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大学生視点(前)
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おしっこしたい。
とある住宅街のど真ん中。まだ慣れない場所でズクリと膀胱が痛む。そう、俺は今、焦っている。
3月下旬。希望の大学に合格した俺は、晴れて一人暮らしデビューをすることとなった。ずっと憧れていたこの生活。荷物の運び入れが終わって、親も帰ってやることが無くなってしまってその辺をブラブラと散歩していたら、道が分からなくなってしまったのだ。
「何で、さっきも15分って書いてたじゃん、」
田んぼだらけのド田舎で生きてきた俺は、こんなに何本も道のあるところに行ったことがない。スマホのナビ機能も使いこなせなくて、もどかしくて道のど真ん中で足踏みを繰り返す。
(ぅー…トイレ、といれぇ…)
家を出る前に飲んだコーヒーが憎い。ジクジクと主張を持った下腹がそろそろ限界だとずしっと重い。
尿意を感じてからかれこれ1時間近く経っている。立ち止まってスマホで近くのトイレを探すも、1番近いのはさっき行ったコンビニ。しかし店員に聞くと貸し出していないという。この近くには公衆トイレといった気の利いたものはない。変に移動してしまったから、確実に用を足せる駅がとても遠のいてしまったし。
出したい。我慢できない。
駅を目指して歩いているのに、一向に距離が縮まらない。つまり、迷っているのだ。
早くこの落ち着かないものから解放されたい。しかしここは住宅街の通り。この近くの道端は誰かの家の壁なのである。地元みたいに道端ですることも出来なさそう。
駅まで15分、これは30分前にも見た表示で、一向に距離が縮まっていない。つまり、迷っているのだ。
「あ~も~…」
立ち止まるのが辛くて、屈伸をして体を騙すけれど、もうしゃがみ込むだけでジワリと溢れてしまいそう。
見慣れない風景、1人、心細い。3月特有の肌寒い気候と相まって、キュウウウウ、と嫌に膀胱が縮む。
でも俺は小さな子供ではない。今年から大学生の、大人。いくらトイレが遠かろうと、道が分からなくても、ちゃんと便器の中に出さないといけない。我慢できないっていうのはあり得ない。あってはならないのだ。
「っはぁっ、っぁ、ん、」
前屈みになって内股を撫でながら歩く。一歩一歩を踏み締める度にパンパンの膀胱がツキツキと悲鳴をあげる。
「ぁぅっ、」
出ちゃう。咄嗟にそこを掴もうとして、止める。ここは外。反対方向からも人は歩いてきている。出口を握ろうとした手を彷徨わせて、右手は下腹を、左手はズボンの前をグイと引き上げた。
(もぉ、むり…)
何度鳥肌を立てたか分からない。その度に出口が嫌に痙攣して、太ももを重ね合わせて。
もう、歩けない。歩幅は明らかに狭くなっているし、内股で振動させないようにしてるから進みも遅い。忘れかけていたスマホのナビを再び見ると、全然変わっていないどころか距離が伸びている。
(おしっこ、おしっこおしっこおしっこおしっこ…)
もう、何も考えられない。とにかくおしっこしたい。トイレが欲しい。白い便器が欲しい。
「っは、ぁ、ぁぁ、」
その場で立ち止まってズボンを引き上げる。波が引くわけでも、尿意がマシになるわけでもない。これは溜まってるものだから、放出しないと楽にはならない。進まないとその願いは叶わない。分かっている、分かっているけど。もう一歩でも歩いたら溢れてしまいそう。道端に、水溜まりを作ってしまいそう。
(ぁ、そうだ…)
トイレ、あるじゃん、この辺にいっぱい。
この歳でこれをするのは恥ずかしいけど、失敗するよりは何百倍もマシだ。
とある住宅街のど真ん中。まだ慣れない場所でズクリと膀胱が痛む。そう、俺は今、焦っている。
3月下旬。希望の大学に合格した俺は、晴れて一人暮らしデビューをすることとなった。ずっと憧れていたこの生活。荷物の運び入れが終わって、親も帰ってやることが無くなってしまってその辺をブラブラと散歩していたら、道が分からなくなってしまったのだ。
「何で、さっきも15分って書いてたじゃん、」
田んぼだらけのド田舎で生きてきた俺は、こんなに何本も道のあるところに行ったことがない。スマホのナビ機能も使いこなせなくて、もどかしくて道のど真ん中で足踏みを繰り返す。
(ぅー…トイレ、といれぇ…)
家を出る前に飲んだコーヒーが憎い。ジクジクと主張を持った下腹がそろそろ限界だとずしっと重い。
尿意を感じてからかれこれ1時間近く経っている。立ち止まってスマホで近くのトイレを探すも、1番近いのはさっき行ったコンビニ。しかし店員に聞くと貸し出していないという。この近くには公衆トイレといった気の利いたものはない。変に移動してしまったから、確実に用を足せる駅がとても遠のいてしまったし。
出したい。我慢できない。
駅を目指して歩いているのに、一向に距離が縮まらない。つまり、迷っているのだ。
早くこの落ち着かないものから解放されたい。しかしここは住宅街の通り。この近くの道端は誰かの家の壁なのである。地元みたいに道端ですることも出来なさそう。
駅まで15分、これは30分前にも見た表示で、一向に距離が縮まっていない。つまり、迷っているのだ。
「あ~も~…」
立ち止まるのが辛くて、屈伸をして体を騙すけれど、もうしゃがみ込むだけでジワリと溢れてしまいそう。
見慣れない風景、1人、心細い。3月特有の肌寒い気候と相まって、キュウウウウ、と嫌に膀胱が縮む。
でも俺は小さな子供ではない。今年から大学生の、大人。いくらトイレが遠かろうと、道が分からなくても、ちゃんと便器の中に出さないといけない。我慢できないっていうのはあり得ない。あってはならないのだ。
「っはぁっ、っぁ、ん、」
前屈みになって内股を撫でながら歩く。一歩一歩を踏み締める度にパンパンの膀胱がツキツキと悲鳴をあげる。
「ぁぅっ、」
出ちゃう。咄嗟にそこを掴もうとして、止める。ここは外。反対方向からも人は歩いてきている。出口を握ろうとした手を彷徨わせて、右手は下腹を、左手はズボンの前をグイと引き上げた。
(もぉ、むり…)
何度鳥肌を立てたか分からない。その度に出口が嫌に痙攣して、太ももを重ね合わせて。
もう、歩けない。歩幅は明らかに狭くなっているし、内股で振動させないようにしてるから進みも遅い。忘れかけていたスマホのナビを再び見ると、全然変わっていないどころか距離が伸びている。
(おしっこ、おしっこおしっこおしっこおしっこ…)
もう、何も考えられない。とにかくおしっこしたい。トイレが欲しい。白い便器が欲しい。
「っは、ぁ、ぁぁ、」
その場で立ち止まってズボンを引き上げる。波が引くわけでも、尿意がマシになるわけでもない。これは溜まってるものだから、放出しないと楽にはならない。進まないとその願いは叶わない。分かっている、分かっているけど。もう一歩でも歩いたら溢れてしまいそう。道端に、水溜まりを作ってしまいそう。
(ぁ、そうだ…)
トイレ、あるじゃん、この辺にいっぱい。
この歳でこれをするのは恥ずかしいけど、失敗するよりは何百倍もマシだ。
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