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パワハラ上司にいびられている最中におしっこしたくなった新入社員は
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「げっ、」
今1番会いたくなかった人。でも、何故か安心して、泣きたくなってしまう。
「…何でいるんですか」
「いやー、休憩だよ休憩。頭使いすぎて死にそー」
「…お忙しいんですね」
「まあな。でも前と同じくらいだな。お前は?何か困ったことないか?」
ぐっ、と言葉が詰まる。
「まあ?有望株ですから。激務で激務で。あー、有給ほしー!」
「…そうか。まあ無理するなよ。期待の新人さん」
「いた゛!何するんすか!」
不意におでこに走った衝撃。思わず顔を顰めてしまう。
「ははっ、じゃあ俺は戻るわ。サボるなよー」
「はいはい」
「はいは一回」
「はーい。…あーあ、うそついちゃった」
先輩が行ってしまった途端、さっきの暖かかった気持ちがスッと冷える。慌てて隠したカップを出す。
先輩、俺、本当は有望株どころか、人並みにも仕事が出来ないグズなんです。パソコンをとりあげられて、始業時間が来ても掃除をさせられるくらい、お荷物なんです。先輩、嘘ついてごめんなさい。
先輩の顔に泥を塗るようなマネして、ごめんなさい。
「…戻りました。コーヒー、どうぞ」
「…」
「あの、掃除、終わりました」
「…」
「仕事、させていただけないでしょうか」
「…」
返ってこない返事。それでもこれを辞めたら、俺はただの給料泥棒だ。
「お願いします」
「…」
「お願いします」
頭を45度に下げて、お辞儀をする。それでも返事は返ってこない。
「お願いしま、」
「…うるさい。騒音になるだろ」
「…はい、申し訳ありません」
こう言われてはもう何も言えない。かと言ってパソコンのないデスクにも戻れず、その場で突っ立ってしまう。
「いつまでそこにいるつもりだ」
「あ、あの!!」
「なんだ宮島」
「僕の業務が少し大変で…高野に少し手伝ってもらってもよろしいでしょうか」
「…仕方ない。ほら、じゃあこの資料を1時間以内に持ってこい」
「っはい!ありがとうございます!」
「…あんまり気にすんなよ」
パソコンと資料を抱え、デスクに戻る最中。宮島の耳打ち。
「流石に今日の仕打ちは酷いだろ。なあ、お前の天野?先輩に相談してみようぜ」
「それは…」
「言いにくいなら俺から言おうか?」
「やめてくれ!!それは絶対ダメだ!!あ…」
タイプ音しか聞こえない部屋に、俺の声だけが響く。一斉に注目の的だ。
「仕事中だぞ、静かにしろ」
「すみません…」
あの人だけにはバレたくない。仕事ができない奴って、あの人だけには思われたくない。呆れられたくない。
手渡された、多分かつては俺の資料であったものに目を通す。大丈夫、先輩に教わった内容だ。何回もやっているタイプ。パソコンを起動して、エクセルを開く。
(大丈夫、早く、正確に…ミスしないように、でも遅くならないように…あれ…)
頭が真っ白で、何をしていいかわからない。
今1番会いたくなかった人。でも、何故か安心して、泣きたくなってしまう。
「…何でいるんですか」
「いやー、休憩だよ休憩。頭使いすぎて死にそー」
「…お忙しいんですね」
「まあな。でも前と同じくらいだな。お前は?何か困ったことないか?」
ぐっ、と言葉が詰まる。
「まあ?有望株ですから。激務で激務で。あー、有給ほしー!」
「…そうか。まあ無理するなよ。期待の新人さん」
「いた゛!何するんすか!」
不意におでこに走った衝撃。思わず顔を顰めてしまう。
「ははっ、じゃあ俺は戻るわ。サボるなよー」
「はいはい」
「はいは一回」
「はーい。…あーあ、うそついちゃった」
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先輩、俺、本当は有望株どころか、人並みにも仕事が出来ないグズなんです。パソコンをとりあげられて、始業時間が来ても掃除をさせられるくらい、お荷物なんです。先輩、嘘ついてごめんなさい。
先輩の顔に泥を塗るようなマネして、ごめんなさい。
「…戻りました。コーヒー、どうぞ」
「…」
「あの、掃除、終わりました」
「…」
「仕事、させていただけないでしょうか」
「…」
返ってこない返事。それでもこれを辞めたら、俺はただの給料泥棒だ。
「お願いします」
「…」
「お願いします」
頭を45度に下げて、お辞儀をする。それでも返事は返ってこない。
「お願いしま、」
「…うるさい。騒音になるだろ」
「…はい、申し訳ありません」
こう言われてはもう何も言えない。かと言ってパソコンのないデスクにも戻れず、その場で突っ立ってしまう。
「いつまでそこにいるつもりだ」
「あ、あの!!」
「なんだ宮島」
「僕の業務が少し大変で…高野に少し手伝ってもらってもよろしいでしょうか」
「…仕方ない。ほら、じゃあこの資料を1時間以内に持ってこい」
「っはい!ありがとうございます!」
「…あんまり気にすんなよ」
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「流石に今日の仕打ちは酷いだろ。なあ、お前の天野?先輩に相談してみようぜ」
「それは…」
「言いにくいなら俺から言おうか?」
「やめてくれ!!それは絶対ダメだ!!あ…」
タイプ音しか聞こえない部屋に、俺の声だけが響く。一斉に注目の的だ。
「仕事中だぞ、静かにしろ」
「すみません…」
あの人だけにはバレたくない。仕事ができない奴って、あの人だけには思われたくない。呆れられたくない。
手渡された、多分かつては俺の資料であったものに目を通す。大丈夫、先輩に教わった内容だ。何回もやっているタイプ。パソコンを起動して、エクセルを開く。
(大丈夫、早く、正確に…ミスしないように、でも遅くならないように…あれ…)
頭が真っ白で、何をしていいかわからない。
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