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枝切ヤトコの初ごはん
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アジンさんの元に向かう前に、出店でオニギリを買った。アジンさんへのお土産ではない。ヤトコさんの初めてのご飯を買ったのだ。
歩きながら食べてもらう予定だったけれど、わたしがお金を払っている間にオニギリは無くなっていた。
『こんなに大きなオニギリ初めて食べた』
ヤトコさんはそんなことを言いながら、包み紙に残るお米をひとつずつ、ついばんだ。
「オニギリはそちらの世界から入ってきた料理だと聞いていますけど、あまり食べないんですか?」
『いや、よく食べるけど、手で握るから手の平に収まるサイズなんだ』
ヤトコさんが人差し指と親指で作った三角形は、頑張れば一口でいけそうなくらい小さかった。
「その大きさだと、お腹いっぱいにならないですね」
こっちの世界のオニギリは鉄板で焼いたお米に具を挟む。形はヤトコさんの指と同じ三角形だけれど、大きさは三倍くらいだ。
ヤトコさんは包み紙を丸めて、オニギリの形に押しつぶした。
『だから2個くらい食べるのが普通かな。そうすると別の具が楽しめるし。あと生野菜が入ってたのが新鮮だったかも。持ち歩いて食べることが多いから、長持ちしないものはあまり入れないんだ』
「こちらだと手軽に食べれて、1つで一食済むのが便利な食べ物という印象ですね。持ち運ぶ人はあまりいません」
わたしは目的地の方向を指差してから、歩き出した。あまりゆっくりしていると、仕事が終わる前に日が暮れてしまう。
けれどすぐに立ち止まることになった。ヤトコさんがわたしのローブをつかんだのだ。
『ちょっと待って……! すきっ腹でがっついたからか、ちょっと気持ち悪いかも……』
「えぇ……? 食べたら吐かないと気が済まないんですか? あなたは」
吐かれても困るので、立ち止まって背中をさすってあげた。
「まったく。お腹が空いてるからって、急いで食べるからですよ。子供じゃないんですから」
『だって……この後用事があるみたいだったから。べつに、お腹が空きすぎてがっついたわけじゃないし……』
「本当ですか? まぁ、どっちでもいいので、そういうことにしておきます」
わたしが「気を遣ってくれてありがとうございます」というと、ヤトコさんは気まずそうに顔を逸らして『ま、まぁね』と応えた。
少し顔色が良くなってきただろうか。「行けますか?」と聞いてから背中を押してあげると、軽くうなずいてから歩き始めた。
手を離したら倒れてしまいそうで、お年寄りの散歩を手伝っている気分だ。そんな状態でもヤトコさんは刀袋を杖代わりにはしなかった。
少し歩くと調子が良くなってきたのか、ヤトコさんから話しかけてきた。
『えっと……ボディガードとか言ってたっけ? そんなのが必要な仕事なんて、やめといたほうがいいと思うけど』
「アジンさんに話を聞きに行くだけなので、別に危なくないですよ。ボディガードというのは、ヤトコさんの賃金を発生させるための名目です。ヤトコさんが無一文だと、わたしも困るので」
『え? お金貰えるの? やさしい! ありがとねぇ!』
いきなりヤトコさんの姿勢がよくなった。飛び跳ねるように広げられた両腕が、わたしへと迫ってくる。
「うわぁ!」
思わず身を屈めると、頭の上を腕がかすめた。
危ない。ハグされるところだった。
ヤトコさんはつまらなそうに空ぶった腕を眺めている。
「元気になったのなら急ぎますよ。もしかしたら、ちょっと時間がかかるかもしれないので」
わたしは一歩二歩と距離をとった。再トライしてくるかと身構えたけれど、そんなことはなく、ヤトコさんは手を挙げて『はーい』と元気に返事した。
『でも話をするだけなら手伝えないなぁ。ただいるだけなのは、ちょっと気が引けるよ』
「大丈夫ですよ。一仕事してもらうつもりではありますから」
『え? いや、言ってみただけで本当に仕事がしたいわけじゃないんだけど……』
