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 トイレの中から森下さんのおしっこの音が聞こえる。俺もちゃんと我慢できたら、そう考えるとまた涙が出そうになってやめた。
「ぁ、れ…」
脱げない。先に入ってて、と言われてズボンを脱ごうとするけど、張り付いてうまく脱げない。尻をモジモジと揺らして剥がすけど、それでもへばりついて取れない。
「あれまだ入ってなかったの」
「…ぬげない」
ああだめだ。また森下さんの顔を見たら、涙が溢れてくる。
「っ゛~、う゛~、」
帰りたい。死にたい。恥ずかしい。もう嫌だ。今日のこと全部忘れたい。
「肩捕まれる?」
 もう大人なのに。小さい子供みたいにずるりとズボンとパンツを脱がされて、ばんざいで上もやってもらって。
 軽くシャワーで流してもらい、2人で浴槽に入る。
「やっぱ2人はちょっと狭いね。寒くない?」
「…ん、」
「お腹空いたね。何食べたい?」
「…あったかいの」
「あったかいのかぁ…鍋とか?冷凍した豚肉あるし、ネギとー椎茸とー…白菜あったっけ…」
「…、」
「落ち込んでる?」
「…っ、だ、って、」
「お腹変になってない?チクチクしたり、気持ち悪かったりしてない?」
「…してない、ぁっ、」
すべすべした手のひらがゆっくりと俺の腹を撫でる。
「よかったぁ。それが聞けたら何もいらない」
「…マット…弁償する、」
「まっと…ああ玄関のやつか。良いよ。洗ったら綺麗になるし」
「…でも、」
「じゃあ今度大河君のよく行くお店連れてってよ」
「俺…ラーメンとか定食屋とかしか知らないっすけど…」
「良いじゃん。僕割と大食いだからさ」
「え、えぇー…んっ、」
腹の奥がむずむずする。でもこれは我慢しすぎたやつではなくて、森下さんの手が俺の下腹を優しく撫でているから。
「泣いてる大河くん可愛かった」
「………ぇ、は!?」
ちゅ、と頬に何かが当たる。一呼吸遅れてキスされたのだと自覚した。
体が熱い。それに、腹だけのムズムズが全身に伝播していく。
「やっぱり可愛い」
ぎゅうと抱きしめられ、森下さんの頬が俺の頬に当たる。なんか変。心臓がうるさい。バクバクして、破裂しそう。
 ぐうううううううう…
「あ、」
水の中から聞こえた、盛大な腹の虫。
「っ、~、あ、ぅ、」
「あははは。顔真っ赤。ご飯にしよっか」
ぽんぽんと腹を撫でて、浴槽から出る森下さん。のぼせる体質ではないのに、身体中が熱い。この感覚、トイレに行きたいわけではないのに出口がソワソワして気持ち悪い。




「大河くん?眠い?」
「あ、ぇ、と、っいえ、」
満腹になって喋っているうちに、ボーッとしていたらしい。
「ちょっと早いけど布団敷いちゃおっか」
「あ、すみません、」
さっきからずっと頭にモヤがかかったみたい。身体中なんか落ち着かなくて、シャツをギュッと握りしめた。
 二つ布団を並べ、シーツの中に入る。森下さんの匂いだ。ドキドキしながら、でも布団に入ったら勝手に瞼が落ちてしまう。
「大河くん本当に寝つきいいんだね。毎日この時間?」
「はい…10時にはねむくなる…しごととかで…よく乗りすごす…」
「健康体だ。羨ましいなぁ」
もっと話していたい。話していたいのに。森下さんの声が聞こえるのになんて言ってるかが分かんなくなって、ハッとまた目が覚めて。
「おやすみ。また明日」
その声を皮切りに、意識がすぅ…と落ちていった。






(おしっこ、でる!!!)
ガバッと布団を捲って起きた。確かおしっこをしてもしてもスッキリしなくてっていう夢だった気がする。
(よかった…まにあった…)
夜尿癖はないが、昨日の失敗で少し不安だった。しかし布団は濡らしていないようで安心する。
(おしっこ…)
トイレ、と思って立とうとした時、自分の前がおかしいことに気づく。固くて、パンパンで。勃っている、ってやつだ。俺は混乱していた。いつも寝ている間に出てしまうから、自分でイジったことがない。高校や大学の時の友人にも驚かれたことがあるが、興味が全く無かったから。毎回夢精で乗り切っていた俺にとってこれは、初めての事なのである。
 便器の前にチンコを出すけれど、出ない。お腹の中にはパンパンにおしっこが溜まっているのに、である。泣きそうだった。つきつきと痛む下腹は、この前を何とかしないと解決しない。
(たしか…こうやって…)
友人はよく手を上下に揺らして表現していた。チンコを持って上、下、上、下。
「ぁふっ、ぁっぁあっ、」
 ヘコヘコと腰が震える。内股がブルブルと震える。なのに一向にすっきりしない。それどころかさっきより体は熱く、股のムズムズが止まらない。
 まだ夜中の3時。滅多に目覚めない時間。おしっこに起きてもすぐに眠くなってしまう時間。
「っ~ぅぅ…」
おしっこしたい。昨日漏らした時よりも辛い。諦めて布団に入ってにぎにぎとチンコを揉み込む。揉み込むたびに尿意が脳天を刺激して、体がひくひくと跳ねてしまう。
トイレ。おしっこしたい。いっぱい飲んだ、お鍋のお出汁。やけに緊張して寝る前にしこたま飲んだお水が暴れ回っている。
横になるのも辛くて体を起こし、正座のまま股に手を入れすりすりと擦り合わせることしかできない。
「ぁっ、ああっ、んっ、」
お腹を何度も何度も摩って、おちんちんの先を何度も何度もにぎにぎして。もどかしい。早く、早く早く早く早く。おしっこぷしゃあああってぶちまけて、すっきりしたい。
「おしっこぉ…」
漏れそう。でちゃうでちゃうでちゃう。漏れちゃう。我慢できない。
「どしたの?」
急に視界が明るくなった。
「おしっこ、ぁ、もりした、さん、」
かぁあああ…と頭に血が昇る。見られた。チンコを握りしめている手も、ビンビンに勃ちあがったコレも。切実なおしっこの願望も。
「トイレ怖い?着いてこうか?」
ちがう。何で今日はこんなに恥ずかしい姿ばかり見られるのだろう。何でこんなに情けない姿ばっかりなのだろう。ジワリと汗が伝った。死にたくなった。






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