お兄ちゃんだって甘えたい!!

こじらせた処女

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風邪の日

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うちは兄弟が多い。だから誰かが風邪を引くと時差でみんなに移っていく。
「38℃…いろくん、これは風邪っすね」
家には兄貴以外居ない。母親とチビ達はばあちゃん家に避難した。みんなの貴重な休日が俺のせいで潰れた。
「あにき…どっか行かなくていいの」
「んまあ特には何もないしいいよ。飯食えそう?」
「…いらない」
「おかゆは?」
「…いらない」
「せめてジュースだけでも飲みな」
色とりどりな小さなパック。紫のを指さすと、ストローまで刺してくれて手渡された。


熱い。しんどい。頭痛い。そんな不快な感覚で何度も目を覚ます。これ、いつもよりしんどいやつだ。トイレに行くにも足が思うように動かなくてフラフラするし、いつもは何とも思わないドアがやけに重い。それに。
(といれ、もれそう、)
こんな感覚いつぶりだってレベル。飲んだジュースやらお茶やらが俺が寝ている間に全部膀胱に詰められたみたいな。自分の部屋からせいぜい10メートルなのに一歩歩くたびに立ち止まりたい衝動に襲われる。
もっと早く動け。フラフラするな。息が上がる。しんどい。
(あにき…)
自分の部屋かな。でもテレビの音聞こえてるからリビングかな。
「あにき、」
掠れた声で何度か呼ぶけど聞こえていないみたい。
「っ、ぇ、なんで」
何で俺、漏らしてんの。廊下のど真ん中で、何で。
下が熱い。何で、何で何で何で何で。
勝手に出てくる。体おかしい。慌てて前を握りしめるけど、ズボンもシミ切ってじゅわりと音を立てた。
「ぁ、あ………あ…」
自分の下には大きな大きな水たまりが広がっていて、足も手もびちゃびちゃ。

 どうしよう。









「彩葉のこと頼んでもいい?」
弟が風邪を引いたらしい。まだ幸いチビ達には移っていないから隔離したいという。
まああいつも小6だし、付きっきりはウザがられるかな、ちょくちょく様子を見に行けば良いかななんて思っていた。この惨状を見るまでは。
「あ゛にき、あ゛にき、」
控えめにリビングのドアが開いたと思ったら、泣きじゃくった弟が顔を出す。
吐いちゃったのかな、そう考えたけど、下半身の濡れを見て察した。
「寝てる間に出ちゃった?」
「ちが、ろーか、」
「あー…気づけんくて悪い。シャワー浴びれそう?体拭くだけじゃ気持ち悪いだろ」
「…うん、」
「着替えとタオルは置いとくから先に行ってな」



床の片付けをして、服とタオルを持って脱衣所に向かうとまだ、服のままで突っ立っている。
「あれ、まだ入ってないの」
「…しゃわー…おれ、ひとり?」
すげえ心細そうな顔するじゃんコイツ。ポロポロときれいな形の涙が次々に流れた。
「…一緒に入ろうか?」
「え、…でもおれ小6だし、」
どっちなんだよ。
「1人で出来そう?ああ嘘嘘。危ないからな。一緒に入ろうな」
反抗期は難しい。口ではブーブー言うくせに、いざ1人でって言ったら泣きそうになるの、こっちが悪いみたいじゃんか。
「あにき…お風呂ついてくる?」
そんな安心した顔するなんてずるい。いろ君はもう、服を脱ごうともせずに突っ立ったまま。相当しんどいのか、甘えたい気持ちがあるのか。下を脱がして、ばんざいさせて。チビ達みたいに扱うと普段は怒るくせに、今日はされるがまま。
「おいで。椅子座りな」
背中熱い。
「寒くない?」
「…あつい、」
「後で水飲もうな」
軽く上からシャワーで流す。あまり長居しても良くない、そう思いタオルを取ろうと考えていた時だった。
突然ブルリと体を震わせ、落ち着きがなくなる。
「どした?気持ち悪くなっちゃった?」
太ももあたりを何度も摩り、前をギュッと握りしめる動作。これは。小さな兄弟を持つものとしてはすぐに分かる生理現象。

