鏡

鏡

僕がニヤリと笑うと

かがみの中の僕もニヤリと笑う

僕が右手を挙げると

かがみの中の僕が左手を挙げる

僕が右目を瞑ると

かがみの中の僕が左目を瞑る

僕が「今日も疲れたな」と言うと

かがみの中の僕も「今日も疲れたな」と言う

僕が「あいつはホントに腹が立つ」と言うと

かがみの中の僕が「お前はホントに腹が立つ」と言う

僕が「誰か助けてくれないものかねぇ」と言うと

かがみの中の僕も「誰か助けてくれないものかねぇ」と言う

僕が「死ねよ」と言うと

かがみの中の僕も「死ねよ」と言う

僕が「大好きだよ」と言うと

かがみの中の僕が「大嫌いだよ」と言う

僕が「どうして嫌いなんだい？」と言うと

かがみの中の僕が「どうして嫌いなんだい？」と言う

僕が「殺してやりたい」と言うと

かがみの中の僕も「殺してやりたい」と言う

僕が「許してよ」と言うと

かがみの中の僕が「許さない」と言う

僕が困っている表情をすると

かがみの中の僕がニヤリと笑う

僕はなんにも持っていないのに

かがみの中の僕は大きな包丁を持っている

僕が「やめてよ」と言うと

かがみの中の僕が「やめないよ」と言う

僕は後ろを振り向いて逃げようとしたら

パリーン！と、かがみが割れた大きな音がした

僕はまたかがみの方へ振り返ると

そこには僕が立っていた

僕が身動きできずにいると

目の前の僕が僕に大きな包丁で刺してきた

僕の左胸の辺りから赤黒い血が吹き出した

目の前の僕からは右胸の辺りから血が吹き出した

僕が痛みで「ぐぅっ！」と叫ぶと

目の前の僕が「ぐぅっ！」と叫んだ

僕が苦痛の表情をしていると

目の前の僕がニヤリと笑っていた

僕が泣きながら「やめて」と言うと

目の前の僕が「やめないよ」と言って大きな包丁で僕の首を突き刺した

僕はもう喋れなかったが

目の前の僕はこう言った

「お前のマネをするのはもう疲れた」

以上です。
どうもありがとうございます。
小さい頃から鏡が怖かったので、大人になってもあまり鏡は見ないようにしている臆病者です。
だって自分は右手を挙げているのに、鏡の僕は左手を挙げているんですよ？
もう怖い怖い。