そんな文句は受け付けていない。
わたしたちは足早に目的地のエアカイトへ向かった。
歩きながら食べてもらう予定だったけれど、わたしがお金を払っている間にオニギリは無くなっていた。
『こんなに大きなオニギリ初めて食べた』
ヤトコさんはそんなことを言いながら、包み紙に残るお米をひとつずつ、ついばんだ。
「オニギリはそちらの世界から入ってきた料理だと聞いていますけど、あまり食べないんですか?」
『いや、よく食べるけど、手で握るから手の平に収まるサイズなんだ』
ヤトコさんが人差し指と親指で作った三角形は、頑張れば一口でいけそうなくらい小さかった。
「その大きさだと、お腹いっぱいにならないですね」
こっちの世界のオニギリは鉄板で焼いたお米に具を挟む。形はヤトコさんの指と同じ三角形だけれど、大きさは三倍くらいだ。
ヤトコさんは包み紙を丸めて、オニギリの形に押しつぶした。
『だから2個くらい食べるのが普通かな。そうすると別の具が楽しめるし。あと生野菜が入ってたのが新鮮だったかも。持ち歩いて食べることが多いから、長持ちしないものはあまり入れないんだ』
「こちらだと手軽に食べれて、1つで一食済むのが便利な食べ物という印象ですね。持ち運ぶ人はあまりいません」
わたしは目的地の方向を指差してから、歩き出した。あまりゆっくりしていると、仕事が終わる前に日が暮れてしまう。
けれどすぐに立ち止まることになった。ヤトコさんがわたしのローブをつかんだのだ。
『ちょっと待って……! すきっ腹でがっついたからか、ちょっと気持ち悪いかも……』
「えぇ……? 食べたら吐かないと気が済まないんですか? あなたは」
吐かれても困るので、立ち止まって背中をさすってあげた。
「まったく。お腹が空いてるからって、急いで食べるからですよ。子供じゃないんですから」
『だって……この後用事があるみたいだったから。べつに、お腹が空きすぎてがっついたわけじゃないし……』
「本当ですか? まぁ、どっちでもいいので、そういうことにしておきます」
わたしが「気を遣ってくれてありがとうございます」というと、ヤトコさんは気まずそうに顔を逸らして『ま、まぁね』と応えた。
少し顔色が良くなってきただろうか。「行けますか?」と聞いてから背中を押してあげると、軽くうなずいてから歩き始めた。
手を離したら倒れてしまいそうで、お年寄りの散歩を手伝っている気分だ。そんな状態でもヤトコさんは刀袋を杖代わりにはしなかった。
少し歩くと調子が良くなってきたのか、ヤトコさんから話しかけてきた。
『えっと……ボディガードとか言ってたっけ? そんなのが必要な仕事なんて、やめといたほうがいいと思うけど』
「アジンさんに話を聞きに行くだけなので、別に危なくないですよ。ボディガードというのは、ヤトコさんの賃金を発生させるための名目です。ヤトコさんが無一文だと、わたしも困るので」
『え? お金貰えるの? やさしい! ありがとねぇ!』
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「うわぁ!」
思わず身を屈めると、頭の上を腕がかすめた。
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「元気になったのなら急ぎますよ。もしかしたら、ちょっと時間がかかるかもしれないので」
わたしは一歩二歩と距離をとった。再トライしてくるかと身構えたけれど、そんなことはなく、ヤトコさんは手を挙げて『はーい』と元気に返事した。
『でも話をするだけなら手伝えないなぁ。ただいるだけなのは、ちょっと気が引けるよ』
「大丈夫ですよ。一仕事してもらうつもりではありますから」
『え? いや、言ってみただけで本当に仕事がしたいわけじゃないんだけど……』
そんな文句は受け付けていない。
わたしたちは足早に目的地のエアカイトへ向かった。
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