「おしっこでそう?ここでしちゃいな」
お湯を前に当ててやるものの、中々出そうとしない。
「いーろー君、こっからトイレしんどいでしょ?」
背中を叩きながら言うけど、一向に出す気配がない。
「いろ君?聞いてる?」
目の前で手をかざしても反応がない。
「おーい」
「…ない…」
「ん?」
「でない、」
さっきまで止まっていた涙が再び復活。ポロポロと雫が頬を伝う。
「でないっ、でないの、」
立った方が出ると思ったのだろうか。急に立ち上がり、お尻をゆらゆらと揺らし、少し腰が引けている。
「ぼうこう、破裂するぅ…」
いよいよ本格的に泣いてしまった。おしっこ、おしっことうわ言のように呟き、しゃくりあげて、まるで小さな子供のよう。
「あーあー、相当熱上がってんな。大丈夫、ここでおしっこしちゃおうな」
腹を何度か撫でて、何度もしーしーと声をかけてやる。
「おしっこいっぱいだそーな」
水の音で促してやってるはずなのに、一向に出る気配はない。他のチビ達はこれで大体我慢できなくなって出してくれるのに。
「大丈夫、落ち着け。泣かなくてもいつかは出るよ」
「っっ~、でない、おなか、こわれる、」
「壊れない。壊れないよ。って前押さえたら余計に出ないじゃん」
無意識だろうか。前をぎゅうぎゅうに押さえて地団駄を踏んでいるのは。
「おてて離しな」
「っや、お腹はれつするもん、」
あ、これもう意識朦朧としてるな。言ってることがよく分からないし、きっとちんこを押さえている自覚がない。
「はーい、おちんちんから手ェ離す」
無理矢理手を引っぺがし、再び掴まれないよういろ君のチンコを手で柔く包む。
「ぁう、ぅうう、」
外からどうにかして前を押さえようとしてくるけど小さいサイズは俺の手にすっぽりと収まるから外から触ることはできない。依然としてポロポロと涙を流すいろ君。何がそんなに悲しいのか分からないからこちらも大困惑だ。こんなに感情を露わにする子じゃ無かったからこそ動揺してしょうがない。
「おしっこ、でるぅ、」
「出たらいいじゃん」
あれ、この子もしかして熱せん妄起こしてね?
「いろ君、ここおトイレ。わかる?」
「ん、?おといれ…」
「そう。だからここでおしっこしなきゃ」
シャワーの水を止めた。そして、排水溝の方向に向き合わせる。
「そうそう。ここにおしっこ。ね?」
チンコを支えてお腹をさすってやるも、中々出ない。
「しーできそ?」
「…しー…したい、」
どうすればいいのだろう。もういっそのこと床を汚す覚悟でトイレに連れて行った方がいいのだろうか。でもまた失敗したらダメージが大きそうだし。
「んー…おしっこでろーでろー」
どうすればいいか分かんなくて、支えていたチンコの先端を触り、裏側をタフタフと押し上げた。その瞬間だった。
「ぁっ、でぅ、」
びちゃりと床を元気な水が叩いた。
「ぁっ、ああっ、」
じゅううううう…
太く、でも力のない水流はみるみるうちに排水溝に流されていく。
「すっきりした?」
「…したぁ…」
「じゃあ上がろうか」
「………んー…」
「いろ君?」
「………ねむい、ねる、」
「まって、まってまってまって、布団まで頑張って」
「…やだ、ねるの、」
これが小さい子なら寝かせてあげられるけど、小学校6年生は流石に運ぶのがしんどい。ぐずぐずに力の抜けた腕と体を軽く拭い、服を着せる。
「いろ君、お水だけ飲んで」
ストローを口元に運ぶと、喉は乾いていたようで、ペットボトル半分くらいは飲んでくれた。
手を繋いで布団に連れて行こうとするも、途中で電池が切れたように眠ってしまう。
「しょうがないなぁ…」
力の抜けた人間は重い。薬を飲ませるの、忘れてしまったけど大丈夫かな。でもまあ、眠れたようで良かった。


