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7 お泊まり会
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2人でルカのベッドに入り、身を寄せ合う。
子ども体温だからだろうか、お互いの温かさが伝わって心地が良い。
「ルカのベッドも私の部屋と同じで広いから、2人くらいなら余裕ね」
「そうだね。僕、こうして誰かとお話しながら眠るなんて初めてだ」
何だかソワソワするね、とルカが落ち着かない様子で話す。
それを微笑ましく思いながら、ずっと言えていなかった大事なことを伝える。
「あのねルカ。あの時伝えそびれていたのだけど、湖で溺れてしまったこと、心配をかけて本当にごめんなさい。それから、私のことを助けてくれてどうもありがとう」
思ってもみなかった内容だったのだろう、ルカが目をぱちくりさせてから、口を開く。
「姉さんが無事で本当に良かった」
そう笑顔で告げた後、でも・・・と続ける。
「あの時はたまたま木が倒れてくれたから助かったけど、もしそれがなかったらきっと僕一人じゃどうしようもできなかった、と思う」
「そんなこと・・・!」
少し悔しさを滲ませながら、自嘲したような笑みを浮かべる彼に慌てて声をかけようとするが、ルカは首を振って話を続けた。
「姉さんはあの時僕を助けるために、"手を離して!"って叫んだけど、僕はすごく怖かったよ。だって、この手を話したらもう二度と姉さんに会えないと思ったから。そんなの絶対に嫌だ!って無我夢中だった」
「うん」
「今回はたまたま運が良かっただけ。もしかしたら次はないかもしれない。だから姉さん、お願いだから、もう無茶しないで。せめて僕1人で姉さんを守れるくらい大きくなるまでは、こんなことしないでほしい」
「うん、ありがとう。心配かけてごめんね」
これ以上ないくらいの愛情を受け取ったと思った。
「私、ルカが弟で本当に良かったなあ・・・」
ルカの頭を撫でながら、しみじみそう呟くと、彼は嬉しそうに微笑んだ。
「僕もだよ。アリナ姉さんが僕の姉さんで本当に良かった」
嬉しい。現世では一人っ子だったため、ずっと姉弟が欲しいと思っていた。その夢が今正に叶ったのだ。しかも相手は私の方推し。こんな幸せがあっても良いのだろうか。
(まさかゲームと違って私が溺れることになるなんて思わなかったけど、最悪の展開にならなくて本当に良かったわ)
だけどこの先何が起こって、ルカの心がゲームの彼のように黒く染まってしまうか分からない。
まだまだ油断はできないのだ。気を引き締めないと、と1人拳を握り込む。
「姉さん?」
一人奮起する私にルカが心配そうな目を向ける。
「あのね、ルカ。私は何があってもあなたの味方だから、それだけは忘れないでね」
ルカは僅かに目を見開き、またあの時のように、でも今度は確かな嬉しさも滲ませながら瞳を揺らす。
「・・・っ!う、ん。ありがとう、姉さん。僕も・・・!僕も何があっても姉さんの味方だよ」
泣くのを我慢しているのだろうか、少しだけ鼻をすする音が聞こえた。
そこでふと気がつく。
「ルカ、あなた眠る時も包帯はとらないの?」
ずっと目を覆ったままなんて、寝苦しくないのだろうか。そう思い、尋ねる。
「あ、うん。何があるか分からないから・・・」
ルカは元々孤児院にいた。子どもが大勢いる場所ではおそらく1人部屋なんてものはなく、文字通り何があって瞳を見られるか分からない。寝る時もずっと気を張っていたのだろう。
「ここは孤児院ではないし、今は私がいるわ。何があってもお姉ちゃんが隠してあげる。だから、包帯を外しても大丈夫よ」
そう伝えると、少しの逡巡の後、ルカは恐る恐る包帯に手をかけた。ゆっくりと白い包帯が外されていく。
瞼を開いたルカの両目と目が合う。
今は夜だから昼間の時ほどよく見えるわけではないが、それでも月明かりを受けてそれぞれにキラキラと輝く青の瞳も緑の瞳も、凄くきれいだと思った。
「ルカのその緑の左目は、あなたがプレゼントしてくれたこの石と同じ色ね。」
先日ルカからもらった石をポケットから取り出す。
「え、ずっと持っていたの?」
「ええ、ルカが初めて私にくれた贈り物だもの。嬉しくて肌身離さず持っているわ」
ルカは照れくさそうにしながら、ありがとうと応える。
「僕の瞳はこの石みたいに綺麗じゃないけど、姉さんにそう言って貰えて嬉しい」
(そんなことないのに・・・)
ルカに自信をつけてもらうのもこれからの課題かしら、と思っていると、ふいに自分の口から欠伸がこぼれた。
「ふぁ・・・」
「姉さんもう眠い?寝ても大丈夫だよ」
私を気遣うようなルカの優しい声。
そう言われてしまうと、この眠気に抗うことができず勝手に瞼が閉じて言ってしまう。
(ううっ、子どもだから急に眠くなってきちゃう)
「ん、ルカ。おや、すみ・・・」
