2 / 14
2
しおりを挟む
最近ずっと心臓がドキドキしている。それは部活が近づくにつれて酷くなって、手汗が止まらなくなって、ずっと本番みたいな緊張の中、部活を終える毎日。練習が終わって家に着いてやっと、息がしやすくなって。味なんて分からないままご飯を食べて、お風呂に入って布団に入るとまた、ドキドキする。
「いきたくない…」
枕で頭を挟み込むようにして、目をギュッと閉じるけど、全然眠れない。
なるべく、心を空っぽに。考えないようにして、それこそ羊を数えて。やっと眠ることが出来る。
それでも睡眠の質は下がっていたみたいで。モヤがかかったみたいに纏う慢性的な怠け。どこが悪いってわけではないけれど、何故かボーッとしてしまうことがふえた。
「おい、おい嶋、」
「…何だよ…」
最後の授業の時間。突然隣の奴に話しかけられる。
「いや、お前、大丈夫か?」
周りの様子がおかしい。先生も、板書をやめてこちらを見ている。
「っ…」
ああ、わかった。つぅ…と生暖かい液体が頬を滑る。俺は、泣いていたのだ。
「保健室行くか?」
「しんどいのか?」
心配したような声が右から左から。後ろの奴は背中をさすってくれている。でも、当の俺は全然この理由も分からなくて。止めようとしているのに止まらない涙に困惑するばかり。
「すんません、気分悪いんで保健室行ってきます」
しゃくり上げそうになる声を抑えて、適当に理由をつけて教室を出ることしかできなかった。
廊下を歩きながら考える。今保健室に行ったところで、熱はないだろうし、特に症状も見当たらない。未だ止まらない涙の副作用である鼻水がずず…と出てくる程度。
それでも行くところが無いから、とりあえず保健室にたどり着く。
「失礼します、ズ…」
「あらま、どうしたの」
ふんわりと香る紅茶の匂い。後ろに髪を束ねた白衣の先生がこちらに向かってくる。
「とりあえずベッド座ろっか。どうしたの?どこかしんどい?」
心配そうに、でも落ち着いた声。背中をさすられて、罪悪感が増してゆく。
「とりあえず熱測りましょっか」
「ッヒ、はいっ、」
やばい、絶対熱なんて、ないのに。最新型の体温計は計測が速く、無慈悲に平熱を表示する。
「あの、おれ、しんどくてっ、」
「そう。じゃあ少し寝ときなさい。今度からは泣いちゃう前に無理せず来るのよ?部活は休んで帰りなさいね?」
何かを記入している先生。誘導されたベッドに横になる。そしたら、さっきの怠けが嘘みたいにスーッと無くなった。
(こんなのただのサボりじゃん…)
思ってしまったのだ。上手くいった、今日の部活休めるかもって。
そんな姑息な自分に目を背けたくて、目を閉じて眠りについた。
1日休んで体が少し軽くなった気がする。朝練もサボってしまったけど。これ以上休んだら、きっともう戻れないだろう。
「おはようございます!!」
バクバクと跳ねる心臓を抑えて、いつものように挨拶をする。声がひっくり返ってしまった。でも、誰からの反応もない。いつものことだ、そう言い聞かせて、ロッカーを開けた。
「なに…これ…」
「いきたくない…」
枕で頭を挟み込むようにして、目をギュッと閉じるけど、全然眠れない。
なるべく、心を空っぽに。考えないようにして、それこそ羊を数えて。やっと眠ることが出来る。
それでも睡眠の質は下がっていたみたいで。モヤがかかったみたいに纏う慢性的な怠け。どこが悪いってわけではないけれど、何故かボーッとしてしまうことがふえた。
「おい、おい嶋、」
「…何だよ…」
最後の授業の時間。突然隣の奴に話しかけられる。
「いや、お前、大丈夫か?」
周りの様子がおかしい。先生も、板書をやめてこちらを見ている。
「っ…」
ああ、わかった。つぅ…と生暖かい液体が頬を滑る。俺は、泣いていたのだ。
「保健室行くか?」
「しんどいのか?」
心配したような声が右から左から。後ろの奴は背中をさすってくれている。でも、当の俺は全然この理由も分からなくて。止めようとしているのに止まらない涙に困惑するばかり。
「すんません、気分悪いんで保健室行ってきます」
しゃくり上げそうになる声を抑えて、適当に理由をつけて教室を出ることしかできなかった。
廊下を歩きながら考える。今保健室に行ったところで、熱はないだろうし、特に症状も見当たらない。未だ止まらない涙の副作用である鼻水がずず…と出てくる程度。
それでも行くところが無いから、とりあえず保健室にたどり着く。
「失礼します、ズ…」
「あらま、どうしたの」
ふんわりと香る紅茶の匂い。後ろに髪を束ねた白衣の先生がこちらに向かってくる。
「とりあえずベッド座ろっか。どうしたの?どこかしんどい?」
心配そうに、でも落ち着いた声。背中をさすられて、罪悪感が増してゆく。
「とりあえず熱測りましょっか」
「ッヒ、はいっ、」
やばい、絶対熱なんて、ないのに。最新型の体温計は計測が速く、無慈悲に平熱を表示する。
「あの、おれ、しんどくてっ、」
「そう。じゃあ少し寝ときなさい。今度からは泣いちゃう前に無理せず来るのよ?部活は休んで帰りなさいね?」
何かを記入している先生。誘導されたベッドに横になる。そしたら、さっきの怠けが嘘みたいにスーッと無くなった。
(こんなのただのサボりじゃん…)
思ってしまったのだ。上手くいった、今日の部活休めるかもって。
そんな姑息な自分に目を背けたくて、目を閉じて眠りについた。
1日休んで体が少し軽くなった気がする。朝練もサボってしまったけど。これ以上休んだら、きっともう戻れないだろう。
「おはようございます!!」
バクバクと跳ねる心臓を抑えて、いつものように挨拶をする。声がひっくり返ってしまった。でも、誰からの反応もない。いつものことだ、そう言い聞かせて、ロッカーを開けた。
「なに…これ…」
10
お気に入りに追加
57
あなたにおすすめの小説



怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

待てって言われたから…
ふみ
BL
Dom/Subユニバースの設定をお借りしてます。
//今日は久しぶりに津川とprayする日だ。久しぶりのcomandに気持ち良くなっていたのに。急に電話がかかってきた。終わるまでstayしててと言われて、30分ほど待っている間に雪人はトイレに行きたくなっていた。行かせてと言おうと思ったのだが、会社に戻るからそれまでstayと言われて…
がっつり小スカです。
投稿不定期です🙇表紙は自筆です。
華奢な上司(sub)×がっしりめな後輩(dom)


風邪ひいた社会人がおねしょする話
こじらせた処女
BL
恋人の咲耶(さくや)が出張に行っている間、日翔(にちか)は風邪をひいてしまう。
一年前に風邪をひいたときには、咲耶にお粥を食べさせてもらったり、寝かしつけてもらったりと甘やかされたことを思い出して、寂しくなってしまう。一緒の気分を味わいたくて咲耶の部屋のベッドで寝るけれど…?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる