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第四章 ノースの街作り
第114話 フォーリッシュ兄様、厄介な馬鹿だったようです
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「そ、それじゃあ、フォーリッシュ兄様に報告に行こうかな?」
そう呟くと、他でもないナビさんから反対の言葉が目に飛び込んできた。
<ナビは反対です>
(ええっ!?)
一体何故!?
心の中でそう呟くと、ナビさんが視界に文字を浮かべてくる。
<当然です。いまあの街になにが起こっているかノース様はご存知ないのですか?>
(い、いや、知らないけど……)
<知らないのであれば、教えて差し上げます。いま、あの街では、筋肉馬鹿が寄生先探しを行なっているのです>
(き、寄生先!?)
<ええ、あの筋肉馬鹿は辺境伯からお金を引き出す算段をしている所か、辺境伯が苦労して開拓した街を隣国に売り払い、街の人達ごと亡命しようとしているのです>
「ぼ、亡命っ!?」
亡命というパワーワードを聞き、つい声に出してしまった。
フォーリッシュ兄様は、一体何を考えているんだ?
「亡命とは一体なんのことです?」
「ノース様、教えて下さい」
亡命というパワーワードを口にしてしまったことで、アメリアさんとクロユリさんが怪訝な表情を浮かべる。
「う、うん。実はフォーリッシュ兄様がお父さんから借金をした挙句、隣国に亡命しようとしているみたいなんだ……」
そう説明すると、なぜかアメリアさんが納得といった表情を浮かべた。
「隣国に亡命ですか……。フォーリッシュ様が考えそうなことですね」
「ええっ!? そうなの??」
「はい……。ノース様もお気付きかもしれませんが、フォーリッシュ様はとても厄介な馬鹿なのです」
「と、とても厄介な馬鹿!?」
「はい。その通りです」
言い切った!?
仮にも領主の息子にそんなことを言ってもいいのだろうか。
まあいい。
フォーリッシュ兄様がとても厄介な馬鹿だったとして、それならなんで兄様にホオズキの街を任せたのだろうか?
とても厄介な馬鹿だとわかっていれば、そもそも、街の運営を任せるなんてそんな発想にはならないはずだ。
「そ、それじゃあ、なんでお父さんはフォーリッシュ兄様にホオズキの街の運営を任せたの?」
そう尋ねると、アメリアさんが困ったかのような表情を浮かべる。
「そ、それはですね……。ノース様には大変申し上げ辛いことなのですが……」
「うん。なに?」
「はい。実はあの街はフォーリッシュ様を更生するためだけに作られた街だったのです」
「ええっ!?」
街丸ごと一個がフォーリッシュ兄様を更生するためだけに作られたものだったの!?
逆に凄いな!
更生させるというただそれだけの目的のために、街一つを作り上げるなんて……。
「しかし、様子を見るに更生は上手くいかなかったみたいですね」
「そ、そうなんですか?」
「ええ、更生した人間が亡命なんて考える訳がないじゃありませんか」
「た、確かに……」
言われてみればその通りだ。
更生した人間が他国に亡命するなんて考えるはずがない。
「でも、それだと、ホオズキの街が他国のものになってしまうのではありませんか?」
クロユリさんが首を傾けながらそう呟く。
まったくもってその通りだ。
これにはアメリアさんも渋い表情を浮かべている。
なんとか、フォーリッシュ兄様を思い留まらせないと大変なことになりそうだ。
<それなら、ナビにいい考えがありますよ?>
ナビさんが考える『いい考え』。
なんだか碌なことじゃないような気がする。
しかし、名案が浮かばない以上、仕方がない。
とりあえず、ナビさんの考えを聞いて見ることにしよう。
(ナビさんの言ういい考えってなに?)
<簡単なことです。マニピュレイトタケを食べさせましょう>
(ええっ!? マニピュレイトタケを食べさせるの!?)
<ええ、その通りです>
マニピュレイトタケとは、食べた者を一種の催眠状態に置くことのできるキノコで、食べた者をキノコマスターの意のままに操るとんでもない効果を持ったキノコである。
少なくとも領主の息子に食べさせていいようなものではない。
そんな気がする。
(そ、それは流石にまずいんじゃ……)
<えっ? でも、あの筋肉馬鹿をそのまま放置していたら街が他国に渡ってしまうんですよね? それを考えれば、マニピュレイトタケを食べさせるくらい些事だとは思いませんか?>
領主の息子を支配下に置くことを些事とは呼ばないような気がする。
しかし、このまま放置していては街の住民ごと亡命されてしまうのは確かだ。
フォーリッシュ兄様一人にマニピュレイトタケを食べさせることで回避できるならいいのかもしれない。
なんだかそう思えてきた。
(た、確かに……。それじゃあ、やって見る?)
<ええ、それでは早速実行に移しましょう。なーに、そこの二人には、あの筋肉馬鹿が改心したとでも言っておけばいいんですよ。それにナビは欲しかったんです。ナビの自由に動かすことのできる権力者という駒が……>
ナビさんが胸の内を暴露した。
っていうか、そんなことを考えていたの!?
