虫嫌いの男子高校生が山登り遠足に行って、虫の浮いている汚いトイレで用を足せなくて、道中で限界を迎える話

こじらせた処女

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「っはぁ…最悪…」
 気温14度、天候、晴れ。少し肌寒くはあるが、山を登っていると体温が上がるため、少し肌寒い程度。絶好の遠足日和だ。
 浮かれた雰囲気の中、俺は鬱々としていた。なぜなら虫が大嫌いだから。体を丸めるようにして、クラスメイトたちの後ろをついていく。秋ということもあってそこまで多いわけではないけど、たまに目の前を掠める時がある。それだけで心臓が止まりそうになるくらいの不快感を感じてしまうのだ。
「有瀬ぇ~お前ビビりすぎ」
揶揄うように笑われるけど、怖いものは怖いし、気持ち悪いものは気持ち悪い。服の上に止まったら卒倒するかもしれないぐらいに。
「お前…虫嫌い、まだ治ってなかったのかよ」
馴れ馴れしく肩を組んできたのは小学校時代からの幼なじみである田中。学区が違って別々の中学に通っていたが、今年の春、高校で再開した。まあ、家が近いからちょくちょく会っていたから、新鮮味も何もないのだけど。
「しょーがねえだろ…無理なモンは無理なんだよ…」
「これだから都会っ子くんは」
「…うるせ…」
「んじゃあ今日も小便我慢すんのか?」
「当たり前だろ。山の汚ったねえトイレなんか使ってられるか」
「ふーん…相変わらずだな。まあ早く行こうぜ。登って降りないと終わらねえんだから」
「…あぁ…」
田中は知っている。俺がこういう類いの行事の時、極力水分を控えて一日中トイレを我慢すること。それは小学校の時から変わらない。
 でも今。
(おしっこ…)
 この季節特有のひんやりとした秋風はジワジワと体を冷やして、まだ開始から1時間も経っていないのに下腹がムズリと疼く。朝の水分も控えたし、行く前にも何度もトイレに行ったのに。やはりこの肌寒い気候だからか。
 我慢できなくなったらどうしよう、そんな一抹の不安が頭をよぎったけれど、俺は小学校の時からこの行事を乗り越えているという自信がある。体も膀胱も大きくなった今、我慢できなくなるなんてことはあり得ない。どうせ歩いていたら汗をかいて、体も温まって。こんな違和感程度の尿意、すぐに忘れてしまうだろう。


「っ、ぅ、」
汗もじっとりと汗ばんできて、日も照ってきて。体は温まってきているはずなのに、下腹は重いまま。というか、さっきよりもしたい。
「はい、ここで休憩でーす。頂上は狭くて全員で行くと迷惑になるので、栞に書いてあるそれぞれ時間を見て登ってください。弁当はここで。今から自由時間だけど、下山は各自で降りてもらうので、集合時間は守るように。はい、一旦解散」

「有瀬ー、俺トイレ行ってくるけど…お前は?」
「いい…行かね」
「ははっ、相変わらずブレないねぇ」
正直俺も行きたい。学校のトイレなら余裕で連れションしているレベル。引いた汗が冷たくなって全身が震えると同時にゾワリと下腹が主張を始める。自由時間は2時間。学校までのバスは1時間。あと、3時間。なんてことない。小学校の時のやたらと長い校外学習ではない。あの小さな膀胱で今よりも長い時間耐えられたんだから、今回だって余裕。そう自分に言い聞かせるけど、不安が拭えない。いつもの忘れられるレベルのものとは少し違う。ずっと纏わりつくような、出口がキュンと縮むような、我慢の辛い尿意。したいと感じてから1時間も経っていないのに、ズボンを無意識に引っ張り上げてしまうくらいに迫り上がっている。
(もしかしたら俺…いやいやないない)
「失敗」の2文字が浮かんで、かき消すように頭を横に振った。この歳でそれはヤバいし、流石にない。
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