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第一章
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「おい、時田?どうした?」
「やだっ、こわい、やだ、おしっこ、あっ…」
自分でも何を言っているのか分からない。おしっこしたい、でもあそこには入れない。胸がざわざわして、早くここから出たい、でも、動けない。
じゅー…
便器が受けるはずだったものが、足を通って地面に落ちる。押さえている手にも足にも力が入らなくて、立っていられない。
「っあ、あ、…やぁ…ヒグッ…」
ガクリと砕けた膝は、水気を帯びた地面に落ちる。膀胱が軽くなっていく快感と、頭を支配する、不快感。
フルっ…
全身が震えると同時に、放尿が終わった。
「もう、残っていないか?」
地面に映るスニーカー。下腹と背中に手を当てられる。じょろり、とパンツの中が温かくなる程度の尿しか出てこない。
やってしまった。ぐしょぐしょに濡れそぼったズボン、雨の日のように水分をたっぷり含んだ靴。
「っぅ゛~…」
「し、しんどかったんだから、しょうがないしょうがない」
先生の気を遣った声が、どうしようもなく惨めだ。
「でもこのままじゃ帰れないよな…先生ちょっと保健室で服借りてくるから、中で待っててくれるか?」
「やだ、むり、だから、このまま帰るぅ゛…」
ほぼ泣き声で、みっともなく泣きわめく。
「って言ってもなぁ…すぐに戻ってくるから、な?」
幾分か柔らかくなった声色。
あやすように頭を撫でられる。でも、無理なものは無理なわけで。
「っやだ、ほんと、むり…だから…」
なすがまま、腹と腰を手で挟むようにして支えられ、何とか立つ。染みこみきれなかった尿がズボンの表面を滑る。
「…やだ、やだぁ゛…」
「どうした?お前、ちょっと変だぞ」
「っ゛~…」
押さえられた手を振り払って、走る。でも、急に動いたからか、足がついていかなくて、地面に転がり込む。口に入った砂利が、まずい。
「時田!!」
慌てたような声と共に、体を起こそうと、再び腹に手が差し込まれる。
変なのなんて、分かってる。何で、何で自分がこんな、小学生みたいな失敗をしないといけないんだろう。
「ヒグッ…ぅう゛っ、ぅう゛ぇ゛ぇ゛~…」
何で、こんなに苦しまないといけないんだろう。
「やだっ、こわい、やだ、おしっこ、あっ…」
自分でも何を言っているのか分からない。おしっこしたい、でもあそこには入れない。胸がざわざわして、早くここから出たい、でも、動けない。
じゅー…
便器が受けるはずだったものが、足を通って地面に落ちる。押さえている手にも足にも力が入らなくて、立っていられない。
「っあ、あ、…やぁ…ヒグッ…」
ガクリと砕けた膝は、水気を帯びた地面に落ちる。膀胱が軽くなっていく快感と、頭を支配する、不快感。
フルっ…
全身が震えると同時に、放尿が終わった。
「もう、残っていないか?」
地面に映るスニーカー。下腹と背中に手を当てられる。じょろり、とパンツの中が温かくなる程度の尿しか出てこない。
やってしまった。ぐしょぐしょに濡れそぼったズボン、雨の日のように水分をたっぷり含んだ靴。
「っぅ゛~…」
「し、しんどかったんだから、しょうがないしょうがない」
先生の気を遣った声が、どうしようもなく惨めだ。
「でもこのままじゃ帰れないよな…先生ちょっと保健室で服借りてくるから、中で待っててくれるか?」
「やだ、むり、だから、このまま帰るぅ゛…」
ほぼ泣き声で、みっともなく泣きわめく。
「って言ってもなぁ…すぐに戻ってくるから、な?」
幾分か柔らかくなった声色。
あやすように頭を撫でられる。でも、無理なものは無理なわけで。
「っやだ、ほんと、むり…だから…」
なすがまま、腹と腰を手で挟むようにして支えられ、何とか立つ。染みこみきれなかった尿がズボンの表面を滑る。
「…やだ、やだぁ゛…」
「どうした?お前、ちょっと変だぞ」
「っ゛~…」
押さえられた手を振り払って、走る。でも、急に動いたからか、足がついていかなくて、地面に転がり込む。口に入った砂利が、まずい。
「時田!!」
慌てたような声と共に、体を起こそうと、再び腹に手が差し込まれる。
変なのなんて、分かってる。何で、何で自分がこんな、小学生みたいな失敗をしないといけないんだろう。
「ヒグッ…ぅう゛っ、ぅう゛ぇ゛ぇ゛~…」
何で、こんなに苦しまないといけないんだろう。
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