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(やばい…なんでっ、)
まただ。朝、駅に向かおうとしている時、また、あの感覚。
「ん?秋葉?」
だめだ。怪しまれてしまう。早く歩かないと。今日こそは。
昨日みたいに酷くない。でも、どうしようもなく緊張したみたいに冷や汗が出て、手が震えて。
改札前に来た瞬間、ゾワリと背中が冷たくなる。緊張したみたいに手が震えて、息が切れたみたいに苦しくて。ダメだ、ちゃんと今日は行かないと。そう思えば思うほど、焦って、怖くて、進みたくない。電車、乗りたくない。
「秋葉?入らないの?」
中々入らない俺を疑問に思ったのだろう。前からの声にハッと現実に引き戻される。
「はいる、はいります、」
慌てて定期券をかざして中に入るも、この嫌な感じはおさまらない。
「んじゃあ俺こっちだから。気をつけてね」
反対側のホームへの階段へ向かった達也さん。俺も階段を登ろうとするけど、ずっとずっと息がつかえて痛い。
(やだ、ほんとに、っ、)
ぐるぐるぐるぐる。足元がゆらゆらとして現実味が無く、どんどん雑音が遠くなっていく。
「あの、邪魔なんですけど」
「ぁ、」
後ろから急かす声。俺が流れを止めてしまってる。早く、動かないと。でも、そう思うたびに足は固まるばっかり。
「、す、みませ、」
「チッ、」
人だかりを逆行して、駅を出る。次の電車には乗らないと、遅刻してしまうのは分かっている。でも、改札前でこれなんだとしたら、電車内はもっと苦しいのではないか。これ以上息できなくなるの、単純に怖い。
(あ、バス…)
バス乗り場に向かえば、経由地に学校の近くのコンビニ前がある。
(今日はこれで行こう…)
320円。高校生からしたら決して安い値段ではない。それに、電車に比べて回り道だから時間もかかる。定期を買ってもらっているのにこんなにもったいないことはない。でも、本当に無理。
運良く丁度来たバスに乗り込むと、普通に席は空いていて、安心して後方二列目に座った。
「あれ秋葉ぁ。めちゃギリギリじゃん。昨日も休んでたし、どうしたんよ」
「いや、ちょっとかぜ…」
「マジで気をつけろよな。やっぱお前居ねーと!!」
「はは…あのさ、おれ、さ、」
「ん?」
「電車でケツ、触られて、」
「何お前、痴漢デビューしたの!?女かよー!…で、で!?どんな奴だった!?おっさん?それともマジ美人だったり…?」
「…、いや、分かんねー。でもマジキモくてさぁ、最悪だわ」
無理やり口角を上げて、出そうになった涙を堪えるべく唇を噛む。
友人の好奇心にまみれた言葉。彼は俺がこんなに悩んでるって知らない。もしも俺が女子だったらもっと心配してくれただろうか。
「えー、俺美人なねーちゃんだったらめちゃくちゃ喜ぶけどなー。AVにあんじゃん、そんなシチュエーション!!」
「そう、だよな…顔は、わかんなかった、」
そうだよな、何ビビってんだって話。
こんな無駄遣いをして、達也さんはどう思うだろう。自分があくせく働いた金で定期を買ってやってるのに、バスを使うような人間。触られたぐらいで、痴漢ぐらいでって言うだろうか。一回ぐらい、気にしすぎだってって。
(俺、繊細すぎるだろ…)
あーあ、馬鹿らしい。こんなにくだらなくて恥ずかしいこと、誰にも言えないじゃん。
まただ。朝、駅に向かおうとしている時、また、あの感覚。
「ん?秋葉?」
だめだ。怪しまれてしまう。早く歩かないと。今日こそは。
昨日みたいに酷くない。でも、どうしようもなく緊張したみたいに冷や汗が出て、手が震えて。
改札前に来た瞬間、ゾワリと背中が冷たくなる。緊張したみたいに手が震えて、息が切れたみたいに苦しくて。ダメだ、ちゃんと今日は行かないと。そう思えば思うほど、焦って、怖くて、進みたくない。電車、乗りたくない。
「秋葉?入らないの?」
中々入らない俺を疑問に思ったのだろう。前からの声にハッと現実に引き戻される。
「はいる、はいります、」
慌てて定期券をかざして中に入るも、この嫌な感じはおさまらない。
「んじゃあ俺こっちだから。気をつけてね」
反対側のホームへの階段へ向かった達也さん。俺も階段を登ろうとするけど、ずっとずっと息がつかえて痛い。
(やだ、ほんとに、っ、)
ぐるぐるぐるぐる。足元がゆらゆらとして現実味が無く、どんどん雑音が遠くなっていく。
「あの、邪魔なんですけど」
「ぁ、」
後ろから急かす声。俺が流れを止めてしまってる。早く、動かないと。でも、そう思うたびに足は固まるばっかり。
「、す、みませ、」
「チッ、」
人だかりを逆行して、駅を出る。次の電車には乗らないと、遅刻してしまうのは分かっている。でも、改札前でこれなんだとしたら、電車内はもっと苦しいのではないか。これ以上息できなくなるの、単純に怖い。
(あ、バス…)
バス乗り場に向かえば、経由地に学校の近くのコンビニ前がある。
(今日はこれで行こう…)
320円。高校生からしたら決して安い値段ではない。それに、電車に比べて回り道だから時間もかかる。定期を買ってもらっているのにこんなにもったいないことはない。でも、本当に無理。
運良く丁度来たバスに乗り込むと、普通に席は空いていて、安心して後方二列目に座った。
「あれ秋葉ぁ。めちゃギリギリじゃん。昨日も休んでたし、どうしたんよ」
「いや、ちょっとかぜ…」
「マジで気をつけろよな。やっぱお前居ねーと!!」
「はは…あのさ、おれ、さ、」
「ん?」
「電車でケツ、触られて、」
「何お前、痴漢デビューしたの!?女かよー!…で、で!?どんな奴だった!?おっさん?それともマジ美人だったり…?」
「…、いや、分かんねー。でもマジキモくてさぁ、最悪だわ」
無理やり口角を上げて、出そうになった涙を堪えるべく唇を噛む。
友人の好奇心にまみれた言葉。彼は俺がこんなに悩んでるって知らない。もしも俺が女子だったらもっと心配してくれただろうか。
「えー、俺美人なねーちゃんだったらめちゃくちゃ喜ぶけどなー。AVにあんじゃん、そんなシチュエーション!!」
「そう、だよな…顔は、わかんなかった、」
そうだよな、何ビビってんだって話。
こんな無駄遣いをして、達也さんはどう思うだろう。自分があくせく働いた金で定期を買ってやってるのに、バスを使うような人間。触られたぐらいで、痴漢ぐらいでって言うだろうか。一回ぐらい、気にしすぎだってって。
(俺、繊細すぎるだろ…)
あーあ、馬鹿らしい。こんなにくだらなくて恥ずかしいこと、誰にも言えないじゃん。
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