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第四章 ノースの街作り
第105話 その頃、ホオズキの街では①
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ノース達が、ホオズキの街近隣に新しい街を築いている頃、オーダー辺境伯の息子、フォーリッシュは湧泉で水浴びをしていた。
「筋肉に染み渡る清らかな水……ああ、なんて素晴らしいんだ。君達もそう思うだろう?」
「はい!!!」
「そうだろう。そうだろう」
ああ、この街の住民と交流を持つのは何年振りだろうか。
昔の私はちょっとぽっちゃりな体格のシャイガイだったため、とてもじゃないが住民と交流するなんて考えもしなかった。
しかし、デネブのお蔭で、昔着ていたミートテックは過去の私ごと綺麗サッパリ消え去り、強靭な肉体へと生まれ変わる。
ああ……私の人生はいま、猛烈に輝いている。
「さあ、そろそろ湧泉から上がろうか。昼食にしよう」
この筋肉を維持するためには、良質なタンパク質が必要となる。
食生活は重要だ。
「さて今日の昼食はなににしようかな……」
街の住民と共に家に戻る。
「デネブ、食事を用意してくれ」
そう呟くも返事がない。
「うん? ああ、そういえばデネブは罪人として捕らえたのだったね。しかし、それでは誰が私の食事を作るんだ?」
よくよく考えてみたら、街の運営はすべてデネブに投げていた。身の回りの世話をする人の確保も、だ。
「まったく。仕方がないな……うん? なにもないじゃないか」
仕方がなく自分で食料庫に足を運ぶも、そこには麦と乾燥した肉、腐った野菜しか置かれていなかった。
「おかしいな。私が床に伏せる前は食料に満ちていたのに……」
なんでだ?
仕方がない。わかる奴に話を聞きにいくとするか。
デネブであれば、なぜ、街がこのような状況に陥っているのかわかるはずだ。
「さて、ここかな……」
早速、私はデネブを捕らえている牢屋に赴くことにした。
「フォーリッシュ様。ご苦労様です!」
「ああ、君達もご苦労様。それで、デネブに会いたいのだが、彼の元に案内してくれるかい?」
「はい。それでは、こちらにどうぞ。足元にお気を付け下さい」
「ああ、ありがとう」
看守にデネブのいる牢屋まで案内して貰う。
そこにはげっそりとした表情を浮かべたデネブがいた。
元門番や捕らえた敵国の兵士達もデネブと同じような表情をしている。
「やあ、デネブ。君を捕らえて数時間。随分とやつれたね。一体、どうしたんだい?」
私の問いにデネブは青褪めながら言う。
「そ、そんなの、当たり前じゃないですか。計画では、病に伏せったままの住民達を捕え、街を支配下に置くつもりだったのに……。私の未来は真っ暗だ! あのクソガキのお陰ですべて台無しですよ」
「ほう。そうか、そうか。それはよかった。まあ、そんな話は一先ず置いておこう」
悪びれもなくそう言うと、デネブが過剰な反応を見せる。
「そ、そんな話? 私の話を、そんな話ですって!?」
「まあ、終わった話だからね。そんな話よりも、もっと建設的な話をしようじゃないか」
「け、建設的な話?」
私の発言にデネブが怪訝そうな表情を浮かべる。
「ああ、実は食料庫に食料がまったくなくてね。どこにあるか知らないかい?」
「は、はあっ?」
そう言うと、デネブは呆れた表情を浮かべた。
その表情はさっきからなにを言っているんだと、言わんばかりのものだ。
「……あ、あの、あなたはなにを言っているか、わかっているのですか?」
「うん? そんなの当り前だろう。当然、わかっているさ。食料庫に食料がない。だから、私は君に食料の在処を聞きに来たんじゃないか」
私の言葉を聞き、デネブが頭を抱えた。
今度は、この馬鹿に、なんと言ったら言葉が通じるかといった侮蔑に満ちた表情をしているように見える。
「あのですね。私達はこの街を支配するために、わざわざ、病を流行らせ、我々の協力なしは生きていけないような状況を作り出したんですよ? この一ヶ月間、あなた方は病に伏せ寝たきりの状態でした。そんな状態にも拘らず、街がギリギリ存続できたのは、私の献身的な介抱と、この街に蓄えられていた備蓄があったからに他なりません。わかりますか? つまり食料なんてもうないんですよ」
「えっ? それじゃあ、君達はこの街を支配した後、どうするつもりだったんだい?」
「そんなの決まっているでしょう。街の住民達がギリギリ飢えないように、森で狩りをする予定でした。その間、本国に数名の兵士を戻し、食料を送ってもらう予定だったのです。って、あれ? なんで私はこんなことを……」
「そうか、それじゃあ、本当にこの街には食料がない状態なんだね? 弱ったなぁ……そうだ! もっといい解決方法があったじゃないか!」
「えっ?」
突然降りてきた天啓に笑みを浮かべる。
「どうして、このことを忘れていたんだろうね。こんな便利なギフト、他にないのに……」
そう呟くと、デネブは顔を強張らせた。
「フォ、フォーリッシュ様……。一体なにをされる気ですか?」
「うん? そんなこと決まっているじゃないか……」
私が笑みを浮かべると、デネブは後退る。
