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ひとつのギルドができるまで
そして新しい世界へ
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翌日の夜、ゆきみは自宅に届いた荷物に首を傾げた。
小ぶりながら少し重みのある包みを抱えて、昨日のやり取りを感じさせない明るい声で兄の部屋の戸を叩く。
「お兄ちゃんお兄ちゃん、お母さんからお兄ちゃん宛に荷物が届いたよ? どうかしたの?」
「え、……もう届いたの? お母さん、早いな……」
「お兄ちゃんが何か頼んだの!? え、それって……お母さんとお話したってこと?」
「うん、昨日ね、電話をしたんだよ」
「そっかぁ……ちゃんと話せた?」
部屋に入ると、床のフローリングをひたすらに描き写していたらしいひなたがゆきみを出迎える。
“兄が母親と会話した”という、言ってしまえばただそれだけのことを喜ぶゆきみに、ひなたは目元を緩めた。
「少しだけど、話もできたんだよ。それで、僕から少しお願いをしたんだ。……まさか、こんなに早く叶えてくれるなんてね」
「お願いって……この荷物のこと?」
「うん。運んできてくれてありがとうね、ゆきみ」
ひなたは長期間外出せず運動不足の状態が続いているため、息が続かず話し方が少し拙い。そのうえ絵を描くこと以外の器用さにも欠けるため、包みを開ける手つきはひどく覚束無い。しかしそんなことを気にも留めないゆきみは、兄を手伝うべく鋏を持つ。
開かれた包みの中には、現代では高価ながら広く流通する機器があった。
「──これ、VRゲームのスターターキット!? しかも二人分……ってことはお兄ちゃん、もしかしてゲームするの!? してくれるの!?」
「これならゆきみと一緒に、散歩気分で歩けるでしょう?」
「うん……うん! これで、一緒に遊べるねえ!」
「初期設定なんかは済ませてくれたみたいだね。明日も平日だから、今の時間からだとゆきみはあまりできないけれど……少しだけ、やってみようか」
そうして、ひなたとゆきみの兄妹はVRの世界へと踏み出した。
《ようこそ、Monster Legendsの世界へ》
《あなたはこれから、この世界の住民として生まれ落ちます》
《さあ、新たな世界をどのように生きますか?》
《それは、あなたが決めるのです──》
小ぶりながら少し重みのある包みを抱えて、昨日のやり取りを感じさせない明るい声で兄の部屋の戸を叩く。
「お兄ちゃんお兄ちゃん、お母さんからお兄ちゃん宛に荷物が届いたよ? どうかしたの?」
「え、……もう届いたの? お母さん、早いな……」
「お兄ちゃんが何か頼んだの!? え、それって……お母さんとお話したってこと?」
「うん、昨日ね、電話をしたんだよ」
「そっかぁ……ちゃんと話せた?」
部屋に入ると、床のフローリングをひたすらに描き写していたらしいひなたがゆきみを出迎える。
“兄が母親と会話した”という、言ってしまえばただそれだけのことを喜ぶゆきみに、ひなたは目元を緩めた。
「少しだけど、話もできたんだよ。それで、僕から少しお願いをしたんだ。……まさか、こんなに早く叶えてくれるなんてね」
「お願いって……この荷物のこと?」
「うん。運んできてくれてありがとうね、ゆきみ」
ひなたは長期間外出せず運動不足の状態が続いているため、息が続かず話し方が少し拙い。そのうえ絵を描くこと以外の器用さにも欠けるため、包みを開ける手つきはひどく覚束無い。しかしそんなことを気にも留めないゆきみは、兄を手伝うべく鋏を持つ。
開かれた包みの中には、現代では高価ながら広く流通する機器があった。
「──これ、VRゲームのスターターキット!? しかも二人分……ってことはお兄ちゃん、もしかしてゲームするの!? してくれるの!?」
「これならゆきみと一緒に、散歩気分で歩けるでしょう?」
「うん……うん! これで、一緒に遊べるねえ!」
「初期設定なんかは済ませてくれたみたいだね。明日も平日だから、今の時間からだとゆきみはあまりできないけれど……少しだけ、やってみようか」
そうして、ひなたとゆきみの兄妹はVRの世界へと踏み出した。
《ようこそ、Monster Legendsの世界へ》
《あなたはこれから、この世界の住民として生まれ落ちます》
《さあ、新たな世界をどのように生きますか?》
《それは、あなたが決めるのです──》
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