睡魔に抗うことができず、それだけ伝えると私は心地よい眠りに身を任せたのだった。
子ども体温だからだろうか、お互いの温かさが伝わって心地が良い。
「ルカのベッドも私の部屋と同じで広いから、2人くらいなら余裕ね」
「そうだね。僕、こうして誰かとお話しながら眠るなんて初めてだ」
何だかソワソワするね、とルカが落ち着かない様子で話す。
それを微笑ましく思いながら、ずっと言えていなかった大事なことを伝える。
「あのねルカ。あの時伝えそびれていたのだけど、湖で溺れてしまったこと、心配をかけて本当にごめんなさい。それから、私のことを助けてくれてどうもありがとう」
思ってもみなかった内容だったのだろう、ルカが目をぱちくりさせてから、口を開く。
「姉さんが無事で本当に良かった」
そう笑顔で告げた後、でも・・・と続ける。
「あの時はたまたま木が倒れてくれたから助かったけど、もしそれがなかったらきっと僕一人じゃどうしようもできなかった、と思う」
「そんなこと・・・!」
少し悔しさを滲ませながら、自嘲したような笑みを浮かべる彼に慌てて声をかけようとするが、ルカは首を振って話を続けた。
「姉さんはあの時僕を助けるために、"手を離して!"って叫んだけど、僕はすごく怖かったよ。だって、この手を話したらもう二度と姉さんに会えないと思ったから。そんなの絶対に嫌だ!って無我夢中だった」
「うん」
「今回はたまたま運が良かっただけ。もしかしたら次はないかもしれない。だから姉さん、お願いだから、もう無茶しないで。せめて僕1人で姉さんを守れるくらい大きくなるまでは、こんなことしないでほしい」
「うん、ありがとう。心配かけてごめんね」
これ以上ないくらいの愛情を受け取ったと思った。
「私、ルカが弟で本当に良かったなあ・・・」
ルカの頭を撫でながら、しみじみそう呟くと、彼は嬉しそうに微笑んだ。
「僕もだよ。アリナ姉さんが僕の姉さんで本当に良かった」
嬉しい。現世では一人っ子だったため、ずっと姉弟が欲しいと思っていた。その夢が今正に叶ったのだ。しかも相手は私の方推し。こんな幸せがあっても良いのだろうか。
(まさかゲームと違って私が溺れることになるなんて思わなかったけど、最悪の展開にならなくて本当に良かったわ)
だけどこの先何が起こって、ルカの心がゲームの彼のように黒く染まってしまうか分からない。
まだまだ油断はできないのだ。気を引き締めないと、と1人拳を握り込む。
「姉さん?」
一人奮起する私にルカが心配そうな目を向ける。
「あのね、ルカ。私は何があってもあなたの味方だから、それだけは忘れないでね」
ルカは僅かに目を見開き、またあの時のように、でも今度は確かな嬉しさも滲ませながら瞳を揺らす。
「・・・っ!う、ん。ありがとう、姉さん。僕も・・・!僕も何があっても姉さんの味方だよ」
泣くのを我慢しているのだろうか、少しだけ鼻をすする音が聞こえた。
そこでふと気がつく。
「ルカ、あなた眠る時も包帯はとらないの?」
ずっと目を覆ったままなんて、寝苦しくないのだろうか。そう思い、尋ねる。
「あ、うん。何があるか分からないから・・・」
ルカは元々孤児院にいた。子どもが大勢いる場所ではおそらく1人部屋なんてものはなく、文字通り何があって瞳を見られるか分からない。寝る時もずっと気を張っていたのだろう。
「ここは孤児院ではないし、今は私がいるわ。何があってもお姉ちゃんが隠してあげる。だから、包帯を外しても大丈夫よ」
そう伝えると、少しの逡巡の後、ルカは恐る恐る包帯に手をかけた。ゆっくりと白い包帯が外されていく。
瞼を開いたルカの両目と目が合う。
今は夜だから昼間の時ほどよく見えるわけではないが、それでも月明かりを受けてそれぞれにキラキラと輝く青の瞳も緑の瞳も、凄くきれいだと思った。
「ルカのその緑の左目は、あなたがプレゼントしてくれたこの石と同じ色ね。」
先日ルカからもらった石をポケットから取り出す。
「え、ずっと持っていたの?」
「ええ、ルカが初めて私にくれた贈り物だもの。嬉しくて肌身離さず持っているわ」
ルカは照れくさそうにしながら、ありがとうと応える。
「僕の瞳はこの石みたいに綺麗じゃないけど、姉さんにそう言って貰えて嬉しい」
(そんなことないのに・・・)
ルカに自信をつけてもらうのもこれからの課題かしら、と思っていると、ふいに自分の口から欠伸がこぼれた。
「ふぁ・・・」
「姉さんもう眠い?寝ても大丈夫だよ」
私を気遣うようなルカの優しい声。
そう言われてしまうと、この眠気に抗うことができず勝手に瞼が閉じて言ってしまう。
(ううっ、子どもだから急に眠くなってきちゃう)
「ん、ルカ。おや、すみ・・・」
睡魔に抗うことができず、それだけ伝えると私は心地よい眠りに身を任せたのだった。
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