクラの毒沼みたいな歌声と比べたら罰が当たるよ』
ヤトコさんの歌が止むと、集まっていた動物たちが一斉に歓喜の声を上げた。
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