「僕のギフトは『扇動者』。お父様の持つギフトほどではないが、私が思えば、この通り……」
そう呟くと、家の外が騒がしくなってくる。
「筋肉に染み渡る清らかな水……ああ、なんて素晴らしいんだ。君達もそう思うだろう?」
「はい!!!」
「そうだろう。そうだろう」
ああ、この街の住民と交流を持つのは何年振りだろうか。
昔の私はちょっとぽっちゃりな体格のシャイガイだったため、とてもじゃないが住民と交流するなんて考えもしなかった。
しかし、デネブのお蔭で、昔着ていたミートテックは過去の私ごと綺麗サッパリ消え去り、強靭な肉体へと生まれ変わる。
ああ……私の人生はいま、猛烈に輝いている。
「さあ、そろそろ湧泉から上がろうか。昼食にしよう」
この筋肉を維持するためには、良質なタンパク質が必要となる。
食生活は重要だ。
「さて今日の昼食はなににしようかな……」
街の住民と共に家に戻る。
「デネブ、食事を用意してくれ」
そう呟くも返事がない。
「うん? ああ、そういえばデネブは罪人として捕らえたのだったね。しかし、それでは誰が私の食事を作るんだ?」
よくよく考えてみたら、街の運営はすべてデネブに投げていた。身の回りの世話をする人の確保も、だ。
「まったく。仕方がないな……うん? なにもないじゃないか」
仕方がなく自分で食料庫に足を運ぶも、そこには麦と乾燥した肉、腐った野菜しか置かれていなかった。
「おかしいな。私が床に伏せる前は食料に満ちていたのに……」
なんでだ?
仕方がない。わかる奴に話を聞きにいくとするか。
デネブであれば、なぜ、街がこのような状況に陥っているのかわかるはずだ。
「さて、ここかな……」
早速、私はデネブを捕らえている牢屋に赴くことにした。
「フォーリッシュ様。ご苦労様です!」
「ああ、君達もご苦労様。それで、デネブに会いたいのだが、彼の元に案内してくれるかい?」
「はい。それでは、こちらにどうぞ。足元にお気を付け下さい」
「ああ、ありがとう」
看守にデネブのいる牢屋まで案内して貰う。
そこにはげっそりとした表情を浮かべたデネブがいた。
元門番や捕らえた敵国の兵士達もデネブと同じような表情をしている。
「やあ、デネブ。君を捕らえて数時間。随分とやつれたね。一体、どうしたんだい?」
私の問いにデネブは青褪めながら言う。
「そ、そんなの、当たり前じゃないですか。計画では、病に伏せったままの住民達を捕え、街を支配下に置くつもりだったのに……。私の未来は真っ暗だ! あのクソガキのお陰ですべて台無しですよ」
「ほう。そうか、そうか。それはよかった。まあ、そんな話は一先ず置いておこう」
悪びれもなくそう言うと、デネブが過剰な反応を見せる。
「そ、そんな話? 私の話を、そんな話ですって!?」
「まあ、終わった話だからね。そんな話よりも、もっと建設的な話をしようじゃないか」
「け、建設的な話?」
私の発言にデネブが怪訝そうな表情を浮かべる。
「ああ、実は食料庫に食料がまったくなくてね。どこにあるか知らないかい?」
「は、はあっ?」
そう言うと、デネブは呆れた表情を浮かべた。
その表情はさっきからなにを言っているんだと、言わんばかりのものだ。
「……あ、あの、あなたはなにを言っているか、わかっているのですか?」
「うん? そんなの当り前だろう。当然、わかっているさ。食料庫に食料がない。だから、私は君に食料の在処を聞きに来たんじゃないか」
私の言葉を聞き、デネブが頭を抱えた。
今度は、この馬鹿に、なんと言ったら言葉が通じるかといった侮蔑に満ちた表情をしているように見える。
「あのですね。私達はこの街を支配するために、わざわざ、病を流行らせ、我々の協力なしは生きていけないような状況を作り出したんですよ? この一ヶ月間、あなた方は病に伏せ寝たきりの状態でした。そんな状態にも拘らず、街がギリギリ存続できたのは、私の献身的な介抱と、この街に蓄えられていた備蓄があったからに他なりません。わかりますか? つまり食料なんてもうないんですよ」
「えっ? それじゃあ、君達はこの街を支配した後、どうするつもりだったんだい?」
「そんなの決まっているでしょう。街の住民達がギリギリ飢えないように、森で狩りをする予定でした。その間、本国に数名の兵士を戻し、食料を送ってもらう予定だったのです。って、あれ? なんで私はこんなことを……」
「そうか、それじゃあ、本当にこの街には食料がない状態なんだね? 弱ったなぁ……そうだ! もっといい解決方法があったじゃないか!」
「えっ?」
突然降りてきた天啓に笑みを浮かべる。
「どうして、このことを忘れていたんだろうね。こんな便利なギフト、他にないのに……」
そう呟くと、デネブは顔を強張らせた。
「フォ、フォーリッシュ様……。一体なにをされる気ですか?」
「うん? そんなこと決まっているじゃないか……」
私が笑みを浮かべると、デネブは後退る。
「僕のギフトは『扇動者』。お父様の持つギフトほどではないが、私が思えば、この通り……」
そう呟くと、家の外が騒がしくなってくる。
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