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あの日から3日。あの後気が抜けたからなのかはよく分からないが熱を出して寝込んでしまった俺は、今日ようやく部活に復帰する。昼休み、嫌がらせをしてきた先輩のうちの1人からお金とともに直接謝罪を受けた。隣には相川先輩がいて、一緒に立ち会ってくれた場で。嫌がらせをしてしまったのは、3年間努力したのにベンチどころか一軍にも上がれない、どうしようもない感情をぶつけてしまったという。他の2人は自主退部したそうだ。このことは監督にも親にも連絡が行ってない。俺の醜態が明るみに出ないように、二軍の人間と部長と、相川先輩といった一部の人間しか知らないようにしてくれている。だから部内中にも学校中にも広まることはないだろうし、俺も嫌がらせをしてきた先輩達もこれからも問題なく学校生活は送れるだろう。
でも、練習に参加するとなれば話は別だ。今までの俺に向けられていた悪意が、今度は自分に返ってくるかもしれない。俺がされたみたいな形のあるものではなくても、だ。居心地は確実に悪くなるだろう。それでもその先輩は引退まで頑張りたいと言い、頭を下げてくれて、誠意のある謝罪を受けた。だから俺は許した。練習がちゃんとできるだけで充分だ。
(まあ相変わらず空気は気まずいけど…)
今までのような嫌がらせや陰口はなくなった。挨拶をしても返してくれる。先輩が相当怒ってくれたのだろう。でも、いきなり仲良くはなれない。これは俺の努力次第だなぁ。積極的に話しかけて打ち解けるしかない。
「嶋ーー!!部活終わった?帰ろーぜ!!」
少しざわついている更衣室に大きな声が響く。
「お前なぁ…もうちょっと静かに入ってこいよ…」
最近、部活終わりにこうして水城が迎えに来てくれる。
「へへっ、ごめんごめん。コンビニ寄って帰ろー、俺家までもたねぇ…」
あんな酷いことを言ってしまったのに、そんなことがなかったかのように振る舞ってくれる水城。こいつはやっぱりいい奴すぎる。
「あ゛ー…やっぱこの季節に肉まんは馬鹿だった…」
「いや考えたらわかるだろ」
「嶋みたいにアイスにしとけば…でも腹減ってるから…」
「しょーがねーな。半分やるよ」
「え!?いいの!?」
「そのかわり肉まんよこせ」
「お前も食べたいんじゃねーか」
俺の肩を軽く小突く。前よりも打ち解けた気がする。
「…そういえば大丈夫、だったか?」
見ると、肉まんとアイスを交互に頬張りながら心配そうな顔をしている。
「大丈夫、何もされてねーよ」
「よかったぁ…もー、言ってくれよなー!!俺ら友達だろ?」
「ごめん…あと、この前酷いこと言って…」
「それはラインでも学校でも聞いた!!俺も無神経だったよな?自慢しすぎてたってのは自覚してる」
「それは違う、…俺が余裕なかったから…水城は上手くやれてるのにって嫉妬も、してた…」
「俺だって最初っから上手くできなかったわけじゃねーよ……らしたし…」
「え?なんて?」
「…あーもー!!俺も漏らしたし!」
「え…?え?」
話の脈が掴めない。何度も聞き返してしまう。
「先輩たちばっかでなかなか馴染めなかったんだよ…そんで練習中にトイレ行きたくなって、誰にもいえんくて…」
「で、体育館で…?」
「いや、それはなかったけど…怒られてる時に先輩におしっこ、おしっこ、って泣きついて連れてってもらった…のに、トイレ前で…あ゛ーーーーー!!はずかしいぃ…」
「それがもしかして相川先輩?」
「そーだよ!!そん時からだよ。先輩と仲良くなって、だんだん輪が広がってったの…」
「へー…」
「言うなよ!?絶対言うなよ!?言ったらお前のもバラすから!!」
街灯越しに見える、真っ赤な耳。恥ずかしさを紛らわすようにいっそう多くの食料を口に詰めている。俺もつられてあの時の恥ずかしさが蘇り、半分に割られた肉まんにかぶりついた。
でも、練習に参加するとなれば話は別だ。今までの俺に向けられていた悪意が、今度は自分に返ってくるかもしれない。俺がされたみたいな形のあるものではなくても、だ。居心地は確実に悪くなるだろう。それでもその先輩は引退まで頑張りたいと言い、頭を下げてくれて、誠意のある謝罪を受けた。だから俺は許した。練習がちゃんとできるだけで充分だ。
(まあ相変わらず空気は気まずいけど…)
今までのような嫌がらせや陰口はなくなった。挨拶をしても返してくれる。先輩が相当怒ってくれたのだろう。でも、いきなり仲良くはなれない。これは俺の努力次第だなぁ。積極的に話しかけて打ち解けるしかない。
「嶋ーー!!部活終わった?帰ろーぜ!!」
少しざわついている更衣室に大きな声が響く。
「お前なぁ…もうちょっと静かに入ってこいよ…」
最近、部活終わりにこうして水城が迎えに来てくれる。
「へへっ、ごめんごめん。コンビニ寄って帰ろー、俺家までもたねぇ…」
あんな酷いことを言ってしまったのに、そんなことがなかったかのように振る舞ってくれる水城。こいつはやっぱりいい奴すぎる。
「あ゛ー…やっぱこの季節に肉まんは馬鹿だった…」
「いや考えたらわかるだろ」
「嶋みたいにアイスにしとけば…でも腹減ってるから…」
「しょーがねーな。半分やるよ」
「え!?いいの!?」
「そのかわり肉まんよこせ」
「お前も食べたいんじゃねーか」
俺の肩を軽く小突く。前よりも打ち解けた気がする。
「…そういえば大丈夫、だったか?」
見ると、肉まんとアイスを交互に頬張りながら心配そうな顔をしている。
「大丈夫、何もされてねーよ」
「よかったぁ…もー、言ってくれよなー!!俺ら友達だろ?」
「ごめん…あと、この前酷いこと言って…」
「それはラインでも学校でも聞いた!!俺も無神経だったよな?自慢しすぎてたってのは自覚してる」
「それは違う、…俺が余裕なかったから…水城は上手くやれてるのにって嫉妬も、してた…」
「俺だって最初っから上手くできなかったわけじゃねーよ……らしたし…」
「え?なんて?」
「…あーもー!!俺も漏らしたし!」
「え…?え?」
話の脈が掴めない。何度も聞き返してしまう。
「先輩たちばっかでなかなか馴染めなかったんだよ…そんで練習中にトイレ行きたくなって、誰にもいえんくて…」
「で、体育館で…?」
「いや、それはなかったけど…怒られてる時に先輩におしっこ、おしっこ、って泣きついて連れてってもらった…のに、トイレ前で…あ゛ーーーーー!!はずかしいぃ…」
「それがもしかして相川先輩?」
「そーだよ!!そん時からだよ。先輩と仲良くなって、だんだん輪が広がってったの…」
「へー…」
「言うなよ!?絶対言うなよ!?言ったらお前のもバラすから!!」
街灯越しに見える、真っ赤な耳。恥ずかしさを紛らわすようにいっそう多くの食料を口に詰めている。俺もつられてあの時の恥ずかしさが蘇り、半分に割られた肉まんにかぶりついた。
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