上 下
17 / 51
第三章

3

しおりを挟む
 苦しくなくなった呼吸、脱力感、途端、忘れていた欲求がこみ上げる。いや、もう出ている。タイルと廊下の床の間の銀の縁に重たい水流がバタバタと落ちた。
「ふぅ、んんんんっ、やだ、とまって、やだ、あっ、」
親指でぐりぐりと出口を押さえるのに、出口が狭くなるから、プシィィィっと余計に出て行く。酸欠の続いていた頭がボヤッとする。ああ、先生の言うとおりに辞めておけば良かった。ぐしょぐしょになったズボンをわしづかむけれど、虚しく布の水分が落ちるだけ。
「ぁ、ぁ、」
だなんて声にならない声をあげて、お腹が空になるのを待つしかなかった。
長い、長い放尿が終わった。最後の一滴がぴちゃりと落ちる。
「ごめ、なさい、いうこと、きかなかったから…」
「よしよし、えらいぞ。一歩入れたじゃないか。こっちこそ急にあんなこと、具合悪くないか?」
「いえ…だいじょぶ、です…」
床の惨状に触れない優しさが自分を惨めにする。でも頭を滑る手は心地よくて、幼稚園児みたいに泣きじゃくる。
「着替えような。今日はもう終わりにしよう」


「体操服はまた返してくれたらいいから。パンツはないからノーパンで我慢してくれ」
全部出したと思ったのに、体は緊張していたようで、教室の冷気に当たった瞬間、またズクリと下腹部が痛む。足を擦り合わせる仕草から察せられ、拭いているタオルに包まれながら放出してしまった。濡れた体が冷えたままで服を着ても寒い。なのに、唇だけは血流が早い。お漏らしをしたあとすぐに、一刻も早くその場を離れたくなるほどまた息が苦しくなったのに。あの瞬間だけ、キスをされた瞬間だけ、なぜか安心した。
「口、ゆすぎにいくか?」
「いえ…なんで…?」
「いや、ずっと唇触ってるから。我慢しなくていいんだぞ」
「いや、あの、これは…先生、にキス、されてるときだけ、トイレでも、全部忘れられて…」
「なるほど…それが時田の克服の糸口なのかもな…明日もやってみるか?」

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

我慢できないっ

滴石雫
大衆娯楽
我慢できないショートなお話

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

「学校でトイレは1日2回まで」という校則がある女子校の話

赤髪命
大衆娯楽
とある地方の私立女子校、御清水学園には、ある変わった校則があった。 「校内のトイレを使うには、毎朝各個人に2枚ずつ配られるコインを使用しなければならない」 そんな校則の中で生活する少女たちの、おしがまと助け合いの物語

おしっこ8分目を守りましょう

こじらせた処女
BL
 海里(24)がルームシェアをしている新(24)のおしっこ我慢癖を矯正させるためにとあるルールを設ける話。

隣の家

こじらせた処女
BL
 部活から帰ってきた千紘(ちひろ)(14)は、母親に彼氏が来るから、と追い出されてしまう。いつもの場所の非常階段で待機している途中、トイレに行きたくなってしまい…?

怪異・おもらししないと出られない部屋

紫藤百零
大衆娯楽
「怪異・おもらししないと出られない部屋」に閉じ込められた3人の少女。 ギャルのマリン、部活少女湊、知的眼鏡の凪沙。 こんな条件飲めるわけがない! だけど、これ以外に脱出方法は見つからなくて……。 強固なルールに支配された領域で、我慢比べが始まる。

エレベーターで一緒になった男の子がやけにモジモジしているので

こじらせた処女
BL
 大学生になり、一人暮らしを始めた荒井は、今日も今日とて買い物を済ませて、下宿先のエレベーターを待っていた。そこに偶然居合わせた中学生になりたての男の子。やけにソワソワしていて、我慢しているというのは明白だった。  とてつもなく短いエレベーターの移動時間に繰り広げられる、激しいおしっこダンス。果たして彼は間に合うのだろうか…

お兄ちゃんだって甘えたい!!

こじらせた処女
BL
 大江家は、大家族で兄弟が多い。次男である彩葉(いろは)は、県外の大学に進学していて居ない兄に変わって、小さい弟達の世話に追われていた。  そんな日々を送って居た、とある夏休み。彩葉は下宿している兄の家にオープンキャンパスも兼ねて遊びに行くこととなった。  もちろん、出発の朝。彩葉は弟達から自分も連れて行け、とごねられる。お土産を買ってくるから、また旅行行こう、と宥め、落ち着いた時には出発時間をゆうに超えていた。  急いで兄が迎えにきてくれている場所に行くと、乗るバスが出発ギリギリで、流れのまま乗り込む。クーラーの効いた車内に座って思い出す、家を出る前にトイレに行こうとして居たこと。ずっと焦っていて忘れていた尿意は、無視できないくらいにひっ迫していて…?

処理中です...