「えっと、ノース様? どうかされたのですか?」
「い、いや、なんでもないよ?」
いかんいかん。
ナビさんとの脳内会話に夢中になって、クロユリさんとアメリアさんとの会話が置き去りになっていた。
そう呟くと、他でもないナビさんから反対の言葉が目に飛び込んできた。
<ナビは反対です>
(ええっ!?)
一体何故!?
心の中でそう呟くと、ナビさんが視界に文字を浮かべてくる。
<当然です。いまあの街になにが起こっているかノース様はご存知ないのですか?>
(い、いや、知らないけど……)
<知らないのであれば、教えて差し上げます。いま、あの街では、筋肉馬鹿が寄生先探しを行なっているのです>
(き、寄生先!?)
<ええ、あの筋肉馬鹿は辺境伯からお金を引き出す算段をしている所か、辺境伯が苦労して開拓した街を隣国に売り払い、街の人達ごと亡命しようとしているのです>
「ぼ、亡命っ!?」
亡命というパワーワードを聞き、つい声に出してしまった。
フォーリッシュ兄様は、一体何を考えているんだ?
「亡命とは一体なんのことです?」
「ノース様、教えて下さい」
亡命というパワーワードを口にしてしまったことで、アメリアさんとクロユリさんが怪訝な表情を浮かべる。
「う、うん。実はフォーリッシュ兄様がお父さんから借金をした挙句、隣国に亡命しようとしているみたいなんだ……」
そう説明すると、なぜかアメリアさんが納得といった表情を浮かべた。
「隣国に亡命ですか……。フォーリッシュ様が考えそうなことですね」
「ええっ!? そうなの??」
「はい……。ノース様もお気付きかもしれませんが、フォーリッシュ様はとても厄介な馬鹿なのです」
「と、とても厄介な馬鹿!?」
「はい。その通りです」
言い切った!?
仮にも領主の息子にそんなことを言ってもいいのだろうか。
まあいい。
フォーリッシュ兄様がとても厄介な馬鹿だったとして、それならなんで兄様にホオズキの街を任せたのだろうか?
とても厄介な馬鹿だとわかっていれば、そもそも、街の運営を任せるなんてそんな発想にはならないはずだ。
「そ、それじゃあ、なんでお父さんはフォーリッシュ兄様にホオズキの街の運営を任せたの?」
そう尋ねると、アメリアさんが困ったかのような表情を浮かべる。
「そ、それはですね……。ノース様には大変申し上げ辛いことなのですが……」
「うん。なに?」
「はい。実はあの街はフォーリッシュ様を更生するためだけに作られた街だったのです」
「ええっ!?」
街丸ごと一個がフォーリッシュ兄様を更生するためだけに作られたものだったの!?
逆に凄いな!
更生させるというただそれだけの目的のために、街一つを作り上げるなんて……。
「しかし、様子を見るに更生は上手くいかなかったみたいですね」
「そ、そうなんですか?」
「ええ、更生した人間が亡命なんて考える訳がないじゃありませんか」
「た、確かに……」
言われてみればその通りだ。
更生した人間が他国に亡命するなんて考えるはずがない。
「でも、それだと、ホオズキの街が他国のものになってしまうのではありませんか?」
クロユリさんが首を傾けながらそう呟く。
まったくもってその通りだ。
これにはアメリアさんも渋い表情を浮かべている。
なんとか、フォーリッシュ兄様を思い留まらせないと大変なことになりそうだ。
<それなら、ナビにいい考えがありますよ?>
ナビさんが考える『いい考え』。
なんだか碌なことじゃないような気がする。
しかし、名案が浮かばない以上、仕方がない。
とりあえず、ナビさんの考えを聞いて見ることにしよう。
(ナビさんの言ういい考えってなに?)
<簡単なことです。マニピュレイトタケを食べさせましょう>
(ええっ!? マニピュレイトタケを食べさせるの!?)
<ええ、その通りです>
マニピュレイトタケとは、食べた者を一種の催眠状態に置くことのできるキノコで、食べた者をキノコマスターの意のままに操るとんでもない効果を持ったキノコである。
少なくとも領主の息子に食べさせていいようなものではない。
そんな気がする。
(そ、それは流石にまずいんじゃ……)
<えっ? でも、あの筋肉馬鹿をそのまま放置していたら街が他国に渡ってしまうんですよね? それを考えれば、マニピュレイトタケを食べさせるくらい些事だとは思いませんか?>
領主の息子を支配下に置くことを些事とは呼ばないような気がする。
しかし、このまま放置していては街の住民ごと亡命されてしまうのは確かだ。
フォーリッシュ兄様一人にマニピュレイトタケを食べさせることで回避できるならいいのかもしれない。
なんだかそう思えてきた。
(た、確かに……。それじゃあ、やって見る?)
<ええ、それでは早速実行に移しましょう。なーに、そこの二人には、あの筋肉馬鹿が改心したとでも言っておけばいいんですよ。それにナビは欲しかったんです。ナビの自由に動かすことのできる権力者という駒が……>
ナビさんが胸の内を暴露した。
っていうか、そんなことを考えていたの!?
「えっと、ノース様? どうかされたのですか?」
「い、いや、なんでもないよ?」
いかんいかん。
ナビさんとの脳内会話に夢中になって、クロユリさんとアメリアさんとの会話が置き去りになっていた。
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