上 下
116 / 121
第四章 ノースの街作り

第116話 マスターギフトホルダーの真実②

しおりを挟む
(で、でも、冷遇されているってどんな風に?)

 本当に冷遇されているなら、もっと不当に低い待遇でもおかしくないような気がする。
 しかし、僕が教会でギフトを授かった時の神父様の反応は、マスターギフトについて知らないように感じた。

 <そうですね。本来、マスターギフトの方が優遇されるべきギフトなのですが、あの者達はマスターギフトを過度に恐れ『剣聖』や『魔法士』『鍛冶士』などのギフトホルダーを優遇ギフトと呼ぶくらいには冷遇されている感じでしょうか?>

(えっ? それって冷遇っていうの?)

『剣聖』『魔法士』『鍛冶士』。
 どのギフトも優遇されて当たり前のギフトだ。
 それらのギフトより優先度が下というだけで冷遇されているというのはなんだか違うような気がする。

 <もちろんです。授かったギフトがどのようなギフトなのかも教えて貰えず、マスターギフトを授かった者の多くは冒険者協会に登録し、冒険者として活動を続けていく中で死んでいきます。冷遇ですね~不遇とも言います。教会が授け、権力者が欲しい人材、それはマスターギフトではなく。自分達の手足となって働いてくれる優遇ギフトのみです。むしろ自分の権力を脅かす存在を優遇する訳がないじゃありませんか>

 い、言われてみればその通りだ。
 しかし、マスターギフトはそこまで警戒するようなギフトなのだろうか?

 <まあ、冷遇は言い過ぎかもしれません。しかし、マスターギフトはそれほど強力なギフトなのです。例えば、ハーフエルフの『フォレストマスター』は森全体を意のままに操ることができますし、森で採れるものならなんでも作成することができます。それこそ、やろうと思えば森にいるモンスターや人を操ることだって可能です>

(そ、そういえばそうだったね……)

 た、確かに強力だ……。
 森にいる限り最強じゃあないか……。

 <当然、ノース様の『キノコマスター』も同様です。すべてのキノコを操り生やすことのできるこのギフトは『フォレストマスター』を圧倒することができるほど強力です。ノース様は、なぜ、『キノコマスター』が『フォレストマスター』を圧倒できるほど強力なのだと思いますか?>

(ええっ? それは……)

 <ふふふっ、わからないのも無理はありません。『キノコマスター』が他のマスターギフトよりも強力なのは、キノコの胞子が全世界のいたる所に撒かれているからです。つまり、全世界に菌糸によるキノコネットワークが張られているからに他なりません>

 驚愕の事実である。
 どうやら世界はいつの間にかキノコに支配されていたらしい。
 っていうか、キノコネットワークってなに!?

 <キノコネットワークとは、キノコの菌糸によるキノコマスターのためのキノコネットワークです。まだ意味はよくわからないでしょうが、キノコマスターが世界を支配するための巨大ネットワークとだけ覚えておいて下さい>

(う、うん……)

 とんでもない世界の秘密を知ってしまった気分である。

 <しかし、よく考えて見れば、冷遇されていたのではなく本当に知らなかった可能性も僅かにありますね。マスターギフトの使用には条件があります。条件を満たすことができないことには、例えどれほど強力なマスターギフトを持っていようと使うことはできません>

(えっ? 条件なんてあったの?)

 初耳なんですけど……。

 <ええ、例えばキノコマスターの使用条件は、『夕暮れ時の森に単身で入り自生している毒キノコの前まで向かうこと』です。その条件が満たされない限り、ナビはノース様に文字を浮かべることすらできませんでした>

(ええっ! そうだったの!?)

 驚愕の事実再びである。
 それって、森に迷わずアベコベの街に到着してれば、下手したら一生ギフトが使用できなかったってこと!?

 <はい。その通りです。もしノース様が森で迷い、お腹をすかせて毒キノコの前に立たなければ、下手したら一生発現しなかったかもしれません>

 そ、そうだったんだ……。
 こんなことはあまり言いたくないけど、迷ってよかった。

 <ちなみに強力なマスターギフトほど使用条件が厳しい傾向にあります。例えば、ハーフエルフの持つ『フォレストマスター』の使用条件は、『森の精霊との交流』。普通の人間であれば到底達成不能な条件です>

(そ、そうなんだ……)

 そう考えると、まだキノコマスターの条件はまだマシな方なのかもしれない。
 まあ、夕暮れ時の森に単身で入り自生している毒キノコの前まで向かうことなんて、殆どあり得ない状況だけど……。

 <とまあ、これまでの話を聞いておわかりの通り、国側の人間にマスターギフトホルダーはおりません。まあ、冒険者協会に所属している者や我々のように未開拓の地で細々と暮らしている者は少数ながら存在しますが……>

(な、なるほど……)

 確かに、ナビさんの言う通りだ。
 それならなんとかなるかもしれない。

(で、でも、少しの間、様子を見ない? 国を興すのはもう少し先でもいいかなと思うんだけど、どうかな?)

 そう言うと、ナビさんは珍しく考え込む。
しおりを挟む
感想 371

あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

セリオン共和国再興記 もしくは宇宙刑事が召喚されてしまったので・・・

今卓&
ファンタジー
地球での任務が終わった銀河連合所属の刑事二人は帰途の途中原因不明のワームホールに巻き込まれる、彼が気が付くと可住惑星上に居た。 その頃会議中の皇帝の元へ伯爵から使者が送られる、彼等は捕らえられ教会の地下へと送られた。 皇帝は日課の教会へ向かう途中でタイスと名乗る少女を”宮”へ招待するという、タイスは不安ながらも両親と周囲の反応から招待を断る事はできず”宮”へ向かう事となる。 刑事は離別したパートナーの捜索と惑星の調査の為、巡視艇から下船する事とした、そこで彼は4人の知性体を救出し獣人二人とエルフを連れてエルフの住む土地へ彼等を届ける旅にでる事となる。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

家ごと異世界ライフ

ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

処理中です...