「おなかすいた…」
14:00頃、一眠りしたいろ君が目を覚ます。
「眠れた?しんどさ、どう?」
「…別に…眠いだけ…ねえ、俺こんな服着てたっけ」
「え、覚えてないの?」
「は?何俺なんかした?」
「………汗すごかったから拭いただけ。何食べたい?うどんかお粥かなーって思ってるんだけど」
「…うどんがいい、あのさ、ちっさく切ったやつ、食べたい。あとジュースのみたい、」
「ん、分かった。食べれるものいっぱい食べな」
気づいていないならそのままでいいか。黙っておこう。








ってずっと内緒にしていたのに。
「ねーいろ君、いろ君?」
「っ、」
かわいそうに。何で俺口滑らしちゃったんだろう。耳まで真っ赤。目も全然合わないし、ちょっと泣きそうじゃん。
さっきまでは服を脱がせるのも何もかもされるがままだったのに、体を拭いてあげると言ってもかわされて、服も自分で身につけてしまった。
「ご飯どうしよっか」
しゃがんで目を合わせようとしたのに呆気なくそらされてしまう。
「…いらない、」
「でもお腹空いたでしょ?どっか食べにいく?」
「っ、いらない、から、」
「小6の時の話じゃん。気にしない気にしない」
あ、まずった。堪えきれない涙がまた、ぽろぽろとこぼれている。
「ごめんね、本当ごめん。昔のことなのにね」
本当に言わなきゃよかった。いろ君、変なところ繊細だから。こちら側の笑い話って感覚とは違うんだろう。
「っ゛、な、でもないから、」
止めようと必死で袖で目を拭いている姿はいじらしい。しゃくりあげるたびに息が引き攣るのが可哀想で、とてつもない罪悪感に襲われた。
「か、髪乾かさなきゃ!こっちおいで」
ベッドサイドに無理やり腰掛けさせ、タオルで軽く拭く。
「田舎だけど案外ご飯屋さんあるんだよ?蕎麦とかー、パスタとか、」
一言も返ってこない。聞こえるのは引き攣った呼吸だけ。
「ん、拭けた。あとドライヤーどーする?自分でやる?」
「…え、」
やっと返ってきた返事には焦りと困惑が浮かんでいた。
「………」
「え、なになに、」
ベッドに上がってきたかと思ったら、俺の膝の上にうつ伏せで寝転がってくる。
「………めんどくさいからやって、」
え、何この子。めっちゃ可愛いじゃん。てか、6年生のあの時もこんな感じだったな。思ったけど、言うのはやめた。
「はいはい、分かりましたよ」
髪を撫でながら乾かしていると、ウトウトと眠そうにまどろんでいる。
「…いつ帰ってくんの」
ぽつりと呟かれた一言。その一言に、いろ君の中の「弟」が詰め込まれていた。
「なぁに、寂しいの」
「…ちがうけど、…あいつらの世話だるいし、兄貴いたら分担できるし、」
半分本音で、半分照れ隠し。何歳になってもやっぱり可愛い。チビ達の居ない今日明日はとことん甘やかしてやろう、そう思った。


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感想 1

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みんなの感想(1件)

.
2023.12.25 .

普段はお兄ちゃんとして頑張ってる子が、 弟として 失敗しちゃったり 泣いたり して めちゃめちゃ可愛いです ! この作品の続きというか、第2弾書いて欲しいです ✨

こじらせた処女
2023.12.25 こじらせた処女

私の癖を理解してくれて嬉しいです。。。ありがとうございます😭第二弾も書きたいなぁ…

解除

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