1 / 5
1
しおりを挟む
「36.6℃、平熱ね。あと1時間なんだから頑張りなさい」
「あの俺、ほんとにしんどくて…早退したいんですけど、」
ああまただ。そんなにサボる性格でも無いのに、限界だから保健室に来たのに。熱が無いからといつも追い出されてしまう。
「他の症状は?」
「え?」
「咳とか鼻水とかは無いの」
「…ないです、しんどいだけです…」
あ、これ無理なやつだ。睡眠不足、だとか、ごはん食べてないだろ、とか言われるやつ。
「次の教科は?」
「体育です、だから、」
「持久走嫌かもだけど頑張んなさい」
まあ薄々予想はしていた。平熱が35℃前半であることなんて、知るわけないもんな。言ったけど信じてもらえなかったもんな。
「っはぁ…っだる…」
「どんまーい、俺らと一緒に苦しもーぜ」
友人達も俺のこと、サボろうとしたと思っている。そんな事実に泣きそうになる。でも訂正するのもしんどいし。黙って体操着に着替え、グラウンドに渋々向かった。
「っは…もー限界…」
家の玄関に着いた瞬間、立ってるのも億劫で座り込んだ。地獄の持久走を終えた体はさっきよりも重い。ぜってえ熱あるだろ、そう思って測ってみるけど、36.7℃と変わらないまま。明らかに調子が違うのに。だるくてしんどくて仕方がないのに。心配してくれとは思わないけど、休ませて欲しい。
(和樹さんも…そう思うのかな…)
田舎すぎる実家からでは通える高校が無いという理由で住まわせてもらっている親戚の名前だ。10も離れているため、さん付けを未だにやめられていない。優しい人だから心配はしてくれるだろう。でも、サボったって思われたくない。親でさえ仮病だろと怒られて畑仕事に駆り出されていたのに、今年から関わり始めた親戚のお兄さんが信じてくれる訳がない。せめて咳とか鼻水とか、分かりやすい症状が出てくれれば良かったのに。自分の体調不良はいつも分かりにくくて嫌になる。
「あれ、ご飯それだけで良いの?」
「ぁ、えっと…」
上手く言葉が出てこない。しんどいって言って、熱を測らされるのは嫌だし、お腹が痛いだとか頭が痛いだとかと嘘を言うのも気が引けるし。もう今日は嘘だと思われ続けて疲れた。また、あの目をされたくない。仮病だって思われたくない。
「あー…今日持久走で腹減りすぎて、肉まん食べちゃって…」
「この時期の肉まんって美味しいよね。持久走かー…懐かしい」
しんどい。しんどいしんどいしんどい。早くベッドに横になりたい。ご飯、食べたくない。喋りたくない。何もしたくない。
「すみません、お腹いっぱいで…明日食べます」
向こうの返答が来る前に席を立ち、冷蔵庫に焼き魚の残りを入れてリビングを出る。自分の部屋の匂いにドッと力が抜ける。明日には元気になってますように。風呂に入ることもしないままベッドにつくと、強烈な眠気に負けて眠ってしまった。
「あの俺、ほんとにしんどくて…早退したいんですけど、」
ああまただ。そんなにサボる性格でも無いのに、限界だから保健室に来たのに。熱が無いからといつも追い出されてしまう。
「他の症状は?」
「え?」
「咳とか鼻水とかは無いの」
「…ないです、しんどいだけです…」
あ、これ無理なやつだ。睡眠不足、だとか、ごはん食べてないだろ、とか言われるやつ。
「次の教科は?」
「体育です、だから、」
「持久走嫌かもだけど頑張んなさい」
まあ薄々予想はしていた。平熱が35℃前半であることなんて、知るわけないもんな。言ったけど信じてもらえなかったもんな。
「っはぁ…っだる…」
「どんまーい、俺らと一緒に苦しもーぜ」
友人達も俺のこと、サボろうとしたと思っている。そんな事実に泣きそうになる。でも訂正するのもしんどいし。黙って体操着に着替え、グラウンドに渋々向かった。
「っは…もー限界…」
家の玄関に着いた瞬間、立ってるのも億劫で座り込んだ。地獄の持久走を終えた体はさっきよりも重い。ぜってえ熱あるだろ、そう思って測ってみるけど、36.7℃と変わらないまま。明らかに調子が違うのに。だるくてしんどくて仕方がないのに。心配してくれとは思わないけど、休ませて欲しい。
(和樹さんも…そう思うのかな…)
田舎すぎる実家からでは通える高校が無いという理由で住まわせてもらっている親戚の名前だ。10も離れているため、さん付けを未だにやめられていない。優しい人だから心配はしてくれるだろう。でも、サボったって思われたくない。親でさえ仮病だろと怒られて畑仕事に駆り出されていたのに、今年から関わり始めた親戚のお兄さんが信じてくれる訳がない。せめて咳とか鼻水とか、分かりやすい症状が出てくれれば良かったのに。自分の体調不良はいつも分かりにくくて嫌になる。
「あれ、ご飯それだけで良いの?」
「ぁ、えっと…」
上手く言葉が出てこない。しんどいって言って、熱を測らされるのは嫌だし、お腹が痛いだとか頭が痛いだとかと嘘を言うのも気が引けるし。もう今日は嘘だと思われ続けて疲れた。また、あの目をされたくない。仮病だって思われたくない。
「あー…今日持久走で腹減りすぎて、肉まん食べちゃって…」
「この時期の肉まんって美味しいよね。持久走かー…懐かしい」
しんどい。しんどいしんどいしんどい。早くベッドに横になりたい。ご飯、食べたくない。喋りたくない。何もしたくない。
「すみません、お腹いっぱいで…明日食べます」
向こうの返答が来る前に席を立ち、冷蔵庫に焼き魚の残りを入れてリビングを出る。自分の部屋の匂いにドッと力が抜ける。明日には元気になってますように。風呂に入ることもしないままベッドにつくと、強烈な眠気に負けて眠ってしまった。
47
お気に入りに追加
88
あなたにおすすめの小説

ある少年の体調不良について
雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。
BLもしくはブロマンス小説。
体調不良描写があります。




怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?



ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる