熱中症

こじらせた処女

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点滴

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「やっぱ病院行こう」
「えー…いぃ…だるいし」
「だるいから行くんだって。ね?点滴打ってもらったら楽になるよ?」
「ん゛~…」
あれから家でひたすら寝て、水分をとって、また寝て。マシにはなったけど、でもまだ頭は痛くて体が重い。熱中症は回復まで割と時間がかかるって分かっている。だからそんな、病院に行くほどでもないのに。




「どー?点滴打ったらだいぶ楽になったでしょ」
「…ん…」
約1時間程度、眠っていたらいつのまにか終わっていた。本当だ。行く前よりも遥かに体が楽になっている気がする。
「ほらね、お医者さんも言ってたでしょ?脱水気味だったって」
「でも…ちゃんと飲んでたし…」
「足りてなかったんだよ。ほら薬ももらったし帰ろ」



「暑くない?」
「だいじょーぶ」
「寝てていーよ、気分悪くなったら言いなー」
「んー」
涼しい車内、楽になった体、気持ちがよくて、さっきまで寝ていたのにまた眠い。
(希一さん、何でこんなに運転うまいんだろ…)
かけられたブラウンのブランケットが心地いい。時折揺れる振動も。
「ふはっ、間抜け顔。おやすみ」
頭をふわふわと撫でてくれたのが記憶の最後、俺は1人、夢の中に微睡んだ。




「ーい、おーい、遼ー起きてー」
肩をトントンと叩かれて起きると、目の前に希一さんの顔が広がる。
「つい、た…?っくしゅ、」
何だろう、体が冷たい。主に下半身。
(何か、濡れてる…?)
「あーあー、冷えちゃったか。とりあえず部屋入ってシャワー浴びるか」
「え、しゃわー…?」
何で?何か足回り、タオルみたいなふわふわした感触するし。そう思って随分と軽くなった体を起こすとその理由に気づいた。
「…ぇ…?」
ぐじゅ…
座っているシートは濡れていて、それは自分の股間が中心となっている。
「なんで、」
ヒク…と喉が震える。とっくに車は駐車場にあって、希一さんはシートベルトを外して俺の汚い下半身にタオルを当てている。掛けてもらっていたブランケットはもちろん濡れて、汚れていて。
「ごめん、そんな、いつ…?」
「んー…いつだっけなー…30分ぐらい?」
「だっておれ、病院で、おしっこした…すませた、」
「やっぱ点滴じゃね?トイレ近くなるって看護師さん言ってたし」
「でもっ、おれ、子どもじゃ、ないも゛ん、」
何で、たかだか1時間なのに。こんなこと、子供の時もなかったのに。悔しいのか、恥ずかしいのか分かんない。ただ、涙が出て、嗚咽を止められない。
「こらこら泣かない。体疲れてたらそーいうこともあるって」
「くるま、これ、捨てる…?っ゛、」
「クリーニングすれば綺麗になるよ。ほらほら、大丈夫だから。こっちおいで?」
車から降りると、尻にパンツがへばりついてるのが分かってまた、虚しい。ハーパンの間から垂れたおしっこをさらに綺麗に拭き取られて、本当の子供みたい。
(ぁっ、)
出口の中心部分を2回トントンと叩かれれば、また、ズクリと疼く。いや、起きた時から少し感じていたけど、冷たいズボン、立った時に圧迫される膀胱、度重なる要因でより一層強くなった、と言った方が正しい。
「んじゃあ戻ろっか」
おしっこしたい。急速に限界に近づく今の体が分かんない。今すぐ走って駆け込みたい。希一さんにおしっこ、って叫んで股間引っ掴んでモジモジしたいくらいに。でもさ、病院から家まで精々1時間じゃん。その道中さえも無意識に出しちゃって、失敗しちゃってるわけ。いつもの体じゃないにしても我慢できないって言って走ってトイレ行くの、恥ずかしいじゃん。
 ぱんぱんに張って苦しいお腹を宥めながらエレベーターに乗る。四階に到着する間、ジッとしてるのが辛い。希一さんが前を向いているのを良いことに、前をこっそり片手で押さえた。








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