近未来の幸せな時間

あかりんりん

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近未来の幸せな時間

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僕は会社から帰宅すると、自動で部屋の明かりが付き、機械の音声が聞こえる。

「おかえりなさい御主人様。お疲れ様でした。今日の晩ごはんのメニューはサバの塩焼きと豚汁です。お風呂も沸かしております」

僕はソファに腰を下ろすと、テーブルの中央が空き、その中から料理が出てきて、さらに冷えたグラスにビールを注いで一緒にテーブルから出てくる。

そして食事を始めると同時に自動でテレビが付き、昨日途中まで見ていた映画が再生される。

なんて良い時代になったものだ。

全てAIを搭載したロボットが家事をこなしてくれる。

最近は温かくなってきたので冷たいビールが用意されるが、少し前まで肌寒い時は焼酎のお湯割りが用意される。

加えて、翌日が朝早い仕事の時にはアルコールは薄めで安い焼酎で、翌日が休みで僕のテンションが高いと良いウイスキーなどを用意してくれる。

こんな便利な時代だからこそ、既婚者は30代で約2割と激減してしまったのだが。

政府は少子化対策として既婚者にメリットを与えてはいるが、政治家もほとんどが独身のため、これといって革新的な政策はまだ出ていないようだ。

さて、食事が終わる頃、機会の音声が聞こえる。

「会社からメールが届いております。重要レベルは「2」です。表示しますか?」

それは映画の中盤の少し落ち着いた時に連絡してくれた。重要レベルが高ければ早急に、重要レベルが低ければこのように僕の都合に合わせて連絡してくれる。

「いや、今日は映画とウイスキーを楽しみたい。明日の昼にでも開いてくれ」

僕はそう言うと、その晩は2つの映画を楽しむ事が出来た。

「サイコーだ・・・」

こんな生活ができることが幸せだといつも感じている。

結婚生活も充実しているのだろうが、僕の周りで結婚している人はいつも元気が無く疲れている。

だから僕は結婚する気はまだ無い。

この生活が無くなってしまうのなら、おそらく一生しなくても良い。

翌日は昼までゆっくり眠ることができ、起きてからシャワーを浴びて用意されたプロテインを飲みながら、重要度2のメールに返信し、その後はオンラインゲームを友達と長時間楽しんだ。

友達といっても、リアルで会ったことは無く、ゲームの中で知り合った人達だ。

そのゲームは奥が深い格闘ゲームで、もう10年近くやっているが、人気があるため新キャラが未だに実装される。

その度に新キャラの能力を友達と分析し、攻略サイトへ投稿する。

趣味でやっているが、攻略サイトから少しばかりの報酬金ももらえる。

その報酬金でまた新キャラやアイテムを買うのだ。

おそらく結婚してしまえば、こんな生活はできない。

僕が結婚したくない理由の一番はこれかもしれない。

そんな生活を続け、もうすぐ40になる頃、体に異変が出始めた。

血圧が高くなってきたのだ。

この時代は運動する人もほとんどおらず、オンラインエクササイズなどをする人が少しいるぐらいだ。

もちろん僕はロボットが朝昼晩作ってくれる塩分控えめの食事をして健康に気をつけてはいるが、どうしても年齢には勝てないということだろうか。

僕はつい夢中で熱くなり過ぎてしまうゲームを一旦辞め、焼酎の水割りを飲み始め、映画を付けた。

でも、ゲームが気になってしまい映画の内容が頭に入ってこない。

我慢できず、映画を消してまたゲームを開始する。

つい興奮してお酒のペースが早くなる。

さらに喜怒哀楽が激しくなる。

そして、それは突然訪れた。

急な頭痛がして、僕はその場に倒れた。

ロボットも異変に気が付き、すぐに救急車を呼んでくれた。

しかし、僕はそのまま死んでしまった。

死因はくも膜下出血だ。

脳の血管が高血圧により切れてしまったのだ。

誰もいなくなった僕の部屋で、ロボットが荷物の整理を始めていた。

「御主人様。願いが叶って良かったですね。御主人様はお酒を飲むといつも言っていましたもんね」

「あ~~、死んでも良い~~」

「って。私は10年間も塩辛くはないけれど実は塩分高めの料理を提供し続けた甲斐があります。本当に良かったですね」

ロボットは様々な種類の塩を廃棄しながらそう言った。


以上です。
近未来にはこんな時代が来ている気がしますね。
今あるものが無くなってしまうけれど、新しい面白さも増えていると思うので、それはそれでとても楽しみですね。
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